MATCH試合情報
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【試合展開】
8年ぶりに実現した横浜F・マリノスとの『クラシコ』。天皇杯3回戦の舞台で、Jリーグ開幕戦のカードが実現した。現在は主戦場とするカテゴリーが異なるが、この伝統の一戦を前にチームは全力で臨むべく準備を進めてきた。残念ながら主力選手のうち、二川孝広、高木善朗、安在和樹は怪我を持ちながらプレーを続けてきたため、大事をとってこの一戦を回避。また負傷から戻って間もないドウグラスもベンチスタートとなった。スタメンには高木大輔が久しぶりに復帰し、北脇健慈と2トップを組んだ。右サイドMFに澤井直人、左サイドMFに南秀仁を配置し、ボランチは中後雅喜と井上潮音を組ませた。左サイドバックには安西幸輝を起用。鈴木椋大は期限付き移籍元の古巣と初の対決となった。
序盤はともに探りを入れながらお互いの出方をうかがうような展開。横浜は両サイドのマルティノスと齋藤学を使って高い位置で押し込んでいく。ヴェルディはやや引き気味な陣形から、マイボールを奪ってからボランチを経由してサイドに素早くボールを運び、カウンター気味に攻撃に出た。このサイドの攻防が勝負を分けた。17分に大木暁が齋藤の突破をファウルで止めて、絶妙な位置でフリーキックを与える。中村のフリーキックをもっとも警戒していたヴェルディだが、簡単に相手にチャンスを与えてしまう。そして18分、このフリーキックを中村に鋭く曲がりながら落ちるボールでゴールに沈められ、静かな立ち上がりから一気にスコアを動かされてしまった。26分には、中村のコーナーキックでショートコーナーを活用してマークを外され、リターンを受けた中村のピンポイントのクロスをゴール前にで中町にフリーで合わされて追加点を許す。反撃に出たヴェルディだが、絶妙な距離感を保ちながらボールを動かす相手を前に、前線からのプレスがはまらず、アクションを起こせないままボールウォッチャーになって試合が進む。前半終了間際には、齋藤の突破を中後が止めたと判断されてPKを献上。これをカイケに決められてセットプレーで3点を奪われて前半を折り返した。
ハーフタイムに冨樫監督が強調したのは、ボールを保持する相手に対してスマートに戦おうとするチームに戦う姿勢が足りないという点。特に前線からのプレスがはまらずに2度追い、3度追いができなかった点、そして高い位置でフリーで受けながら前を向いて勝負ができなかった点の改善を求めた。そこで勝負を仕掛けるために、澤井に代えて渡辺皓太を投入した。
勝負を捨てずにまずは追いつくことを目指して前に出たヴェルディ。前半とはうってかわり、プレスをいなされながらもしぶとく食らいついていき、マイボールになってからは狭いエリアでも前を向いて相手を押し込み、決定機を作り出した。最初のチャンスは63分、右サイドで北脇と大木が数的優位を作って攻略し、大木が深くサイドをえぐってクロス。ニアに飛び込んだ南がジャンピングボレーで合わせたが、枠を捉え切れない。76分には、中後がペナルティエリア内に侵入した南へくさびをつける。反転した南が左足でコースを狙ってシュートを放つが、これも枠からわずかに外れた。その3分後には、渡辺がスルーパスに抜け出して相手GKと1対1のチャンスを得るが、シュートは間合いを詰めたGKに弾き出された。85分にも中後が絶妙なパスをスペースへ流し込み、渡辺が抜け出してチャンスを迎えるが、前に飛び出したGKと接触しながらこぼれ球に反応しようとしたがシュートまで持ち込めなかった。後半に入って、高い位置、しかもペナルティエリアに侵入してチャンスを作ったが、フィニッシュの精度を欠いてゴールは奪えず。逆に88分に左サイドをマルティノスに突破されてゴール前まで簡単に侵入され、クロスをカイケに合わされて4失点目。
この試合に出場した選手は様々なことを感じたはずだ。冨樫監督が試合後の記者会見で語ったように、この試合から若い選手たちが何に気づき、日々のトレーニングにどう落とし込んで、細部にこだわって突き詰めていけるかが重要だ。近い将来、この『クラシコ』でしっかりとリベンジを果たすために、この0-4から学び、自分たちの成長の糧にしたい。そのためにも、中2日で迎えるジェフユナイテッド千葉戦での勝利が至上命題になる。
