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今季、J2からJ1へと戦いの場をランクアップしたチームの中で、大きな成長曲線を見せているひとりが綱島悠斗だろう。シーズン序盤こそ途中出場が多く、時にはメンバー外の試合も少なくなかったが、第13節鹿島アントラーズ戦で今季初スタメンを勝ち取ると、前節ヴィッセル神戸戦まで4試合連続先発出場が続いている。
出場時間が増えている中で、綱島自身も手応えを感じている。
「相手のレベルも上がって、最初はあまりうまくいかず、自分がやりたいプレーができなという悔しさもあったのですが、それを1つ1つ噛み砕いて、『自分がどうしたらピッチに立てるのか』を考えて、日々努力をして、少しずつ試合に絡むことができてきました。自分の中でも少しずつ成長を感じられています」
最も改善に努めたのは、“ポジショニング”だという。
「ボールを受けるところであったり、前にどうやって運んでいくかということが、自分の中で曖昧というか、感覚的なところでやっていた部分がありました。でも、それだと相手のレベルが上がり、相手が戦い方を変えてきた時に、どういう風にプレーしたらいいのかわからなくなるということが最初はあったんです。でも今は、『相手がこう来た時は、どこのポジショニングに立った方が相手は嫌がるよね』とかを、オフザピッチで映像を見て勉強したりしたりする中で、そういう知識も増えてきました。守備のところでも、自分の強みであるボール奪取のところを出すためにはどうしたらいいのか。そこも正直、感覚的なところでやっていたのですが、今は、よりボールを奪うシーンを作り出すために、味方をうまく使って誘導して取り切るなど、いろいろ変わってきたと思います」
“正しいポジショニング”といっても、相手もあることだ。その正解を言葉で説明するのは「すごく難しい」と苦笑する。それでも、努めてわかりやすく、噛み砕いて説明してくれた。
「一番大事なのは、ボールからいかに角度をつけるかだと思っていて。もちろん、どこに立つかというのは、相手がいてのサッカーですし、相手の見えないように、相手の斜め前に立つとかは基本中の基本なのですが、その上で、ボールを持っている人から見た時に、縦ではなく、斜めに立って角度を作ってあげる。それも、角度が広くならないようにというのが大事。要は、サッカーでは“三角形”が基本とよく言われますが、その三角形の角度が広すぎず、狭すぎず、ちょうどいい角度で、なおかつ、その角度が、全員がバラバラにならないように。僕は主に真ん中の選手なので、全員を繋いであげるというイメージでポジョニングをとっています」
映像で何度も何度も繰り返し“より良いポジション”を模索しつつ、それを強く意識してプレーしていく中で、あらためて感じたことが“予測”の重要性だった。
「味方のポジショニングが常に見えていないと、良いポジショニングは取れないと思いますし、自分が関わってないところの選手たちがどういう状況なのかというのも把握していないと、どこからボールが来るかが予測できない。なので、ポジショニングを取る上で、予測がものすごく大事。『ここに来そうだな』と、先にポジションを取っておくことも大事な技術なので、それを行うためにも、相手や味方のポジションは常に把握しておかなければいけません」
そうした気付きや学びがパフォーマンスに現れたことで、指揮官からの信頼が高まっているのは確かだろう。188cmの長身も含め、そのポテンシャルの高さから、昨季も本職のボランチに加え、センターバック(CB)、フォワード(FW)など、複数ポジションで起用された。今季も、ボランチ、CB、FW、サイドバック(SB)と、チーム事情、試合展開などによっていくつものポジションでのタスクを求められているが、いずれも柔軟に対応している上、それぞれの質は確実に昨季のパフォーマンスを上回っている。
複数ポジションでの起用について、昨季終了後、綱島は「裏を返せば、自分の本職のポジションで勝負ができてないということ。ボランチでの水準・基準をもっと上げていくべきということだと思うので、来季はもっともっと自分のプレーにフォーカスして、ポジションを奪いたい」と、語っていた。今季も、その点については捉え方は変わらない。「もちろんボランチで勝負したいという気持ちもありますし、そのポジションで出られない悔しさや、彼ら(ボランチでレギュラーで出ている選手)からポジションを奪えていないという悔しさはすごくあります」。だが、それ以上に重要視しているのは、「チームのために何をするべきか」であり、それはつまり、「与えられたポジションで、自分の力を120%出す」ということ。「それがFWであれCBであれSBであれ、どのポジションでも自分の強みを出さないと試合には絡んでいけないので、出たポジションに応じた自分の強み、特に守備面で求められていることを常に出すようには心がけています」
