MATCH試合情報
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【試合展開】
前節までの段階で3連敗を喫したヴェルディ。自分たちのスタイルを追求し、それを実現する時間帯もありながら、エアポケットを突かれて失点し、勝ち点を落としてきた。
昇格プレーオフを見据えると、もう1敗も許されないところまで追い詰められた。ただし、チームはブレることなく、自らのスタイルの追求を続行。その深化こそが勝利につながると信じてトレーニングを積み、このFC琉球戦を迎えた。台風の影響で航空便がのきなみ欠航になる中、ホームチームのサポーターを凌ぐほどのサポーターがビジタースタンドを埋め尽くす。これ以上ない後押しを受け、ヴェルディの選手たちはピッチに立った。
メンバーの大きな変更はリベロ山本理仁の離脱。代わりに梶川諒太がリベロに入り、フロントボランチは負傷明けの井上潮音がクレビーニョとコンビを組んだ。右サイドバックには澤井直人を起用し、李栄直が代表合流で抜けたフリーマンには森田晃樹を置いた。
お互いにボールを保持して攻撃的な志向を持つチームだけに、序盤は中盤の攻防が続いた。そこでジワジワとペースを握ったのはヴェルディだった。後方から陣形を押し上げ、前線から相手への圧力を強める。高い位置でボールを奪うと、手数をかけずにショートカウンターを繰り出して琉球ゴールに迫る。2分には左サイドで小池純輝が抜け出してチャンスを作るが、クロスボールはわずかに合わず。19分には寄せの甘さを突いてクレビーニョがミドルシュートを放つが、わずかにゴール上へと逸れた。高い位置から寄せられてロングボールが増え始めた相手に対して、ヴェルディはボールを回収して後方からしっかりとビルドアップ。相手の守備陣形を見てサイドを変えながら、揺さぶって攻め手を作り出す。結実したのは25分、右サイドのスペースを狙った澤井がサイドを変えるパスを受け、突破はできないながらもマイナス方向に戻す。そのボールを梶川がワンタッチで相手ゴール前に入れると、ニアと中央で囮になった背後に小池が飛び込み、ワンタッチボレーをゴール左から流し込んで華麗な形で先制に成功した。前半終盤に試合は大きく動く。40分にゴール前で富所をフリーにしてきわどいシュートを打たれるも、これは枠のわずかに上に逸れて事なきを得る。その直後、ハーフライン付近の自陣でボールを持ったクレビーニョが、相手の寄せがないとみるやルックアップし、逆サイドの小池の走り出しに合わせてミドルレンジのループパスを通す。左サイドから背後をとった小池はゴール前に抜け、相手GKの出端でシュートをゴール左に流し込んだ。その4分後にはまたもクレビーニョが起点になる。44分、若狭大志が鋭い縦パスをクレビーニョに通すと、反転したクレビーニョは、前線に抜け出す動きをした森田にスルーパスを通す。後ろから追うDFを背にしながら、森田は右斜めの位置からシュートをゴール左に流し込んで、一気にリードを広げた。終了間際には球際の寄せを何枚も剥がされ、ゴール前で決定的なシュートを打たれるが、上福元直人が鋭い反応でボールに食らいついてはじき出した。
「きちんと自分たちでボールを持つこと。ただし、過信はするな」。そう指揮官が檄を飛ばした後半も、ヴェルディは猛攻の手を緩めない。
立ち上がりこそリードを追う相手の勢いに押されたが、マイボールを手に入れてからは、前半より厳しくなったプレスをはがしながら、前線の手薄なエリアへといち早くボールを運んでいく。54分に強烈なミドルシュートを叩き込まれて1点を返されると、目を覚ましたように攻撃姿勢を強めた。58分、ロングスローのセカンドボールを梶川が拾って前線に送ると、パライバが受けてカウンター発動。数的優位の中で一度はクレビーニョに横パスが引っ掛かったが、もう一度パライバが拾って、右サイドへパス。これを受けた森田がカットインしながらシュートを決めてリードを広げた。69分には永井スタイルの真骨頂のゴールが生まれる。左サイドに開いた位置で小池がボールを受けると、相手最終ラインの背後に向けて森田がダイアゴナルに走る、そこにボールを入れた小池はゴールに向かってペナルティエリアに入っていく。森田はワンタッチでマイナスに落とすと、奈良輪雄太もワンタッチでゴール前へ丁寧なパスのようなクロスを入れる。井上が受けたボールを落とし、走りこんだ小池がボレーでゴール右へと突き刺した。小池を起点に、フィニッシュの小池まですべてのプレーがワンタッチで結実したゴール。この素晴らしい1点が試合のクライマックスとなった。
