NEWSニュース
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東京ヴェルディでは2021シーズン途中より、味の素スタジアムでのホームゲームにおいて『Green Heart Room』の運用を開始しました。
当初は大きな音や照明が苦手な方を対象としたセンサリールームを想定していましたが、自閉症や感覚過敏の方以外にも様々な障がいのあるお客様を受け入れるため、センサリールームではなく『Green Heart Room』として運用しています。
2021年4月4日(日)2021明治安田生命J2リーグ第6節
東京ヴェルディvs水戸ホーリーホック
2021年4月10日(土)2021明治安田生命J2リーグ第7節
東京ヴェルディvsレノファ山口
2021年5月29日(土)2021明治安田生命J2リーグ第16節
東京ヴェルディvsブラウブリッツ秋田
Green Heart Roomは最大5名様でご利用いただける部屋で、ご家族単位で試合観戦を楽しむことができます。多数のお申込みをいただいたなかから、上記3試合で3家族にご来場いただきました。
また肢体不自由の方がいらっしゃる場合など、障がいの種類に合わせて部屋の設定をカスタマイズしています。コンセプトは、ご自宅のリビングルームのようにリラックスしてJリーグを観戦していただくことです。
運用開始に先立ち、Green Heart Roomの設置にご協力をいただいた東京都立多摩桜の丘学園の山本優校長(当時)と株式会社エムールの高橋幸司代表取締役と一緒に、Jリーグ社会連携室の鈴木順室長、東京ヴェルディ普及部の中村一昭コーチ、パートナー営業部プランナー八木原泰斗(株式会社リトリガー)がそれぞれの思いを語り合いました。
(以降敬称略)
八木原
Green Heart Room運用開始を前に、プロジェクトにかける思いや目指す未来についてお話を伺っていきたいと思います。まず改めて皆さんの普段の活動や、このプロジェクトに関わるこれまでの経緯をお聞かせください。
高橋
株式会社エムールの高橋と申します。エムールは寝具の製造と販売をしている会社で、ヴェルディさんとの関わりは約10年。選手の皆さんに寝具の提供などをさせていただいています。
我々の会社のビジョンが『眠りで世界の人を元気にする』なので、製品の提供だけでなく睡眠に対するサポートや教育などもしています。ヴェルディさんが掲げている未来に対して、なるべくスポンサーらしくないスピード感で対応するのが弊社の特徴なのかなと思っています。
中村
東京ヴェルディ普及部、SDGsヴェルレンジャーの中村と申します!ヴェルレンジャーというのはスポーツ&SDGs普及活動を実施している東京ヴェルディのコーチたちのことで、東京都内の10市区で障がいのある方向けのスポーツ教室などを行っています。
多摩桜の丘学園さんでは5年ほど前から活動させていただいていますが、学園外でも障がいのある方と一緒にスポーツをする際はいつもご相談しています。ヴェルレンジャーの活動だけではなく、昨年から実施しているヤンセンファーマ様との『ともに未来へ Green Heart Project』(https://www.verdy.co.jp/news/10002)にもアドバイスをいただきました。
山本
多摩桜の丘学園の山本です。本校は知的障がいと肢体不自由でそれぞれ別の教育部門があって、小学部から高等部まで開設されています。共生社会の形成と、障がいのある子どもたちがいかに社会の一員として世の中に貢献できるかを目指しています。
学校の中に閉じこもった教育活動ではなく、外に出て地域の力を借りながら、貢献というかたちでお返しをして共生社会を作っていくというイメージを持っています。そんな中、約5年前にヴェルレンジャーの活動と出会って、今では年間20回ほど来ていただいています。
教員たちの指導記録を見てみると、ヴェルレンジャーの活動から学ぶことが多いと書かれており、教員との関係値も良好なので、感謝しかないです!ぜひ今後も継続してお願いしたいと思っております。
鈴木