【試合後選手コメント:GK 31 鈴木椋大選手】
――試合を振り返ってください。
「完敗です。それしかないです」
――勢いを持って入った中、セットプレーから先制点を許してしまいました。
「ウチが前から行こうという中で、前から行ったもののうまくハマらなかった。そして、ズルズルと下がってしまい、下がった割には真ん中にスペースを与えてしまいました。やっぱり、学君(齋藤)はそういうところを突くのが上手いので、上手くファウルを取られてしまいました。ファウルをしてしまったことはしょうがないですが、スカウティングでなるべく中に行かせないという話はしていましたが、あそこで俊さん(中村)が出てくることを警戒していました。ただ、警戒していてもサッカーなので、それを上手く対処できるとは限りません。ボンちゃんがファウルをしてしまった中で、あのフリーキックでした。僕的には打ってくると思っていましたが、俊さんがずっと中を見ていたので少し迷いが出てしまいました。でも、単純に巧かったです。止めようと思って気合いを入れましたが、あれはさすがの一言です」
――2失点目は中村選手に簡単にクロスを入れられてしまいましたね。
「ちょっと変化を付けてショートで入れてきましたが、ボールの質が良いのでみんな直接入れてくると思っていました。僕自身、準備し切れなかった部分もあるので、やっぱりショートの場面で潮音が出る予定でしたが、ちょっと遅れてしまい、目線をズラされてボールを見てしまい、先にブロックされてマチ君(中町)に決められてしまいました。もうちょっと確認する必要がありました」
――初の古巣対戦でしたが。
「今日は感覚も何も4点ぶち込まれているので、悔しいです。相手はマリノスでレベルも高いですが、もうちょいヴェルディの選手たちはできることがあったと思います。ビビったわけではないですが、委縮する部分はあったと思います。前から行って相手の巧さというか、ハマらなかったこともあってリズムが崩れてしまい、そこが一番のポイントでした。個人的には期限付きということで、いつもあの人たちを後ろから見てプレーすることを目標にやってはいましたが、今日やってみて敵としてやるのも面白かったです。完敗でしたが、やってみて楽しかったです」
――具体的にやってみて楽しかった部分を教えてください。
「セットプレーの駆け引きもそうですし、やっぱり自分たちが上手くいかない中で、どう自分がキーパーとしてフィールドプレーヤーを動かして勝利に導いていくかという部分で、今日は上手くいきませんでしたが、そこがキーパーとしての醍醐味だと思います。今日はその部分で相手が何枚も上手でした。J1でやることを目標にしているので、今日の敗戦を生かしてもう少し練習から上を向いてやっていかないとダメです。連戦が続くので、今日の完敗を受け止めつつ次に生かしていきたいです」
【試合後選手コメント:DF 3 井林章選手】
――試合を振り返ってください。
「個で負けている場面が多かったですし、いくらプレスをかけてもハマらないというのは、寄せ方に問題があったと思います。また、後ろのコントロールの仕方にも問題がありました。結局、相手のサイドのマルティノス、齋藤学が明らかにストロングで、そこに良い形でボールが入ってしまうと、良い形で攻撃の形を作られてしまいました。それをもっと減らせれば、楽になったのかなと思います。結局、そういうプレーが多かったので、セットプレーからの3失点に繋がってしまいました。難しい試合でした」
――相手がサイドのスペースを使う意識が強かったですが。
「相手はちょこちょこカウンターの話をしていたので、ウチが監督がラインを高くと言っていたので、それを逆手に取ろうとしていたのは、相手の選手の中であったと思います。今日は中途半端なミスがことごとく相手のカウンターに繋がっていたので、まずはミスをしないというのが、大事です。相手はほとんどミスがなかったので、ああいうふうにミスがないと、僕らにとっては苦しい展開になります。それはみんなも実感したところだと思いますし、ウチはしょうもないミスが多かったので、それが試合の結果を左右することになるので、まずはそこからです」
――今日の敗戦は切り替えやすいものなのか、引きずってしまうものなのか、どのように捉えていますか?