こうして、着々と自分の存在価値を高めてきている綱島。これまで影響を受けてきた言葉はたくさんあるそうだが、今、あらためて痛感し、大切にしているのが『継続は力なり』だという。
「プロの世界に入って、いろいろな人と話してきた中で、誰しもが言うことが『やり続けたやつが上に上がっていく』ということ。どんなに今、良いプレーができなかったり、技術的に劣っている選手でも、常に、常に努力し続ける選手は強いなと思いますし、実際、自分の先輩の中にも、JFLからキャリアが始まって、今J1で活躍している選手もいます。その先輩は、『俺はただ怪我をしないでやり続けたから、今ここにいるだけ。全然すごくないよ』と話されていたのですが、怪我をしないことこそが、まずその人の努力あってのもの。その中で、コツコツ自分と向き合って、継続していくことで、自分の行きたい目標に近づけるんだなと思いました」
そうした先輩や周囲のサクセスストーリーにも感化され、綱島も自分としっかりと向き合い、コツコツと積み上げてきているものがある。
「全体練習が終わった後には、常に齋藤功佑くんや他の選手と自主練習を続けています。トレーニングが終わった後、家に帰ってからは“サッカーノート”と“日誌”の二種類の記録をつけて、日々の反省と次の日のスケジュールを決め、その通りに一日を進めていくということを継続しています。常にサッカーを第一に考えたスケジュールを組んでいるので。それをやり続けてることで継続にもなりますし、それが自信にも繋がっていると思います」
サッカーノートは学生時代から続けており、その日のトレーニング内容や、それに対して自分がどのような気持ちで臨んだか。できたプレー、できなかったプレー、監督やコーチからもらったアドバイス、練習後に自分で映像を見た感想などを書き綴っている。
日誌は、今年からはじめた。「何時に何をしてという、次の日の予定を決めて書いて、できるだけその通りに実行するようにしています」。
ある一日の予定は、こんな感じだ。練習は10時開始。
「朝7時に起きて準備して、練習の90分前にグラウンドに着くようにします。そこから1時間半で体を作り、練習が始まり、全体練習が終わったあとは自主トレーニングをして、終わって、大体12時半ぐらいに昼食を食べます。それで、13時ぐらいから約1時間筋トレをして、14時から15時までケアして、15時半に帰宅。そこから家のことを1時間ぐらいやって、16時半ぐらいから30分ぐらい仮眠を取って、そこから1時間、映像を見ながら日誌とサッカーノートを書きます。18時半ぐらいから夕食の準備をして、19時半から夕食、20時半から30分ぐらいお風呂に入って、出たあとは一時間ぐらいケアをして、その後30分読書して、22時半に就寝。という感じですね。そうした大まかなスケジュールを毎日書いて、その通りになるように生活しているという感じです」
もちろん、突然の誘いや急な予定、時間がおしたりと、思い通りに行かないことも少なくないが、それはそれ。「自分が一番大事にしたいものは決まっているので、そこは優先順位をつけています。例えば、その日は読書できなかったとしても、できるだけ次の日はその時間を作るようにしていくとか、バランスは常にとるという形でやり続けてます」
その中で、最近特に意識していることが「睡眠」だ。コンディションを上げるための三大要素として『栄養』『運動』『睡眠』が挙げられる中、自身の生活を見直す中で、大きく改善の余地があるのは睡眠だと考えた。そして、東京ヴェルディとコーポレートパートナー契約を結ぶ寝具インテリアメーカー『株式会社エムール』にも足を運び、体に適した寝具をオーダーし、睡眠の質の向上をはかった。
「大谷翔平選手やクリスティアーノ ロナウド選手など、超一流選手が10時間近く寝ているのは有名な話です。やはり、世界のトップレベルで活躍する選手の睡眠量やリカバリーに対する意識は全然違うと思うので、自分もそこにたいしては強く意識したいです。
それって、すぐに変えられることだと思うんですよね。というのは、自分が大谷選手みたいにスーパーな選手になるためにはすごく時間がかかることだと思うのですが、大谷選手の生活を取り入れることは、もう今日からできます。そういったところで、自分が成長する上で、自分の目標から逆算して、睡眠時間はすごく気を遣っているところです。今、これだけ科学が発達してきて、自分の睡眠の質を、医療レベルで測ることができる。そうしたものを上手く活用しながら成長していきたいなと思っています」
