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「成長の余白は、J1の中で一番高いクラブではないかなと思っています」
というのは、今シーズンのスタートとなった新体制発表会見で城福監督が語った言葉だ。その余白を、選手たちは地道な努力で埋めていく作業。それが少しずつ形になり、J1残留に向け、あと一歩まで近づいた。
そんな中で第33節湘南戦は、不甲斐ない戦いで勝ち星を落とした。そこから2週間、選手たちはもう一度原点に立ち返り、前節ホームに浦和を迎えた。その前の戦いが嘘だったかのように、序盤からヴェルディが主導権を握る試合になった。7分にはカウンターから翁長聖のクロスに、この日先発に抜擢された山田剛綺がダイビングヘッドで合わせる。これは惜しくもクロスバーに弾かれるが、この試合に向けたチームの方向性をはっきりとさせたシーンになった。その後も浦和ゴールへ次々と襲いかかったが27分だった。中盤で渡邊凌磨に奪われると、勢いのままミドルシュートを決められて先制点を許してしまう。ただ、こうした一発に対してズルズルと落ちていかないのが、この1年で成長してきた証だ。以降相手にシュートを打たせることもなく、前半を浦和のシュートをその1本に抑え、後半の反撃態勢を整えた。
後半もメンバーを代えながら浦和ゴールを狙い続けると、59分に相手の一瞬の隙を突く。齋藤功佑が右サイドで倒されると、翁長がクイックリスタートでボールを前方のスペースに送る。サイドに流れた谷口栄斗のクロスはクリアされるが、こぼれ球を綱島悠斗が右足を一閃。ゴール右隅に突き刺さってヴェルディが同点に追いつく。このゴールで大熱狂となったスタンドからは、さらなるゴールを求め、より熱いコールが送られる。その期待に応えたのは、またしても23番だった。76分、山見大登の右CKに合わせたのは綱島。ゴール中央からの力強いヘディングがGKの手を弾いてゴールに飛び込みついに逆転に成功した。試合はこのままリードを守り抜いたヴェルディが、前節の敗戦をきっちりと取り返す貴重な勝利となり、4試合を残してJ1残留を決めた。
1つの目標を達成したことになるが、これでシーズンが終わるわけではない。今となれば、それは通過点に過ぎない。選手たちは、さらに高いところを見ている。その証拠に、前節の失点シーンについて千田海人は、「最初(相手の)正面に入って、右足(のシュート)を消すところまでは良かったんですけど、そこから左に流れたときにもう1個寄せないとJ1は決めてくる。1つ勉強になりました。基準を高くしないと、やっぱりやられてしまうという感じですね」と反省を口にしている。勝ったから良し、残留が決まったから良しではない。まだまだ成長には余白があり、選手たちは地に足をつけて前を見続けている。
一方の新潟は、前節アウェイで横浜FMと対戦している。試合は6分、永戸勝也のクロスをアンデルソン ロペスが合わせてネットを揺らすが、これはオフサイドの判定でノーゴールとなる。逆に10分にはCKから新潟が相手ゴール前で立て続けにシュートを放つなど、どちらに転んでもおかしくない状況のゲームとなった。その後も新潟は細かいパスで、横浜FMは強力な外国籍選手の個で相手ゴールに迫るなど、互いの特徴を出したが得点を奪えず後半に突入。52分にはGKへのバックパスを奪った長倉幹樹が無人のゴールを狙うがゴールを外れる。また交代出場の奥村仁がカットインからシュートを狙うと、ディフレクションもありゴールに向かうが飯倉大樹が足でセーブしてゴールとはならない。横浜FMもアンデルソン ロペスの直接FKがクロスバーに弾かれるなど、お互いゴールに迫ったものの得点を奪うことができずスコアレスドローで試合は終了。
新潟は、リーグ第29節から0-3、2-3、1-5、0-4と4試合で15失点を喫するなど、4連敗と苦しんでいた。だが、前節の前に行われていたYBCルヴァンカップ準決勝で川崎Fに対してホームで4-1と快勝すると、アウェイでも2-0と、さらに引き離して決勝進出を決めている。その勢いもあってか、前節は勝利を奪うことはできなかったが、しっかりと無失点に抑えて5試合ぶりの勝点を奪っている。一時の不調から脱してきていると見て良いだろう。
ヴェルディとしては今節を含めた残り4試合をどのように戦うのか。それは、これまでと変わらない。自分たちのサッカーを突き詰めて、目の前の相手を1つ1つ倒していくこと。シーズン当初から城福監督が掲げていた「サプライスを起こす」というのは、ただ残留するという狭い意味ではないはずだ。残りの4試合で、さらなる“驚き”を見せていきたい。
(写真 近藤篤)