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ヴェルディのタックル数はリーグ3位。今季ここまでの球際の激しさが数字に表れていると言えるが、前節の前半はそこが出せなかった。
3分、いきなりヒヤリとする場面が来る。自陣でボールが高くバウンドし、クリアできないでいるとマルコ トゥーリオに浮き球のパスを通され、豊川雄太がGKと1対1になりネットを揺らされてしまう。これはVARの結果オフサイドと判定されて何とか難を逃れた、かのように思われたが22分だった。ロングボールを受けた豊川がフリーで無回転のボレーを放つとクロスバーに当たってゴールに吸い込まれた。さらにその4分後には、相手のクロスを跳ね返したボールをコントロールされ、スルーパスから原大智に決められて点差を広げられてしまう。攻撃でも前半はシュート1本に終わり、良いところを見せられないまま終了してしまった。
それでも、試合後に城福浩監督が「前半のよくない45分をよく盛り返した」と話しているように、後半は全く別のチームのように生まれ変わった。51分に染野唯月の直接FKはわずかにボール1個分ほど外れるが、この試合で最もゴールに近づくと、78分には交代出場の山見大登が左サイドから仕掛けボックス内で倒されてPK獲得。これを染野が右隅にきっちりと決めて1点差に迫る。染野の今季初ゴールでチーム全体に勢いが生まれると、あとは必然だった。後半アディショナルタイム、稲見哲行のサイドチェンジを綱島悠斗が競り勝って裏に落とすと、齋藤功佑のグラウンダーのクロスを染野が押し込んで同点。劣勢の状態から勝点をもぎとることに成功した。
1点目を含めて、交代出場の選手全員が得点に絡む活躍を見せた。さらに言えば、第4節新潟戦でも途中出場の翁長聖のゴールが決まっている。シーズン最初の数試合はむしろ終盤にネガティブな展開になることが多かったが、今ではむしろ逆。指揮官の「采配の妙」の部分もあるだろうが、それに応える選手たち、さらにチームが同じ方向を向いているという強さが出ている。ただ、ここまで2試合連続で終盤の劇的な展開は、確かに見ているファン・サポーターの心を動かすものはあるかもしれない。だが何より彼らに届けなければいけないのは勝点3だということは忘れてはいけない。
今節の相手、湘南は前節C大阪とアウェイで対戦した。17分には前線のコンビネーションで相手を崩すが、今季から加入のルキアンのシュートは枠を外れる。さらに32分にも相手のミスからボールを奪って決定機を迎え、ルキアンがヘディングシュートを放つも、これはGKのファインセーブで得点を奪うことができない。53分には、杉岡大暉のクロスから鈴木雄斗がゴール前でフリーでシュートを放つも、こちらもキム ジンヒョンが立ちはだかる。決定機を決められない湘南は、60分にC大阪のCKから先制を許すと、82分にはGKからのロングボール一発で相手に抜け出されてダメ押しのゴール。隙を見逃さなかったC大阪に完敗となった。
湘南は昨季13得点を挙げてチーム得点王だった大橋祐紀が広島に移籍。前節こそ得点を奪えなかったが、それでも今季5試合で8得点とリーグでは4位の得点力を誇っている。もっとも、その内の4得点は第4節浦和戦で挙げたものだが、打ち合いの試合になっても競り負けない強さを見せている。ルキアンはもちろんのこと、高卒3年目でここまで3得点を挙げている鈴木章斗、そして新加入の鈴木雄斗など個の能力も高い。
また湘南は、冒頭に述べたタックル数のランキングではリーグ1位でもある。よって今節は、ピッチ上で激しい球際の戦いになるだろう。ヴェルディとしては、前半の戦い方をどのように修正するのかという課題もあるが、何より勝利への執念をよりプレーに反映させることがカギになりそうだ。
(写真 松田杏子)