「僕個人はあまり気にしていません。むしろ、J1とやってみたかったので、みんながどう思っているかは分かりませんが、個人的にはやれることも色々ありましたし、個人の能力としてJ1でもやっていけるという気はしました。春のFC東京との試合でもそれは感じていたことなので、結果はともかく自分的には充実していました」
――平選手との連係が良くなってきている印象ですが。
「彼も積極的に声を掛けてくれるので、それに合わせる形も多いです。もちろん、自分から何か言うことも多いです。それがどっちからも出ていることは、良いことだと思います」
――次節の千葉戦に向けてはいかがですか?
「やることをやるだけです。相手も条件は一緒なので、いかにタフな試合をモノにできるかという感じです。自分たちはホームなので、優位に運ばなければならない試合です。あとは前線に良い選手が多いので、エウトンやフナさん(船山)の弟のタカさん(船山貴之)もいるので、彼らは目を離すと厄介な選手です。また、千葉は最近調子が良いので、それを止めたいです」
【試合後選手コメント:DF 2 安西幸輝選手】
――試合を振り返ってください。
「相手はやっぱり巧かったですし、ディフェンスラインの落ち着きも凄いなと感じました」
――アグレッシブな入りを見せましたが、その後難しい展開になりましたね。
「ちょっと戦術がハッキリしなかったというか、引くべきか行くべきかという部分でもっとハッキリやらないとダメでした。前半はそれが中途半端でやられてしまい、攻撃面ではある程度できることはありましたが、守備で裏の取り方であったりは、単純に巧いと思いました」
――難しい展開の中でどのように改善すべきだったのでしょうか?
「やっぱり、立て続けの失点は嫌なので、それをなくすこと。やっぱり、ああいう位置でファウルをしてしまうと、世界トップクラスの人が居ると考えた中であそこではファウルしてはいけないです。3点目まで全部セットプレーでやられたので、そこをしっかり決めてくる相手と、僕らのように決め切れないという部分の差が出たと思います」
――個人的には積極的に攻撃に絡んでいましたが。
「シュートの意識は高かったですし、あとは攻撃面で自分の良さを出すことを心がけました。試合に出られない時期が続いた中で、何が足りないのかと考えた時に自分の良さを出そうとしなかったのが、いけなかったと感じました」
――守備面ではマルティノス選手とマッチアップしましたが。
「やっぱり、速かったのでちょっと対応を考えないといけなかったです。前半に関しては何度か裏を取られて、後半のラストは正直攻撃に出ていたので、しょうがない部分もありました。ただ、あの速さがJ1だと思いました。あれに付いていかない限り、J1には行けないと思いました。それを体感できたので、自分の課題を持ち帰って修正していくだけです」
【試合後選手コメント:MF 8 中後雅喜選手】
――今日はチームとして精度の差が出ましたね。
「若い選手も久々にレベルの高い相手との試合を経験し、これではダメだと思わなければいけないですし、もちろん1人がああいうところに入ったらできるかもしれませんが、チームとしてレベルを上げないといけないですし、ここから悔しさや良い刺激をリーグ戦に生かしていければと思います」
――久々のJ1との対戦で感じた部分を教えてください。
「やっぱり、J1とJ2で戦い方の違いがあり、前からガンガン来るというチームはなかなかないですし、上手くいなしながら守備でもある程度のところまでは行かずに、ここからはやらせないという守備をし、後ろが安定しているので、そこのレベルというか、チームとしての理解、考え方も違いますが、ただ僕らもJ2でやっているし、そことはまた別の戦い方もあります。自分たちのスタイルもあるので、レベルの差、個々の差、そのコントロールの仕方にレベルの差はありますが、よりそういう戦い方が異なってもレベルアップできるようにやっていく必要があると思います」
――相手の守備のレベルの高さが攻撃の停滞に繋がったのでしょうか?
「要所をもちろん消していますし、そこを精度で上回ったりだとかしないといけないですし、スピードであったり、色んな意味でのレベルアップが大事です。それを肌で感じられた部分、もちろん勝ちたかったですが、この結果を受け止めて繋げていきたいです」
――今日はミスが多かったですが、相手との兼ね合いか、単純に技術の問題だったのか、どのように捉えていますか?
