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2024.11.08 ベレーザ

Beleza Player's Column #5 山本柚月

〇〇っぽい

「彼女の笑顔って、ジブリの世界に出てくる笑顔っぽいよね」

「〇〇っぽい」

良いも悪いもなく、ただ何となく他人に対してそう思うときがある。

山本柚月にインタビューをしている途中、こんなことを言われた。

「〇〇(筆者の名字)さんって、本当に〇〇さんっぽい顔をしていますよね。自分の中で、しっくり!って感じ」

山本はサッカー選手である傍ら、現役の大学生でもある。スポーツ健康学部に所属し、スポーツビジネスや、スポーツ科学、心理学などを勉強しているのだそうだ。中でも心理学に興味がある。

「サッカーを引退した後のセカンドキャリアみたいなものを考えたとき、心理学系に興味があって、それとサッカーを結びつけて、どういう職業があるのかなと調べたら『メンタルトレーニング指導士』というのがありました。アンケートとかで『将来の夢』みたいなことを聞かれたときにもそう書いています。心理学系の資格は大学院卒でないと受験資格がないものも多くて、サッカー選手を引退したあと、その時にやりたいと思っても、また一から始めるより良いかなって」

現在執筆中の卒業論文のテーマも、心理学に関するもの。「チームの一体感」などを研究している。

そんな心理学に興味を持ったきっかけ。それは、「人間観察が好き」ということだ。

「人の行動を見ているのが好きなんです。別に誰かに話すとかもないんですけど、勝手に、本当に偏見が入りまくっているのですが、この人はちょっと頑固そうだなとか。結構当たってると思うんですよね(笑)この人は絶対サイドバックだろうとか、めっちゃキーパーっぽいなとかも当たっている自信があります。あと、人の名字を当てるのも得意なんです」

前置きが長くなったが、彼女の冒頭のエピソードは、特技の一つだ。ただ、こちらは、

「この前、絶対に『さいとう』さんだと思った人がいて、名前を聞いたら全然違う名前で…。それでも、裏ではずっと『さいとう』さんって呼んでいました。今でも納得がいかないです」

と、意外と当てにならない。他人については何となく「〇〇っぽい」と考えるが、一方で、

「山本っぽいって、どんな感じですか?」

と聞くと、「どうなんですかね?わからないです」とのこと。自分のことはあまりわからない。性格もそうだ。

「自己紹介のときとか、いつも悩んじゃうんですよね。ちっちゃい頃は、負けず嫌いだったけど…。それは今もか(笑) じゃー、負けず嫌いなんですかね。でも、気分屋とかって言われますかね。ただ、ベレーザのみんなといるときの自分、家族といるときの自分、友達といるときの自分が違うので、その人たちに聞いたら、全然違うことを言いそう。自分がどう見られているのか、教えてほしいくらいです」

何とも煮えきらないが、そこはサッカー選手。サッカーに関してなら、しっかりと語ることができる。サッカーを始めたきっかけを聞いた。

「小さいときお兄ちゃんが大好きで、ずっと追いかけ回していました。お兄ちゃんが年長、自分が年少だった時に、お兄ちゃんがサッカーを始めたので、付いていきたかったんですけど…。年少のクラスはなくて、端っこでボールを蹴っていました」

それがサッカーとの出会い。本格的にサッカーを始めたのは、その1年後。男子チームの中で唯一の女子選手だった。

「男子チームの中で女の子が1人でやってると、『女の子なのに頑張ってるね』とか、『女の子なのにこんなにできてすごいね』みたいなのを言われるのが嫌だったんです。別に点とか取ってないのに、大会の優秀賞とかも簡単に選ばれちゃうんですよね。チームメイトにもいろいろ言われるので、それが本当に嫌で『いや、実力です』って言えるようにしよう、ってところから負けず嫌いになったんだと思います」

当時どんな選手だったか?アンケートには、「負けず嫌いのセンターバック」と書かれている。

「最初の方は前に置かれていたんですけど、コーチにセンスがないって思われたんでしょうね。でも、負けん気が強いからセンターバックになったんだと思います。とにかく負けん気、負けん気で勝負していて、相手の男子に仕事をさせないみたいな。小さかったし細かったんですけど、最初の1歩、2歩、3歩をいかに速くできるかということを意識していました」

メニーナのセレクションもセンターバックで受験。最初に試合に出たのはサイドバックだった。そして中学の終わり頃からようやく攻撃の選手になった。

小さい頃からスピードを存分に生かした前線の選手だったんだろうという想像を軽く飛び越え、しかも硬派なプレースタイルだったのだ。

現在WEリーグが公開しているデータを見ると、山本のクロス数はリーグダントツの1位。

「でも、得点に結びついていないので、自分的には恥ずかしいというか、誇らしいものではないです」

という。

「自分はスピードで一番速いかと言えばそうでもないし、ドリブルで一番抜いていけるかといえばそうでもない。その組み合わせで勝負していかないと生き残っていけないと思っています。先ほどクロスの本数のことを言われましたが、量だけじゃなくて質も高めていかなければいけない。それがあるからこそ切り返しとかドリブルが生きてくると思うので」

また、チームのシステム変更に伴い、ウイングバックとして攻撃面だけでなく守備面でも彼女のプレーがクローズアップされるようにもなった。

「ウイング『バック』をやる上で、やっぱり守備ができなかったら、攻撃のプラスアルファがあっても、評価されないと思うんです。守備があって、初めて攻撃のプラスアルファが認められると思うから。だから守備は最低限できないといけないですし、守備を求められるなら、守備をやらなきゃいけないのは当然だと思っています」

もう負けん気一辺倒ではない。しかし、負けん気も残しながら、ベレーザの新しいサッカーに必死に食らいついている。そうした強い意気込みを語る姿は、やっぱり誰が見てもプロっぽい。

(写真 近藤篤)

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