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選手が明かすチームメイトの素顔『PLAYER INTRODUCTION』vol.15

緑の戦士たちによるリレー形式の“他己紹介”企画。プレーヤーとしての特長はもちろん、チームメイトだからこそ知っている選手の素顔に迫ります。第15回は奈良輪雄太選手が平智広選手を紹介！

取材＝上岡真里江

ジンは家族の中では旦那ではなくて『長男』

本当はハル（井出遥也）からジン（端戸仁）へという流れでしたが、ちょうどこのタイミングでジンが鹿児島ユナイテッドFCへ期限付き移籍することになったので、僕がそのバトンを引き継ぐことになりました。よろしくお願いします。

ハルとはお互いにケガの時期が長くて、チームとは別でリハビリをしているので、そこで一緒に過ごす時間が長いという感じですね。特にプライベートでどうこうということはないし、サッカーのプレースタイルもどちらかといったら相反する2人。ハルのほうが後輩ではありますが、僕個人としては自分に持っていないものを持ってるっていう意味で、すごくリスペクトしています。

いま「一緒にリハビリする時間が長い」と言いましたが、今年は試合に出た時にけっこうハルと一緒にプレーすることが多いんですよね。自分の良さとハルの良さは違うと思う。ざっくりいうと、僕は人に生かされるタイプで、ハルは人を生かすタイプなので、試合中は彼に生かされるように心がけていますし、攻守において常に彼が気持ちよくプレーできるように意識してやっています。

人間的にも、一言で『本当にいいヤツ』です。それにカッコいいしね（笑）。ただ、ハル！　ジンへの質問が「子育てのポイントを教えてください」だったけど、ジンにそれを聞いちゃダメでしょ！　ジンは子育てしてないから（笑）

その質問は代わりに僕が答えさせてもらいますね。たぶん、ヴェルディの中では1位、2位ぐらいで家のことをやっていると思うので。ウチは料理だけは完全に奥さんに委ねていますが、それ以外のことは僕も積極的にやるようにしています。というのも、自分の性格的に、家にいて誰かが行動しているのに自分だけダラっとできないんですよね。それに、僕がやれば家もうまく回るので（笑）

肝心の子育てに関してですが、プロサッカー選手という職業の基本的な生活スタイルだと、午前中に練習をして、午後はフリーになるケースが多いじゃないですか。午後がフリーということは子供といられる時間があるということ。一般的な社会人の方の多くは朝から晩まで仕事だと思うので、下手をしたら起きている時間に子供に会えないということもザラにあると思います。だから子供と一緒にいられる時間が長いのが、この職業の最大のメリットだと思います。

とにかく、子供と一緒にいられる時間が長いということをアドバンテージというか、良い方向に捉えて、サッカーに悪い影響が出ない程度に子供のことをやってあげればいいんじゃないかなと思います。ちなみに、我が家は僕がプロ2年目ぐらいで子供が産まれて、しかも年子だったのでまぁまぁ大変でした。だけど、サッカー選手でいる間に子供に関われる時間があったのは良かったなと思います。サッカーを辞めてからの時間、家族と関わる時間のほうが全然長いので、そこをうまく自分の中で帳尻合わせて、子供と付き合うようにしています。

そうそう、子育てについてジンの面白い話があります。ジンとは家族ぐるみで仲が良いのですが、奥さんはもう、ジンのことを旦那ではなくて『長男』として捉えている感じなんですよね（笑）。数年前に奥さんが急に、「（ジンが）おむつを替えてくれました！」と連絡してきたんですけど、僕らからしたら「それ、当たり前だからね」みたいな。あまりに期待値が低すぎて、ジンの場合はちょっとしたことでも評価されてしまうという（笑）。まぁ、それでも娘さん2人ともジンのことが大好きだし、家族としてすごく仲良くやっているので、上手くバランスが取れてるんじゃないですかね。よく分からないけど（笑）

いま言ったとおり、ジンとは横浜F・マリノス、湘南、そしてヴェルディと3チームで一緒にやってきたのもあって、家族で付き合いがあるんです。いまも家が近かったので、どちらかと言うとジンよりも奥さんのほうが仲がいいぐらい。ジンが家で昼寝をしているのに、奥さんがウチに来て、一緒に何か料理を作って、できたタイミングでジンが来るとか。あいつはもう、僕のことを年上だと思ってないですからね（笑）

同じマリノスのアカデミー出身ですが、3歳差なので、知り合ったのはプロになってからです。もう、最初に会った時から規格外で、選手としても人としても「人間じゃない」と思っています（笑）

