MATCH試合情報
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【試合展開】
前節、アウェイでの徳島ヴォルティス戦に0-1で惜敗し、連勝が5で止まったヴェルディ。退場者を出しながらも終始押し込んだ一戦は、PKの1点に泣く格好となった。上位の争いを勝ち抜くには、連敗だけは許されない。再び勝利の循環を取り戻すために、チームはホームに愛媛FCを迎えた。前半戦でアディショナルタイムに逆転ゴールを許して敗れた相手。同じ相手に2度負けるわけにはいかないとチーム全員が口を揃えており、気迫、コンディションともに万全の状態で再起戦に臨んだ。前節退場した澤井直人が抜けた左サイドMFには高木善朗がヴェルディ復帰後初スタメンで起用された。
試合全体を振り返る前だが、勝敗を抜きにすれば、試合を自分たちのものにしていたのはヴェルディだった。序盤こそ五分五分の展開ではあったが、スリッピーなピッチコンディションで技術の差を見せ、ことごとくボールを保持。前線からのプレスで相手のミスを誘い、奪われたボールもすぐに回収し、またじっくりと攻め直す。愛媛は割り切って自陣で守備ブロックを形成し、最終ラインを下げないようにほぼ8人でバイタルエリアを埋めて対抗してきた。拮抗する展開の中で、細かくパスをつなぎながらフィニッシュへの糸口を探るヴェルディ。スペースがない中で打開を図ろうとするが、中央突破は最後の一手の前で潰され、サイド攻撃も有効なボールがゴール前に入らなかった。
「焦れずに」というハーフタイムの冨樫監督のコメントは、チームの前半の姿勢を如実に表わしていた。ボールを保持できるがあまり、全体が前掛かりになってスペースを消し合い、引っ掛けられたボールがそのままカウンターへとつなげられる。相手のミスに救われた場面が多かったが、攻守のバランスを改善して後半こそゴールをこじ開ける一手を打ちたかった。しかし、出端を挫かれる。後半開始早々の53分、序盤こそ自陣を固めた愛媛だが、サイドでボールを持つと一気に全体を押し上げてラッシュ。右サイドの内田のクロスを中央で河原が頭で合わせると、シュートはポストに当たってゴール前にこぼれる。これを西田に詰められて、ワンチャンスをゴールへと結び付けられた。焦らずにじっくりと反撃に出たいチームだが、前半とは打って変わって球際での厳しさを強め勢いをつけた愛媛に対して、徐々に前半のような冷静なつなぎから崩す場面が減っていく。シュート数は、前半の5に対して後半は3。1点を追って攻勢を仕掛けながら、前半以上に攻め手は限られていった。後半についても試合を動かしていたのはヴェルディのアクションだったが、愛媛のリアクションに対してあと一手が出てこなかったのは事実。平本一樹、永井秀樹、アラン・ピニェイロという攻撃的なカードを投じたが、狭いスペースを打開する処方箋にはならず。またもや1点の差に泣き、連敗という結果を突き付けられた。
プレーオフ圏内の争いは熾烈を極めている。どのチームも勝敗が落ち着かない中で抜け出すためには、この連敗から学んで選手個々とチーム全体がいまひとつ上のレベルへと成長する必要がある。リーグ戦までの間に2試合を挟む天皇杯はその良い試金石になるはず。この雌伏の時から抜け出すきっかけを、リーグ戦が再開するまでにつかみたい。
【試合後選手コメント:FW 7 杉本竜士選手】
――試合を振り返ってください。
「終わったばかりなので、そこまで整理はできていませんが、やっぱり前半攻めているところでしっかりと決めるというところが重要でした。僕たちが強くなって、ある程度研究されている中で、裏のスペースを消されている状況で、裏に蹴ってのスピードだけでなく、縦パスやショートパスのスピードという部分の工夫やアイデアがもっと必要ですし、全員が行き当たりばったりのサッカーではなく、前の選手4人が意識を共有して攻撃に出る機会を増やすことが大事です。今日は4人の中の3人が同じイメージを持っているけど、1人が違うイメージを持っていたり、それが2人だけということが多かったので、そういう部分をもっと合わせていくことが必要だったと思います。ただ、そこまでネガティブに考えても仕方がないと思います。逆に、そういったイメージの共有ができれば、本当に強いチームになることができます。今までは勢いでやっている部分が多かったですし、しっかりと戦って勝つことが自分たちの課題なので、今日はそういう課題が出て良かったとも思っています。そんな簡単なものではないので」
――試合後の会見で監督は見栄えは良かったけど、相手をそんなに苦しめることができなかったと語っていましたが、ご自身はどんな感想を持っていますか。
「自分たちがボールを持つことは相手にとって恐いことだと思いますし、相手がボールを譲ってきた部分は確かにありましたが、ボールを持てば無限の可能性があるので、そこで相手が恐くなかったというのは結果論だと思います。仮に、自分たちがボールを持ってゴールを決めていれば、そっちが良かったということもあるので。逆に、ボールを持たずに簡単に失うということはしたくないですし、90%以上ボールを持ってゴールを奪って勝つのがヴェルディのサッカーだと思うので、そういうヴェルディらしさを出すチャンスだと受け止めたいです」
――U-22日本代表候補のトレーニングキャンプに追加招集されましたが、率直な感想はいかがですか?
