選手が明かすチームメイトの素顔『PLAYER INTRODUCTION』vol.21
緑の戦士たちによるリレー形式の“他己紹介”企画。プレーヤーとしての特長はもちろん、チームメイトだからこそ知っている選手の素顔に迫ります。最終回は加藤弘堅選手が小池純輝選手を紹介!
取材=上岡真里江
テツはすごく素直で伸び代がある
テツ(稲見哲行選手)、メッセージ聞いたよ。「いろいろと迷惑をかけると思いますが、ぜひ弘堅さんにカバーしてもらえれば」とか言ってたね。返事は「ごめんなさい」です(笑)。これからは一つ迷惑がかかるごとに“迷惑料”が高くなるからよろしく! プロなんだから、お金で解決しないとね…っていうのは冗談だけど(笑)
そういうわけで、テツからバトンが回ってきたので、まずは少しテツのことを話さないとですね。一緒にプレーしていて感じるのは、「ヴェルディユースで育った選手とは違った良さを持っている」ということです。ヴェルディのアカデミー出身選手は攻撃センスが高くて、良くも悪くも感覚派なんですよね。考えてやっているというよりは、本能でできちゃう選手が多い。その中で、テツの特長は別のところにあります。誰から見ても身体能力が高いし、体が強く、守備をするうえで対人的な能力にも優れている。五分のボールを拾いに行ったり、1対1になったときに能力を発揮できる。いわゆる『戦える』部分がストロングだと思います。でも今後、その強みを生かすも殺すもすべて本人次第。それはテツに限ったことではないですが、落ちているヒントを自分で拾って、プレースタイルに必要な技術を身につけていかないと上にはいけない。僕は自分の経験をそれぞれに伝えていけたらと思っています。
もちろん、人を魅了するような技術を身につけるに越したことはないですが、テツの場合はそっちに重きを置いてしまうと良さが消えてしまうと思うんです。生き残っていくという意味では、それは違うのかなというのは本人によく言っています。テツみたいなタイプの選手は、ゲームを見る能力というか、いま何が起きていて、チームがどういう状況なのかを把握して、ゲームをコントロールする能力を身につけるべきだと思います。ただ、その統率力、コントロールという部分は、味方からの信頼を得てこそ発揮できるものなので、日頃の立ち居振る舞いも非常に大事になってきます。ここまでテツは真面目にトレーニングしていますが、そういうのがいい加減な選手が「こうしろ、ああしろ」と指示を出しても、「お前が言うな」と思われることもあるだろうし。日頃の行いで「テツが言うなら」と思ってもらえるような日常の過ごし方をぜひしていってほしいですね。もちろん、テツの方向性を決める立場ではないですが、中盤の選手として生きていくなら、ゲームをコントロールする、俯瞰で見るという部分は勉強していってもいいのかなと思うんですよね。
“俯瞰”にはグラウンドを上から見て、誰がどこに立っていて、どこが空いている、みたいな俯瞰のほかに、メンタル的な部分での俯瞰というのもあると思うんですよね。例えば、相手チームに明らかに疲労している選手、足を攣っている選手がいたら、そこを突くじゃないですか。「こいつ、緊張しているな」と感じることもあるし、時には相手選手同士で揉めていたりもする。そうした中でやっている選手にしか分からない部分はたくさんあるので、それを“感じる”ことも、僕はとても大切にしています。これはいくら伝えても、場数を踏んでいくことでしか身につかない部分もあるので、テツには伝えていますが、頭では分かっていても、本当の意味でプレーに出すのはとても難しい部分だと思います。でも、テツはすごく素直なので、伸び代はとても大きいと思いますよ。性格も優しいですしね。
テツから質問をもらいました。一つ目は「プロ生活を長く続けるための秘訣」です。僕の場合は、『継続力』と『自分を知ること』ですね。『自分を知る』というのは、サッカーのプレーを含め、自分のテンションが沈んだときにそれをどう立て直すか、あるいは調子に乗っている時にそれに気づいてどう立ち返れるか。それと、体調管理もその一つかな。食事の合う、合わないもそう。かといって、全部を神経質に制限するとしんどいので、どこに抜きどころを作るか。そういうメリハリは大事だと思う。
『継続力』については、突発的、単発的に自分を向上させる方法はそんなにないだろうと考えたときに、継続する力を持っておくべきかなと。ちょっとでも「めんどくせぇな」と思うことをどれだけ継続できるか。その力を持っておくと、たぶん何にトライしても継続できるんですよ。それはサッカーのことじゃなくても何でもいい。例えば、「今日はダルいな」と思う時にも部屋の掃除ができるか、とか。そういう「ちょっとめんどくさいから、あとででいいや」と思う時に体を動かせるか。それができるようになると必ず継続力がついてきます。
ちなみに僕は、サッカーで言えば、準備だけは絶対に怠らないようにしてきました。調子がいい時でも悪い時でも、リカバリーの日でも練習の日でも、必ず2時間半前にはクラブハウスに来るようにしています。それは、僕がいろいろな先輩を見てきた中で、長くやっている人ほどきちんと準備しているから。ヴェルディで言えば、奈良輪(雄太)さんは僕よりも早く来て準備していますね。何かを得るためには、必ず労力を伴うということだと思います。
