MATCH試合情報
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【試合展開】
ここ2試合連続で引き分けが続いているヴェルディ。今節は敵地に乗り込んで横浜FCと対戦した。この日は、昼前から強風が吹き荒れる荒天となったが、キックオフの段階ではかなり収まったものの、それでもボールに少なからず影響が出る風が吹く中で試合を迎えた。ヴェルディは、前節警告累積で出場停止だった高木善朗がスタメンに戻り、左サイドバックには安在和樹が3試合ぶりにスタメンに戻った。キックオフ当初のシステムは中盤がダイヤモンド型に並ぶ4-4-2。ファジアーノ岡山戦で相手を圧倒したこの陣形が、この日は逆に相手に勢いを与えるきっかけとなった。
序盤こそ前の圧力、ボールへの圧力を強めるヴェルディだが、アンカーの中後雅喜の両脇のスペースに相手のFWが入って起点となり、マークの引き渡しの都合からなかなか相手を捕まえ切れずに押し込まれていく。特に相手FWイバがピッチをワイドに動いてポストプレーで起点を作られ、横浜FCに前向きでボールを持たせて迫力を持たせてしまう。また後方でのパスミスなどもあり、なかなかテンポが上がらずに時間が過ぎていく。そして22分、スローインの流れから起点となった三浦知良を潰し切れずにサイドを割られ、ゴールを横断するパスを通されて逆サイドでフリーの寺田紳一に詰められて失点。反撃に出るにあたって、ヴェルディはシステムを変更した。中盤の配置をダブルボランチと2列目に3人が並ぶ4-2-3-1へとシフトチェンジ。特にボランチを2枚にすることでセカンドボールの奪取の確立を上げて、そこから大きく展開する形を狙った。それが奏功し、前半の終盤は主導権を奪い、ボールを保持して中後の展開力を生かして試合を優位に進めていく。
さらなる変化を加えたいヴェルディは、後半から杉本竜士を投入。平本一樹を1トップに置き、2列目は右から南秀仁、高木善、杉本と並ぶ形で前への推進力を増やしていく。前半終盤の勢いをそのままに、後半は完全にヴェルディが試合を掌握した。相手の起点をセンターバックコンビを厳しい対応で潰し、こぼれ球を中盤が拾って素早く縦方向やワイドに展開し、スピードに乗った攻撃で相手を押し込んでいく。51分には右サイドで細かくつないだ後に中後が大きく左サイドに展開して相手を揺さぶり、安在のクロスに平本が飛び込む。惜しくも相手GKに先に触られたが、こぼれ球を南がゴール正面で拾う。しかし、コントロール後に体勢を崩し、シュートは惜しくも身体を張って飛び込んだ相手にブロックされた。ヴェルディの猛攻は止まらない。ここで攻撃を牽引したのが平本だった。一端トップの位置から落ちてきてボールを受けると、反転してドリブルを開始。スピードと勢いのあるドリブルで相手のマークを一枚ずつ豪快にかわし、サイドからサポートに入ってくる味方を使ってチャンスを作り出す。そのドリブルから好機が生まれた。60分、ハーフラインで相手のバックパスミスを拾った平本が反転してドリブルを開始。身体を当ててくる相手をもろともせずにスピードに乗ってバイタルエリアへ。これを相手DFが身体をぶつけながら止めてゴール正面20メートルほどの絶好の位置でフリーキックを手に入れる。62分、このフリーキックを中後雅喜が曲がりながら落ちるキックでゴール右隅へと流し込み、好機を逃さずに同点に追いつく。これで俄然ヴェルディの攻撃が活気づく。前に出てこざるを得なくなった相手を尻目にカウンターからチャンスを創出して、サイドに起点を作ってゴール前にあと一歩というところまで迫った。前線の選手を入れ替えて流れを変えようと試みる相手に対しても守備陣が冷静に対応。終盤にオープンな展開になってきながらも攻撃の手を緩めず相手ゴール迫った。しかし、逆転まで辿り着くことはできず、1-1のドローで試合終了を迎えた。
流れの中からのゴールが生まれなかったが、あと一歩詰めるところまでの段階にはある。これをゴールに直結させるためにも、トレーニングの中で精度を高めていき、次節のホームゲームで進化の証を見せたい。
【試合後選手コメント:MF 8 中後雅喜選手】
――今季最初のFKで見事なゴールを決めましたね。
「蹴るのは最初でしたね。蹴った瞬間に入ったという感覚はありました。昨日の練習でもあの角度からセットプレーの練習で1本決めていたので、感覚的に良いものがありましたし、アンカズ(安在)が居たことによって相手のキーパーとの駆け引きに勝てたと思うので、そんなに力を入れずに向かい風でしたが、力を入れずに蹴れたのが良かったと思います。あとウチはあまりああいうところでファウルをもらえませんが、(平本)一樹さんがああいうところで仕掛けるということをしてくれてファウルを取ってくれて、あれは大きかったです」
――安在選手は自分に蹴らせてほしいとアピールしませんでしたか?
