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2023.05.12 トップ

Match Preview & Column #8

Match Preview FC町田ゼルビア戦

『自分たちがやろうとしていることを貫く一戦』

前節は大雨が降りしきる中、5連勝中と好調だったV・ファーレン長崎に勝利した。内容的にも、前線からの守備とできるだけ長い時間相手陣内でプレーするという自分たちの目指す展開が多く見られ、試合後には城福浩監督も「ほぼほぼ我々のプラン通りだったと思います」と頷いた。「雨だったので、ピッチ状況で、選手の思考が統一しやすかったところはあると思います」と前置きした上で指揮官は、「天候やピッチ状態にかかわらずあれぐらい相手を押し込むという意味では、基準になる試合だった」と話し、今後毎試合ベースとして求めたい内容だと位置付けた。

ただ、反省点がなかったわけではない。

終盤、決定的なシーンを作られ、GKマテウスの好セーブに助けられたシーンも何度かあった。前節に限らず、その前のジュビロ磐田戦でも見られただけに、ゲームをどう閉めるかが1つの大きな課題でもあるとマテウスは力説する。

「いつもみんなには言っているのですが、自分たちはセットプレーの守備も悪くないですし、すごくいい形で守れている。でも、終盤で注意力が欠けたり集中が切れてしまったりしているので、しっかりとチーム全体で締め直さないといけない」。

今節も、交代メンバーを含め、ピッチに立った全員が最大限の力を出し尽くし、チームとして90分間強度の落ちない戦いができるかが最大のテーマとなる。

相手となるFC町田ゼルビアは、黒田剛新監督の下、9勝3分2敗の勝点30で現在首位を走っている。ミッチェル デューク、エリキという強力な助っ人外国籍選手二人に加え、得点力の高い荒木駿太をFWに擁し、さらに平河悠、髙橋大悟などサイドにはスピードと打開力のある選手が揃っており、攻撃力は非常に高い。加えて、より着目すべきはリーグトップを誇る守備力だ。ここまでの失点数7は、東京ヴェルディを唯一上回っているチームだ。町田の堅守について、城福監督は次のように話した。

「あの中央の守備は簡単には破れない。失点数が少ないというのは、ディフェンス陣だけでやれるわけではない。チーム全体の意識の高さが失点数に現れている」。

失点を少なくすることへのこだわりを持つ城福監督は、いかにその実現が難しいかを熟知している。それだけに、町田へのリスペクトの思いは非常に強い。得点20で並び、失点数も1点差と、攻守ともほぼ互角の数字を残す相手をいかに上回るか。両指揮官の手腕は非常に見どころとなる。

黒田監督は昨季まで強豪・青森山田高校の監督を務めていた教え子であるバスケス バイロンは並々ならぬ思いを抱いている。

「黒田監督への恩返しの試合になりますが、絶対に負けたくない。勝てるチャンスは必ずあると思うので、長崎戦のように強い気持ちで戦いたいと思います」と鼻息は荒い。恩師から学んだ「勝負の神は細部に宿る」の教え通り、全てのプレーに全集中力を注ぎ、結果で成長を証明してみせる。

また、町田を古巣とする平智広も密かに熱い思いをたぎらせている。

「もう8年も前なので、知っている選手もほぼいませんが、お世話になったクラブ。僕にとっては思い入れのある特別なチームなので、いい試合にしたい」。

いつも以上にリスペクトをもって挑む。

相手は首位だが、これまで同様「自分たちのサッカーを貫くことが一番の町田対策」と指揮官。「強い相手に、どれだけ今季自分たちがやろうとしていることが貫けるのか。残りのシーズン三分の二、どのようにこの山を登っていけるのか、自分たち自身も肌で感じたい。少なくとも腰が引けた試合だけはしたくない」。

515日にJリーグは30周年を迎える。その開幕戦を飾ったクラブを受け継ぐ身としての誇りを胸に、勇猛果敢な戦いを見せてくれることを期待したい。


文・上岡真里江 スポーツライター/写真・近藤篤)

Player's Column

『綱島悠斗は、なぜヴェルディを選んだのか。その想いとは』

「おまえらがこのチームのトップに立って、J1へ連れていけ!」

 

ジュニア時代から、東京ヴェルディのアカデミーで出会った指導者全てにそう言われて育った。その言葉を綱島悠斗は片時も忘れたことはない。ユースからトップチームへ昇格できず、国士舘大学で過ごした四年間もずっとだ。そして、念願叶えプロとして東京ヴェルディへ戻ってきた今年、その想いはより一層強いものとなっている。

 