もう一つの質問は「オフの日に何をしているか?」。ほんと気分屋だからなぁ。何も予定がない日は、それこそ部屋の片付けをしているかも。掃除機をかけたり、トイレなどの水回りの掃除、換気扇の掃除もするかな。
ちょっと話は脱線しますが、北九州時代に一緒にプレーさせてもらった本山雅志さんとの出会いが僕の中ではめちゃめちゃ大きくて。モトさんは「頭おかしいんじゃない?」って思っちゃうぐらい、ものすごく人がいいんです。モトさんの実家はお魚屋さんで料理が得意なので、行きつけのお店が閉店した後にキッチンに入って料理を作ったりなんてこともありました。で、その時に「外部の人間がキッチンに入っているのを見て、嫌な思いをした方がいるかもしれないから」と、閉店後まで残っていたお客さん全員のお会計を払っていました。街中を一緒に歩いていたら、落ちているゴミを普通に拾いながら歩いたり。そういう姿を見て「ああ、こういう人になりたい」と思って、僕もマジで変わりましたね。そこから、日頃の行いをすごく大事にするようになりました。だからトイレ掃除もやるし、京都にいた頃はよく神社にも行っていました。コロナ禍になってしまったので東京に来てからはあまり行けていないですが、明治神宮には毎年行っていますし、小網神社や愛宕神社にも行きました。ちょっと質問の答えとはズレちゃったかもしれないけど、そうやってオフの日もできるだけ徳を積むように心がけています。
純輝くんを悪く言う人に会ったことがない
人間性が尊敬できるという意味では、今回紹介する小池純輝選手も本当に素晴らしいと思います! 今日は最終節、この企画もひとまず終了ということなので、第1回に登場した純輝くんへバトンをお返しすることにします。
純輝くんに関しては正直、これを読んでいるヴェルディサポーターの皆さんには説明不要なんじゃないですか? それぐらいの存在ですよね。純輝くんのことはチームメイトになる前から知っていました。というのも、ずっと選手会の役員をされているので、そこで顔を合わせてたりしていました。確か初めてちゃんと会ったのは、2013年か14年の仙台でのチャリティーマッチだったと思います。
僕はコロナ禍になった2020年にファンサービスの代わりとして本格的にSNSを始めたのですが、純輝くんはその前から頻繁に更新していましたよね。人柄の部分も、誰に聞いても悪いことを言う人がいない。それって、本当にすごいことだと思います。そうそう、実は純輝くんよりも先に純輝くんの奥さんと知り合いだったんですよ。ザスパクサツ群馬のラジオ番組をやってくれていたんですよね。群馬には入れ違いで入ったので純輝くんと直接は被っていないのですが、その二人が付き合っていることは当時から知っていました。群馬では純輝くんと一緒にやっていた選手も多かったですが、やっぱり悪く言う人はいなかったですね。その後、ヴェルディでチームメイトになってみたら、本当に評判どおりのパーソナリティでした。
純輝くんはサッカー以外にも『F-connect』などをやっているので、僕もサッカーを辞めた後の話なんかをした時にアドバイスをもらったりしています。一緒にいて、ヴェルディ愛がめちゃくちゃ強いなと感じます。カジ(梶川諒太選手)もそうですが、純輝くんはサッカーだけでなく、いま言った『F-connect』の活動など、いろいろな角度からアプローチしてヴェルディを知ってもらおうとしている。本当に幅広い行動力が印象的ですよね。
そして、そのスタンスが決してブレない。自分の立ち位置によって方向性がブレたりしないし、チームや自分自身がどんな状況でもチームのために発信できる。特にここ最近はなかなか試合に絡めていなくて、絶対に悔しい気持ちが強いはずなのに、そういう感情を押し殺して、人のため、チームのために行動できる。それって簡単なことではないですし、本当にすごいことだと思います。そういう素晴らしい背中を間近で見せてもらえて、個人的にも非常に勉強になっています。
プレーヤーとしても30歳を過ぎて二桁得点を取ったり、年齢に関係なく結果で示せるのはプロとしてすごいと思います。実際にあの動き出しは、味方であれば心強いし、敵になったらめちゃくちゃイヤ! もちろん、努力などもあるのでしょうが、あれは間違いなく才能です。「純輝くん走るだろうな」って分かっていても、マークにつけない走り方をするのでね。たとえボールが出てこなくてもやり続けられるし、さっき言った『継続力』とはまた意味が違うかもしれないけど、自分の強みをちゃんと知っていて、それをチームのためにやり続けられる。それは人間としての根本がしっかりしてるからなんだろうなというのは感じますね。
そんな純輝くんに僕からメッセージです。伝えたいことは一つ、シーズンが終わったら一緒に食事に行きましょう!ですね。今回が最後なので、質問しても回答をもらう場がないのですが、実はぜひ聞きたいことがあって。「純輝くんって怒鳴ったことあるんですか?」。出会ってから一度も声を荒げているのを見たことがないので、人に対して怒りの感情を抱いことがあるのかどうか、めっちゃ聞きたいです。もしないとしたら、どう感情をコントロールしているのか? 食事に行ったときに、ぜひじっくり聞かせてください!
サポーターの皆さん、いよいよ最終戦です。今季も本当に温かい応援をありがとうございました。最後は勝利で終われるようにチーム一丸で戦います!!