その後も前がかりになった琉球の背後を突き、何度となくチャンスを作り出したが、終盤にパライバのシュートがポストを直撃するなどわずかに及ばず、それでも5得点と攻撃力が爆発して大勝を収めた。
3連敗という苦しい結果を突き付けられ、チームは確かに厳しい状況に置かれた。強引にでも前を向こうとクラブハウスで普段通りに振舞ってきた選手たちだが、自分たちが信じるサッカーが思うように実現できないもどかしさや苛立ちは、ピッチ内外で感じ取れた。それでも変わらなかったのは、ひとたびトレーニングでピッチに立てば、自分たちが追い求めるサッカーに対して真摯に向き合い、集中力を高く保ってそれぞれのメニューを全力でまっとうする選手たちの姿勢だ。苦しみもがいた分、その反動が結果という形で返ってきた。5ゴールを奪ったことは決してフロックではない。それを証明するために、次節、西が丘で上位勢のヴァンフォーレ甲府を迎え撃つ。
試合を振り返ってください。
まずは台風の中、東京からたくさんのサポーターが来てくれたことに感謝を申し上げます。我々は普段から、特にファンやサポーターに感動を届けることが一番の目的であることを考えれば、今日は良かったなと思います。選手が非常にこのサッカーといいますか、自分が目指しているサッカーを信じてくれて、普段の練習から精一杯やってくれているその成果がたくさん出たことが嬉しいです。選手にはあらためて感謝したいと思います。プロの世界というのは、日々の、毎週ごとの勝敗でいろいろなことが左右されていきます。自分の中で横軸があって、それが勝ち負けだと思っています。もうひとつ大事にしているのが、縦軸です。横軸だけでは横ばいですし、どういうサッカーをして質を高めていくかという未来につながる縦軸のところもすごく意識してやっています。その中で、横軸と縦軸が良い形で進めていけたのはとても嬉しく思います。
普段の練習からファーストチョイスは裏だと言い続けている中で、それがこのゲームではよく出ました。その要因は?
普段から我々がやっていることで、相手を見る、ということに尽きると思います。相手が前から来るなら裏ですし、相手が引くんだったらそこでもう一度ボールを持って引き出させるという作業ですし、今日はその判断を選手たちがしっかりやってくれていました。
少しは大人になったということでしょうか?
まあ、みんな大人なんですけど(笑)、今日は特に相手を見るということ、普段の練習からやっているんですけど、その成果が良く出たなというゲームだったと思います。
現状、前線に怪我人が多いと思います。その中で小池選手がハットトリック。FW不足の中で、どういう風にチームを作るのか。
FWだけではなくて、選手が離脱している中で、キレイごとに聞こえるかもしれませんけど、どの選手が出ても同じレベルのサッカーをするというのがテーマのひとつなので、そういう意味では代わりで入った選手がちゃんと仕事をしてくれますし、それぞれが普段の練習から高い意識をもってやってくれているので、今日はその成果が出たと思います。
小池選手や森田選手の評価を教えてください。
まず小池選手はチーム内で一番点を取っている選手ですし、ゴール前の感覚が素晴らしいと感じますし、今日は特にたくさん出たと思います。そこまでにボールを運んでいく、崩していくという形が、練習通りにきちんとやれたのが、小池選手ももちろん素晴らしいのですが、それ以外の選手も意図がきちんと共有できていることが素晴らしいと思いました。森田選手についても、考え方ですが、やっぱり本来は中盤の選手があのセンターフォワードのポジションにいるということで賛否両論あると思うのですが、彼に関しては僕が監督をしていたユースの頃からあのポジションを任せていますし、あのポジションで年間10点とかとっていますし、自分の中では想定内です。もっとやれるな、というのが正直な気持ちです。
今はパライバの存在が大きいのでは?
我々にとっては強烈な武器ですし、ストロングであることは間違いないです。彼の良さを生かしていくことも監督としては考えていかないといけませんし、考えているところでもあります。彼を生かしながらも、チーム全体を考えながら彼の良さを引き出していけるのではないかと思っています。
以前在籍していた琉球の印象は?
