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得点を取ることができない限り勝つことができない。逆に失点でもしようものなら、それが命取りになる。PK戦になれば、何が起こるかわからない。ノックアウト方式の難しさ。それに加えチームにとって大会初戦というプレッシャーものしかかる。当然番狂わせが起こり得る。
レモンガススタジアム平塚で行われた皇后杯 JFA 第46回全日本女子サッカー選手権大会 5回戦、相手はジェフユナイテッド市原・千葉レディース。前半、「相手とミラーゲームになって、味方同士が良い距離間でボールが動かせず攻めあぐねてしまった」と山本柚月が振り返るように、なかなかチャンスを作ることができなかった。後半に入るとメンバーを入れ替え、そこからの打開をはかると、待望の瞬間が訪れたのは終盤に入りかけた72分だった。
木下桃香が右サイドからスルーパスを送って樋渡百花のクロス。これは流れてしまったが、逆サイドの松田紫野が拾って攻撃は継続。中央で菅野奏音がボールを受けるとタイミングをはかりながらゴール前に放り込み、これを山本が頭で競り勝ってゴールに流し込みベレーザに欲しかった先制点が転がり込んだ。その3分後には、菅野からのパスを受けた山本が、今度はドリブルで中央突破。右サイドのスペースに出すと、後ろから猛然と走り込んできたのは最終ラインの坂部幸菜だった。坂部は、その勢いのまま最後はシュートを豪快にネットに突き刺して追加点。2点のリードとなったベレーザは、守備陣も最後まで粘りクリーンシートを達成。堂々の準々決勝進出となった。
一方で番狂わせが起こったのは、ベレーザの隣のブロックだった。WEリーグ所属の大宮アルディージャVENTUSと対戦したのは、なでしこリーグ1部のヴィアマテラス宮崎。兵庫県立三木総合防災公園陸上競技場で行われた一戦は、V宮崎が優勢のまま試合は進むが、前後半の90分で決着がつかず、試合は延長戦に突入。試合が動いたのは110分、V宮崎は板倉楓からのパスを受けた山本さゆりが決めて先制。最後までリードを守ったV宮崎がジャイアントキリングを果たして、準々決勝に進出している。
「ヴィアマテラス宮崎」という名前に聞き覚えがあるだろうか。聞き馴染みのない理由も当然、それは2020年に創設されたばかりのクラブだからだ。それでも実績はすさまじく、2021年に九州なでしこサッカー宮崎県大会を制して、同年九州女子サッカーリーグ2部リーグも8戦全勝で制覇。翌年1部リーグに昇格しても16戦全勝、なでしこリーグ2部入替戦も3戦全勝で、2023プレナスなでしこリーグ2部に参入を果たす。そこでも18戦で14勝4分と負け無しで優勝。そして今季、なでしこリーグ1部では黒星を喫するが、それでも16勝1分5敗という堂々の結果で、昇格1年目で優勝という快挙を成し遂げている。いま日本で最も勢いがある女子サッカーチームと言っても過言ではないかもしれない。
水永翔馬監督は現役時代、長崎、金沢、北九州、宮崎などで活躍したFW。2016シーズンの金沢在籍時には、ヴェルディからゴールも奪っている。その指揮官が率いるチームは、今季なでしこリーグ1部最優秀選手賞を受賞し、得点ランキングでも2位だった齊藤夕眞らが前線に控える攻撃陣が強力。リーグダントツの得点力で他を圧倒してきた。
だが、言うまでもなくWEリーグで現在トップの得点を挙げているのはベレーザだ。そのプライドを持ちつつ、実力を見せつけたい。今年最後の試合は、WEリーグ現在首位のベレーザと、なでしこリーグ1部チャンピオンのヴィアマテラス宮崎との対決。真っ向勝負で相手を撃破する。当然、番狂わせは起こさせない。