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2024.08.25 トップ

Player's Column #6 宮原和也

Player's Column

「観る者を魅了する宮原和也が語る"チームファースト"」

「あんまり目立ったりするのは好きじゃない」という。

 

だが、残念ながら本人の思いとは違い、そのプレー、人柄に触れた人たちの多くが、宮原和也の魅力に惹きつけられ、否応なしに注目してしまうのである。

 

一番の魅力は、高い守備力だ。身長172cmと決して上背は大きくはないが、右サイドバックを主戦場に外国籍選手を含めた各国代表クラスの選手が揃う各チームの屈強な攻撃陣を封印。突破を許さず、決定機を阻止する対応力と状況を見て戦えるクレバーさもチーム屈指。「止める」「蹴る」の高い基本技術、ボールを奪取し、そこから奪われない保持力と、城福ヴェルディには欠くことができない存在となっている。

特に昨季はJ2リーグでの戦いだったため、2022年シーズンまでサンフレッチェ広島、名古屋グランパスと、ほぼJ1チーム(2017年のみJ2)でプレーしてきた宮原の存在は圧倒的だった。さらに、対峙相手のレベルが高ければ高いほど能力の高さが発揮され、大いに目立っていた。

また、チームメイトがゴールを奪った際には、誰よりも早く得点選手の元へ駆け寄り祝福する。ゲームハイライトの映像で、ゴールを決めた選手がフォーカスされた瞬間には、高い確率で宮原の笑顔もセットで見られるはずだ。

 

ピッチ外の部分でも、細かな心遣いに溢れている。普段、メディアの前で熱い言葉や感傷的な言葉を話すタイプではない。だが一方で、チームメイト達からの信頼は絶大で、ロッカーでは周りの選手をイジるキャラだという。その真意を尋ねると、「それも年上の役割だと思うので。でも、去年は移籍してきた一年目だったというのが大きかったと思います。東京ヴェルディは若い選手が多くて、僕はもう年齢が上の方だったので、年下の選手が喋りやすいようにという思いもあって、意識して自分からイジったり、先に話しかけるようにはしていました。でも今は、みんな慣れているので、何も意識していることはないです(笑)」

もしかしたら、とても小さなことかもしれない。だが、この“気配り”こそが、新天地のチームワークをより良くすること、また、自らの存在感をチームに印象付けるためにも、非常に重要な働きかけだったに違いない。昨季、「本当に良いチーム」と、東京Vの選手誰もが口にしたほどの環境を作った一因であることは間違いないだろう。

 

そうした人間性は、広島、名古屋で出会った素晴らしい先輩たちの背中を見て築かれてきたものだ。

 

「広島の時は、“プロ”という環境が初めてで、全てが初めて。そこで『プロとはどうあるべきか』ということを学び、名古屋では初めての移籍によって、環境が変わることの難しさ、新しい環境の中に溶け込むことや自分を理解してもらうことの大事さ、その方法などを学びました」

 

サンフレッチェ広島のアカデミーで育ち、ジュニアユース、ユース、そしてトップチーム昇格と、エリートコースを着々と歩んできた。2013年、高校3年生次に、クラブ史上初となる、ユース所属選手としてプロ契約締結。その間、U-15日本代表からU-22日本代表まで、各世代別日本代表に常に選ばれ、将来を嘱望されてもきた。

 

そして2014年にプロデビューを果たしたが、2012年、2013年とリーグ連覇を果たしていた広島の選手層はリーグ屈指。いかに将来性豊かな宮原であっても、高卒一年目の選手がすぐにレギュラーを確保することは決して簡単ではなかった。そのため、出場試合数は2014年4試合、2015年3試合に、2016年13試合にとどまり、「このままでいいのか?」と考えることも増えていく。もちろん、佐藤寿人はじめ、当時ボランチとして起用されていただけに、青山敏弘、森崎和幸など、日本を代表する選手たちと共に日々を過ごすことによって学べたことは多岐にわたる。だが、プロサッカー選手として求めているのは、やはり「出場機会」だ。

2017年、名古屋への期限付き移籍を決断。そこで、当時チームはJ2だったとはいえ、宮原自身はキャリア最多となる41試合の出場を果たす。シーズン通して試合に出続けたのは初めての経験だっただけに、「ここがターニングポイントだった」と振り返る。

 

「名古屋では、試合に出て学ぶことがすごく多かったです。試合に向けての準備や、そこへ向けた普段の過ごし方など、成功も失敗も、いろいろな経験ができ、本当にたくさんのことを学びました。

もちろん、試合に出られない状況の時も、それはそれなりにいろいろな経験や悔しい思いなどをしてきました。それでも、やっぱり試合に出た中で感じられる課題や成長ほど価値のあるものはないと思います。本当に、シーズン通して出続けることの難しさも含め、あの時に学べた経験はすべて今の自分を作ってくれていると思っています」