「しませんでしたね。感覚的にも僕が蹴りたい気持ちもありましたし、彼も昨日の練習で決めていましたが、ちょっと風が強いと言っていたので、あまり自信ないのかなと思っていました(笑)」
――後半は良い形でボールを捌いていましたね。
「入りで一番警戒していたスローインというか、セットプレーからやられてしまいました。普段から冨樫監督も攻撃でも守備でも集中してやらないといけないと言われていたところでやられてしまい、正直僕も(三浦)カズさんが受けに行ったところは、僕のマークだったので、気にしていた部分もありました。ただ、その失点を機にフォーメーションも変えて、ここからという形になって前半の終わりは良い形で終わりました。相手も自分たちがリードを奪っているから無理していないというふうに言うかもしれませんが、僕らとしては前半終わりに相手を押し込んで、良い形で前半を終えて、それが後半に繋がったと思っています。ただ、そこで流れの中で得点を奪えなかったことは課題だと思いますし、チャンスもあったので、そういう形で点を獲って勝つ試合を増やしていかないとダメですね」
【試合後選手コメント:DF 3 井林章選手】
――試合を振り返ってください。
「タフな試合でした。相手も調子が良かったので、本当に難しい試合でした。アウェイで勝ち点1を獲れたことは良かったです」
――風の影響で前半は少し難しい展開になりましたか?
「そうですね。ロングボールが流れることが多く、相手のサイドの裏に出すパスがそのままゴールラインを割ってしまうことも多かったです。それによって相手も間延びが起きなくて、ウチのやりたいことができなかったことは事実です」
――ハーフタイムにどんなことを話し合いましたか?
「そんなに細かいことは話し合わず、みんなの意識として試合が間延びしてくるというのがあったので、そこでしっかりと走れれば、去年の良い時のようにショートカウンターから点を獲れたりすると考えていました。そういったみんなの去年からの積み重ねがよく出たと思います」
――対戦相手のイバ選手に対して、立ち上がりからチーム全体でかなりタイトにチェックにいった印象ですが。
「そうやって少しでもファウルされることを相手に嫌がらせないと、彼がゴール前にいると、シュートや足元のテクニックも非常にあるので、そういった場所に居させないために、相手を嫌がらせるようなことをやるべきだと自分の中で思っていて、周りも同じようにやってくれました」
――後半に関しては2ボランチとセンターバック2枚の守備面の貢献がチームを前向きにさせた印象ですが。
「そうですね。自分たちのクリアがそのまま繋がることが後半は特に多かったので、それを前半からできれば、良かったと思います」
――チームとしてはある程度良いゲームができましたが、勝ち点3を獲るうえで必要なことは何でしょうか?
「結局は流れの中から点を獲れていないので、そこに尽きると思います」
――3戦連続ドローで迎える次節の水戸戦に向けてはどのような戦い方を考えていますか?
