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2023.03.24 トップ

Match Preview & Column #3

Match Preview vs ロアッソ熊本

『攻守において相手よりもアグレッシブな姿勢を』

開幕から得点力不足を課題としてきたなか、前節の藤枝MYFC戦では大量5得点を奪う大勝を果たした。すべて流れからの得点であったこと、また、得点者も阪野豊史、齋藤功佑、北島祐二と、FWの選手や新加入選手という、チームがより一層勢いづく要素が詰まっていたという意味でも、非常に大きな勝利だったと言える。

さらに収穫だったのが、無失点で終えられたことだ。「点差が開いてしまうと、難しい展開になりやすいのですが、チーム全体で『絶対にやられない』という意識を90分間出せていたのでよかった」と、DF平智広も価値の大きさを改めて噛み締める。

快勝して迎える第6節、「手綱を引き締めてやろう」との城福浩監督の一声のもと、気持ちを切り替えてロアッソ熊本に挑む。

昨季、東京Vは熊本に2敗を喫しており、是が非でもリベンジを果たしたいところだ。熊本は複数の主力選手がチームを去り、昨季とはメンバーが変わってはいるが、名将・大木武監督のスタイルは変わらない。「たぶん、ボールを持ってリズムを作ってくるチームなので、自分たちは回されることを駄目なことだと思わず、『回されても問題ない』『別にやられなきゃいい』ぐらいのメンタルを持ちながら守備ができれば良いと思う」と齋藤功佑。「自分たちが大事にしているハードワークの部分を続けながら、相手のストロングを消せたら、おのずと勝てると思っています」と、これまで通り固い守備から流れを作り、ハイライン、ハイプレスからボールを奪って攻撃を仕掛ける姿勢を貫くことの重要性を口にした。

また、熊本は切り替えの早さも強みである。東京Vも『リカバリー・パワー』を合言葉に切り替えのスピードと強度には徹底的にこだわっているだけに、どちらが上回るかにも注目だ。

前節5得点を挙げたが、選手たちは誰一人楽観視していない。齋藤もその一人である。「もちろん、たくさん点が取れたことへのポジティブな感覚は大事にしたいですが、そんなに浅はかなものではないということをしっかりと理解して、一喜一憂せず、毎試合毎試合きちんと取りくんでもっともっと成長したい。そして、もっと自分の良さを生かせたり、自分が結果を出せるようになってきたら、さらに勝点3が積み上がっていくと思う」と、チームの攻撃面での上積みのためには、自身のより一層のレベルアップが必要だと自らに言い聞かせた。

3試合ぶりのホームゲームに向け、指揮官はファン・サポーターに約束する。「まずは相手よりはアグレッシブな姿勢を見せなければいけないと思っています。それは、上手くやるとかミスをしないとかではなく、常にボールをハンティングしに行く、常に奪ったらゴールを目指す姿勢です。我々のDFラインが相手のFWと並走して走って守るというシーンは、むしろ大歓迎。それぐらい我々は前に(ハイライン、ハイプレス)かけて、攻守において90分間アグレッシブに戦うことを、来場してくださったみなさんにお見せしたいと思います」。

交代選手を含め、メンバー全員が持てる力の全てを出し切り、勝点3を奪いにいく。

(文 上岡真里江・スポーツライター/写真 松田杏子)

Player's Column

『河村慶人は誰よりも熱く“仲間”のために闘う』

開幕戦先発出場を勝ち取り、FWでは唯一、ここまでの5試合すべてに出場している河村慶人。その圧倒的な走力と泥臭さは、前線からの激しいプレス、球際の強度、切り替えのスピードを根幹とする城福浩監督のサッカーに欠くことのできない存在となっている。

 

河村本人も「運動量の部分では、本当に誰にも負けない自信があります。城福監督もよく、『走りの面では調子の良し悪し関係なく、絶対に走れる』とおっしゃっているのでいるのですが、本当にその通りだと思っています。走ってチームを助けられれば、必ず自分にもチャンスが来ると思いますし、相手のカウンターに対しても、誰かが走って戻れれば時間もかけられます。そういう部分でもチームを助けられているのであれば、もっと走って、チームをもっと楽な方向に進めるようにしていきたいです」と高い意識をもっている。