Jリーグの鈴木です。かつては別のクラブのフロントスタッフとして仕事をしていたのですが、Jリーグでの社会連携、いわゆる『シャレン!』と呼ばれる地域密着を具体化した活動が始まったタイミングで声がかかって、今はリーグで仕事をしています。
僕らはリーグとしての発信機能があるので、ヴェルディさんの今回のような活動を世の中に広めて、社会に伝えていく役割を担っています。誰かが誰かを支えるのではなく、誰かと誰かが支え合うような社会という目標に向かって、活動を推し進めるのが我々の仕事です。
先程の山本先生の言葉にもありましたが、いつかは『共生社会』、『シャレン!』という言葉もなくなって、地域や住民、サッカークラブが手を取り合い困ったときには簡単に声かけができるような社会になればよいと思っています。
八木原
皆さんありがとうございます!かなり熱い自己紹介をいただいたところで、Green Heart Room実施の背景や経緯をぜひお聞かせください。
中村
ハンドサッカーというスポーツがありまして、誰でもスポーツを楽しめるということを体現したような、究極のスポーツなんですけれども。それがずっと心のなかにありました。障がいのある子ひとりひとりに寄り添って、シュートの仕方までそれぞれ違うんです。
それまでは『何かができない子でも、他にできることがある』という考え方だったのですが、多摩桜の丘学園さんやハンドサッカーの現場では、『できないことを、どのようにできるようにするか』というアプローチを取っていて、感銘を受けました。
そのなかで『誰もが気軽に来られて楽しめるホームゲームになっているのか?』と考えることがありまして、調べていくとセンサリールームという、自閉症や感覚過敏の子がスタジアムで安心して観戦できる部屋があると知りました。
山本先生にお話を伺い、さらに協力してくださる企業を探していたところでエムールさんともご縁が繋がりました。地域の学校と企業、そしてスポーツクラブが一緒に手を組んで、誰もが気軽にスポーツ観戦のできる部屋を作れたら素晴らしいなと。そんな経緯でこの活動が進んでいきました。
八木原
山本先生は最初に話を聞いたとき、どのように感じられましたか?
山本
シンプルにとてもよい話だと思いました。ヴェルディさんというサッカークラブが一般のサッカーファンだけでなく、普段なかなかスポーツ観戦をするのが難しい子のことまで考えてくれているというのが、とてもうれしかったです。
八木原
エムールの高橋さんにはグリーンハートルームの環境づくりにおいて、クッションやラグなどを全てご協賛いただくなど、多大なるご協力をいただきました。
高橋
会社の理念としてCSV(Creating Shared Value)というものを掲げていますので、即答でお手伝いさせていただくことを決めました。現代の企業は単純にお金を稼ぐというだけでなく、みなさんと力を合わせて新しい変化を生み出しながら社会をよい方向に推し進めていくのがあるべき姿だと思っています。
中村
私たちの活動というのは、クラブの人間だけでは絶対に実現できないと思っています。今回のように多摩桜の丘学園さんやエムールさんに協力していただいたり、Jリーグに発信していただくなど、みんなで活動することによって持続可能なものになっていくのではないかと考えています。『みんなでやる』ということは強く意識して普段も活動させていただいています。
山本
ヴェルレンジャーが発信してくれるメッセージはものすごくシンプルで、スポーツを好きになる、身体を動かすことを楽しむってことなんですよね。一方、教員はどうしても技術の指導に力が入ってしまう傾向があります。
そういうところは本校の教育にも良い影響を与えてくれていると実感しています。ヴェルレンジャーが学校の中に入ってきて活動をしてくれているからこそなんです。ヴェルレンジャーのおかげで、きっとこれからの時代の教育を作っていく核となるような教員に育ってくれると信じています。
八木原
すごい…!学校教育にも好影響を与えているヴェルレンジャーってことですね。継続することによってしっかりと成果が生まれているのは素晴らしいと思います!
鈴木さん、リーグとして今後に向けて考えている指針などありますか?
