日本瓦斯株式会社
株式会社ミロク情報サービス
株式会社H&K
ATHLETA
ゼビオグループ

NEWSニュース

2020.10.07 パートナー

【特別対談】女子サッカーの現状と目指す未来/スカイライトコンサルティング株式会社代表取締役羽物俊樹様・日テレ・ベレーザ長谷川唯選手・清水梨紗選手

日テレ・東京ヴェルディベレーザを厚くご支援いただいているスカイライトコンサルティング株式会社から代表取締役の羽物俊樹様。ベレーザから長谷川唯選手、清水梨紗選手の2人に女子サッカーの現状や.WEリーグ発足に対する考え、目指す未来について聞きました。司会進行は東京ヴェルディから八木原泰斗が担当しています。

(以降敬称略)

 

 

この環境を普通にしてはいけない

 

 

八木原 本日はよろしくお願いいたします! 最初のテーマとして女子サッカー、女子アスリートの現状についてお話聞いていきたいと思います。グラウンドなどに代表される環境面や働きながらプレーする選手がいることなどはよく話題になるポイントかと思うのですが、他に課題やより良くなってほしいところはありますか。

 

長谷川 個人的に思っていることとして、ヴェルディ、ベレーザは男子との指導者の入れ替えとか、男女一緒に見てくれるコーチがいますけど、代表になるとそういう感覚がないんですよね。

 

指導者が女子の中で留まっていて、男子での指導実績を見ることがあまりないですし、話にも上がっていなくて。そういう境界線、分け方というのが自分としては少しもったいないなと思います。それがなくなっていけばより成長できる環境になるんじゃないかなと。

 

清水 男子サッカーと比べて、という文脈での話が多くありますが、個人的には男子と女子では観客動員数などの規模や認知度が大きく違うので、同じ環境を求めるのは少し違うのかなと思います。女子サッカー単体で考えて、どうしていくかを考えるべきなのかなと思います。

 

そういう前提があったうえで、午前中働いて午後練習して、という選手のスケジュールはかなり辛そうだなという実感はあります。そういった面は課題として挙げられるのかなと思います。

 

八木原 ありがとうございます。 サポートされている立場である羽物社長は現状に対してどうお考えですか?

 

羽物 まず30年前の男子サッカーを思い起こしてみると、Jリーグがなくて日本サッカーリーグという実業団のリーグだったじゃないですか。観客もあまりいなかったし、テレビ放送もほとんどなかった。それがプロ化されて大きく変わっていって、長い時間を経ていまの形があると思うんですよ。

 

今の女子サッカーの現状は、なんとなく男子の実業団時代のようなイメージです。トップのアスリートですが、仕事をしながらプレーする人も多いですし、プロ契約している人は本当に一部。観客の層も限定的で、メディア露出も少ないという状況です。

 

ただ女子サッカーは世界で頂点を取っているんですよ。しかしながら選手たちの環境は整っていないし、ファンや視聴者もなかなか応援しづらい状況になってしまっているのかなと。やる人の環境はもちろん、観たい人の環境も整えていかないといけないですよね。

 

もう一つ、私は少年サッカーを教えているのですが、そこでの体感として中学生年代くらいの女子選手がプレーする場所がないんです。小学生年代は2011年のW杯以降増えている印象なのですが、そこから上の年代でプレーする場所が少ないから、身体能力の高い選手が他の競技に行ってしまう。

 

それを解消するにはやはり上を引き上げることで、競技シーン全体の裾野を広げる事が大事だと思います。グラウンドやクラブハウスはもちろん、指導者の質も上げていかなければいけない、というのはまさに課題なのかなと思います。

 

トップが整うことで下の世代も整っていく、その結果トップが厚くなる。そういう価値向上の正のスパイラルを生めるよう、女子サッカー界に頑張りやすい環境を提供していきたいと思っています。

 

八木原 ありがとうございます。 代表の合宿などで海外のクラブチーム所属の選手とコミュニケーションを取る機会もあると思うのですが、違いを感じたことはありますか?

 

長谷川 お金の面やクラブハウスなどの施設・医療器具・スタッフのレベルはやっぱり違いを感じますね。特に海外のチームはコンディションや怪我への意識がとても高いように思います。

 

清水 いま長谷川選手が言ったように、日本のチームよりも怪我を未然に防ぐという意識が日本のクラブに比べて、とても強いみたいです。試合後のケアの機械だったり、リカバリーのトレーナーさんの数だったりは海外のチームを見習うべきなのかなと。

 

 

次はブームで終わらせない

 

八木原 このような現状を変えていくために、お二人はどういうアクションが必要だと考えていますか?

