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2024.04.12 トップ

Match Preview & Column #8

Special Column
“伝統ある新しいヴェルディ”の力を見せるとき

「我々は、はい上がろうとしている最中で、チャレンジャーとして戦ってきた。だからこそ燃えるもの、たぎるものがある」ぐっと前を見据え、目に力を入れて城福浩監督は今節に向けた思いを表現した。

J1の舞台でFC東京と対するのは16年ぶり。雨の国立競技場で、那須大亮選手(当時)が打点の高いヘディングを叩き込んで東京Vが勝利したあの一戦以来となる。

チケットの売れ行きも好調で、3万人以上の来場が見込まれている。東京Vのホームゲームとしては36,052人(01年J1 2nd第15節)というのが今カードで最多の観客動員であり、それを超える数になってもおかしくない。同じ場所をホームスタジアムとするチーム同士の戦いは、常に熱い試合となっていた。01年以降のリーグ戦では、2点差以上のスコア差がついたことがない。今回も、「劇場」(城福監督)のようなシチュエーションになることは明白だ。

11日夜から配信された『エル・ゴラッソ』で、16年前の国立決戦時にチームを率いていた柱谷哲二さんのインタビューが掲載されている。そこで柱谷氏は、「『攻守におけるハードワーク』がクラブのDNA。それを取り戻した」と称していた。そして、「うまいヤツがハードワークをしたら、勝つに決まっている」とも。森田晃樹が、谷口栄斗が、緑のDNAを受け継ぐ彼らが局面で激しく戦い、チームをけん引しているのがいまのヴェルディだ。若くてうまくて未来のある選手たちがひとかたまりになって、J1の舞台で奮闘している。その選手たちの背中についている緑のファン・サポーターは、とにかくチームを全力でサポートしてきた。彼らの輪は、さらに大きく広がっている。「苦しくて(08年のJ2降格時から)1回も観戦しに行けなかった」という柱谷氏は、国立での開幕戦を見て「やっぱり、ヴェルディって人気があるんだ」とその雰囲気に感動していた。苦しい時期もスタジアムに通った者たちの熱が伝播し、元々あるポテンシャルに火を付けた。柱谷氏のように、08年以前にスタジアムへ通っていた人もそこに加わっているはずだ。

そうして、“サポートの熱”は大きく膨れ上がっている。今節、ゴール裏とバックB席は完売(12日時点)。このシチュエーションで高まった彼らの思いはいつもより熱気を増してピッチに注がれるはずだ。注目されるこの一戦。選手、スタッフ、クラブ、スポンサー、そしてファン・サポーター。皆で創り上げてきた“伝統ある新しいヴェルディ”の力を見せるときがきた。

(文 田中直希・エルゴラッソ東京V担当/写真 近藤篤)

Match Preview

『「勝利まであと一歩」から抜け出す』

今季これまで、ヴェルディは味スタでのゲームを3試合戦っており、成績はすべて引き分け。そのうち2試合は先制点を奪いながら、勝ちきれなかったという展開だ。次こそは――。ファン・サポーターにとっても、その状況から突き抜ける瞬間を見届けたいに違いない。

前節はホーム柏戦。その前の2試合の内容から前半の戦い方が課題とされていたが、それは克服されてきたと言って良いだろう。5分には、柏がGKにバックパスをしたところを染野唯月が詰めてロングキックを阻止。こぼれたボールを木村勇大がシュートを放つ。早速決定機を作ると10分だった。マテウスの低い弾道のパントキックが矢のように飛ぶと、これを右サイドの山田楓喜がワンタッチで前にボールを出して、そのままスピードアップ。ゴール前まで持ち込み、利き足とは逆の右足から放たれたボールはニアを抜いてネットを揺らした。さらに37分にはCKからチャンスを作る。右から山田楓喜のボールはファーに飛び、染野唯月が落とし、ゴール前こぼれたところを稲見哲行が狙うとボールはクロスバー直撃。追加点を取ることはできなかったが、前半は優位を保ったまま終えた。

後半はギアを上げた柏に徐々にゴールに迫られる場面も増えてくる。すると柏は71分に190cmの木下康介を投入。その直後の73分、柏は右サイドでマテウス サヴィオがワンツーからクロス。これを木下に決められて同点に追いつかれてしまう。後半アディショナルタイムには山見大登がスピードを生かして決定機を作るも、GKのセーブに阻まれて勝ち越しゴールは生まれず試合終了の笛を聞くことになってしまった。

