選手が明かすチームメイトの素顔『PLAYER INTRODUCTION』vol.20 稲見哲行▶︎加藤弘堅
緑の戦士たちによるリレー形式の“他己紹介”企画。プレーヤーとしての特長はもちろん、チームメイトだからこそ知っている選手の素顔に迫ります。第20回は稲見哲行選手が加藤弘堅選手を紹介!
取材=上岡真里江
トヨくんはやっぱり優しい人
トヨくん(阪野豊史選手)、明治大学の後輩の中から僕を選んで紹介してくれてありがとうございます! 同じ明治大出身ですが、初めてトヨくんに出会ったのはこのチームに来てからでした。「静かそうな方だなぁ」というのが第一印象だったのですが、案外みんなにイジらていますし、後輩との接し方も上手ですし、コミュニケーションを取るのが上手だなということが段々分かってきました。一緒にリハビリをしていた時期もたくさん話しかけてくれて、いろいろとアドバイスをくれました。本当に優しい先輩ですね。
僕もトヨくんもヴェルディに来てすぐにケガをしてしまったので、お互いにほぼリハビリからのスタートだったのですが、トヨくんは本当にコツコツやっていて、その姿勢からものすごく学ぶことがありました。それに、まだ復帰して8試合しか出ていないのに、もう3ゴールも挙げている。そうやってしっかり結果を残すのはさすがですよね。自分も見習わなければと感じています。
そう言えば、トヨくんがリハビリでのエピソードを話していましたね。バランスボールを使ったメニューの話、あれは本当です!(笑)。手加減なしでトヨくんのことをボコボコにしたら、次の日に傷みたいなものができていて。トヨくんに笑いながら「おまえ、もっと手加減しろよ〜」と言われました(笑)。でも逆に言えば、それくらい遠慮なく絡めるというか、後輩に気を遣わせないようにしてくれているということなので、やっぱり優しい人なんだと思います。
それから、僕のことを「見た目はしっかりしてそうだけど、意外と後先考えずに攻めるタイプ」と言っていましたが、どうなんだろう? 自分では真面目だと思うのですが、抜けているところがあるというか、親が天然なので、それを受け継いでしまっているのかもしれないですね(笑)。時々「天然」って言われます。それに、周りのノリに合わせてしまうというか、誘われたら断れない性格なので、そういうふうに(後先考えずに攻めるタイプ)見えるのかもしれませんね。僕から見たらトヨくんこそ『堅実』というか、練習にもけっこう早く来て準備しているし、言葉遣いなども丁寧だし、真面目さがにじみ出ているなと感じます。
プレーヤーとしては『何でもできる万能FW』ですよね。それでいて、ちゃんと点も取ってくれるし、本当に頼もしい存在です。頭がいいので「この時間帯に出たら、このプレーを求められているな」というのを分かっていて、途中から入った時はボールキープやハイプレスなど自分の仕事を全うしてくれますし、先発で出ればガンガン背後に抜けたり、足元で収めたり、本当に何でもできます。出ている選手や試合の状況に応じてプレーを変えることもできるし、そこはさすが経験値が違うなと思います。若手にはできないプレーだなと尊敬しています。
よくアドバイスもくれます。僕の強みが守備面、ボールを奪うプレーにあるということを理解してくれたうえで、「その特長を出し続けるほうがいい。苦手な部分は簡単にプレーしたり、他の人に任せてやってみれば?」というようなアドバイスをくれたのがすごく印象に残っています。それと、J1でのプレー経験もあるので、「J1の選手は考えながらプレーしている」「ボールをもらう前にもう一個選択肢を持っておくといい」など、J1仕様のアドバイスもしてくれるのですごくありがたいです。毎日の練習での一つのプレーに対しても声をかけてくれるので、「僕のプレーも見てくれてるんだな」とうれしくなりますし、それをしっかり生かして必死にトライしています。
トヨくんが言っていたように、オフになったら『明治会』やりたいですね。ぜひ連れていってください! リハビリ期間中に一度だけ、トヨくんと山越(康平)さん、加藤蓮の明治大OB4人で、明治の学生ならほぼ全員が行ったことがあるようなご飯屋さんに行ったんですが、その時はほぼ大学時代の話でしたね。「上の代はそんな感じだったんですね〜」とか「俺らの時はああだったけど」とか、世代を超えていろいろな話が聞けてとても楽しかったです。次はぜひ、(佐藤)凌我さんと(長沢)祐弥くんも一緒にみんなで行きたいですね。間違いなくさらに盛り上がると思いますし、楽しみにしています。