「正直なところ、それほど印象はありません。代表候補に招集されたとしても自分がやるべきことはこれからも変わらないので」
【試合後選手コメント:FW 18 高木大輔選手】
――試合を振り返ってください。
「相手がこういうゲームプランで戦ってくることは分かっていましたし、先に失点すれば難しい展開になると、最初のスカウティングから分かっていました。今日の流れを見ても、前半に相手が全く前に出てこない中で、1点獲られたらなかなか崩すのは難しいと感じていました。それは相手の術中にハマッたという形です。ただ、リーグ再開まで2週間ほど空くので、しっかりと気持ちを切り替えて、次も難しい試合になると思いますが、うまくやっていきたいです」
――前半に関しては2トップの足元へのクサビから何度か良い仕掛けもありましたね。
「背後を取れても結局、FWが外に流れてしまっているぶん、中に人がいないことも多かったですし、正直なところあまり効果的ではなかったと感じています。ただ、あの形が一番攻撃の形になっていたので、続けなきゃいけない部分だと感じていました。ただ、後半は相手もそこに対応してきたことで、攻め手がなくなってしまい、そこは反省点だと思っています」
――崩しの局面で同サイドから逆サイドに展開していく部分で少しタイミングが遅れることが多かった印象ですが。
「左右に振るぶん、僕たちもスペースに出て行くことが必要となった中で、今日は左サイドで作ることが多くて、いざ右サイドに展開していく場面で前線には自分と(杉本)竜士君の二人しかいなくて、そこでパスコースを作ることができなかったです。相手からすれば、想定内というか、うまく守られた印象がありますし、正直なところ今日はこれといって良い仕掛けがなかった印象です」
――今日の結果は相手の研究の成果なのか、自分たちのパフォーマンスだったのか、どちらの印象でしょうか?
「チームの調子の良し悪しはありますが、相手がウチをそれ以上に研究してきて、久々に3バックの相手だったということもあります。プレスをどのようにかければいいかという部分もありましたし、守備も今までのようにハマッていた効果的な守備ができないと全体的に狂ってしまうこともあります。結局、連勝中は守備が良くてショートカウンターから得点を獲ることが多かったので、そこが今日得点を獲ることができなかった要因の一つだと考えています。それができなかったときに、次に何をするのかが今後の課題です。また、ここで連敗したことは非常にもったいないですし、ここで4連勝している相手に勝てていれば、また勢いに乗ることもできたので非常に残念ですが、天皇杯はありますがリーグ戦は中断に入るので、1回戦にしっかり勝って大宮のような良いチームと戦って勝つことができれば、それで勢いもつくので、ここからしっかりと切り替えて良い準備をしたいです」
【試合後選手コメント:MF 11 南秀仁選手】
――対戦相手のヴェルディ対策が進んでいますね。
「みんな研究していてヴェルディには引いて蹴ってという形がありますが、それを自分たちがちょっと上位にいることで、より研究されてそういう戦い方を選ぶチームが増えてくると思っています。そういうチームを攻略できなければ、上に上がることもできないので、もっと精度が問われてくると思います」
――今日も狭いスペースでの局面打開を狙っている場面が多かった印象ですが。
「狭いところを攻略できれば、一番ゴールに近づくことができますが、自分自身を含めて攻めの場面で焦れたというか、もっとサイドに展開して相手を開かせてそこから真ん中やクロスという形を狙っても良かったと思います。特に、(平本)一樹さんが入ってからはサイドからクロスを入れても可能性があったと思うので、そこは攻撃のイメージが少しバラバラだった印象もあるので、今後話し合って次に生かしたいです」
――似たような戦い方をする相手に2連敗を喫しましたが、リーグ中断期間を利用してそういった相手への新たな対策を練る可能性はあるのでしょうか?
「それは僕が考えることではないですが、もしも監督が今日のように3-4-3の布陣を採用してくる相手に対して、自分たちも同じシステムに変えてミスマッチを起こさせないという戦いは、練習でもちょっとやっていましたが、そういう考えがあれば僕たちはそれに対応する気持ちです。ただ、個人的な考えとしては、自分たちの崩すサッカーの質を上げて勝たなければ、J1に上がっても通用しないと考えています。そういうヴェルディのスタイルを追求して上がれれば、必ず通用すると思っていますし、今のサッカーの質を上げていきたいです」
――相手に徹底的に研究されるという今の立ち位置をどのように感じていますか?
