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前節の大分トリニータ戦では、リーグで昨シーズンも含めて8試合ぶり、今シーズン開幕前の練習試合も含めても久しぶりに失点を喫した。それが、チームとして今季最もこだわっている事象の一つ、セットプレーからの失点だっただけに、非常に悔いが残るところだ。ただ、見方を変えれば、「ピンチの場面も何度かあった中で、我慢しながら0−0で耐えられていた(宮原)」こともまた事実と言える。前の試合で出た、「全体的にプレッシングが、行くところと行かないところがはっきりしていなかった部分があり、迫力ある守備ができないところもあった(宮原)」という反省点を改善し、これまで同様、積み重ねている前線からのプレスとコンパクトな守備で再びクリーンシートを目指す。
今節の対戦相手・ヴァンフォーレ甲府は、やはり4年ぶりに復帰したFWピーター・ウタカが最大のキーパーソンとなるだろう。開幕前の2月13日に行われたFUJIFILM SUPER CUP2023でもJ1横浜F・マリノスからゴールを挙げており、39歳ながらその得点力は健在。ヴェルディの多くの選手も強い警戒を口にしている。ピーター・ウタカは得点力だけではなく、周りを使う決定的なパスを出す能力にも長けており、なんといってもその判断のクオリティが非常に高いのである。城福浩監督も「ボールを持った時の落ち着きと、相手が何メートルか離れてボールウォッチャーになっている時のオフ・ザ・ボールの動き、そしてボールを持った瞬間のスピードを併せ持っているので、なかなか対策するのが難しい選手」と評している。そのピーター・ウタカを生かし、自らも生かされるべく、2列目の長谷川元希、武富孝介、そして前節4ヶ月ぶりに怪我から復帰を果たしたドリブラー宮崎純真が精力的に動くき回る。いずれも技術レベルの高い選手だけに、しっかりとした対処が必要となる。
その個のレベルが突出したピーター・ウタカとの対峙を楽しみにしているのが、林尚輝である。「本当に素晴らしい選手。彼にどれだけボールを収められるかがゲームの流れにつながると思う。逆に、そこをどれだけ潰せるかで、ヴェルディも流れが掴めると思うので、その対人は大事にしていきたい。それが、僕自身にとってもどれだけできるかの1つの目安になっていくと思うので」。体調不良で出遅れていたが、前節途中に戦列復帰を果たした。大分戦ではボランチでの出場となったが、センターバックとしての先発出場の可能性も十分考えられる。どのポジションで起用されるのか、指揮官の采配にも注目したいところだ。実は林は、鹿島時代から数えても昨年の8月14日以来、約7ヶ月ぶりの公式戦だった。それだけに新天地のホームのピッチに立つ感慨はひとしおだ。「まだファン・サポーターの方には、僕がどういうキャラかはあまり知られていないと思うので、まずは自分の長所である対人のところと、思ったより熱いぞというところを見せたいです(笑)。そして何より、開幕戦をスタンドから見ていて一番印象に残ったのは、個人チャントが全員分あるということ。僕にとって、プロに入って初めてなので、すごく嬉しくてモチベーションになっています。まだ歌われていないですが、この試合に出て生で聞いたら、鳥肌が立つんだろうなと思っています」。サポーターの「守れ!止めろ!」の大合唱に後押しされ、相手の鍵を封じてみせる。
攻撃では、バスケス・バイロンが雪辱に燃えている。前節は、決定的なシュートを決められず猛省。さらに「開幕戦は、ワクワクしすぎて空回りしてしまった。僕の力はこんなもんじゃないと、これからしっかりと見せていきたい」と、冷静さを取り戻した。地に足着けた闘志むき出しのサイドアタッカーの躍動にも期待したい。
最も大事なのは「連敗しないこと」と林。決してブレることなく自分たちのサッカーを信じ、粘り強く勇敢に勝点3を奪いにいく。
(文 上岡真里江・スポーツライター)