そうしたパフォーマンスの追求は、プロとしての当然の義務だと綱島は考えている。
「ホームだけではなく、アウェイにも、自分たちの試合にお金を払って見に来てくれる人が増えていることがすごくうれしいです。そういった方々のためにも、自分たちは面白いサッカーをして勝点3を重ねていかなければいけないですし、お金を払って見に来る価値があるサッカーをしなければいけないです。もっと言えば、僕自身、『お金を払ってまで見たい』と思われる選手にならないといけないと思っているので、そこの価値はもっともっと上げていく必要があると思っています。それこそが、今、自分がヴェルディでプレーしている中で、ヴェルディというクラブに貢献できる部分でもあると思います。個人のためにも、チームのためにも、自分の価値を上げたいです。もっともっと自分が成長して、このクラブ、チームのために戦いたいなと思います」
疲労度への考慮もあり、残念ながら5月29日に行われたレアル・ソシエダ(スペイン1部)戦には出場できなかったが、チームは7月28日にはブライトン&ホーヴ・アルビオンFC(イングランド1部)との親善試合も予定されている。そうした国際親善試合の対戦相手として東京ヴェルディが選ばれるのは「J1クラブだから」ということの意義を痛感している。
「去年のプレーオフでファン・サポーターの声援があったからこそ、自分たちが今J1にいて、素晴らしい経験ができているということに、まずは心の底から感謝しています。ヴェルディのファン・サポーターがいてくれたからこそ、今の自分たちがあることは間違いありません。
だからこそ、僕たちもそのファン・サポーターたちをもっと楽しませたいですし、もっとヴェルディを応援する人が増えてほしいという気持ちもあります。そのためには、やはり結果で示すしかないと思います。いくらいい選が手いても、勝てなければ意味がないですし、J2に落ちてしまったら、見るファン・サポーターも確実に減ってしまうと思うので、結果にこだわりつつ、より内容もより良くして、『ヴェルディを応援してよかったな』と思ってくれる人を1人でも多く作れるように、選手たちは頑張っていきます」
「チームも個人も伸び代いっぱい!」と希望に胸膨らませる23歳。その個人の地道な成長には、必ずやチームの成長も伴っていくに違いない。
<深堀り!>
Q:睡眠への意識を高めているという綱島選手ですが、現在身長188cm。よく、「寝る子は育つ」と言いますが、子供の頃からたくさん眠っていたのですか?
A:
めちゃくちゃ寝ていたというほどではなかったとは思いますが、成長期は睡眠時間と食べるものをものすごく意識しましたね。
実は、自分が身長を伸ばそうと思ったきっかけというか、エピソードがあって。中学1年生の時、自分はヴェルディのジュニアユースでセンターバックでプレーしてたんですよ。その時の監督が、今もアカデミーで指導されている小笠原資暁さんで、その小笠原さんが試合後に自分のところに来て、一言、「お前は185cmないと海外では活躍できないな」と言ってきたんですよ。それがなんか、めちゃくちゃ悔しかったんですよ。海外では185cmなくても活躍している選手もいますし、でも、逆に言えば、『じゃあ、自分が185cmになったら海外に行けるんだ』と思った時に、『絶対になってやろう!』という気持ちが高まったんです。そこから、睡眠の時間や“ゴールデンタイム”は常に意識していましたし、それと同時に、カルシウムを摂るために牛乳を毎日1リットル飲んでいました。カルシウムの吸収を良くするためにはビタミンDを摂った方がいいなど、いろいろなことをすべて自分で調べて、そうしたカルシウム、ビタミンD、亜鉛などの必要栄養素を摂るようになりました。それを続けていった結果、今、188cmあります(笑)185cmになった瞬間、小笠原さんに『185になりました!』と言ったのですが、小笠原さんは憶えていなかったというオチですが(笑)
もちろん、本当にその取り組みが身長が伸びたことにつながったのかは分かりませんが、中1の時には150cmぐらいだったのが、中2で155cm、中3で160cmと、着々と伸びたことは確か。自分の中では、間違いなくそこに対する努力をしたから伸びたと思っていますし、いろいろと調べていっても、身長に対する遺伝的な要素は、実は少ないらしくて。もちろん、僕は専門家ではないので自分で調べたことがすべて正しいかはわかりませんが、親の生活習慣や食べるものの好みが影響することで、結局は『遺伝』というデータになるみたいです。なので、実際は“身長を伸ばすため”の努力をすれば、絶対に伸びるんじゃないかなっていうのが、僕の推測です。