 

長谷川 W杯で優勝した時の反響を越えるものはないのかなと個人的には思うので、もう一度結果を出すしかないのかなと。日本代表として試合に出る立場である以上、結果を求めなければいけないというのは強く感じます。

 

清水 私も同じですね。選手である以上グラウンドで表現するのが1番大事だと考えています。そのうえでなにか行動が起こせたら最高ですけど、まず注目を集めるためには結果が必要だと思います。

 

八木原 羽物社長は現在どういったことに取り組まれていて、どういった部分に可能性を感じていますか?

 

羽物 選手が頑張りやすい環境を整えたり、頑張った結果に可能性を感じたりします。具体的には2人のプロ契約をサポートすることで、2人は24時間サッカーのことを考えられる。それによってプレーを磨くことだったり、プロ選手としてプレーすることで他の企業の広告になったりすることで、2人の“商品価値”を高め、結果注目を集められるというような流れですね。

 

前回のW杯は頑張った結果大きな注目を浴びましたけど、ブームで終わってしまいました。レベルの高い選手が日々戦っていて、それによって起きるスタジアムでの感動、という“コンテンツ価値”も高めていけるように私たちはサポートしていきたいですね。

 

こうして選手だけでなく、女子サッカー自体の価値を高めていけば、企業として経済価値という観点からも応援することができます。それができれば結果的に頑張りやすい環境を作れますから、良いサイクルになっていくんですよね。それを作っていきたいです!

 

八木原 はい!良いサイクル作っていきたいですね、ありがとうございます。では、今後チャレンジしたいことはありますか?

 

羽物 いまちょうどやっていることで、チャレンジクリッププログラム という取り組みをしています。ClipLineという企業がサービスを持っていて、ベレーザと相乗効果があるのではないか、ということでトレーニングの手本を動画配信したり、プレー動画へのフィードバックが貰えたり、小学生年代のプレーヤーや保護者の方が楽しめるようにオープンイノベーションという形で企画しました。

 

このような事例はもっと増やしていきたいですね。ヴェルディもベレーザも歴史があって、たくさんの競技者がいて、お金や土地ではない目に見えない資産が豊富にあるんです。そういうものを新しい技術と掛け合わせて、新しいサービスや価値を生み出せるようにしたいなと考えています。 

 

ベレーザというのは日本一のチームで歴史もありますし、良い選手もたくさんいますんで、オープンイノベーションで色々なところと連携していけば上質な価値が生めると思うんですよね。.WEリーグも始まることですし、そこにはしっかり力を入れていきたいなと思います。

 

八木原 オープンイノベーションはパイオニア精神のあるヴェルディ・ベレーザとは相性が良いですよね。お二人は送られてくるプレーへのフィードバックなどされていると思いますが、印象はいかがですか?

 

長谷川 私が小学生の時にこういったサービスは当然なかったので、自分たちがそういう存在になれているか分からないですけど、現役の選手にコメントを貰えるのであれば、自分が小学生だったらドンドン動画を送りますね(笑)。親に言われるよりも説得力がありますし、練習へのモチベーションも上がるのかなと思います。

 

清水 最初は一週間に一回くらい送られてくるのかな、と思ってたんですけど、すごいたくさん送ってきてくれるんですよね。その子たちのやる気に貢献できるように、自分なりにとても考えてコメントを送っています。小さい子のプレーを見るのは楽しいですね。

 

羽物 絶対子どもたちはフィードバックをしてくれた選手の大ファンになりますよ。テレビに出ているのを見たら大騒ぎだろうし、試合を観に行ってみようという動機にもなりますし。そういうサイクルが今回のチャレンジクリップという企画から生まれてくれたら良いなと思います。

 

 

ベレーザらしさを表現する

 

八木原 スカイライトDAYを控えている(本対談は2020年8月下旬に実施)ということで、チームの話題にも触れたいと思います。田中美南選手と籾木結花選手が移籍して、チームとしてやり方を変えるチャレンジ中だと思うのですが、そのあたりいかがでしょう?

 

清水 そうですね、今ちょうど新しいサッカーの形を目指しています。そもそものフォーメーションを変えてみたり、自分が前線の選手として仕掛けてみたり。ローテーションをしながら一人ひとりの良さを最大限出すというのをベレーザとして取り組んでいます。

 

上手くいかないこともありますけど、ベレーザの選手たちは根が明るいので、練習の中から良い雰囲気でチャレンジをしています。まだまだ完成ではないので、1年くらいかけて仕上げていくイメージですかね。

 

長谷川 変化は誰が見ても感じると思うのですが、それを良く捉える人と悪く捉える人どちらもいるという印象ですね。私個人としては永田さんがやっていることは日本の女子サッカーで最先端を走っているなと思っています。

 

正直、今まで通りやっていてもパスは回せるし、ある程度上手くいくとは思います。なので、連覇しているのだからやり方を変える必要はないじゃないか、と考える人の気持ちも分かるんですけど、新しいチャレンジをして、なおかつ勝ち切るというのが大事だなと思います。

 

観ている人たちよりやっている自分たちの方が、余裕がある印象ですね(笑)。新しいことに自分たちが取り組んでいるというポジティブな感情が大きいです。なのでたとえ負けてしまうことがあってもそれを糧により成長していけるのかなと感じています。

 

羽物 私自身も大のサッカー好きなので、色々トライしている様子が見られて、とても楽しいです!2トップにするのか、アンカーは何枚なのか、両ワイドはどうなるのか…。試合中にやり方が変わるのも見ていて楽しいので、ぜひどんどんチャレンジしてほしいと思っています。

 

長谷川 そうした見方をしていただける方が増えてくると、とても嬉しいです!

