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Match Preview ブラウブリッツ秋田戦
前節の清水エスパルス戦で1-2と敗れ、第3節から続いていた連続無失点、第4節からの連勝がストップした。ただ、記録中も城福浩監督は「無失点や連勝は、いつかは途切れるもの」と選手に言っていたこともあり、前半40分に6試合ぶりにゴールを破られても、誰一人ヘッドダウンした選手はいなかった。
「ハーフタイムでも、選手たちが『ついにこういう時(失点してしまった)がきた。今こそ自分たちの力を示すんだ』と声を掛け合っている声を聞きました。決してネガティブに捉えていませんでした(城福監督)」。
敗戦という結果も、指揮官はじめ、選手みな、「この早い時期に、プレッシャーの強度、一人一人の個の能力が高いJ1クラスの清水とやれたことで、“J1の基準”が明確になったことは非常に勉強になった」と声を揃える。
気持ちを切り替え、挑む今節は何よりもまず「連敗しないこと」が最大のテーマとなる。対戦相手のブラウブリッツ秋田は、現在4勝3分1敗、勝点15の成績で東京ヴェルディの3位に続き4位につけている。また、失点2はリーグトップを誇っており、守備が非常に堅いチームである。
城福監督は、その印象について次のように話した。
「メンバーが多く変わった中でも秋田のやり方を早々にチームとして徹底してできているのは、本当にリスペクトすべきだと思います。守備は非常に硬いですし、攻撃も極めてシンプルですが、ただ、それを徹底することがいかにチームとして強固なものを生むかを、秋田は示していると思う」と、心からの敬意を表す。
そして、その上で「おそらく、どんな相手に対しても秋田のやり方は変わらないと思いますし、それに対して我々も彼らのストロングはリスペクトしますが、彼らの土俵で戦うつもりはありません」とも東京V指揮官。「いかに自分たちの土俵に持っていくか」を今季の鍵とした。
DF平智広も、「秋田はセットプレーも強いですし、ロングボールをシンプルに使って強さを生かした戦い方をする印象。より局面や球際の部分、1対1の戦いが多くなるのことは意識しています。ロングスローもあるし、ゴール前の迫力もある。なので、セットプレーも含め、何回も自陣のペナルティーエリア内にボールを入れられてしまうと、失点につながる場面も多くなるので、そこは注意したい」と警戒を強めている。
また、GKマテウスも、前節は清水にCK14本、FK13本を与えた点を今節への課題として指摘。「いらないファウル、CKの数は少なくしないと、失点のリスクはどうしても高くなってしまう。ただ、だからといって相手に合わせるのではなく、自分たちのスタイルを貫くことがさらに大事になる。自分たちがゲームをコントロールして試合をしていかないと、いい結果はついてこない」と、不用意にセットプレーを与えないようにしつつ、攻撃面では自分たちが主導権を握る戦いを強く求めていく姿勢だ。
仕切り直しの大事な一戦。林尚輝は『原点回帰』を掲げる。「今まで勝ってきていた中で、どこか、自分たちがやろうとしたサッカー以上に、相手がどうくるかを考えてしまっていたところが多少あったのかなとは思います。なので、もう一度『球際』とか『切り替えを早く』『前に進めること』など、自分たちのやるべきことっていうことを明確にしてそれを発揮することで、またいい戦いができると思います」。
1つの敗戦を、「この経験ができたからこそ、またチームは強くなれる」と全員で受け止める城福ヴェルディ。一段とタフさを増した闘いを、今節も見せてくれるだろう。
(文・上岡真里江/写真・松田杏子)
Player's Column
昨シーズンの大半を、開幕前に負ったアキレス腱断裂という大怪我の治療とリハビリに費やした阪野豊史。昨年8月21日(第32節)でリーグ戦復帰を果たしてからも、慎重に慎重に、それでも“今”できる最大限を積み重ね、完全復活への歩みを続けてきた。そして、ケガを負ってから約1年3ヶ月が経ち、ここにきてようやく自身が納得できる状態に戻ってきたという。
「だいぶ試合に絡めるようになってきて、筋力的には80〜90%、ゲーム感覚的には100%戻ってきています」。
春季キャンプをフルでこなし、状態が上がってきている手応えから、今季開幕を前に頼もしい言葉を口にしていた。
