日本瓦斯株式会社
株式会社ミロク情報サービス
株式会社H&K
ATHLETA
ゼビオグループ

NEWSニュース

2023.08.25 トップ

Match Preview & Column #16

Match Preview

『ゴールの重要性は理解している。連係を深め得点し勝利を!』

前回のホームゲーム、第29節清水エスパルス戦で痛恨の黒星を喫したものの、前々節ブラウブリッツ秋田戦、前節いわきFC戦と、アウェイ2試合を1勝1分で終え、勝ち点4を積んでホームに戻ってきた。

自動昇格を狙う東京ヴェルディとしては、これ以上上位に離されないために何としても2連勝を飾りたかったところだが、いわき戦ではなかなか攻撃の糸口が見つけられず、スコアレスドローに終わった。

28節からの4試合で挙げた得点は「1」点だけに、どれだけ攻撃面での改善が見られるかが今節の大きな注目ポイントとなる。

ゴールの重要性は、チーム全員が各々十分理解している。今週の練習でも、攻撃も守備も常に高い位置でサッカーをするという今季のヴェルディの戦い方をあらためて徹底した上で、さらに必要に応じて、得点のためにリスクをかけていくシーンも見られた。

齋藤功佑は「連係面をもっと高める必要がある」と課題を口にする。

前線には、染野唯月、中原輝、長谷川竜也、新井悠太など、新加入選手が多く並ぶが、「戦術理解が高い選手が揃っているので、思い描いている絵はそこまで違わない。練習や試合を重ねることで、もっともっと良くなると思うし、アイデアも増えてくると思う」と、手応えを感じつつ、一方で、改善点としては、「作りのところ。前の選手にどういうボールを入れられるか。ここ最近の試合では、(体勢などが)苦しい状況で入ってくることが多いので、なかなか連係が出せていないところがある。そこは、後ろのボールを入れる選手たちともしっかりと話して、お互いが要求しあって、それぞれが自分の得意なプレーを発揮できるようにしたい」と話した。

齋藤自身も、前節の試合後や今週のオフ明けの練習で、染野と本気で意見をぶつけ合ったという。

「ソメも思っているところがあったと思う。お互い思っていることを言えたのは、とてもいい機会だったと思う。これからも、どんどん思ったことは口に出して、良い関係を作っていきたい」。

チームが良くなるためのピッチでの言い合いは大歓迎だと齋藤。それがどんな形で表れるのか。一目置いてみたい。



また、前節がヴェルディでのデビュー戦となった長谷川も、感じたことは少なくなかったようだ。

「1つ1つの精度だったり、チームのコンセプトとして正しい場所に入り込むとか、自信を持ってボールを持つとか、簡単に失わない、良い状況で仲間にパスを供給するなど、やるべきことはたくさんあると感じました。点が取れないということは、点が取れないような動き、ボールの質、入るべきところに入れていないなど、理由がたくさんあるからだと思います。その理由を1つずつ潰していくことでしか点は取れない。気持ちだけでは点はとれないので、そういうところを練習から意識していきたい」。

全体練習後も、ポジションの近いいろいろな選手と身振り手振りで、積極的に連係を高めようと対話を測る長谷川の姿があった。

他の選手の成長共々、新加入選手との連係の深まり含め、これからどんなチームになっていくのか楽しみだ。

今節の相手、ファジアーノ岡山の印象は、「センターバックが堅くて、FWに良い選手がいて、手堅いサッカーをするイメージ」だと、多くの選手が声を揃える。加えて「去年から木山隆之監督になったので、さらにその色が強くなったなと感じます」とは奈良輪雄太だ。その奈良輪に岡山攻略のポイントを尋ねると、次のように返ってきた。

「攻撃でも守備でも、躍動感のあるプレーをすることだと思います。特にホームではずっと勝てていません。ホームゲームに関しては、この数ヶ月、僕はスタンドで見る機会が本当に多かったので、勝てていないからこそそういうふうに見えてしまうのかもしれないですが、どうせ勝てないなら、ホームなんだから、もっとアグレッシブに戦うべきだとは、見ててずっと思っていました。昇格するためには、ホームゲームは絶対に落としてはいけないと思う。試合に出る以上は、その気持ちをプレーの熱量でしっかりと表現しなければいけないと思います」。