正直に、感慨深いです。JFLの時代もありましたし、九州リーグの時代から自分と藤吉が関わらせてもらっているので、あの時を考えればJ2までこられて、この素晴らしいスタジアムで、沖縄県民みんなの力だなと思います。今日はヴェルディの監督として、第二の故郷と思っている沖縄に帰ってくることができて、思い入れの強い琉球とこうして試合ができたことは、一人のサッカー人として本当に幸せに思いました。
MF 16森田 晃樹
試合を振り返ってください。
数試合勝てていなくて、皆がすごく勝ちたい気持ちでやっていて、それが結果につながってよかったかなと思います。
2ゴールの場面を振り返ってください。
1点目はクレビーニョがいい位置で前を向けて、クレビーニョなら見てくれると思ったので、タイミングだけを伺ってあとは流し込むだけだったかなと。2点目もパライバが自分にお膳立てしてくれて、あとは相手をよく見て流し込むだけでした。そこまで特別難しい形ではなかったですが、チームのために2点を決められて良かったです。
柏レイソル戦に続いて、フリーマンでプレーしました。やりやすいポジションでは?
ユースの時にやっていて、少し間が空いていて、やりやすいと言われればそこまででもないのですが…。レアンドロみたいに上手いプレーはできないけど、守備で頑張るなどを今日は意識していました。
後半の小池選手のゴールシーンでは、森田選手らしさがゴールにつながったのでは?
ボールの受け方あたりは自分の特徴だと思っているので、そういうところを出せたのは良かったかなと思います。
次節、ホームでの甲府戦に向けて意気込みをお願いします。
今日の試合だけではなくて、次の試合も勢いに乗って勝てるように頑張ります。また応援をお願いします。
MF 19小池 純輝
まずは、ハットトリックですね。
ピッチでもゴール裏でも言ったのですが、高校生以来なのですごく嬉しかったです。
今日はチームの狙いが上手くはまったように感じました。
やろうとしているところが出たシーンが多かったと思いますし、ゴールシーンもチームとしてやろうとしていることが出たと思うので、それはすごく良かったと思います。
永井さんがいつも言っている「相手を見る」という部分の判断が、チーム全体ではまったのでは?
考えながらやっているのですが、すごく自然にというか、考えなくても動けているシーンが増えてきているかなという印象があります。そういう時はボールも人も動いているのかな、と思います。
1点目の場面を振り返ってください。
1点目は、チームとしてやっていますし、ポストゾーンのところをストライカーが狙うというのは日ごろからやっています。そこに出してくれたのがカジだったので、いつも一緒にいる時間も長いですし、互いに目が合わなくても分かり合えるという場面も多いので。それが形になって良かったですね。
2点目は裏に抜けた形でした。
チームとしてワイドストライカーは常に裏を狙うのは取り組んでき中で、クレビが良いボールを出してくれたので落ち着いて決められました。
3点目は小池選手が開いて受けたところから始まり、4人が絡んで最後はまた小池選手でした。
そこもまた、チームとしてワイドストライカーにボールが入った時に、森田選手がポケットに入って、僕を追い越してきた奈良輪選手からのボールがシオンに入ってからのゴールだったので、チームとしてやろうとしていることが形になって点につながった場面かなと思います。
次節、ホームでの甲府戦に向けた意気込みをお願いします。
ここまで3連敗していて、サポーターの方に勝利を届けていられなかったので、残りの試合でひとつでも多く勝利をして、残りのホームゲームも限られてきたので、勝利を一緒に共有して笑顔になりたいと思います。
MF 14澤井 直人
気負わずに仕事をこなしていた印象です。
自分としてはチームが勝てたことがとにかく良くて、もっともっと永井さんのサッカーを自分たちは完成度を高めていきたいと思いますし、そのワンピースになれればと思っています。その中で、自分の良さを出しながらハードワークできればと。結果としては良かったですが、個人としてはまだまだ攻撃面でもっと関わっていきたいというのが率直な感想です。
後半は前半に比べて前に出るタイミングが増えたのでは?
そうですかね? 全然足りないです。前半は点が入るまでは結構前に意識をしていたんですが、後半に3-0というのもあって、よりパライバを意識しながら自分が彼の良さをもっと出せたらと思っていたのですが、まだまだですね。もっと前に出ていかないと、自分の良さは出ないと思うので。
グラウンダーのクロスは点につながりそうでしたが、あれも狙いのひとつ?
そうですね。クロスはここ最近練習しているので。味方が入ってくるところも分かっていますし、あとはそこに自分がピンポイントで入れられるように練習するしかないです。