「修正というよりも相手のストロングを抑えることが大事だと思います。特に、自分は後ろの選手なので。相手のストロングは間違いなく三島選手なので、そこで起点を作らせるようだとキツいですし、彼が点を獲ると相手も乗るので、きっちり相手のキーマンを抑えたいです。それが自分たちの良い形でのカウンターに繋がると思います」
【試合後選手コメント:DF 23 田村直也選手】
――試合を振り返ってください。
「前半に失点していなければ、本当に良いゲームだったと思いますが、後半にあれだけ押し込めたことは良かったと思います。後ろも何とか追加点を与えずにやれました」
――冨樫監督が会見で2センターバックのところでほとんど勝ってくれたとおっしゃっていましたが。
「そこで拾えて二次攻撃、三次攻撃に繋げられたことが、本当に大事だったなと自分としても改めて実感しています。これを今後も続けていきたいですし、欲を言えば、勝ちたかったです」
――前後半で大きく違った展開の試合になりましたが。
「風下のときにパスがうまく伸びずに止まった感覚もあって、それがひとつの要因だと思います。守備面に関しても自分の方に風が向かって来ていたので、少し難しかったです。本当に自分たちが攻めているときこそ、イバ(井林)と一緒に自分たちは集中しようと話し合っていました。相手が大きかったので、簡単なクリアが繋がってしまうのが、嫌だったのでそこは意識していました」
――システム変更が流れを変えたという印象ですか?
「(高木)純平さん、チュウさん(中後)はうまいですし、前に付けられる選手なので、南とかもその方がやりやすかったと思います。とにかく、既存のシステム両方を使い分けてどんな相手に対しても対応できるようにしていきたいです」
――試合中に痛めたヒザは大丈夫ですか?
「元々、痛みがある状態でプレーしていて、同じ部分にダメージを受けてしまいました。ただ、何とか次も出られるようにやっていきたいです」
【試合後選手コメント:FW 7 杉本竜士選手】
――後半からの出場でチームに推進力を与えるプレーが多かった印象ですが。
「何かしら、良い意味でも悪い意味でも変えなければならないという気持ちが強かったので、しっかりと仕掛けて、ミスしてもいいというか、まずチームの勢いを出すことを念頭に置いていたので、ミスしてもいいという気持ちで積極的に仕掛けました。チームは前向きに攻撃でも守備でもできるようにと思い、プレーしました」
――ベンチから戦況を窺っていて感じた部分を教えてください。
「言い方は悪いかもしれませんが、少しつまらないというか、サポーターはああいうサッカーを期待して見に来ているわけではないので、サッカーとして良いか、悪いかは分かりませんが、僕たちは攻撃的に戦うべきだと思っています。とにかく、ミスをしてもいいから、サポーターがこういうシーンを見たいと思えるようなプレーを増やしていかなければならないと思います。僕としてはそういう部分を良い方向に変えていきたいと思っています。全体的に少しミスを怖がるふうに見えていたので、自分が先頭に立って攻撃的にプレーして、ミスを恐れずに仕掛けるという雰囲気はある意味必要なことでもあるので、自分が出たらそこを変えようという気持ちで見ていました」
――後半開始早々にミドルシュートを狙ったのもその気持ちの表れでしょうか?
「あれはやりたい形ではなかったです。外してしまったので(笑)。とにかく、シュートの部分ではミスしてはダメですが、そういう積極的なことをやりたかったです。あれは良いプレーではなかったです。シュートは入ってこそ良いプレーになるので」
――システム変更と守備のバランスの良さもあって攻撃が機能した印象でしたが。
「僕は後半から出ているので評価は難しいところです。前半ありきの後半だと思っていますし、今日は後半が特別良かったというよりも、後半によく見える試合だったと思います。別に僕が後半流れを変えたわけではないですし、前半で変わった(高木)大輔が悪いプレーをしていたわけでもないです。確かに後半の方が勢いを持ってプレーできましたが、それは後半のメンバーとシステムが良かったわけではなく、あの前半があってこその後半だったと思います」
――ゴールを奪い切るうえで必要と感じている部分はどこでしょうか?
