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2020.09.27

緑の十八番 小池純輝選手編

マッチデイプログラム企画『緑の十八番』

 

小池純輝 選手

 

文=上岡真里江(フリーライター)

 

2013シーズン以来、自身二度目の東京ヴェルディ加入を果たした昨シーズン、小池純輝はプロ14年目でキャリアハイの16ゴールを記録した。それまで最高でも6ゴール(2009年)、前所属の愛媛では2シーズンで3ゴールに終わっていただけに、「僕が二桁得点すると予想していた人なんて、ほぼいなかったと思いますよ」と、本人も一笑する。だが、その飛躍的数字が決して“たまたま”でなかったことは、小池がいかに苦境から逃げず、自身と向き合い、前向きに努力し続けてきたかを振り返れば、十分に納得がいく。

 

「僕に求められているのも、僕自身が得意としているのも、相手の背後を狙うこと」。自他ともに認める武器を、長い時間をかけて、丁寧に、丁寧に磨き上げてきた。それが特長だとはっきり意識してプレーするようになったのはプロに入ってからだと言うが、ルーツをさかのぼっていくと、中学生時代にたどり着く。

「小学生の頃からずっとFWをやっていて、今までで一番点を取っていたのが中学生時代でした。その時も、特別意識していたわけではなかったですが、相手の裏を取って、例えば1対1になった形でのゴールがすごく多かった。そうやって、成功体験を重ねる中で、『こういう時にボールが出てくるな』とか、『こういうプレーをしている時は点が取れているな』と実感して、それを長く続けてきたことで自然と身についたんだと思います」。本能でスキルを吸収したのだろう。気がつくと、最大の持ち味になっていた。

 

プロに入り、相手の背後を狙うことを“武器”としてフォーカスするようになったのも、小池のサッカーキャリアならではと言える。浦和レッズのアカデミーから念願のトップ昇格を果たしたものの、3年で4試合の出場にとどまり、4シーズン目に出場機会を求めてザスパ草津(当時)へ期限付き移籍した。その後、水戸ホーリーホック、ヴェルディ、横浜FC、ジェフユナイテッド市原・千葉、愛媛FCと、7つのクラブでプレー。移籍に関しては様々な視点があり、人によって考え方や価値観は様々だが、小池にとっては移籍回数の多さこそが貴重な財産となった。

 

新天地で試合に出て、結果を残すためには、「まず、自分自身が自分のプレーの特長(特徴)を知ることが何より大事。そして、それを周りの選手や監督に伝えて、『コイツはこういうタイミングで走るんだな』、『こういう時に裏でもらいたいんだな』と、より深く知ってもらうことは意識してやってきました。そうすると、結果につながる機会が増えて、その成功によって武器が一層磨かれていく。で、また最初に戻るというか、より自分の特長を知ることができるというイメージです」。

 

“移籍”という、人生の岐路に立つたびに己とじっくり向き合い、特長を『知る』『伝える』『磨く』という3つの行程を何度も繰り返してきたことで、研磨してきた。

 

それは同時にプレーの幅も広げてくれた。草津時代、FWからサイドバックへのコンバートを打診された。「試合に出るためだったら」と二つ返事で受け入れたが、さすがに戸惑いは隠せなかった。「DFとしてのポジショニングや1対1の対応に重きを置いた時期もありました」。しかし、ふと立ち止まって考えた。「FWだった僕がその位置に置かれた意味って何だろう?」。答えはすぐに見つかった。

 

「もちろん、DFとして求められる最低限の役割はクリアしなければいけない。でも、期待されているのは攻撃面のはず。ゴールへの積極性というところで何かチームのプラス材料にならないと、使ってもらえないだろう」

 

そう割り切ったことで、迷いは一気に吹っ切れた。その後、様々なチーム、様々なポジションに身を置いてきたが、「右だろうと左だろうと、前だろうと後ろだろうと、僕自身のストロングは変わらない。その強みをそのポジションでどうチームに還元するかが大事。その根本的は変わらないと思います」。そのモットーとプレースタイルは決してブレることがない。

 

7度の環境の変化をはじめ、こうした一つひとつの経験、自問自答の日々の積み重ねが、2019年の16ゴールを生んだと言っても過言ではないだろう。

 

昨シーズン途中からチームの指揮を執る永井秀樹監督も、プロ14年目にしてキャリアハイの数字を残し、プレー面でもさらに精度を高めている33歳のアタッカーに心からの賛辞を送る。「選手というのは、年齢に関係なく、常に成長できるものなのだと、あらためて証明してくれている」。小池自身も、二度目のヴェルディ加入を果たしてからの確かな成長を実感できているという。ただ、その“成長”の定義に関して、彼には独自の太い信念がある。

 

「成長を『=結果』にしてしまうと、結果が出なければ成長ではなくなってしまうので難しい。僕の中での成長というのは、上手くいかない時や失敗した時に、『何でだろう?』、『どうすればできるだろう?』と考えて、何か行動を起こしてみる、“考動”のことを言うんじゃないかなと思っています。それをやることによって、低い階段かもしれないですが、何か一段登る、その過程こそが成長なのかなと。それを積み上げていって、また目の前にあるうまくいかないことを考えて、行動して、ちょっと成長する……。小さな成長を積み重ねて、たくさん集めた時に、大きな結果につながるのかなと。僕は今、そういう感覚にあります。なので、この年齢になっても、“考動”を続けていけば、それをやる前の自分よりは確実にレベルアップしていると思っています」

 

今、励んでいる“考動”は、「永井さんが求めていることをどうやったら表現できるか」。つまり、「常に背後を意識して狙って、磨いていくこと」。それこそが、「今後、自分の生き残っていくための価値になる」と確信している。

 

「ヴェルディのサッカーに点を取らせてもらっていると思っています」。自分の特長が生き、ゴールという結果をもたらしくれているのは、チーム全体として目指すサッカーができていればこそ。同じヴィジョンを描き、欲しいタイミングで、欲しい位置にパスを出してくれるチームメイトたちには感謝しかない。

 

理想は「相手の背後でもらって、そのまま点を決めること」。だが今シーズンは、フリーキックに合わせるという、これまでのキャリアでは一度もなかった形で2得点を決めている。ヘディングでのゴールというのもまた、初めてのことだ。「それも一つの成長かな」。

 

これからも、こうした小さな成長をコツコツと積み重ね、一つひとつ集めていくのだろう。そして、それを大きな成果として形にしてみせるのが、小池純輝という男なのである。