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「I have never ~」=「私は一度も~したことがない」。すっかりご無沙汰になった英語の勉強の中でも、かすかに覚えている知識の一つ。そんな方も多いのではないだろうか。
「人をホッとさせる子になってほしい」
そんな願いがこめられた名前。氏原里穂菜は、その名の通りに育った。名前を考えた親も、そう感じているという。確かにほんわかとした雰囲気、そして安心感。そうした印象を与えているのは、
「平和主義なんで。一度も怒ったことがないんです」
というのがにじみ出ているからだろう。しかし日常生活では良いとして、サッカー選手にとって足かせになるのではないか。そんな心配をよそに、
「ファウルされても、フリーキックがもらえたからラッキーみたいな感覚になってしまうので、相手に対してイライラしたことはないですね。なので、怒るというよりも、プレーで見返そうという気持ちが強いです。変なこだわりかもしれないですけど」
と、本人にとっては、全く問題にしていない様子だった。
彼女の言う、「一度も~したことがない」という「変なこだわり」。それはインタビュー中に何度も見られた。
例えば髪型にしてもそうだ。前回コラムでインタビューをした三浦紗津紀選手が「度々髪型を変えている」という話題を振ってみると、
「1年間リハビリだったので、その期間中に髪を染めるのも自分の中でどうなのかなというのもありましたし、何となくですがU-20女子ワールドカップまでは染めずにいきたいって思っていたので。小3で髪の毛を切ってから、長さもずっとこんな感じ。一度も染めたこともないです。ちょっと染めてみたいなと思ったことはありますが、変なこだわりかもしれないですけど、プレーで目立ちたいというか、サッカー選手として落ち着くまでは変えたくないというか。自分の中ではまずプレーで知ってもらいたいなって」
プレーで知ってもらいたいという気持ちとは裏腹に、彼女がベレーザのファン・サポーターに知ってもらう機会は多くはなかった。
ベレーザに加入してから半年が経った2023年9月、U-19日本女子代表候補活動期間中に右膝前十字靭帯損傷および半月板損傷。それが約1年前の話だ。23-24シーズン、リーグ戦の出場は0、8月26日に行われたリーグカップ開幕戦・AC長野パルセイロ・レディース戦の12分が唯一の出場となった。
ちなみに、彼女のサッカー人生に大きな影響を与えたであろう出来事、1年ものブランクとなったケガについて話を聞いてみた。本人に思い出させるのも忍びないが、聞かないわけにもいかない。恐る恐る質問してみたのだが…。
「さあやるぞっていうところでのケガでしたけど、まぁ自爆なので。自分はケガに対して、人より切り替えが早いというか。これまでも自爆のケガが多かったのですが、やっちゃったらしょうがないみたいな。昔から1回も落ち込んだことないです」
とあっけらかんとしていた。ここまで来ると、彼女の「I have never ~」の性質は最強なのではないかとさえ思わされる。
話を戻すと、今季は彼女にとって復活の大事なシーズンになる。ベレーザのファン・サポーターにようやく自分を知ってもらう機会。氏原はどんなプレーで自身を知ってもらいたいのか。ただ今のところ、この質問には上手く答えられないという。
「あなたはどんなプレーヤーですか?武器は何ですか?みたいな質問って多いじゃないですか。あの質問にいつも困っていて。ユーティリティプレーヤーを目指したいというのはあるんですけど、自分にとっての武器は何だろう?一番はどこなんだろう?って」
今季ベレーザで公式戦に出場がないまま、U-20女子ワールドカップ本番で実戦復帰。世界を舞台に1アシストを記録したものの、本人にとっては満足のいく大会にはならなかった。
「得点を決めたわけではないですし、あまりシュートを打てなかったというのが自分の中でも課題として残りました。仕掛ける部分だったり、シュートはもっと積極的にいかなければいけないなと感じましたね」
そうした課題を持ってベレーザに戻ってきた。そして、未だ答えを出せていない自らの強み。ただ、ヒントはある。それはU-20女子ワールドカップ期間中に藤野あおばからもらったLINEだ。氏原にとって藤野といえば「中1で出会って、サッカー選手にあまり興味がなかった自分が、初めて格好良いなと思った選手。もう一目惚れでした」という、彼女からすれば常に憧れの存在だ。日テレ・メニーナ・セリアス、十文字高校、そしてベレーザと、藤野の背中を追ってきた。その藤野のメッセージはこうだったという。
「考えすぎず、がむしゃらに楽しみな!」
その言葉はベレーザに戻ってきた今でも心の中に残っている。
「はっきりと『これだ!』と言えるものは、自然と出てくるものだと思うんですよね。サッカーを楽しみながらそれを見つけていきたいです」
プロになって一度もはっきりと答えることができなかった自分の武器。今シーズンが終わったころに、再び聞いてみたい。「氏原里穂菜はどんな選手ですか?」。その答えを聞くのが楽しみだ。
(写真 近藤篤)