ただ、「前々節J1で今シーズンの初勝利を得ましたけれども、その試合よりも前節の方が良かったと思いますし、内容は勝点3に値する試合をしたと思います」と城福浩監督が評価するように、内容としては決して悪いものではなかった。あとは、これをどのように勝点3につなげるか。それは簡単なことではないと容易に推測できるが、それでもその段階まで成長してきていると言える。今までも悔しい思いをしてきて、その度に這い上がってきた。今回こそ、その成果を結果で見せたいところだ。

対するFC東京は前節鹿島と対戦している。リーグ3位の5得点を挙げている荒木遼太郎が契約の関係で出場できない中、FC東京はトップに仲川輝人を置いた布陣で戦う。前半は両チームともシュートこそ放つが、決定機と呼べるまでには至らず45分が経過。後半勝負となった。その後半、先手を取ったのはFC東京だった。55分、左サイド松木玖生のアーリークロスに、中央に飛び込んできたのは仲川。飛び出してきたGKの前で頭で合わせて先制点を手にする。この1点でチームは勢いづいた。67分には遠藤渓太のクロスに仲川が体ごと飛び込んで合わせるが、今度はクロスバー直撃。さらに83分、ジャジャ シルバが前線でボールを奪い、松木とのコンビネーションでGKと1対1の状況を作るが、シュートはわずかにゴール左に外れる。試合を決める1点をなかなか決められないでいたが、後半アディショナルタイムにその時は訪れた。90+7分、原川力が中盤でボールを奪取すると、そのまま前線まで駆け上がり、松木とのワンツーから左足を振り抜くとゴール左角に突き刺さるゴールで勝利を完全に手中に収めた。

FC東京はこれで2連勝。リーグ序盤は勝てない試合が続いたが、今は調子を上げてきている。「特に先発で出る選手が非常に若くなって、運動量もクオリティもインテンシティも上がってきてるなと思います」と城福監督も警戒している。ただFC東京は、松木、荒木、野澤大志ブランドンの3選手がU-23日本代表のためチームを離れている。それでも前節は、荒木の代わりにトップに入った仲川が結果を残したように、選手層の厚いFC東京に対しては引き続き注意が必要だ。

ヴェルディはこれまで7試合連続でゴールを奪っている。それはJ1リーグでは、他には町田とC大阪のみ。一方で、7試合連続で失点しているという事実もある。つまり、これが勝敗に影響していると言える。8試合連続ゴールと、8試合目でのクリーンシート。「勝利まではあと一歩」から抜け出すには、まずはここを目指してスタートから全力でぶつかり合いたい。

(写真 近藤篤)


Player's Column

『深澤大輝が抱き続ける"成長への欲望"』

深澤大輝には、大切にしている言葉がある。

『試合に出られないことは恥ずべきことではない。だが、いざピッチに立った時に自分のプレーができないことは恥ずべきことだ』

これは、プロ1年目に当時の監督だった永井秀樹氏がチーム全体に向けて伝えた言葉だ。この言葉に、どれほど深澤は支えられてきたことか。

1年目17試合、2年目32試合、3年目27試合と、プロ入りしてから3年間、多くの試合に出場し、レギュラー的存在として活躍し続けて今季4年目を迎えるが、過去3シーズン、実は数字ほど決して安泰な立場ではなかった。

1年目はキャンプの初日に怪我をして、1ヶ月かかって復帰して、3日後にまた同じところを肉離れして。それでまた1ヶ月後に復帰したら、次は足首をやってしまて。で、試合にやっと出始めたと思ったら、また肉離れをしてという感じで、復帰しても出られない期間が続いてしまったんです。そんな中、たまたま、それまでずっと出ていた浜崎拓磨くんが期限付き移籍元の松本山雅戦だから出られないとなった第29節に僕が代わりに出て、そこでから出らるようになったという経験があったんです」

2年目も肉離れで途中離脱。去年、今年はキャンプでの紅白戦、練習試合、プレシーズンマッチなど開幕を前にした時点ではBチームが多く、2年連続で開幕戦に出場することができなかった。そんな時、悔しくてたまらない自分自身に常に言い聞かせてきたのが、この言葉だった。

では、いざピッチに立つチャンスが巡ってきた時に自分のプレーができるようにするためにはどうすればいいのか。その答えは、すぐ身近にいるヴェルディの先輩たちの姿を見ていれば自然と見えてきた。