「シュートの精度ですかね。そういってしまうとそれで終わってしまいますが、その前のドリブルのファーストタッチの置き所やシュートに入る時に、どっちのコースに打つかということを意識してドリブルするのか、それとも敵の動きを見ながらシュートをファーかニアに打ち分けるのか、というようにもっと豊富なイメージを持ちながらできれば、もっと幅が広がっていくと思います。今日は久々の出場で味方との連係が少なかったですが、ああいうドリブルの場面で味方にパスコースに入ってもらうことも、今後必要なことだと思います」
【試合後監督コメント: 冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「本当に自分たちがご飯を食べてお風呂に入って寝て、朝起きて試合を迎えたという当たり前のことが、当たり前ではない中で、サポーターも強風の中、駆けつけてくれて一生懸命サポートしてくれました。選手たちにもその話をして、今日自分たちが“たったの90分間”しか戦わない。色んな思いを持って戦っている人がたくさんいる中で、自分たちは“たったの90分間”しか戦わないので、そこですべてを出し切れるように、心折れずにみんなで戦っていこうという話をしました。
前半は少し自分たちのシステムの中で、うまくいかないこともあって、失点してしまったこともありました。それを受けて、少しシステムを変えながら自分たちが流動性を持って、サッカーを進めていく。やはり両サイドが追い越していく、またはボールを出してパス&ゴーで追い越していく、3人目で使っていくというように、自分たちが本当に良いところを狙っていくよりも、モビリティを持ってしっかりとペナルティエリアに入っていくというところでは、表わせられたのかなと思っています。
また、後ろのセンターバックが2対2の状況が多かった中、1対1を全て勝っていたこと。そして、ボランチがセカンドボールを拾ってしっかりと前方に繋いでいけたことが、より後半自分たちが強い力を前に運べた理由だと思っています。勝ち点1で本当に悔しさしか残らないゲームでしたが、選手とサポーターの力はすごく感謝できるようなゲームでした。自分たちはアウェイで調子の良い横浜FCさんを相手に勝ち点1を獲れたことを、また次に繋げるためにも、1週間自分たちには安定してトレーニングできる環境があるので、それに感謝して一生懸命やっていきたいです」
――前半のシステムがうまくいかなかった理由に関して教えてください。
「自分たちがやはりポゼッションのところで、ボールをうまく回すことができなかったので、逆に言えば、相手の両サイドハーフのところに誰が付いていくのかという部分で、中盤がフラットになったオーソドックスな[4-4-2]になる場面が多かったので、それならシステムをしっかりと変えて、自分たちが両サイドハーフのところで中に絞って、さらに外を追い越すサイドバックを動かせれば、同点、逆転に繋げていけると考えていました」
――風もあって難しい展開でしたが、ハーフタイムに選手たちに対して、どんな声掛けをしましたか?
「本当にハーフタイムの時も前向きな声が出ていましたし、トップに移動した平本のボールのキープで少し時間を作ってくれるというところで、自分たちが前向きに走っていく距離や力が、前方方向にかかっていたので、より自分たちの気持ちを前向きにできました。もちろん、相当疲れていましたし、平本も足が攣るぐらい走っていましたけど、それでも前方方向に自分たちが前向きに90分間やれたと思います」
――前後半でパフォーマンスが大きく変わる不安定さに関して、どのように捉えていますか?
「色々とコーチたちとも話し合っている中でフィジカルコンディションやメンタルコンディションなど、自分たちはそこでなかなか安定感を欠いている部分がひとつの理由だと思います。あとは自分なりに人を動かし過ぎて、コンビネーションの部分が作り切れていないという思いもあるので、そのへんはトレーニングでもう少し改善していきたいです」
――中後選手に関して前後半でパフォーマンスが大きく変わりましたが、ハーフタイムに何かありましたか?
「後半は2ボランチにして周りに(高木)純平がすごく前方方向に動いて、中後の周りでサポートしてくれたこと。また、ファーストディフェンスが早く決まって中後のところで、ボールがセカンドボールなど前向きに入ったことで、より彼が生きたと思います」