アカデミー時代はセンターバックが主なポジションだったが、その足元の巧みさとボール奪取力、展開力から大学時代はボランチにコンバートされ、幅を広げた。テクニックのある188cmの大型ボランチだけに、卒業後の選択肢は多岐に渡ったが、それでもヴェルディを選んだのは「ヴェルディをJ1に昇格させたい」その一心のみだ。

 

「正直、22歳という年齢的にもいろいろ考えるところはありました。でも、自分の中ではヴェルディは特別なチーム。ここでプレーするのが憧れでしたし、味の素スタジアムでプレーすることにも憧れていたので、周りになんと言われようが決めていました。ヴェルディに来たからには、来て満足するのではなくて、しっかりと結果を出さなければいけないと常に考えています。J1に上げる、J2で優勝させるために来たので、その自覚と責任感は常に高くもってやっています」

 

だからこそ、今の自分が歯がゆいのだという。

 

4節徳島戦でデビューを飾り、第9節秋田戦からは先発出場が続いている。その初スタメン起用となった秋田戦では、夢だった味の素スタジアムでプロ初ゴールも決め、試合数を重ねるごとにメキメキと頭角を現し始めている。

 

それでも、「今年ヴェルディに入ってからを振り返って、自分の中で納得できた試合がないんですよね」と言いながら精悍な表情を歪ませる。

 

自身の中で課題は明確だ。「ポジショニングは最近だんだんわかってきたので、その中で技術だったり、攻守に貢献するプレーというのは自分が求められているところでもあるので、相手のFWの選手に仕事をさせなかったり、自分のところから前線にパスを供給できるようにという、チームの中での大事なプレーが、もっと増やせるようにならないといけない」。

 

特に前節は、自身の本職であるアンカーで起用されただけに、「常にボールに関わってないと、相手の守備もやりやすくなってしまう。自分がそこで顔を出して受けることによって、相手の守備をうまくハマらせないためのポジションは常に意識していました。さらに、経過時間とか、相手の出方とかを全部把握してプレーしなければいけないと感じました」。

 

一列前のインサイドハーフでの起用も多く、ポジショニングに加え、クロスへ飛び込むことやミドルシュートの意識など、攻撃参加の部分についてもこれまで以上に求められている。

 

そうした中、あらためて気付かされているのが自身に宿るヴェルディ・プライドだ。

 

「自分の中でのヴェルディらしいというのは、相手の逆を突くプレーだったり、自分たちがずっと主導権を握りながらゲームを展開するところ。奪われたらすぐに奪い返す、相手にボールを持たれているのはプライドが許さない。ずっとボールを支配して、奪って、相手の逆を突いてという、常に常に相手の一歩先を行くようなスタイルがヴェルディだなと思っています」。



ボールを奪われたらすぐに奪い返す。それは、ある意味、城福監督が常に求め続けているリカバリー・パワーにも通ずるものがあると言えよう。

 

「現代サッカーではちょっと難しいとはいえ、僕は相手にボールを握られているのがすごく悔しくて、嫌いで。すぐに奪い返して、もうずっと自分たちで回したりとかゴールに迫りたいという気持ちが強い」。

 

ただ一方で、「ゲームの展開などによっては、ちょっと持たせた方がいいとか、奪いにいって入れ替わって失点するのであれば、あえて相手に持たせてることも必要」など、そのゲーム展開の中で、自分の思いとは別の判断をしなければならないことの難しさを痛感しているという。

 

プロとして、チームを勝たせられる選手への登竜門と捉え、さらなる成長が期待される。城福監督も、「まだまだ成長の途上の選手。ギリギリまで判断を変えて、できるだけ前にパスをするとか、プランを持ってボールを呼び込みに行くとか、ポジションを変えて相手を混乱させるなど、細かなところをもっともっと学んで欲しい。ただ、あれだけの大型の選手が、あれだけ動けて、ハンティング力もあって、ボールを持てばダイナミックな展開力もあるという点はこれからも本当に大事にして欲しい。彼は学ぶ力がすごく強いので、技術と判断を学んでいけば、本当にスケールの大きなボランチの選手になっていくと思います」と、将来性に大きな期待を寄せる。

 

J1昇格、J2優勝のために来たと言っても、口で言うのはすごく簡単です。でも、実際に実現させるのは本当に難しいことです。だからこそ、口だけにならないように、そこへの強い覚悟を行動やプレーで示していきたいと思っています。ファン、サポーターの方には、僕のボール奪取力や中盤で受けての展開力というのも見てもらいたいですし、自分のストロングである持ち運び部分もまだなかなか見せられていないので、そういった、“違い”を作るようなプレーにも期待してほしいです」。

 

成長著しい逸材の躍動に乞うご期待!

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・近藤篤)