MATCH試合情報
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【試合展開】
前節、無失点の4連勝で乗り込んだ岡山の地で、さらに無失点での勝利を積み上げ、一昨シーズンの夏場に達成して以来となる5連勝を果たしたヴェルディ。今節で対戦した湘南ベルマーレが敗れたため、首位に立った状態で大一番を迎えた。ホームに戻り、今シーズンは最初で最後となる駒沢での開催となったこの一戦。ヴェルディは、連勝中ながらメンバーに変化をつけてきた。アランを1トップに起用し、前節決勝点を挙げた安西幸輝をスタメンで左ウイングに配置。またボランチには、今シーズン初めて試合登録メンバー入りした渡辺皓太がスタメンに名を連ね、内田達也とコンビを組んだ。
早朝から降り続く雨はキックオフ時刻を迎えても止まず、序盤戦の行方を占う大一番は、濡れたピッチという慎重なプレーになりがちなコンディションの中で始まった。序盤こそスリッピーなピッチコンディションに慣れるまで、ともにボールが足につかないプレーが見られたが、徐々にボールコントロールに慣れると、お互いに一歩も退かない白熱した試合へと一変。最初にリズムをつかんだのはヴェルディだった。序盤は自陣に押し込まれる場面もあったが、徐々に球際で相手のプレスをかわしてスペースへとボールを動かし、ピッチを広く使いながら湘南のゴールに迫る。最初のチャンスは8分。左サイドへのロングフィードが安在和樹に通ると、正確なコントロールから安在が狙い澄ましたクロスを供給。ゴール前に飛び込んだアランは押し込み切れなかったが、そのすぐ背後のファーサイド側に飛び込んだ安西幸輝が押し込んだが、身を投げ出した相手DFにブロックされた。その後もペースはヴェルディが握る。そして喉から手が出るほど欲しかった先制点が生まれた。16分、左利きの安在が相手のマークを外すために敢えてキックフェイントから持ち替えて右足で縦パス気味のアーリークロスをゴール前に入れる。一度は相手DFがクリア仕掛けたが、撥ね返し切れなかったボールは浮き球となって安西の元へ。躊躇なく振り抜いた足はボールの芯を捉えて、勢いのあるシュートが濡れたピッチを滑りながらゴールへと吸い込まれた。安西の2試合連続ゴールで先制に成功し、ここから一気に攻め手を強めたいところだったが、さすがに昨シーズンまでJ1で戦ってきた試合巧者は動じなかった。21分、バイタルエリアでボールを持った菊地がワンフェイントでボールをずらしてマークを外し、一瞬だけできたシュートコースを突いてミドルシュートを叩き込む。開幕戦以来となる失点に動揺が出たのか、仕切り直したい時間帯で焦ってプレーしてボールロストする場面が増えてくる。そして33分、パスミスでボールロストすると、カウンター気味に山田に左サイドから切り込みながらシュートを打たれる。一度は柴崎貴広が鋭い反応で弾き出したが、こぼれ球が詰めていたジネイの足元にこぼれてしまい、簡単に詰められて逆転を許す。
攻守のポイントを整理しながらも、前半同様の戦い方を続けることを強調して臨んだ後半。反撃に出る姿勢の出端を挫かれた。54分、コーナーキックからマークを外してあっさりと失点。前半の動揺を落ち着かせて入ったはずが、一瞬のエアポケットか、攻撃に出たい焦りからか、リードを許した。流れに変化をつけるべく、この失点の直前から準備していた交代カードを切る。高木善朗に代えて梶川諒太、高木大輔に代えてドウグラスを投入する。ゴール前にターゲットが増え、さらに機動力のある梶川がドリブルとパスでボールを危険なエリアまで運んだことで、ここからヴェルディが相手を押し込む展開になる。特に、安在を右サイドに置き、ゴールに向かうクロスを入れる形にしたことで、サイド攻撃から活路を見出す。65分には、ドウグラスが相手の背後のスペースへ短いクロスを入れると、2列目の位置から飛び込んだ内田がボレーで合わせるも、これはミートできずGKの正面へ。72分には、梶川のパスを受けた安在が大きくカーブするクロスをゴール前に入れると、ファーサイドでフリーになっていた安西にピンポイントで合う。しかし、コースを狙った安西のヘディングシュートはポストに嫌われた。ここからポールポゼッションはほとんどヴェルディが握った。相手にボール奪われた後も、チーム全体がプレスバックして球際で戦い、奪い返してすぐに反撃へとつなげる。しかし、この日はシュートが相手GKの正面をつく場面が多かった。このまま2点差でアディショナルタイムも過ぎようとしていた90+3分、セットプレーの流れから相手ゴール前に押し込むと、バイタエルエリアでシュートを打ち切れずに回ってきたボールを途中投入された橋本英郎がマイナス方向へ落とす。そこに走り込んだ安在が左足を振り抜くと、シュート回転が掛かったボールは地面でスリップしてGKの手前ではずみ、ゴールへと突き刺さった。しかし、反撃もここまで。後半の猛攻がラストワンプレーで実ったものの、1点の差に泣いた。