 

清水 気付いてくれる人はなかなかいないですね。

 

羽物 色んな引き出しを増やすチャレンジがとても面白いので、ぜひどんどんトライしていってほしいと思います!

 

 

子どもたちが目指したくなる世界へ

 

八木原 最後に目指す未来の話を伺えればと思うのですが、プロ化が決まった時の心境、意気込みや期待していることなどについて教えてください。

 

清水 現状はベレーザが.WEリーグに参戦できるか分かりませんけど、個人的に.WEリーグが始まるのはとても楽しみです。女子サッカーがどういう風になっていくのか、ワクワクという気持ちが大きいですかね。

 

今思うことや意気込みはシンプルで、いつも通り頑張ろうという感じです(笑)。リーグの形は変わりますけど、自分自身選手としてやることは変わらないので、プレーの質を上げることだけを考えています。

 

長谷川 今の女子サッカー選手たちはお金が貰えるからやる、という意識でやっている選手はいないのでそこは良い部分だなと思うんですけど、一方でプロ化するにはプロと言える環境になっていかないといけないな、とは思います。

 

すぐに環境が大きく変わるとは思いませんが、そういう環境のところをしっかり結果を残して作っていきたいですね。

 

八木原 羽物さんから見ていかがですか?

 

羽物 プロ化自体はとても良いことだと思っています。サッカーを仕事にできている人がたくさんいて、一握りはスターとして活躍している。そうなると夢もありますし、そこを目指そうという人たちも増えてきますよね、その結果切磋琢磨があってレベルが向上していくのかなと。

 

ただ、プロ化するということはお金の面から考えても、続いていかないといけないのでスター選手みたいな存在は必要だと思います。今日の2人はそこを担当して貰うことにはなってしまうだろうなと。

 

例えば、三浦知良選手はJリーグ開幕シーズンのJリーグアウォーズで風船から赤いスーツで登場しましたよね。本人の趣味嗜好はあると思いますけど、スターという自覚があって、あのような立ち振舞だったとは思います。

 

1年目は特にメディアバリューも上がりますし、2人は良い形で目立ってスターとして輝いて欲しいですね。ベレーザというトップチームで日本代表でもある2人ですから、酷なお願いかつ、2人のキャラクターには合わないかもしれないですけど、そうやってオフザピッチでもファンを獲得していって欲しいなと思います。

 

八木原 そうですね、ではどちらかぜひ赤いスーツのご用意をお願いします(笑)。

 

長谷川 (食い気味に)梨紗だ(笑)!

 

清水 唯で(笑)!

 

羽物 緑のスーツでも良いかもしれませんね(笑)。

 

八木原 羽物社長にプレゼントしていただきましょう(笑)。 さて、最後にこんな未来を目指したい!という思いを3人にいただいて、終わりにしたいなと思います。

 

羽物 女子サッカーというのはサッカーをよく知る人からすると、とても観ていて楽しくて。技術がしっかりしているし、戦術面も高いレベルでとても勉強になるんですよね。チームや選手がこれからたくさん出てきて切磋琢磨してくれれば、質としてもさらにレベルアップしていくと思います。

 

そういう進化や成長を日本女子サッカーが進んでいけば、世界の中でもサッカー王国になれるという期待を持っています。

 

長谷川 世界の女子サッカーの中で、繋ぐ意識だったり、戦術だったりを意識してやってきたのは日本がトップだと思います。一方で今はヨーロッパもとてもレベルアップしているので、変わらず自分たちが先頭に立ってやっていかなければいけないと思いますし、自分たちが世界で真似されるような立場になりたいなと思います。

 

清水 子どもたちが女子サッカー選手になりたいと思えるような環境と言いますか、そういったブランドになっていきたいです。男の子で言うプロサッカー選手、プロ野球選手みたいに女の子の中でも、プロサッカー選手が将来の夢になるような、憧れられるスポーツにしていきたいなと思います。

 

八木原 本日はありがとうございました! 引き続き、力を集結させて、女子サッカー界をレベルアップさせていきましょう!!

 

羽物 ありがとうございました!

 

清水 ありがとうございました!

長谷川 ありがとうございました!

(2019年5月撮影)

 

ライター:渡邊志門

 

カテゴリー

過去の記事