サッカー面でいうと、まさに“天才”って感じ。ジンのことを「どういう選手ですか？」と聞いたら、僕だけではなく、他のみんなからもそのフレーズが出てくると思います。僕はなんでも理屈で考えちゃうタイプなのですが、彼は真逆で、感性だけでプレーしている。実際、「どういう感覚でやってんの？」と聞いても、彼は説明ができないんですよ。「あの時、なんでこうしたの？」と聞いても、「いや、憶えてない」とか、「え？適当」とか、そういう答えしか返ってこないので。そのくせ、すごくピュアでいいヤツなんですよね。ちょっとなんかあったら泣いちゃうような感じで。だから本当に誰にも嫌われないんだと思います。

こんな話をしたら、あとでジンに「言うなよ！」と怒られちゃうかもしれないけど、湘南の時に膝の大ケガをして、数カ月チームを離れることになったんですよ。その時に、みんなの前で泣きながら「チームが大変な時に、チームに貢献できなくてすみません」みたいな挨拶をしてました（笑）。もう、本当にいいヤツなんですよ！　あんなに破天荒なスタイルで人に嫌われないって、なかなかですよね。それも才能なんだと思いますよ。

今回、期限付きとはいえ鹿児島に行くことになって、数日前に連絡をもらった時は正直ビックリしました。マリノスで一緒で、僕が湘南に行ったのと同じタイミングであいつも湘南に来たし、ヴェルディには1年僕が早く入って、その後にあいつが来て、と常に自分が出て行った後を付いてくる感じだったので、今回、先に出ていく状況にちょっと驚きました。実は、また泣くと思ったんですけど、泣いてなかったです（笑）。どうやら単身赴任で行くみたいなので、「悪さすんなよ！」と言いたいです（笑）。でも、本当に頑張ってほしいなと思っています。

平はレフティー特有の感覚を持っている

僕は年齢が近い平智広にバトンを渡すことにします。平とも家族ぐるみで少し絡みがあるし、ここ数年はリハビリも一緒にやっていて、リハビリの空間では一番話すかなという感じですね。内容としてはサッカーのことより、プライベートの話をしたり、好きなスマホゲームを一緒にやったりしています。家族の話でいえば、去年、たまたま同じタイミングでディズニーランドに行って、一緒に行動したこともありました。

人柄としては、見たまんまですね。口数が多いタイプではないですが、やたらキレのあるコメントをするイメージがあります。なんか、ズバッと核心を突くようなことを言うので、話していて賢さを感じますね。

サッカーでは、左利きの選手と右利きの選手では脳の使い方が違うという話をよく聞きますが、実際に一緒にやっていて、左利きの平には「なにか違う感性」を感じる部分はあります。物事をしっかりと考えているタイプであるけれども、一方でボールの持ち方とか、パスの出し方とかは、レフティー特有の感覚を持っているなと感じますね。

僕がヴェルディに来てから5年間一緒にやっていますが、最初は正直、平がキャプテンをやるというイメージがなかったので、彼がキャプテンをやることになった時は驚きでした。でも今はもう、普通に「キャプテン」という感覚で接しています。自分よりも年下ですけど、純粋に「すごいな」と思います。

この5年で彼もいろいろ変わっていると思います。子供が生まれたり、キャプテンになったり……。最近はちょっとケガが多くて気持ちよくプレーできていないのかもしれないですが、人としてはすごく成長しているんじゃないかなと思います。ヴェルディのアカデミーの子たちは、どちらかといったらヤンチャな子が多いイメージですが、彼はどちらかというと秀才タイプ。泥臭くというか、苦労してプロになって、プロになってからも苦労してきたというイメージがあって、そういうところがプレーや私生活にも出ているなと感じます。

それと、平はもともと人と食事をするのが好きだったらしいですよ。だから、人とワチャワチャするのは好きなんじゃないかなと思っているんだけど、どうなんだろう？　そんな話も、次回ぜひ聞いてみてください。

では、最後に僕から質問とメッセージを。といっても、質問かぁ、難しいなぁ…。あと何年サッカーをするのかな？　二人っきりの空間とかになったら直接聞いてもいいけど、これってけっこうヘビーな質問じゃないですか。なので、ここで聞いてみることにします。自分の中で、あとどれぐらいサッカーをやるつもりなのかは気になりますね。どう答えるだろう？　賢い彼だったら、たぶんうまく返してくれると思いますよ。

本来キャプテンというのは、やはり公式戦のピッチに立って、プレーで示してというのが普通だと思うけど、それがなかなかできていないのは、たぶん平自身が一番苦しいと思う。それに対して、僕が何かをしてあげるということはないけど、そういう状況でも平がしっかりと行動しているのは日頃から見ているし、心からリスペクトしているよ。普段はそういうことは伝えてないけど、これを機にそう思っているということを感じ取ってくれればいいなと思います。

僕もまもなく復帰する予定なので、チームに貢献できるように頑張ります！