「そういう出られない状況でも、ヴェルディには淡々と自分のことをこなしてる先輩方がいたので、自分がそんなことで腐っているようじゃ問題外だなと思いました。その先輩たちは、たとえBチーム(バックアップメンバー)だろうと、時には相手チームのフォーメーション想定で、本来の自分とは違うポジションでやれと言われたとしても、全力でやっていました。もちろん、プロサッカー選手として生きている中で、屈辱だったと思いますし、悔しい瞬間だったと思います。でも、そこからチャンスを掴める選手、掴めない選手というのを分かつのは、出られてない時でもいかに「出た時に自分の最大限を出せるように」と思って練習できるかがすごく大事だなと思います。自分も、去年のキャンプも、今年のキャンプも、その立場になってやってきた中で、それでも『絶対にチャンスは来るから、そこで掴めるように、心の準備も体の準備もしておこう』と、ずっと自分に言い聞かせていました。

正直、プロである以上、自分が試合に出られていなかったら、『チームが負ければいい』とか『自分と同じポジションで出てる選手に何かアクシデントがあればいい』とか、そう思っても当然と言えば当然です。だけど、僕はヴェルディというチームに来て今年で4年目ですが、そういう風に思ってる選手を見たことがありません。とはいえ、プロサッカー選手なので、内心では思っていてもあたり前。だとしても、それを一切言動にも出さないし、練習の姿勢やプレーで100%チームのためにやっている選手がばかりなので、そういう姿勢を見たら、全員が『もっともっとやろう』となりますし、その循環が今のヴェルディにはできていると思います」

その象徴が、今季でいえば平智広であり、昨季までであればチームを離れた小池純輝、梶川諒太、加藤弘堅、そして奈良輪雄太現コーチだった。そうした良き手本たちの背中を見て、チャンスが来た時に結果を出すための術を心得ていたからこそ、今年も第2節浦和レッズ戦からチャンスを掴み、今季も第2節からスタメン出場を続けることができている。

試合に出られることが決して当たり前ではないことを深澤は知っているからこそ、スキルアップへの欲望が非常に強い。

「浦和戦から出させてもらっていますが、自分のプレーにはまだ納得できていません。サイドバックである以上は、守備が第一ですが、プラスアルファとして、去年のように、ゴール前に入っていくという自分の特長がまだまだ出せていませんし、ビルドアップのところで言えば、正直、今までは左足を使わずにサッカーをしてこれました。でも、現代サッカーは右利きの左サイドバックが増えているなかで、左足が使えることの重要性をいま、ものすごく自分でも感じています」。

大学時代までは主にセンターバックだったため、「自分のプレーに満足していて、足りないところを補おうという練習ができていませんでした」。だが、プロに入り、昨年からは本格的に左サイドバックで出場するようになってからは、「左足を使えれば幅が広がると痛感していますし、スローインもまだまだ改善の余地があると思っています」と深澤。試合で感じた課題を、全体練習、その後の個別練習で重点的に取り組むことを非常に大事にしている。

左足を使えるようになる必要性も、スローインをしっかりとマイボールにする重要性も、「左サイドバックをやらなければ気がつけなかったこと」だという。その課題に対しては、どちらの経験値も非常に高い奈良輪雄太コーチに付き添ってもらい、日々磨きをかけている最中だ。

ただ、あくまでもそれは「プラスアルファ」だと深澤は力説する。「僕の求められているものは、あくまでも左足を使うとかそういうところではなく、まずはしっかりと守備ができることと、攻撃にどれだけ絡めるか。ディフェンダーとして守備は絶対で、さらに攻撃に出ていける回数、アップダウンできるところを見せていければと思っています」。

J1に昇格し、深澤には心から楽しみにしていたことがある。1つはアカデミー時代の同級生たちとの対戦だ。渡辺皓太(横浜F・マリノス)、大久保智明(浦和レッズ)とピッチ上でマッチアップできることを心待ちにしていたが、開幕戦は自分が試合に出られず、浦和戦は大久保が怪我をしていたため、どちらも今回は叶わなかった。「皓太とは一応ユニフォームは交換したのですが、次はちゃんとピッチに立って交換したいなと思います。トモ(大久保智明)とも、次はユニフォーム交換したいですね。

こんなふうに、(佐藤)久弥もそうですけど、ジュニアの頃からの同期と、こうやってJ1のピッチで戦えるっていうのは、このクラブの良さもあると思うし、いろんなチームにヴェルディのOBがすごくたくさんいる中で、そういう選手たちとJ1で戦えることは、本当にJ1に上がったからこそ味わえることだと思う。 だからこそ、ヴェルディはこれからもずっとJ1に居続けなければいけないと、改めて思っています」