「相手が研究してくることは自分たちの力を認めているということでもあるので、それは良いことだと感じています。研究されてもこのサッカーで崩すことは可能ですし、本当に強いチームは研究されても勝てるので、そういうチームにならないとこの先やっていけないと思います」
【試合後選手コメント:MF 8 中後雅喜選手】
――相手守備の攻略に苦戦しましたね。
「そうですね。相手も守ってきていましたし、同サイドでボールを繋いで最後に逆サイドに展開してクロスという形で攻めたかったですが、今日は一個一個の場面で時間がかかってしまい、もう少し相手を動かすような攻撃をしたかったです」
――相手の5人の最終ラインの前でボールを動かす形が多かったですね。
「今日は左サイドで攻撃を作る形が多くて、そこから大きく右サイドに展開してクロスを上げる形を狙っていました。前半終盤には(高木)善朗がダイビングヘッドする場面もあって、ああいう形をもう少し作りながら、あとは真ん中に行ける時に行くというように、もう少しボールを動かしながらできれば良かったと思いますが、相手も人数をかけてしっかりと守っていたと思いますし、そういう中で前節もそうですが、どうやって崩すかという部分が課題ですし、連敗中に得点が獲れていない理由だと考えています」
――後半半ばに前線を平本選手と永井選手のペアに変更しましたが、この交代でどのような戦い方の変化を考えていたのでしょうか?
「一樹さんがトップにいることで起点になりますし力強さも加わりますし、竜士や大輔とは違う良さがあるので、その中で永井さんがあそこでボールを受けてうまく繋いでくれるので、そこを起点にサイドへの展開や中への進入を意識してやっていました」
――前半は2トップへのグラウンダーのクサビを起点に良い形もありましたが、後半は引かれてその形が少なくなった印象ですが。
「崩しの部分に関してはまだまだ課題が多いですし、守られるとなかなか簡単ではないので、そこは今後もチームの課題として取り組んでいきたいです」
――これから天皇杯によるリーグ中断期間に入りますが、再開までに修正したい部分を教えてください。
「得点を獲るという部分です。特に、ここ2試合はうまく中央を固められて得点を獲ることができていないので、そこをどう崩すかという部分を考えていきたいです。どんな相手に対してもしっかりと得点を奪うことが大事なことなので。守備に関しては失点場面で少し足が止まってしまいましたが、そういう部分をなくしていきたいです。ただ、結果は出ていないですが、そんなに悪くはないので、気にし過ぎることなく良い部分は続けて得点を獲るためにどうすればいいかという部分で、最後の精度を追求したり、ピッチをもっと幅広く使うなど、うまく修正しながらやっていきたいです」
【試合後選手コメント:MF 20 三竿健斗選手】
――相手のやりたい形の試合展開になってしまいましたね。
「そうですね。もっと焦れずに横に動かして相手を疲れさせて、最後のところで仕留めるという意識があれば、もう少しチャンスはあったと思います」
――崩しの局面で同サイドから逆サイドに展開していく部分で少しタイミングが遅れることが多かった印象ですが。
「片方のサイドに集結して展開した時に、逆サイドで孤立する場面が多かったので、そこは人数のバランスやサイドチェンジのボールの質をもっと早く鋭く付ける技術が必要だったと思います」
――後半途中からセンターバックに下がりましたが、意識した部分を教えてください。
「相手のクリアボールのファーストボールを競ることであったり、サイドバックの選手を高い位置に保てるようなポジショニングを意識していました」
――球際の競り合いの部分ではご自身の特長が出ていた印象ですが。
「今日はミーティングでそこを指摘されていたので、まずは自分のできることをやろうと考えながらやっていました。ただ、もっともっとやれるところもあったので、もっと突き詰めていきたいです」
――以前に比べて繋ぎに絡む意識が強くなっている印象ですが。
「そうですね。自分自身シーズンを通して成長しなければいけないと思っていて、毎試合後にもっとこうした方が良いと考えている部分の一つで、最近は繋ぎの質という部分を意識してやっていますが、パスミスも多くなっているので、もっと自分がシンプルにやって真ん中で堂々とプレーできるようになりたいです」
――そういう意味では中後選手というお手本が真横にいますね。
「そうですね。チュウさん(中後)は大きな展開ができる選手ですし、他の選手のために無駄走りをしてスペースを空ける動きや出足の速さもあるので、自分もそういうプレーができるようになりたいといつも横で見ています」
――連敗で中断期間に入りますが、リーグ再開に向けて修正したい部分はどこでしょうか?
