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2024.03.02 ベレーザ

Beleza Match Preview & Column #8

Match Preview

『タイトル獲得に向け再び走り出す

女子サッカーに注目が集まるこのタイミングで、WEリーグが再開されることになった。

2月28日、日本サッカー界にとって大きな1日となった。パリ五輪出場をかけたアジア最終予選、北朝鮮との第2戦が国立競技場で開催された。第1戦は試合会場がなかなか決まらないなどのハプニングもあった中、0-0で終えている。よってこの試合で勝った方が、パリ五輪の切符をつかむことになった。激しい球際の争いが続く試合は26分、北川ひかるのFKの流れから田中美南のヘッドはクロスバー直撃。そのこぼれ球を高橋はなが押し込んで貴重な先制点をゲット。だが北朝鮮も意地を見せ、前半終了間際にはゴール前でチェ クムオクのヒールでゴールを脅かされるがGKの山下杏也加のビッグセーブでしのぐ。そして、77分だった。右サイドから崩した清水梨紗のクロスに飛び込んだのは藤野あおば。キャリア初のヘディングでのゴールが決まりリードを広げる。81分に1点を返されるが、そのまま逃げ切りパリ五輪出場を決めた。

この火を絶やしてはいけない。そして、ここでベレーザというチームの魅力、そして強さを見せるときだ。

WEリーグは第7節までを終了し、ベレーザは3勝3分1敗で4位。首位のINAC神戸レオネッサとは勝点5差。残り15試合、5月25日の最終節を笑顔で終えるための戦いが、ここから待っている。1月8日のI神戸戦を最後に約2ヶ月のブレイクに入り、現在は3月3日のノジマステラ神奈川相模原戦に向けて最終調整に入っている。

今季ベレーザのスタートは快調だった。開幕戦となったAC長野パルセイロ・レディース戦では、10分の村松智子のゴールで波に乗ると後半に北村菜々美のゴールで追加点。1点を返されるが、木下桃香がダメ押しの3点目を決めて快勝。シーズン初勝利を挙げると、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースも3-1で下し2連勝。三菱重工浦和レッズレディース戦ではドローに終わるが、続く第4節マイナビ仙台レディース戦では5-0で大勝した。だが、ここから厳しい試合が続いた。第5節、第6節を連続ドローで終えると、ウインターブレイク直前のI神戸戦では、90分に失点し今季初の黒星となった。

苦戦は数字にも表れている。ベレーザは今季先制した試合が5試合。圧倒的に優位だと言われる先制点を奪いながら勝利したのは3試合で、勝率だけを見れば6割とリーグでは未だ先制点を奪っていないN相模原に次ぐ下から2番目の数字だ。さらに時間帯別の失点を見ると、顕著にそれらの要因が見て取れる。前半45分の失点は0。さらに60分まで無失点を維持しているが、61分から75分までの失点が3、そして76分から試合終了までが4失点と、残り30分に失点が集中している。この“魔の時間”を耐え抜くこと、それだけではなく、シーズン序盤に見せていたように3点目を取って試合を決めることが求められることになる。

その大きな助けとなりそうなのが、新しくベレーザに加わった選手たちだ。朝日インテック・ラブリッジ名古屋から加入した昨季プレナスなでしこリーグ1部得点王の神谷千菜、オルカ鴨川FCから加入した昨季プレナスなでしこリーグ1部最優秀選手賞を受賞した鈴木陽というFW2選手を獲得。またすでに公式戦にも出場している樋渡百花、池上聖七とウルフ ジェシカ結吏も含めた3選手がメニーナから昇格。5人を新たに加えて後半戦を戦うことになる。

今節対戦するN相模原は7節を終えて未だ未勝利。1分6敗の最下位と苦しんでいる。ただ、その1分は第5節セレッソ大阪ヤンマーレディース戦で、前半3失点を喫したものの、後半に3点を取り返してドローとしている。こうした執念を見せるチームであることは注意しなければいけないかもしれない。

それでもベレーザとしては、ここから優勝に向けて1つでも勝点を落とすことはできない。ただ、その準備はできている。これまでのモヤモヤを吹き飛ばす試合を見せていく。

Player's Column

『WEリーグの注目度を高めたい』

何よりシュートのインパクトの音が違う。藤野あおばの右足から放たれるシュートは、もはや異次元の世界だ。そんなイメージがあるからこそ意外だった。

 

なでしこジャパンが、北朝鮮とパリ五輪をかけた戦い。その大事な試合の決勝点は、藤野のヘディングでのゴールだった。

 

「(ベレーザでは)クロスからの得点がチームとして少なくなったというのを自分でも感じていたところなので、誰かがそこを担わないといけないと思っていたし、自分のできることを増やすというところでも今シーズンの課題としてクロスだったり、ペナルティエリアに入っていくというのは意識してやっていたところでした。その積み重ねが、結果につながったのかなと思います」

 

昨季14得点でWEリーグ得点王に輝いた植木理子、6得点の小林里歌子がチームを離れ、藤野にかかる期待はより高まることになった。立ち位置も変わり、試行錯誤も続いた。そうした中で、20歳になったばかりの藤野は、その可能性をさらに広げることに成功した。

 

そして、それを披露する場はすぐにある。

 

パリ五輪出場を決め、なでしこジャパンの選手たちが安堵の表情を見せる中で、この試合の解説を務めていた岩清水梓からインタビューを受けると、藤野は最後にこう締めくくった。

 

「ぜひ皆さんWEリーグにも応援にきていただければうれしいです」

 

後日、その発言の真意を問われると、

 

「なでしこジャパンだけじゃなくて、他にも色々な選手がいて、(WEリーグは)見ていてもやっていても楽しいリーグだと思います。今回は順位争いも激しくて面白いリーグなので、あの試合を見て女子サッカーに興味を持って、WEリーグを見に来ていただけたら嬉しいし、そういう意味でも注目度を高めたいです」

 

責任感の強い彼女は、女子サッカー、WEリーグの魅力を伝えることを本気で考えている。そのためにはもちろん、彼女自身がチームを勝たせる存在にならなければいけない。世間の注目が集まる今、藤野はまた一回り大きくなった姿でチームを引っ張っていく。

(写真 近藤篤)