(文 上岡真里江・スポーツライター/写真 近藤篤)
5月12日の鹿島戦から29日のレアル・ソシエダ戦も含め、3週間で今節が7試合目。ただ過密なスケジュールが続いていただけでなく、0-3から追いついた鹿島戦、0-5で敗れた町田戦、悔しい敗戦となったルヴァンカップ広島戦など内容も濃い3週間だったと言えるだろう。今節を最後にインターナショナルマッチウイークに入るため、リーグ戦は1週間の中断となる。勝って終えるか、それともそうでないかでは大きく変わってくる。最後まで力を出し切って戦いたい。
リーグ前節の神戸戦は、町田戦からどのように立ち上がるのかを注目された試合だった。序盤こそ木村勇大が思い切りの良いシュートを見せるが、以降は攻め込まれることが多く、前半だけでCKが6本、直接FKが7本と耐える時間が続く。ただ、「前半押し込まれることは想定していましたが、前半さえ耐えられれば、必ず後半は我々の時間になるというふうに思っていた」と城福浩監督が言うように、前半を無失点で抑えたヴェルディはこのあとも想定通りの展開を歩むことになる。後半の開始早々に見木友哉のシュートなど、攻撃の姿勢を見せると65分だった。染野唯月が右サイドに展開。翁長聖が左足に持ち替えてゴール前に鋭いボールを入れると、これがオウンゴールを誘発し、ヴェルディが先制に成功。リードを奪ったヴェルディは、その後も危なげなく試合を進めて完封勝利を飾った。
またミッドウイークには、シーズンを終えたばかりのレアル・ソシエダと対戦している。日本代表の久保建英を擁するソシエダは、6位でヨーロッパリーグの出場を決めたスペインの強豪。その相手に、ヴェルディはこれまで出場機会に恵まれていなかった選手たち中心で臨んだ。移動の疲れをものともせず、高い技術を披露したソシエダに対して前半はシュート1本に終わるなど苦しい試合となり、45分にはミドルシュートを叩き込まれて失点。後半は来季の加入が内定している熊取谷一星や東京ヴェルディユースの選手など新しい顔ぶれが揃い、流れも少しずつ変化。再三相手ディフェンスの背後を突いた山見大登などにより、得点の期待も高まったが、90+1分に追加点を許して0-2の敗戦。結果を残すことはできなかったが、試合を外から見ていた森田晃樹が「盗めるところは盗みたい」と話すように選手たちは刺激を受け、また若い選手が貴重な経験を積むことができたことなど、様々な成果を得て今節に向けての準備を進めている。
一方札幌は前節鹿島と対戦している。試合は33分、ゴールキックからキム ゴンヒが落としたボールをスパチョークが技アリのミドルシュートで狙いスタジアムを沸かせる。しかし、ここでゴールを奪うことができなかった札幌は40分、師岡柊生の浮き球のパスでディフェンスの裏を突かれ名古新太郎にシュートを打たれる。菅野孝憲のファインセーブも虚しく、再び名古に詰められて先制点を奪われてしまう。後半、巻き返しをはかりたいところで55分、ディフェンスのバックパスが短く、菅野がエリアを飛び出してクリア。そのボールを拾われ名古に無人のゴールに決められて2失点目。ミスから手痛い追加点を許してしまう。87分にもCKから失点を喫して0-3で敗れた札幌。これで2️連敗となり、今季9敗目となった。
札幌は第2節終了後から19位、20位を行ったり来たり。そんな中29日にクラブは「北海道コンサドーレ札幌にかかわる全ての皆さまへ」と題して、三上大勝代表取締役GMの記名で「クラブは、今シーズンの最後までミシャ監督と戦う決意をしました」と今シーズン最後までミハイロ ペトロヴィッチ監督とともに戦うことを改めて表明している。クラブとして覚悟を決めたことで、選手たちのプレーにも迷いもなくなることは間違いないだろう。その最初の試合が、このヴェルディとの試合になる。
ヴェルディは神戸戦から3バックを採用している。その経緯について、今節の2日前、城福監督は会見で「0-5の大敗を受けた後で、スタッフと相当話しました」と言い、「いろんな論議をしている中で、最後にヘッドコーチの和田(一郎)が3バックどうですかっていうふうにパン!と言ってくれたんですよ。彼は去年『3バックもあるよね』ってずっと言い続けてきた仲間でもあったんですけど、彼の言葉で僕もちょっとハッとさせられた」と明かした。苦しい中で見つけ出した一つの解決策。それが神戸戦で結果を残した。そして迎える今節。簡単な試合ではないが、ここで水を差されるわけにはいかない。勝って、この上向いてきた勢いに拍車をかけたい。
(写真 近藤篤)