 

決して順風満帆だけではない。良い時、苦しい時、そうしたいろいろな経験を経たうえで2023年シーズンに東京Vに来たことも、また一つの縁なのだろう。

東京Vは若い選手の多いチームだったからこそ、26歳(移籍加入当時)でも中堅的立場としての立ち居振る舞いが求められたが、まさに「望むところ」だったに違いない。

「年上の自分がだらけていたら、若い選手は『そんな感じでいいんだ』と思うと思う。なので、常に『見られている』ということを意識しながらやっている部分はありますかね」。

「まあ、でも、そんなに強く意識しているわけじゃないでけどね〜」と、軽口でぼかすところがまた、なんとも宮原らしい。そう言いながらも、練習後には特定選手ではなく、いろいろな顔ぶれを引き連れてクラブハウスから出ていく姿を何度も見かける。チームメイトとの情報交換をいかに大切に考えているかの現れと言えよう。

 

そんな宮原だからこそ、東京V在籍2年目の今季。キャンプ時に負った怪我の影響で、ここまで全27試合中19試合出場にとどまっていることが悔しくてたまらない。

 

「あらためて、僕は、プロサッカー選手は試合に出続けることが大事だと思いました。ピッチで自分のパフォーマンスを表現すること。それによってチームを勝利に導けたりすることが、充実感、責任感につながるんだなと思いますね」

 

深澤大輝、昨季のチームメイト・北島祐二(現アビスパ福岡)など、同じ怪我を経験した選手から「完治後も、感覚の違和感は続くよ」とアドバイスをもらっていた中で、やはり助言通りの後遺症に苦しんだ。それでも、先に聞いていたからこそ焦りや過大な不安を抱えることなく、根治を信じて精進し続けることができたのもまた事実だ。

 

その自身にとっての苦境下で、いま、28歳ディフェンダーが最も意識していることが『チーム最優先』の気持ちだという。

 

「2014年に本当の意味での“プロ”人生をスタートさせてから今年で11年目。ここまで長くプロをやっていく中で、一番大事だなと思っていることが、『チームのために』の意識です。その思いがあれば、自ずと良いプレーができると思う」と話す。

 

誰しもが「試合に出たい」と思うなか、今季は途中出場が増えた。そのなかであらためて思うのが、『チームファースト』への想いだ。

 

「途中から出るのは、もちろんいろいろな思いがありますが、役割として、フレッシュな状態だし、スタメンで出ている選手より動かなければいけないというか、チームを助けなければいけない立場なので、そこはものすごく心がけていますね。

その思いは、コロナ禍以降、5人交代制となり、交代選手の価値がゲームへ及ぼす影響の大きさが増したことで、よりそうした思いを強めたのだと宮原はいう。

 

前節の『東京ダービー』は、宮原のプロサッカー選手人生のなかで忘れられない一戦となった。

 

「雰囲気とか素晴らしかったし、ああいうファン・サポーターの人がたくさん入る中でやり続けていきたいなっていう思いが、本当に強く湧いてきました。そのためには、自分がレベルの高い位置にい続けていないといけないと思う。レベルの高いところで、長く活躍したいですね」と、今後の未来を見据える。

 

「目立ちたくない」との言葉とは裏腹に、毎試合伝わってくるハイパフォーマンスとチームメイトへのリスペクトの姿に、観る者はただただ魅了されるばかり。

「チームの勝利のために」をモットーに責任感と献身に燃える男への信頼は、とてつもなく厚い。

<深堀り!>

Q:ヴェルディには、密かに『ボウリング部』があるとの情報を得ました。その中で、千田選手が宮原選手の出席率の高さに「ほぼ皆勤賞」と驚嘆していましたが、事実ですか?(笑)

A:

事実ですね。でも、元々はボウリングが好きだったかと言われたら、そうではないんですよね。ヴェルディに来て、一回参加してみたら、なんか面白いなと思って、それからけっこう予定が合いさえすれば参加していますね。

みんなとコミュニケーションが深められるのももちろんだけど、自分のスコアが良くなっているのもまた面白くて。

ぶっちゃけ、ヴェルディに来て最初にはじめたときはスコアが130とか140とかだったのが、最近は最高スコアが236とかいったりして、だいぶ上手くなったんですよ。もちろん、ぜんぜんダメな時もあるんですけど、1ゲームだけ集中してやって、かなりのスコアを叩き出すことが何回かあるんですよ。

こうやって、オフにはサッカーから完全に離れることも、僕は大事にしています。ずっと考えていると、やっぱり疲れてしまいますし、もしその時に悩んでいたとしたら、考えれば考えるほど、その方向にいっちゃうと思うので。僕は、悩んだ時ほど1回開き直ったりして、リフレッシュして、次に向かうようにしています。

(文 上岡真里江・スポーツライター/写真 近藤篤)

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