開幕戦以来の失点、しかも今シーズン初めての複数失点。その動揺は隠し切れなかったが、そこで気持ちが切れることはなかった。3点目を失ったことでゴールへの渇望は一層強まり、むしろ自分たちのやるべきことをシンプルに整理し、一点に集中してそこから何度もチャンスを作り出した。試合終了の笛が鳴るまでファイティングポーズをとり続けたヴェルディ。最後の1秒まで、追いつき、あわよくばひっくり返すことを信じて疑わないその姿勢が、今シーズンのチームの根底にある強さを表わしている。その強さを自信に変えるには、次節での立ち直りが欠かせない。大一番をあと一歩で落としたダメージはあるが、それを自分たちが飛躍するための糧にするべく、1日のオフを挟んで仕切り直す。
【試合後選手コメント:DF 2 安西幸輝選手】
――試合を振り返ってください。
「今シーズン、初めてのスタメンだったので、何か形に残せればという思いで入りました。それがゴールに繋がったので、そこは良かったと思います」
――先制後の試合運びに関してはどのように感じていますか?
「自分たちが先制してから相手が勢いを持ってきた中で、自分たちにミスが目立ち始めたところで、相手にポンポンと続けてゴールを決められてしまいました。ああいう展開で我慢することが、今後に向けて大事だと思います」
――後半はポスト直撃の惜しいヘディングシュートもありましたが。
「あれは決めないとダメです。サイドからのプレーは意識していて、アンカズから良いボールが来たので、あれはしっかりと決めないと。あれを決めていれば、3-3にできていたかもしれないので、そこを決められるように修正していきたいです。あそこは当てるだけでしたが、しょうがなかったです」
――攻撃のアイデアという部分ではいかがでしたか?
「今日はサイドからのクロスという形が多かったです。雨でピッチも濡れていましたし、相手にとって嫌な攻撃はシュートパスよりも、大胆にやった方が良かったとも感じています」
――湘南との差に関してはどのような部分に感じましたか?
「差はそれほど感じませんでしたが、組織的に守るという部分で相手は全員身体を張れるし、ああいうチームは強いです」
――左ウイングバックのプレーでは縦に上がって左足という形が多かったですが、それ以外のアイデアはありましたか?
「中に切り込んでシュートという形は考えていましたが、相手のボランチの戻りが予想以上に速かったです。もっと精度が高いボールを入れたかったですが、試合終盤で足にもきていたので、ああいう場面できっちり上げられるようにしたいです」
【試合後選手コメント:DF 6 安在和樹選手】
――ゴールシーンを振り返ってください。
「正直、僕もよく分からなかったのですが、シュートを打った時にアウトにかかっていてキーパーの前でバウンドしたぶん、回転もかかっていてスリッピーな中でキーパーにとって嫌なシュートになったと思います。シュートに関してはまず枠を捉えること、また目の前に飛び込んできたディフェンスがいたので、その人に当てないことを意識していました」
――今日はゴール以外も先制点の起点になるなど、きっちり仕事をしましたね。
「ゴールに絡めていることは、自分的に良いことだと思いますし、これを続けていけたらと思います」
――先制後の試合運びに関してはどのように捉えていますか?
「攻めながら守備の部分では組織として連動して動くというイメージでしたが、湘南も良いチームですし、シュートを打たれたシーンに関しては、もう少し寄せられたと思います。ただ、あれは良いシュートでした。ただ、2失点目に関しては自分たちを苦しくするような形でもあったので、厳しかったです」
――逆転されたあとの進め方に関してはどのように捉えていますか?
