NEWSニュース
NEWSニュース
約1年をかけて争うリーグ戦においては、様々なことが起こり得る。
8月7日、ホーム広島戦で0-1の惜敗を喫してから中3日で迎えた前節アウェイ名古屋戦。いつもであれば、この状況からヴェルディらしく粘り強い戦いを見せるところだった。ところが、試合は序盤に苦境を迎える。試合の序盤に主導権を握ったのはヴェルディだったが、7分だった。左サイドを崩され、菊地泰智にゴール前に浮き球を放り込まれると、ボールはディフェンスの裏に抜け出したパトリックへ。最も警戒していた相手のエースは、胸でワントラップから落ち着いてシュートを放つと、マテウスが立ちはだかり勢いを抑える。だが、ボールは大きく弾み、無情にもゴールに収まった。いきなりのビハインドがチームを苦しめ、前半はほとんどチャンスを作ることができないままに終わった。
加えて運にも見放された。後半開始早々の50分、ヴェルディは高い位置でボールを奪いに来た名古屋の攻撃陣を細かいパスワークでかわし、前線の木村勇大にボールを預ける。そこから翁長聖が3人目の動きで前線に飛び出すと、その翁長にボールが入る。そこからワンタッチで、今度は山田楓喜が前線に飛び出してくる。ボールを持った山田楓喜は得意の左足から目の覚めるようなシュートを放つと、名手ランゲラックが一歩も動けないままゴールに突き刺さった。同点、かと思われたがこれはVARの介入によりゴールが認められることはなかった。67分には谷口栄斗のクロスに、染野唯月が上手く合わせたものの、今度はランゲラックのビッグーセーブに阻まれてゴールを奪うことができなかった。結果、名古屋に前後半合わせて3本しかシュートを打たれなかったものの、そのうちの1本を決められての敗戦だった。
リーグ26試合目にして、今季初の連敗。ただ、チームの雰囲気が沈んでいるのかと言えば、そうではない。日々の練習後、選手たちは疲れた表情を浮かべつつも、見せるのはやはり充実した表情だ。「負けたとしても、立ち返るものがある」。選手たちは口々にそう言う。これまで積み上げたものを高めていくことこそが次につながることを全員が理解している。2試合連続でノーゴールとなっているが、目を向けるのは攻撃ではなくむしろ守備の部分だ。「得点を取れなくても、取られなかったら勝点1は積み上げられる。攻撃は良いときは良いけど、取れないときは取れない」(翁長)。シーズンの前半戦は、むしろ攻撃の部分が脚光を浴びていた。しかし、それは長いシーズンにおいて常に好調を続けられるわけではない。むしろ、その土台の部分、ヴェルディが誇る堅い守備をもう一度見直すきっかけとしたい。
一方FC東京は前節、川崎Fとの「多摩川クラシコ」に臨んだ。序盤からリズムを掴んだのはFC東京だった。5分には高宇洋のクロスにファーサイドから遠藤渓太が頭で合わせるが、わずかにゴール左に外れる。さらに11分、再び右サイドからの攻撃で、安斎颯馬のグラウンダーのクロスにファーから遠藤が飛び込むが、これもゴールならず。1分後にはゴールに抜けたボールに反応したディエゴ オリヴェイラがディフェンスの裏からシュートを放つが、シュートはチョン ソンリョンの守備範囲に終わった。圧倒的なペースで攻め続けたFC東京だったが、その3分後だった。ボックス内でマルシーニョがボールを持つと、相手ディフェンスが飛び込めない独特の間合いでキープ。少し揺さぶりノーステップであげたクロスを山田新が頭で押し込み、先に得点が入ったのは川崎Fの方だった。さらに20分、今度は右サイドのファンウェルメスケルケン際のクロスに、再び山田が頭で合わせて一気に突き放す。そこからFC東京は猛攻を仕掛け、後半に入っても相手ゴールを脅かしていたが72分、三浦颯太のFKからパリオリンピック帰りの高井幸大に押し込まれて3失点。FC東京は最後まで1点を奪いに行くも無得点で試合を終えた。
同じスタジアムを本拠地とするチーム同士の対戦ということもあり、ファン・サポーターも含めて熱くなることは間違いないだろう。選手の中でも、例えば綱島悠斗のようにアカデミーから育った選手たちは「FC東京だけには負けるな」と言われて育ったこともあり、特別な一戦と捉える選手もいる。ただ、一方で冷静な感情も必要だ。
「あと12試合、すべてが大事。特にこの試合に焦点を置くということはない。もちろん(連敗後の試合で)キーポイントになると思うが、ここでもしコケたらどうにもならないかと言えばそうでもない。この試合も0-0から、11人対11人で始まって90分を戦う。それは他の試合と変わらない」
と話すのは、今季加入しフィールドプレイヤーでは2番目に多い25試合に出場する翁長。大事になるのはバランスだろう。熱く、しかし冷静に。味スタで行われる“アウェイ”FC東京戦。前のめりにならず、しかし冷めすぎず。普段通りの力を発揮して勝点3を手にするのは、ヴェルディでありたい。
(写真 近藤篤)