これからは、内容はもちろんだが、結果が何よりも求められてくる。「昇格ラインに最大に必要なのは勝ち点で、試合数かける2倍の勝ち点、失点は試合数以下、得点は試合数の1.5倍ぐらいというのが目安になってくると思う」とも奈良輪。

現状、失点数は昇格ラインだが、得点数が足りていないのは一目瞭然だ。ゴールを生むためにも必要となる連係を深めるためにも、今一度チームの一体感をより強固なものとし、一丸となって悲願達成へ挑みたい。

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・東京ヴェルディオフィシャル)

Player's Column

『ヴェルディでこそ際立つ奈良輪雄太という選手の価値とは』

いつ試合に起用しても、確実に期待通りのパフォーマンスで応えてくれる。奈良輪雄太ほど信頼のおける選手はそう多くはない。

 

象徴的だったのが712日の天皇杯・FC東京戦だ。611J2リーグ第20節ファジアーノ岡山戦以来、約1ヶ月ぶりの出場となったが、J1チーム相手にも豊富な運動量をベースとしたプレーで健在ぶりを発揮。

 

危機を察知し要所で潰し、機を見てサイドを駆け上がり攻撃参加するなど、120分間ピッチで躍動し続けた。若い選手でも疲弊し足を攣る選手が多い中で、829日で36歳を迎える奈良輪の走力は量も質もほとんど落ちることがなく、その姿は異彩を放っていた。

 

それはまさに、奈良輪の並々ならぬ不断の努力と、誰よりも厳しい自問自答の日々が作り上げたものである。



奈良輪には、決して揺るがない信念がある。

 

『普段の練習が、試合のピッチで全て出る』

 

常に己に言い聞かせてきた言葉だが、昨季、練習へのスタンスを変えたことで、さらにその意味は深みを増しているという。

 

きっかけは2020年。若い頃から続けてきた練習量、練習内容をこなしていた中で、全治約2ヶ月の大怪我を負った。

 

「何かを変えなければいけないな」と思っている時、周囲からも「もうベテランの域に達してるんだから、もう少し自分の中でうまくやりなよ」とアドバイスを受け、練習への取り組み方を再考させられた。

 

「最初は、練習をうまくペースダウンするという意味なんだろな」と思ったという。

 

だが、そうせざるを得ないことが、妥協を許さぬ奈良輪の性格的にはどうしても納得ができなかった。さらに、東京ヴェルディというクラブに来てから強く感じているのが、「練習で100%やれないと、試合にも出られない」ということ。

 

「練習をやれないことが気持ち悪くて仕方がなくて。だったら、もう引退しようとすら、2021年は本気で思っていました。でも、最終的には続けると決意した時に、じゃあ続けるためにはどうするべきか?と考えた結果、『練習では絶対に手を抜かない』が答えでした。それだけは自分の中で変えてはいけないと、心に決めています」。

 

だが、口で言うほど、それは決して簡単なことではない。練習で100%のパフォーマンスを出すという目標に対して、どう逆算していくか。

 

「その落とし所をどうしたらいいのか、本当にここ数年自分の中での大きな課題なんです」。

 

そして、昨季から決めたのが、「全体練習後の自主練は一切やらない」というスタンスだった。

 

「もちろん、使われる立場の選手としては、練習もきちんとやる、練習後も個人の課題を見つけて、個人の能力を上げるために練習しているという方が見栄えがいいことは理解しています。でも、(年齢や肉体的に)自分は、その全てはもうできないと考えた時に、一番大事にしているところはどこか?ということを考えました」。

 

ただ、自主練をやらないからといって、奈良輪に対して「人より練習量が足りない」などと思う人は、誰一人いないだろう。

 

毎朝、誰よりも早くクラブハウスに到着し、入念なストレッチやケアを行い、その日の練習に100%で挑むための準備を決して怠らない。例えどんなに長い間、試合メンバーに選ばれなかったとしても、その姿勢には一切の揺るぎがない。

 

練習後も、ピッチ上での練習はせずとも、トレーニングで全力を出し尽くした体を労り、ケアやマッサージで疲れをとり、また明日の練習へ向けて備える。

 

つまり「何でも取り入れよう」「人よりもたくさん練習しよう」の時期を卒業し、次は「今、自分のできることにフォーカスし、それに全力を注ぐ」という段階にシフトしたという変化ということではないだろうか。

 

以前から、常に「引退」の二文字は頭にあると口にしている奈良輪だが、だからこそ、どんなに辛いことがあっても、「サッカーは、それを乗り越える価値のあるものだ」と話す。