 

また、それ以上に今シーズン自らに課しているのが「数字」だ。今季は主に4-3-3システムで戦っているなかで、河村はメンバーや時間帯、選手交代などによって1トップとウイングの両ポジションで起用されている。「前線のポジションの選手は得点を必ず求められると思う。昨季は少し得点が少なかった(3得点)ので、今季はゴール数にしっかりとこだわらなければと思っています。そして、サイドで出た時にはクロスの回数も増えると思うので、その分アシスト数も増えればと思っています」。

 

昨季チームの得点王だった佐藤凌我が移籍によりチームを去ったことで、FWとしての責任感が俄然増した。「二桁ゴールをとって、アシスト数も増やす。今年は本当に結果にこだわっていきます」。

 

ここまで5試合、まだ無得点に終わっているが、「チャンスの場面には加われていると思っていますし、アシストに関しても、決定的なパスやクロスは出せていると思います」と確かな手応えは感じているという。

 

前節は今季初めての途中出場となった。

 

「もちろん悔しさはありますが、練習からアピールして、またスタメンで出してもらえるようにするだけ。全体的に競争力が上がれば、いいチームになっていくと思うので」と、下を向くことは一切ない。

 

全体練習後にはスタッフに相手になってもらい、クロスへの入り方や、後ろ向きの状態をわざと作ってからターンしてのシュートなど、実戦を想定したシュート練習を意識して続けている。

 

「実際は少ないかも知れませんが、そういうシーンというのは必ずどこかで来ると思うので、その時のためにイメージは常にもっています」。

 

そうした準備こそが大きな結果を生むに違いない。今後のゴール量産に期待だ。

 

そして、河村といえばプレースタイルにも現れている通り、熱さが大きな魅力でもある。「負けず嫌いなので」と本人は苦笑するが、そのルーツは両親の叱咤激励と中学時代の仲間の存在だと回顧する。

 

真っ先に思い出すのは、試合に負けると父親に怒られ、泣きながら練習していた幼き頃の自分だ。「小学生の頃、サッカー以外にも空手をやってたんです。大会とかにも出ていたのですが、負けてしまうとめちゃくちゃ怒られて、サッカーでも調子が良くない時とか負けた時にめっちゃ怒られて。あの時の父はだいぶ厳しかったですね(笑)」。悔しくて悔しくて、次は勝とうと必死になる姿勢が身についた。

 

また、それ以上に影響が大きかったのが、中学3年生の時にキャプテンをやったことだったという。「チームメイトが本当に良くて、僕を信頼してくれて、背中についてきてくれた。そのおかげで夏の一番大きな大会で全国大会にも出られて、そのチームメイトのおかげでもう一段階上のサッカーの楽しさを知れたことがすごく大きかったです」。

 

仲間を引っ張り、一致団結することで結果を出すことの喜びを身を以て経験した。

 

「誰にも負けたくない」「勝ちたい」。

 

その気持ちを、誰よりも河村自身が子供の頃からずっと抱き続けてきたからこそ、サポーターの気持ちが手にとるようにわかる。声出し応援が解禁となり、河村にとっては初めてのゴール裏からの生の歓声であり、ブーイングを経験した。

 

「僕が良い時やチームが勝った時には良い声をかけてくださいますし、悪い時や負けた時は、『勝って欲しい』という悔しい気持ちから、カッとなっていろいろ言われることもある。でも、それは本当に真摯に受け止めています。もちろん、僕にも悔しさはあります。でも、どんな叱咤でも『次、絶対に勝って見返すからな!』という気持ちでこれからも受け止めたい。チームのために、ファン・サポーターのみなさんのために、これからも闘っていきます」。

 

死力を尽くしてピッチを走り続けることを誓う。

(文 上岡真里江・スポーツライター/写真 近藤篤)

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