鈴木
Jリーグの理念のなかには心身の健全な発達への寄与というものがしっかりと入っていますので、身体だけでなくハートの部分も地域や社会にしっかりと貢献していくというミッションを達成していきたいと考えています。
今はクラブやリーグがやりたいことをやっている段階ですが、これからの社会連携は地域や社会の皆さんから、クラブやリーグにリクエストが来るようにしていきたいと考えています。地域を豊かにするためにヴェルディさんを呼んで活動する、といったようなかたちですね。
クラブが主語のままですと、例えば成績が悪くなったり、経営状態が悪くなったりした際に活動自体が消滅してしまうと思っています。今回の企画はそういった意味でもクラブだけが主語になっていないので、ベストな座組だと思います。
お互いを利用し合えるような関係になって、地域の課題解決にクラブがより貢献していけるようになれば、もっと本質的な活動になってくるのではないかと思います。ヴェルディという、サッカーだけでないクラブ全体の価値向上にも繋がっていく可能性も秘めています。
八木原
そうですね、地域や企業からしたら、クラブを使おうと考えても敷居が高かったり、遠慮してしまったりがあると思うので、ウェルカムな雰囲気を作っていきたいですね。
高橋
スポンサーに関してもそうですよね。弊社は柔軟な方ですが、他のスポンサーさんはまだまだ従来のような敷居が高いイメージをお持ちでいらっしゃるところも多い印象です。できることに関しても、看板掲出やユニフォームがメインで、地域の課題解決に関する活動を実施できるということをそもそも知らなかったりします。
このような活動が増えていって、スポンサー同士での横の繋がりが生まれたら、更にいろいろなことができると思いますので、今後に期待したいなと思います。
八木原
山本先生は、学校教育の観点から目指していきたい未来はありますか?
山本
学校の中に閉じこもるのではなく、どんどん外に出ていって学校のことや障がいのある子のことを知ってもらうことが大事だと思っています。まず知ってもらえなければ理解なんて程遠いですし、風通しのよい学校を作っていって地域との距離を近くしていきたいと考えています。
これからSDGsはより大事なキーワードになると思いますので、学校も企業やスポーツクラブのそういった活動に入っていって、対等な関係で一緒にやれることをやっていきたいです。外での活動は子どもたちの自信の醸成だったり、社会でのやりがいだったりを見つけられる大切な機会にもなりますので。
地域をひとつに、というとよく聞くフレーズになってしまいますが、地域をみんなで作っていける社会を実現したいですね。行き過ぎた個の尊重や孤立化という現状がありますので、必要なお節介、必要な世話焼きができるようなプラットフォームとしての地域を作れたらと思います。
八木原
コーチのウエアにもSDGsロゴが入りました。中村コーチはより決意が強くなったと思うのですが、いかがでしょうか。
中村
個人的な目標としては障がい者であっても気軽にスポーツができる環境を作ること、その先に障がいがある人達のスポーツへの意識の変革、歴史を変えていくということを目指しています。障がいがある方への理解が進んでいって、最終的に街まで変えられたらそれがゴールになるのかなと。
スポーツという地域にとっては小さなものから、ボトムアップで障がいのある方が住みやすい街を作っていきたいですね。これは1人ではできないことだと思いますので、周りの方々に支えていただいて少しずつ進めていきたいと考えています。
多摩桜の丘学園さんでの活動でも、最初は先生方も不安だったと思うのですが、最終的にこういったところに繋がれていますし、この活動も繰り返しながらアップデートしていって、スポーツ文化と街に影響を与えていきたいと考えています!
八木原
皆さん熱いお話をありがとうございました!ここでお話したことを実現できるように、そして継続できるように活動していきましょう。本日はありがとうございました!