「これまでのキャリアでは、ずっと試合に絡んできた中で得点を挙げてきました。なので、試合に絡めればたくさん点を取る自信はあります」。
実際、状態の良さは出場するたびに示している。特に自身今季初ゴールとなった第5節藤枝戦では、齋藤功佑の全速力でのドリブル突破に追走し、その切り返しからのパスに詰め、フリーで受けて冷静に決めた1点目、バスケス・バイロンからのクロスにピンポイントで合わせた2点目と、いずれも持ち味を発揮しての2ゴールで存在感を猛アピールした。そして、その価値は個人にとどまらない。藤枝戦後、多くの選手が「FWのトヨくんが決めてくれると、チームが活気づく」と、我が事のように喜んでいた。それほどまでに、チームにとっても背番号『11』の決めるゴールの意義は大きいのである。
当然、阪野自身もFWとして自身のゴールがチームにもたらす影響力は十分理解している。
藤枝戦後、体を張ってボールを収めて起点となり、チャンスメイクでも大きく貢献しているが、やはり、最も求められている“ゴール”という結果が出せていないだけに決して納得はしていない。
また、ここ3試合、5ゴールはいずれも守備的選手が得点を挙げている。その点に関して、城福浩監督は「前線からのハードワークがあるからこそ、DFの選手はかなり方向づけしてもらった中でボールを回収できています。その結果、DF陣がフレッシュな状態でFKやCKの時や、流れの中でもその(得点チャンスの)ポイントに入っていけるという部分があります」と、前線選手の影の貢献度を讃えている。
しかし阪野は決してそこに甘んじることはない。
「おっしゃるとおり、調子のいいチームというのはいろいろな選手が得点できるイメージはあります。ただ、僕はFWの選手として、『それだからいい』ってなってはいけないと思う。点を取るのが一番の仕事だと思っているので、チームが勝てていることは何より嬉しいですが、僕以外の前線の選手も含め、どうしたらもっと決められるかというのを常に突き詰めてやっていかなければいけないと思います」。
得点意欲は誰よりも強い。
さらに、守備面での貢献度もとてつもなく大きい。チームは前節までの8試合で失点3と、リーグ3位の少ない失点数を誇っているが、その要因を「前線の選手から、全員が誰一人抜くことなくボールを奪いに行けているから」とチームの誰もが認識している中で、最前線の阪野も非常に高い意識を持ってファースト・ディフェンダーとしてのタスクに従事している。
「ただセンターバックに強くプレッシャーに行くのって、マンマークで見ればいいだけなので、意外と楽なんです。一見、『激しくいけてるな』と思うけど、実は間を消してなかったりすると、意外とチームのためになっていない。
なので、僕が今意識していることは、ボランチを消しながら、なおかつセンターバックにもしっかり出ていくこと。ボランチを消すのって、横に移動しないと消せないのですが、それだけを守るのであれば横に動くだけだから案外楽で、負荷もないんです。けど、さらにセンターバックに出て行かなければいけないとなると、縦にも動かなければいけなくて、なおかつプレッシャーに行ってる間に、後ろでボランチも消さなきゃいけないとなると、すごくきついんです。頭も使いますし、たぶん、みなさんが見て感じている以上に走っていると思います(笑)」。
そしてそれは、チームの3本指に入る走行距離としてしっかりと表れている。
それほどまでに守備にも労力を費やせるのは、チームの勝利のため。そして「まだまだ成長したい」というあくなき向上心からにほかならない。
「守備は100%というか、もう120%ぐらいやっていますが、それはこのチームで試合に出るためにはマストだと思っているからです。ただ、それをやってるからいいでしょというわけでもない。今のヴェルディで試合に出て、さらに上を目指していくには、守備を100%、120%でやって負荷がかかった中で、体に乳酸がたまった状況でどれだけボールをコントロールできて、正確なプレーができて、攻撃でさらにクオリティを出していくかを追求していかなければいけないと思っていて、今はそれをテーマに頑張っています」。
今、自分のできること、やるべきことを明確に理解し、それに対して決して怠らず、全力を注げる芯の強さを持つ男だけに、昨季の大怪我も必ずや自らの学びとしているはず。苦境を乗り越え、完全復活を遂げたこれからの阪野の進化に期待してやまない。
(文・上岡真里江/写真・近藤篤)