 

「その分、試合に出た時、試合で勝った時の喜びというのは、おそらくサッカーを辞めた後には、もう二度と同じぐらいの感動や心を動かされる瞬間はないのかなと思うので、今の時間を大切にしたいなと思います」。

 

これほどまでの想いを持つ選手が、自らサッカーで楽をしようと思ったり、自分自身を誤魔化したりできるはずがないことは言うまでもない。そのことはもう、監督・コーチ・スタッフ、チームメイト、さらにはファン・サポーターも含め、全員が十分すぎるほど理解しているはずだ。

 

だからこそ、奈良輪がゲームメンバーに入れば喜ぶ人は多い。さらに、日頃の練習で磨き上げたパフォーマンスを存分に発揮してくれるだろうとの期待にも、常に応えてくれるのだから、信頼度は非常に高い。その要因を、奈良輪本人は次のように話す。

 

「久しぶりに試合に出ることが簡単か、難しいかといったら、確実に難しい。けれど、試合に出続けることも難しいと思います。結局はどんな状況でもピッチで結果を出すということは簡単なことではないんです。なので、久しぶりだから難しいなとか、試合にずっと出てるから大変だとか、そっちに思考を持っていかず、出るための準備を常にすることで、出た時に自信を持ってプレーするというポジティブな側面でいつも捉えるようにしています。ずっと言っている、『練習を100%でやる』というスタンスでやっていると、東京ダービーの時のように、例え数ヶ月試合に出ていなくても、パッと試合に出た時に、長い時間でも最後まで自信を持ってプレーできるんです。『日々これだけやっているんだから、試合でもしっかりと結果を出せるでしょ』というマインドで毎回ピッチに立てるか。それが本当にすべてなんです」。

 

それだけの自信とプライドを持ってプレーしているからこそ、気がつくと背番号『24』に目が惹きつけられるのだろう。

 

「子供の頃の夢で、それが目標に変わってプロサッカー選手になれました。サッカーが仕事になって、お金をもらえて、あんなに大きなスタジアムでたくさんの人が見てくれて。そんなの、頑張るに決まっているじゃないですか。じゃあ、『頑張るんだったら何を?』といった時に、自分自身ももちろんですが、観ている人を感動させたいと思うんです。観ている人が感激したり、鳥肌が立ったり、涙を流すときというのは、僕的には、パスを100本通してゴールを決めることよりも、足が攣っていても走るとか、体を張って相手の攻撃を止めるとか、そういう当たり前のところだと思っていて。

 

その当たり前のことをやるのって、決して簡単なことではないですが、どうせやるんだったら人を感動させることがしたいなと思っています。そして、ヴェルディに来てここ数年、いろいろな順位も経験しましたし、ギリギリのところで昇格を逃した時もありましたが、最後、それを掴むか掴まないかの差はそこに尽きると、僕は本気で思っています」。

 

人に強く寄せる、球際の強さ、最後まで走る、カバーへのスピードなど、2018年にヴェルディに来てから、奈良輪は常に「このクラブには、そうした基本的なところが足りない」と苦言を呈してきた。そして、昨季途中から城福浩監督体制になり、在籍7年目を迎えている今、確実な変化を実感してるという。

 

「全員が戦える集団になってきたかなと思います。ハードワークとか、体を張るとか、ベースのところが、特にこのJ2というリーグ戦を勝ち抜いていくためには一番だと思っているので、城福監督になって、そのベースのところがしっかりとできてきているんじゃないかなと感じています。このベースがあるから大敗もしないし、チームが大きく連敗をすることもない。この順位にいられる要因なのかなと思っています」。

 

ただ、そこで満足など絶対にしない。勝ち取るべきは、まだまだその1つも2つも先であり、もっと言えば、勝ち取ってからの舞台での勝負が最大の目標なのだ。

 

ここ2試合、スタメン出場が続いているが、心身ともに絶好調だ。

 

「正直、試合に出てる方がコンディションがいいんです。試合に出てる方が、毎日練習しているよりもよっぽど楽なので。それぐらい、自分の中で練習では追い込んでいますし、試合に出ている方が充実感があります。心の面でも体の面でも、試合をやっている方が楽ですよ(笑)」

 

若い選手の多いヴェルディの中に、奈良輪雄太という存在がいてくれることの価値の大きさを、あらためて感じずにはいられない。

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真 松田杏子)

カテゴリー

過去の記事