そして、もう1つ心をたぎらせるのが『東京ダービー』である。アカデミー時代は、そこまで意識したことはなかったが、昨季天皇杯で対戦し、試合前の両サポーターによる喧騒、スタジアムの雰囲気、敗戦後の平智広、杉本竜士、西谷亮らの涙を目の当たりにし、「これが東京ダービーなんだ」と痛烈に思い知った。そうした一連の様子を見て、「次、対戦することがあれば絶対に勝ちたいなと思いましたし、勝たないといけないなとも思いました。今回J1に上がってきて、 ダービーができることをすごく楽しみにしている自分もいますし、勝たないと何も始まらないと思っています」

実は深澤は、東京都東久留米市出身で、エリア的にはFC東京のクラブハウスの方が近かった。だが、「FC東京にはジュニアチームがなかったので、父の勧めでジュニアのあるヴェルディのセレクションを受けたのがきっかけでした」。それこそが運命というものに違いない。

「僕は、アカデミー時代からランドに来るのが楽しみでした。ここで育ったからこそ、今のプレースタイルがあると思うし、今の自分の人格も築いてもらったと思っています。たぶん、学校にいる時間の次に、ここにいる時間の方が長かったと思う。そう考えると、スタッフや同期のみんな先輩も含めて、本当にヴェルディに育ててもらったと自分は思っています。だからこそ、恩返しをしたい。これからもJ1に居続けて、FC東京には常に勝たなきゃいけないなと思いますね。アカデミーのやつらと一緒に、なんとしても勝ちたいです!」

もちろん、ファン・サポーターも大切な大切な戦友だ。

「あらためて、去年からの応援は、とてつもなく僕らにとっては大きいサポートだったということは、まず伝えたいです。ホームでなかなか勝てない時もありましたが、僕らが挨拶行った時にはブーイングではなく、ヴェルディのチャントを歌ってくれたことで、『この人たちのためにも頑張らないといけないな』と、心の底から思いました。その後、結果がちょっとずつついてきて、秋以降、ファン・サポーターの数がすごく増えていることは感じましたし、それはチームのミーティングでも話題に出たぐらいでした。そして、勝つことでこんなにファン・サポーターが増えるんだなっていうことも実感しました。

今日の東京ダービーは、ファン・サポーターの方々も気合い入ってると思います、もちろん僕らも気合い入っています!良い舞台を用意してもらって心から感謝しているので、その想いを、僕らが良い戦いをして表現できればなと思っています。

みなさん、今日も一緒に戦ってください。そして、絶対勝ちましょう!

<深掘り!>

Q:自分の直したい癖とか、気になっている性格とかありますか?

A

実は、最近自分の中で出てきた1つあるんです。それは、『自分、潔癖症じゃないかな?』説です。

今まではぜんぜん気が付かなかったのですが、一人暮らしをはじめて、めちゃくちゃ掃除機をかけちゃってる自分がいるんですよ。床が白いから埃が目立つというのもあるかもしれませんが、なんかゴミとかが落ちてるのがめちゃくちゃ気になっちゃって。やたらコロコロをかけたりしてる自分がいるんですよ。

ダイソンの良い掃除機を買ってしまって、LEDライトで埃が見えるんですよね。それゆえに、ちょっとでも埃があると絶対埃が見えちゃうんですよ。だからすぐに「あ、掃除機かけよう」ってなって、1日にマジで3回ぐらいかけちゃってるんですよね。この潔癖っぷりに、「これはマズイな」って思ってます。だって、もし彼女ができて、同棲なんかした場合に、髪の毛なんて落ちてようものなら、「おい!髪の毛!」とか言っちゃいそうだし(笑)これ、危ないですわ。

実際、友達が遊びに来た後とかは、めっちゃ掃除しちゃったりしています。そういう時にハッと気付いて、「俺、潔癖症なのかな」って思いました。

あと、前泊のホテルとかは、部屋に着いたらまず、全部荷物を出して、「シャンプーはここに」とか「化粧水はここ置いて」とかやっちゃいます。そういうこだわりみたいなのは強い方なのかもしれなです。

そうそう。この機会に1つ、みなさんにぜひとも弁明したいことがあります!この間、マテウスのインスタのストーリーに、なんか俺のロッカーが汚いみたいなストーリーをアップされたのですが、あれは違うんです!僕のルーティーンとして、ロッカーに行ったらまずシャワーを浴びるんですけど、僕、1回脱いだものはそのまま置いておくんですよ。で、シャワーから上がってきたら、きちんと畳むのですが、畳む前に写真を撮られて、それをアップされちゃって。なので、入る瞬間は適当なんですけど、出てきたらちゃんとロッカーを綺麗にしてるよっていうことだけは、皆さん、わかってください!

(文 上岡真里江・スポーツライター/写真 近藤篤)