「ゴール前までは行っているので、そこからの最後のパスの質であったり、もっと引いた相手に対してミドルシュートを狙っていくのが効果的だと思うので、そこをリーグ戦再開から出していきたいです」
――1年目からこういった厳しい昇格争いを戦えているのは、ご自身にとって大きな経験ですね。
「シーズンの最初はこういう位置で戦えるとは思っていなかったですが、サポーターの声を聞くたびにすごく期待されていると感じています。正直、緊張した空気を感じながらプレーしているのが現状ですが、今後はその緊張感を楽しみながらプレーしていきたいです。まだ、緊張や迷いの中でプレーしているので、監督からももっと堂々とプレーしろと言われています。シーズンの終盤には独り立ちしたいです」
【試合後監督コメント: 冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「たくさんのサポーターに集まっていただき、すごく力強い応援をしてもらったのに、結果を出せなくて非常に申し訳ない気持ちで一杯です。やっぱり、ここから上に行くには自分たちにとってこういうゲームが増えて行くと思います。だからこそ、勝つというところでゴールが非常に大事になっていきますし、勝ち点3の重みが、ここから上に行くためには大切に重要に考えていかなければなりません。やはり、先に失点してしまうと、相手のやりたい形になってしまいますし、今日の愛媛さんは集中した集結した守備をなかなかミスも出てこず、自分たちがなかなか深い位置に入り込むことができなかったです。もしかしたら見栄えは良かったかもしれませんが、実はそんなに相手は苦しくなかったゲームではなかったかというのが、正直な感想です。ここから2週間リーグではなく、天皇杯の戦いになります。自分たちは天皇杯でも上に行きたいと思っていますし、リーグに繋がるようなゲームにしていきたいと思うので、選手たちとしっかりと練習してゲームに向かって行きたいと思います」
――愛媛の木山監督が思ったほどヴェルディが前からプレッシャーに来なかったとおっしゃっていましたが、いつもと異なるゲームプランで今日は臨んだのでしょうか?
「なかなかスペースが空いてこないことによって、自分たちがラフにボールを入れる回数が少なかったです。だから、相手を引っくり返すような、相手のボールになってそこを前から奪いに行くという回数が少なかったことが、プレッシャーをかける回数が少ないという部分に繋がったと思います。自分たちがボールを持って相手の目の前でボールを動かすことはできましたが、引っくり返すようなボールが入っていたか、サイドバックが深い位置でクロスを上げたという場面はほとんどなかったので、高い位置での切り替えが少なく、相手を楽にしてしまった要因かなと思っています」
――高木善朗選手を先発で起用しましたが、守備面と攻撃面でどのような仕事を期待していたのでしょうか?
「守備に関しては相手のシステムのミスマッチで漏れる相手のサイドの選手のケアを期待していました。攻撃に関しては相手の3センターバックとサイドハーフが下がるという場面でのボランチ脇やバイタルエリアで前を向いて彼のシュートやラストパスを期待していました。前半は特に、そういうところに入ってこれましたが、なかなか逆サイドとの関連性や3人目、4人目の少し遠いところ、ペナルティエリアの角っこのところになかなかボールが出せませんでした。それは善朗だけの責任ではなくチーム全体の問題だと思うので、そこは自分が練習から修正していきたいです」
――杉本選手がU-22日本代表候補のトレーニングキャンプに追加招集されましたが、今季の杉本選手に対する評価を聞かせてください。
「非常に積極的にトレーニングからやってくれていますし、そこが積み重ねとなってゲームに表れていると思います。彼はなかなかゴールを獲れていませんが、チームのために何をすべきかという部分をしっかりと理解してくれていますし、そういうところが色んな人の目に留まって評価されて、今回の招集に繋がったと思っています。今日の試合前に竜士にも話しましたが、今日のゲームも向こうに行っても、人のためにチームのためにというものが、自分に返ってくるものだから、また一生懸命にやって良い経験をしてほしいと思っています」
――若いチームに勝ち点3の重みなどJ1昇格に向けた意識付けを行う上で大事な部分を教えてください。
「自動昇格についてもプレーオフについても、まだまだ先は長いですし、自分たちがそこから落ちているわけではないので、その中に自分たちが居て、一戦一戦を大事に戦っていく。まだまだ本当に安定した戦いができるほど、チームは熟成していませんが、その代わりにやれることが増えてきたぶん、シンプルにサッカーをもう一度彼らと話し合って、自分たちが理想とするサッカーがより勝ち点に繋がっていくと思っているので、一番大事なのはしっかりとみんなでトレーニングを行っていくことだと思います」