「プロになって、アマチュアと一番変わったところはなんですか?」という質問をいただいてましたね。僕が一番感じるのは『個人の責任が重くなった』ということです。例えば、練習前のルーティンやウォーミングアップなども、大学時代は「これをやる」というチームのメニューがあったら、必ずそれを全員がやるとか、練習以外でもそういう部分が多かったんですが、プロは個人個人に任せている部分が多い。一人ひとりの考えや、やりやすさが尊重されていて、他人のことにそこまで干渉しすぎない。それがプロなのかなという印象です。それは逆に言えば、個人に任せても変な方向には行かないという信頼だと思いますし、そこがアマチュアとの一番の違いかなと思います。プロは個人事業主であり、一人ひとりが自分の人生をかけて戦っている。責任はすべて自分にある。チーム内の競争に勝たなければいけないことも含め、個人の力が大事だということを改めて感じています。なので、『お金が稼げるようになった』というトヨくんの予想はハズレですね!(笑)
弘堅さんは「ほころび」を出さない。ガードが固い
さて、僕からは加藤弘堅選手を紹介させていただこうと思います。弘堅さんはみんなのお父さんみたいな……いや、「お父さん」だとちょっと怒られそうなので、「お兄さん」みたいな存在ということにしておきます(笑)。どの選手ともコミュニケーションが取れて、チームを俯瞰で見ることができて、キャプテンではなくてもキャプテンシーを発揮してくれる。本当に素晴らしい方です。トヨくんと一緒でよく話しかけてくれますし、プレーのアドバイスもしてくれる。特に同じポジションなので、守備も攻撃も本当にいろいろと教えてもらっていて、僕からもいろいろなことを聞いています。
アドバイスは技術面のことが多いですね。守備面はある程度評価してくださってる部分はあるので、主に攻撃面でアドバイスをもらっています。例えば、一緒にボランチを組んだ時は、2人の距離感や他の選手にボールが入った時のサポートのタイミングやスピードなどを細かく教えてくれますし、弘堅さんが外から見ている時も、立ち位置について「もうちょっとこうしたほうがいいよ」と、本当に細かく修正してくれます。弘堅さんは相手のチャンスの芽を早めに潰したり、空いているスペースを見たり、フィールドを広く使うことが非常にうまいので、自分ももっと視野を確保して、チームを落ち着かせるプレーができるようになりたいです。
それと、弘堅さんのプレーでぜひファン・サポーターの皆さんに注目してほしいのが「ミドルシュート」です。一緒に練習していると無回転のブレ球が本当にすごいんです! たぶん試合ではまだ決められていないと思いますが、絶対に相手の脅威になると思いますし、本当に精度が高いので、ぜひ期待していてほしいです。弘堅さん、ぜひ決めてください! 僕もミドルは苦手ではないので、負けていられません。
キャラクターとしては、弘堅さんも若手にイジられるところがありますね。でも基本はイジる側なので、後輩のことをイジって笑いをとる感じ(笑)。そのイジりも頭が良いというか、「そんなとこ見てるんだ!?」みたいなところがあるので、返事が難しいこともあるのですが…。弘堅さんって、ほころびを出さないんですよね(笑)。ガードが固い! もうちょっと攻めるじゃないですけど、僕がもっと近づいていけば、何かしらの弱点が見えてくるのかもしれません。でも、まだそれが見えてなくて、今は「私生活もちゃんとしている人」という印象ですね。
そうそう、一つだけこんなエピソードがあります。6月に新人研修で稲城市の『小田良農園』で田植え体験会をしたのですが、その最中、なぜかニワトリの話になって、“烏骨鶏(うこっけい)”の話題になったんです。そうしたら僕、無意識に「うこうけん、うこうけん」って言いながら田植え作業をしていたみたいで(笑)。もちろん、全く悪気はなかったんですが、それを翌日に同期の河村慶人にチクられて、弘堅さんに笑いながらゲンコツされました。まぁでも、あれは弘堅さんもオイシイと思っていたはずですし、きっとそういうイジりを待っていたと思います(笑)。その一件のおかげで、少しだけ仲良くなれたなと僕は思っています!
弘堅さんにぜひお聞きしたいことがあります。二つあって、一つ目は真面目な質問です。選手生命が早く終わってしまう選手もたくさんいる中で、33歳までサッカー選手として試合に出続けている弘堅さんは本当にすごいと思います。プロ生活を長続きさせるための秘訣をぜひ知りたいです。二つ目は、オフの日に何をしているのかな? って気になります(笑)。謎なので。これを聞いたら、ひょっとするとボロが出るかもしれないですよね!? ちなみに僕の勝手なイメージでは、一人で温泉に行くとか、美味しいラーメン屋巡りとか、そういうことをしてそう! 完全に偏見ですけどね(笑)。というのも、何かとこだわりがありそうなので、いい温泉とか、有名なラーメン屋とかを追求してそうだなぁと。どうですか、合ってますか?
最後に、これからもいろいろと迷惑をかけると思いますが、ぜひ弘堅さんにカバーしてもらえればと思います(笑)。一緒にプレーできるように頑張ります。長く一緒にサッカーをしましょう! これからもよろしくお願いします。
■vol.21 加藤弘堅▶︎小池純輝 はこちらから