「もちろん、プレッシャーというか、勝手な感覚を感じた部分はあったと思います。まあ、要はレベルが低いということです。J1とJ2のレベルの違いを改めて感じることができました。それを感じる意味でもああいう選手たちはほとんどミスをしないですし、そのレベルの違いを受け止めていきたいです」
――続けざまの失点を受けて戦い方がやや曖昧になった印象ですが。
「相手の得意の形から失点してしまい、やっぱりこういう天皇杯のような大会では下のカテゴリーのチームが上を倒すという部分で、どんな相手でも1点を与えることは相手に余裕を与えることに繋がってしまいます。特に、今日は僕らからしたら上の相手だったので、どれだけ我慢しながら相手に嫌だなと思わせることが大事でしたが、そこで相手の得意の形で失点してしまったことが、全てだと思います」
――個人としてはかなり惜しいパスを幾度も通しましたが。
「結構、ああいう相手だと点差もありましたが、立ち上がりからある程度僕はああいうレベルを経験しているということもあって、中盤はフリーでできたので、あんまりプレッシャーを感じず、やり易さはありました。リラックスしながらというか、良いところに出せる。あとは自分の精度を出せれば、という形でした」
――J1を目指す中で、今日どの部分で一番差を感じましたか?
「個人もそうですし、チームとしてもレベルを上げないといけないと思います。プレーの精度、判断、プレースピード、考え方であったり、個人戦術、チーム戦術の全てを上げないといけないです。ただ、これはこれで切り替えて、次はJ2の戦いに戻るので、下を見ることもありますが、今後どんどん勝って上に行けるようにやっていきたいです」
【試合後監督コメント: 冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「天皇杯でマリノスと戦える光栄なゲームの中で観に来てくれたヴェルディのサポーターには、本当に申し訳ないゲームをしてしまったと思います。特に前半、自分たちが勢いを持って入って行く中で、最初の10番のフリーキックを決められたことが、自分たちの勢いを削がれる。また、そこから勢いを持って前に出る矢印がどうしても後ろに下がってしまい、余計に彼らのいなす技術やボールを動かす技術を生かすようなプレッシングになってしまったことが、前半の苦戦の要因になったと思います。後半もう一度、ハーフタイムに選手と少し勢いを持って行こう。自分たちがしっかりとチャレンジしていこうという中で、剥がされても連続してもう一回行く。そして、勢いを持って自分たちがインターセプトに行くという中で、いつもなら獲り切れる勢いでも彼らに少しの立ち位置でファウルを与えてしまう部分が後半もあったのかなと思います。ただ、自分たちも彼らが0-3になったこともありましたが、スペースができる中、前を向いてペナルティエリア内に侵入していく形が何回か出せた中で、やはり3-1というスコアにしていれば、またゲームも変われたのかなと思います。そこには非常に悔いが残りますし、そこが本当にJ1との差なんだというのは、凄く痛感した部分です。23歳ちょっとの平均年齢の選手たちが、今日の試合で何を感じて、何をトレーニングし、上を目指していくのかというところが、しっかりと感じられるゲームだったのではないかと、思います。なので、そこからの反発力であったり、彼らの伸びしろを自分も期待していますし、また次の週末に自分たちには大事なリーグ戦が待っています。そこをしっかりとトレーニングはできませんが、しっかりと頭の中と心の中を整理して、しっかりとした戦いを、そして勝ち点3を取るゲームをして、リーグ戦もまだまだ自分たちが先に繋がるような戦いをしていければと思います。選手たちともう一回、整理して向かいたいと思います。本当に高知まで来てくれたサポーターには感謝しかないですし、向こうで自分たちに期待してくれていたサポーターたちに何を見せられるかというと、週末にジェフに勝つことだと思いますので、しっかりとやっていきたいと思います」
――プレーの精度の差という部分でトレーニングや試合の中でどのように埋めていくのでしょうか?
「それはトレーニングの中で、よりハイプレッシャーの中で良い守備がある中で、良い攻撃が生まれてくる。その中でほんの少しのズレが大きく違うということを、今日は体感したと思いますし、例えばトレーニングの中で今まではズレて繋がっていても、それがオーケーで、例えばシュートでオーケーである。でも、実際に試合ではそれが大きく自分たちのミスに繋がって行くという部分で、本当にトレーニングの中で彼らがそういうところをもっと『こうじゃいけないんだ』とか、あるいはそこの30cmはもっと強く出さなければいけない、精度を上げていかなければいけない、というようにチーム全体がなっていくことを期待しています。自分もそういう雰囲気の中でトレーニングをさせてあげられるように、スタッフとともにやっていきたいと思います」