「今日のピッチ状態に慣れるのに、みんなストレスを感じていたと思います。かなり滑る部分もあったので、サイドでうまくいっていない時に、もっとシンプルに裏へ蹴ったりした方が良かったと思います」
――攻撃に関しては今季で最も良い出来だった印象ですが。
「ボールの動かし方だったりという部分はうまく出せたと思います。ただ、そのぶん、攻撃で回そうとする部分で少し厳しいミスをしてしまったりと、悪い部分も出てしまいました」
【試合後選手コメント:MF 17 内田達也選手】
――先制後の試合運びに関してはどのように捉えていますか?
「少し出来過ぎというか、今のチームの感覚で言えば、0-0の時間帯が長い方がしっくりきます。今日のように早い時間帯に先制すると思っていませんでしたし、内容もやりたいようにやれて点まで取れたので、2点目を取りに行くか、このまま守るのか、という部分で迷いがありました。ここ最近、1-0で勝てていたという部分もあるので、堅く入るか、みんな個人で悩んでいたと思います。僕自身、その意思統一がクリアではなかったと思います。そのへんが失点に繋がったと思います」
――相手の巧みなプレッシャーがミスを誘発する要因になった印象ですが。
「その影響はあったと思います。僕自身、その感覚はなかったですが、1点取られた後に相手が勢いを持ってくる感覚はありましたし、その中でチームとして少しバタ付いてしまいました。今までであれば、あんなに簡単に失点することはなかったですし、シュートの場面の寄せももっと行けていたと思います。ビルドアップの場面でのミスは仕方ないですが、守備で厳しく行けなかったことが悔やまれます。ボールを奪われてすぐに切り替えるのは当然ですし、守る時にミドルや簡単にファーサイドに打たせてしまうのは、寄せの甘さが影響していると思います」
――ご自身が前線に縦パスを付けた後のチームの攻撃のバリエーションという部分はいかがでしたか?
「縦に付けて、一度締めて、外からクロスという形が一番良いのですが、今日はアランにボールが入った時に、少し仕掛けていくだけで相手が嫌そうにしていたので、できるだけ早く前を向かせて仕掛けさせてあげたいと思っていました。ドゥグが入った後は、みんながクロスという選択肢を意識していて、チャンスにも繋がったと思います。もちろん、もっとアイデアを出していきたいですが、やり方自体は間違いなかったと思います。崩しの部分に関しては、現状チームとしてどんどんアイデアが出てくるわけではないので、それでも今日は良くチャンスを作れたと思います。今日ぐらいやれれば、気持ち的にももっと攻撃の形を作れると思います」
――湘南との差に関してはどのような部分に感じましたか?
「今まで僕たちが5連勝をしていて、その間に相手は負けていたわけですが、相手は自分たちがやりたいサッカーをして負けたという心境だったと思います。今日に関しては、僕たちがその立場になったという印象です。だから、相手との差は感じなかったです。湘南がこのサッカーで独走していくなら、僕たちもイケると思いますが、そうならないと思います。正直、今日対戦するまで、湘南がトップを走っていくと思っていて、その湘南が今日の感じであれば、チャンスはあると思います。僕らがしっかりと戦っていければ、昇格争いも団子になっていくと思います」
――他の選手たちがピッチ状態に苦戦した中、問題なくやれていましたね。
「全然、問題ないです。逆に、もっとぐちゃぐちゃにしてほしいぐらいです(笑)。縦パスも通りやすいですし、他のアウェイの試合ではピッチが乾いていてボールが止まってしまうので。特に、蹴ってセカンドボールを拾うサッカーをするようなチームとの対戦では、かなりピッチが乾いているので、逆にやり易かったです」
――今日は渡辺皓太選手と初のコンビでしたが、気を配った部分はありますか?
「誰と組んでも監督の守備の仕方というのがあるので、『誰と』というよりもボランチ2枚としてどのようにプレーするかを意識しています。感覚的に皓太も自分も入れ替わりながら前で潰せていたと思います。逆に、攻撃の場面ではもっと皓太を前に出してあげたかったです」
【試合後選手コメント:DF 5 平智広選手】
――試合を振り返ってください。
「相手も勢いがあるチームで、相手の決定機できっちりゴールを決められてしまいました。また、自分たちのミスから失点もしたので、もったいなかったです」
――永田充選手の不在もあって、いつもと違うメンバーでのプレーでしたが。
「普段からトレーニングを一緒にやっていますし、誰が出ても同じプレーができるようにという形でやっています。今日は中盤に皓太が入りましたが、問題なくやれていました。戦術的な部分では今日はしっかりとやれていたと思います」
――ボランチに積極的にボールを獲りに行くタイプの渡辺皓太選手が入ったことで、守り方に少しアレンジはあったのでしょうか?
