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2024.03.16 ベレーザ

Beleza Match Preview & Column #10

Match Preview
『西が丘に4ヶ月ぶりの歓喜を』


前節ベレーザは、気温6.5℃という新潟に乗り込み、中断期間後2連勝を目指した。だが、序盤からなかなかチャンスが作れず、相手の良さを出させてしまう展開。9分には、前節同じような位置からゴールを決めた滝川結女にミドルシュートを打たれるなど、危ない場面もあった。前半ベレーザにようやく訪れたチャンスは33分。ゴール前、サイドに流れた菅野奏音が深くまで持ち込みクロス。これをニアで鈴木陽がヒールで合わせるが、ゴールとはならない。エンドが変わり、後半から投入された山本柚月が右サイドからドリブルでかき回すと、最後は逆サイドに展開し北村菜々美へボールが渡り、GKと1対1の状況を作り出すも、これはGKの素早い飛び出しで防がれてしまった。そして61分、カウンターを受けると、石淵萌実に右サイドを破られ、クロスを川澄奈穂美に頭で豪快に決められてしまう。その後、お互い攻撃のチャンスはあったがスコアは動かず、ベレーザは0-1で敗れてしまった。

3位、4位対決という大事な試合に敗れ、上位との差はさらに広がってしまった。試合後、松田岳夫監督は「ゴールが遠い。ゴールを取らなければ勝てない。それがはっきりしたゲームだったと思います」と言う。この試合でもゴールまであと一歩というシーンは作れていた。それを決めきれるか、それとも決めきれないか。そのあと少しの差が、このような結果になってきている。

対するC大阪は前節に三菱重工浦和レッズレディースと対戦した。試合は37分、高橋はなのラストパスを受けた清家貴子がシュート。これをGK山下莉奈が一度は弾き返すが、こぼれ球を再び清家に押し込まれて先制を許す。前半は何とかこの1点に抑えたが、後半に入ると53分には右サイドからのクロスを伊藤美紀が合わせて追加点。62分には浦和のテンポの良いパスに翻弄され、最後は島田芽依に決められて3点目。そして、70分には清家にダメ押しのPKを決められ0‐4の完敗。WEリーグカップでは0‐0と粘ったが、今回はWEリーグの洗礼を浴びる形となった。

今季からWEリーグに加入したC大阪。その特筆すべき点は若さだ。若いと言われるベレーザのメンバーでも前節のスタメンの平均年齢は22.45歳だったが、それよりも約1歳若い21.64歳という構成だった。そしてその特徴は、なでしこリーグ1部で何度か対戦したことがある神谷千菜によると、「個の技術は高くて、走れるなという印象はあります」という。

松田監督は、中断期以降のテーマとして「ゲーム全体を支配する」ということを掲げている。若いC大阪というチームは勢いに乗せてしまうと怖い。そうさせないために、ベレーザがゲームを最後の最後まで支配して、そして1点にとどまらず2点、3点と得点を決めて勝利すること。

雰囲気は決して悪くない。前節からのオフ明けの練習、指揮官は円陣で「やっているサッカーは間違っていない」と選手たちに話し、選手たちもそれを実感している。だからこそ、選手たちの表情は明るい。厳しい状況になったことは間違いないが、それはこれからサッカーも雰囲気もより良くなっていくという希望だ。何より、今節は西が丘で試合ができる。たくさんのファン・サポーターの前で戦うことができる。中断後初勝利したノジマステラ相模原戦よりも、そして前節のアルビレックス新潟レディース戦よりも。さらに良いサッカーをして、西が丘に今季開幕戦以来の歓喜を起こしたい。

Player's Column

『「次の日」が来る前に」

自分の意志とは関係なく物事が進んでしまう。それはよくあることだ。神谷千菜もそれを実感している。

神谷のサッカーとの出会いは小学校の部活だと言う。

「最初はキーパーをやりたかったんですけど、キーパーがいっぱいいて。それで、その時にFWが少なかったのでFWをやることになったんですけど、練習の中で一生懸命戻って守備もしていたら、次の日からサイドバックになっていました」

そこからもポジションの変遷は続く。

「中学2年生くらいから本格的にサッカーを教えてもらい始めると、そのままサイドバックからスタートしたのですが、紅白戦で人数が足りないから『FWに入って』って言われて。そうしたら次の日からFWになっていました」

なぜか「次の日」にすべてが覆されてしまう。

では、そこからFWに固定されたのか。といえば、そうではない。一筋縄ではいかないのが、彼女のサッカー遍歴だ。高校時代は自分が点を取って勝っていたら、終盤は後ろに下がって守備をする。そのうちに守備の楽しさを覚え、大学3年生の途中から4年はずっとアンカー。それでも、朝日インテック・ラブリッジ名古屋に特別指定選手として参加したときにはFWで登録された。ちなみに大学時代、GKがケガをしたときには、念願のGKもプレーしている。

23年に名古屋に正式に加入すると、FWとして1年目から22試合14得点を挙げて得点王に輝いたというのは有名な話だ。ただ、これにもある逸話がある。

「名古屋に入って、ずっとセンターバックをやりたいって言っていたんです。そうしたら、得点王を取ったら良いよって」

だから得点を量産したのか、それはもちろんわからない。ただ、もちろん約束は果たされることはなかった。なぜなら、

「FWとしてこのチームに呼んでくれたんで…」

ベレーザ加入後デビュー戦で、圧巻の2ゴール。さすがにもう周りは当分許してくれないだろう。

ただ、それはそれ。ベレーザのFWとして出ているということに対しての責任感は日に日に増している。印象的なのは、デビュー戦で2ゴールを決めながら、反省の弁を口にしていることだ。

「得点できたことは自分にとって大きかったんですけど、90分出させてもらえた中で、それ以外の部分で何もできなかったなっていう感覚が強すぎてモヤモヤした気持ちでいっぱいでした。これまでだったら、FWなので自分の点でチームが勝ったら、めちゃくちゃ嬉しかったです。でもこのチームに来て得点だけが自分の役割ではないので。考えすぎなのかもしれないですけど、この感覚は初めてです」

では彼女の考える理想のFW像とはどのようなものなのか。

「得点取れたらOKっていう感覚もわかるんですけど、でもそれ以外の部分で消えてたら、味方がきついじゃないですか。そういうのはちょっと嫌だなと思って。少しでも味方を助けつつ、得点でチームを勝たせるっていうのが一番の理想形かなって思います」

様々なポジションを経験しているからこそわかる仲間の気持ち。そしてベレーザというチームの存在の大きさ。

前節、神谷のゴールは生まれず0‐1で敗れた。そうした中で今節への意気込みを聞いた。

「前節負けてしまっているので、勝利が絶対必要だと思います。そこで試合に出場させていただけることになれば、得点にはこだわりつつ、それ以外の部分でも少しでも満足できるようなプレーを見せたいです」

西が丘のファン・サポーターの皆さんには、「FW」の神谷千菜の姿をぜひ見てほしい。「次の日」が来る前に。

(写真 近藤篤/WEリーグ)