対談は以上ですが、実際に味の素スタジアムでの運用を実施してから、後日改めてGreen Heart Roomの感想を伺いました。
東京都立多摩桜の丘学園 山本優 前校長
活動を拝見して、障がいのある子だけでなく、その家族のことまで考えてくれていたところに感動しました。障がいのある子の家族はかなりの制約のなかで生活していることが多いです。ご両親はもちろんご兄弟は特に辛い思いをしている子も多く、そんな家族たちのことも考えてくれていて、Green Heart Roomはきっと一生の思い出になると思います。
このプロジェクトはこれからもぜひ続けていただきたいなと思いました。今まで私が教育をやってきた理念と重なる部分も大きいので、これから大きく広まっていくことを考えると、無限の可能性を感じました。
株式会社エムール 高橋幸司 代表取締役
今回参加させていただいて、私自身がもっと勉強しなきゃいけないなと痛感しました。まだまだ皆さんのような知識もないですし、Green Heart Roomをよりよいものにしていきたいので、ぜひ更に意見をいただきたいなと思っています。
また当日は参加したお子さんたちのリアクションがよくてホッとしました。弊社のクッションも気に入っていただけてよかったです。これからは継続性が大切です。いまは一家族ですが、二家族、三家族と増やしていって、日本全体に広げていかなければいけないです。
そうなったときに私たちは、今回のような活動の知見を自分たちだけで独占するのではなく、様々な方に活用してもらえるような仕組みを作らないといけませんね。今回はあくまではじめの一歩だということを忘れずに、当たり前にこの活動を続けていきたいなと、今後のことをすごく考えてしまいました。
Jリーグ 鈴木順 社会連携室長
こういったSDGs関連の取り組みは、単発のイベントはやろうと思えばなんとかなるものです。しかし、活動を続けていくことは簡単ではないです。私たちも様々なイベントに参加しているので、続いていくイベントとすぐ終わるイベントは感覚値として分かるのですが、今回のような活動は続いていくだろうと思いました。
『センサリールーム』というのは他のクラブさんもやられているので、ここから更にアップデートされてすべての人向けにカスタマイズされた『Green Heart Room』というのは、今後も非常に楽しみです。私たちはその活動を世の中に広めて、他のクラブにも伝えることで、Jリーグや社会全体をよくしていければと思っています。
当日は、来場されていたご家族とすれ違ったのですが、子どもたちも親御さんもとても楽しそうだったのが印象的でした。ヴェルディさんが用意されたシャツを着て帰っていく後ろ姿を見たら、本当によい施策だったのだと実感しました。
障がいの種類によっては、当事者の方やご兄弟が親御さんのことを慮って自分を律していることが多いという話も聞きます。そういったことがなく子どもが子どもらしくいられるというのは、親御さんにとってもうれしいことなのではないかと思います。
東京ヴェルディ 中村一昭 普及部コーチ
来ていただいたご家族のお顔を見て、やってよかったなと思いました。まだ空いている部屋があるので、今年はホームゲーム1試合に呼べる家族の数を増やしていくことが目標です。新型コロナウイルスの影響が収束してきた頃には、アウェイサポーターのご家族もぜひ受け入れていきたいと考えています。
10年後、ほとんどのクラブがこういった部屋を持っていたら、全国で誰でも試合観戦ができますよね。サッカーだけではなくバスケや水泳、ラグビーなどあらゆる種目で、誰もが気軽にスポーツを観戦できる世の中を作っていきたいと考えています。
※左から、エムール高橋幸司代表取締役、多摩桜の丘学園髙橋幹基教諭、東京ヴェルディ中村一昭コーチ、Jリーグ鈴木順社会連携室長
ライター:渡邊志門/カメラマン:高瀬竜弥
東京ヴェルディは今後もSDGs&スポーツ普及活動を続けていきます。
SDGs領域での協業をお考えの企業、学校、地域の方はこちらもご覧になっていただき、お気軽にお問い合わせください。
【スポーツ&SDGs普及活動】
https://www.verdy.co.jp/content/school/spread/
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東京ヴェルディ株式会社 普及部
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