「皓太が出た時には、彼の持ち味がガツガツと前からボールを奪いに行くところなので、彼の持ち味を生かそうという感覚はありました。もちろん、チームとしての戦術がありますが、あいつが出た時に周りがもっと持ち味を出しやすいように、サポートしてあげたかった気はしています。たぶん、今日に関しては同じボランチのウッチーが少し気を使いながらプレーしていたと思いますし、後ろもカバーリングを意識していたと思います。失点場面に関しては相手のシュートもうまかったので、しょうがなかったと思います」
――守備に課題が出た一方で、攻撃面では今季最も出来が良かった印象ですが。
「向こうも点を取った後は、少し引いて自分たちが押し込める時間が長かったと思います。相手に対して数的優位でボールを回すこともできていましたし、内容的には次に繋がる試合になったと思います」
――ドウグラス選手へのクサビなど、前線に良い形のボールを供給していましたが。
「ボールを回しながら、前線にクサビを入れるタイミングを常に意識していますし、後半は相手のラインが高く設定されていたので、もっと背後にボールを入れてゴール前でのプレー機会を増やせれば、相手も嫌だったと思います」
――徳島戦と同様に逆足のウイングバックという形もトライしましたが、感触はいかがですか?
「逆足で入れられる利点があるので、そこを徳島戦より機能させられたと思います。シンプルに中もタイミングを合わせてチャンスに繋がる場面も多かったです」
――逆足のウイングバックの場合、3バックのサイドの選手はどんなサポートを心がけていますか?
「基本的に後方からサポートして常にパスコースを作る動きが優先ですが、今日もオーバーラップしてセンタリングを上げたように、チャンスと思えば、数的優位を作って自分がチャンスに絡むというプレーも良い形だと思います」
――連勝がストップした後の山形戦は重要な試合になりますが。
「無失点でここまで来ていて、今日3失点して敗れたことでチームが落ち込んでいることは事実ですが、それは今日だけにして、監督も次の試合に向けて、また挑戦していこうと言っていたので、チーム全体として切り替えてやっていきたいです」
【試合後監督コメント: ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督】
――試合を振り返ってください。
「僕にとっては今シーズン一番良いプレーができた試合だと思います。ビルドアップからコンビネーションを織り交ぜながら、良いボールの動かし方ができたと思います。良いプレーができていた時に、相手に1点を取られました。そのときにメンタル的に崩れたというか、ビルドアップのミスから相手に2点目を与えてしまいました。後半はコーナーキックから1点を追加され、その後はゲームを支配してゴールに迫ることができましたが、2点目を取るのが遅すぎました。基本的に選手の姿勢や自分たちのプレーには満足しています。ただ、相手が良いプレーをしたということです」
――前節からスタメン変更した中で、安西幸輝選手と渡辺皓太選手を起用した意図を聞かせてください。
「皓太はケガから回復し、練習から今日の試合に向けてプレーできる状態に仕上げてきました。そして、彼はチームにダイナミズムを与えてくれるプレーヤーです。幸輝もプレシーズンに負傷しましたが、今ではフォームを取り戻し、とても良い選手なのでスタメンで起用しました」
――後半に向けてハーフタイムにどんな声掛けをしましたか?
「前半に2失点しました。我々はずいぶん長い間、失点していない試合があったので、チーム全体が下を向いている印象でした。ハーフタイムには良いプレーを続けて行くこと、自信を持って自分たちのプレーをしようと言いました。ただ、チームは良い入りを見せて後半に巻き返せる可能性もあったと思いますが、コーナーからの3失点目が非常に痛かったです」
――プレシーズンにも湘南を視察し、高い評価を下していましたが、そのときと現在で差は縮まっていますか?
「湘南については昇格候補だと思っています。上位4チームに入るチームです。彼らのアドバンテージは、何年間も同じプレースタイルを継続している点です。我々はまだ3か月ほどで、まだまだ相手にアドバンテージがあると思います。ただ、今日の東京ヴェルディのプレーに満足しています。具体的な差について話すのは難しいですが、ただ今日に関しては自分たちが良いプレーができていたと思いますが、試合で大事なのはゴールを決めることです」