Player's Column
「オツカレサマ」「アリガトウ」
心なしか、今年に入り、マテウス・ヴィドットの口から日本語が聞かれる回数が増えているように映る。今年で来日4シーズン目を迎えている。必然といえば必然かもしれないが、その積極的な日本語での会話は、どんどん日本、そして東京ヴェルディというチームに馴染んでいることをうかがわせる。
ピッチ上での存在感も増す一方だ。昨季は開幕からしばらくはベンチ外の日々が続いたが、城福浩監督の就任とともに出場機会を得て、その後はハイパフォーマンスを発揮し守護神に君臨。特に終盤の安定感は抜群で、6連勝、5試合連続クリーンシートでのシーズン締めくくりに大きく貢献した。今季も引き続き充実のプレーぶりが続いており、前節の大分トリニータ戦でも何度も決定的なピンチをビッグ・セーブで凌ぎ、チームを救った。城福監督は、「彼のプレースタイルに加え、今年はチームとしてもさらにハイラインでやっているため、GKが守備範囲を広くしていくというところにも、果敢にチャレンジしてくれている」と、全幅の信頼を寄せている。その大きさは、谷口栄斗とともに背番号『1』を副キャプテンに指名したことにも十分表れていると言えよう。「彼は、もともとそういう(チームを引っ張るような)部分を持っていたと思いますが、日本語が話せるわけではないので、少し遠慮していたところもあったのかなと思います。副キャプテンという立場になったことで、練習中でもしっかりと声かけをして、チーム、DFラインをまとめていくようなことをやってくれれば、彼自身もチームもさらに良くなると思います」と、指揮官はさらなる成長にも期待を寄せている。
もちろん、マテウス自身も、その期待の大きさを十分受け止めている。「(副キャプテンを任されたことで)責任が前よりも確実に大きくなりました。選手たちに対しても、自分が良い例になれるように、トレーニングはもちろん、グラウンド外のところでも、しっかりとそういう振る舞いもしていかなければいけないと思っています」。実際、練習でも1つ1つメニューをしっかりとこなし、たとえ基本練習でもミスをすれば自ら志願してやり直しをするなど、向上心と集中力の高い姿勢を示している。
また、チームにも手応えを感じているという。「城福監督になってから、間違いなく失点は減っている。それは、出ている11人がしっかりと前からプレッシャーをかけてディフェンスができているからというのと、ビルドアップの部分でのミスが少なくなったことが大きな要因だと思います」。前節は悔しくもセットプレーから失点を許したが、それでもいま、チームには決して簡単には築くことはできない大切なものが存在しているという。「自分はブラジル時代、タイトルを多く獲っているチーム(コリンチャンス)にも所属していました。今、ヴェルディはそのときの雰囲気にすごく似ているなと感じます。チームとして、試合に入る前から自信に満ち溢れているというか、失点しないという雰囲気ができているという状態。それが、昨年の終わりから続いている。それを今シーズンも引き続き続けていけたらいい」。
決して過信ではない。日頃の練習から試合さながらの高い強度と集中力をもって鍛錬を続け、試合で結果を積み重ねてきたからこそ生まれた、確固たる“自信”だ。
そして、こうしたプラスの雰囲気をより強固なものにしていくために、マテウスは仲間たちとの交流を非常に大切にしている。来日したのが2020年だったため、これまではコロナ禍でなかなか機会が作れなかったが、外食や会食が一定の範囲内で解禁となった昨年末から、何度かチームメイトたちを招き、食事会を行っているのだという。「選手間の関係性を深めるためにも、コミュニケーションはすごく大事だと思う。今年はもっともっとそういう機会を増やしていけたらいいと思っています」。
責任感と仲間意識に溢れた守護神が、今日も最後の砦となって東京Vのゴールを死守する。
(文 上岡真里江・スポーツライター)