MATCH試合情報
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【試合展開】
夏場の連戦で3連勝し、プレーオフ圏内突入後もじわじわと順位を上げているヴェルディ。4位で迎えた今節のホームゲームは、前半戦で敗れているカマタマーレ讃岐との対戦となった。堅守速攻に徹する相手に対して、どこまで粘ってゴールをこじ開けられるかが試される一戦。ヴェルディの陣容は前節と変わらず、出場停止処分が明けた三竿健斗はベンチ入りし、ボランチのスタメンには安田晃大が起用された。
試合の立ち上がりは決してヴェルディらしいものではなかった。縦に大きく蹴り込み続ける相手に対して、最終ラインが徐々に押し下げられ、攻撃面でも長いボールを多用してスペースにFWを走らせる展開。相手に合わせて、同じような展開に終始していたが、20分前後から右サイドバックの大木暁が積極的にスペースへ出ていくことで、ボールをワイドに動かす展開から、サポートに入ったMFを経由してじっくりと攻撃を組み立てていくヴェルディの試合運びが戻ってくる。サイドで3、4人が関与して狭いスペースを打開し、何度も同じチャレンジを続けてじわじわと相手ゴールへと迫っていった。ここからは完全にヴェルディの展開。セカンドボールもことごとく拾い、相手がボールを奪った後のカウンターへの対応も早めにターゲットを潰す対応を奏功。井林章とウェズレイのセンターバックコンビもロングボールをことごとく撥ね返す強さを見せ、危なげない試合運びでゴールの予感を残して前半を終えた。
ハーフタイムに冨樫監督が強調したのは、引いた相手を前に崩し切れない時間が続いても、「決して焦れずに我慢強くスプリントし続け、スペースに飛び込んだり、ワンツーを多用して相手を揺さぶる」というもの。若いチームは、指揮官が繰り返し口にした、“焦れない”精神を維持し続けた。後半開始直後から試合の主導権はヴェルディが握った。中盤でボールを支配し、相手陣内の深い位置でもボールを保持して、少ないタッチでつなぎながらペナルティエリアへの侵入をトライする。62分にコーナーキックから井林が惜しいヘディングシュートを放つと、ここから怒涛の攻撃ラッシュを見せる。相手の反撃に対しても、守備陣は前半同様に粘り強く球際で身体を張り続け、バイタルエリアで簡単にシュートを打たせない。73分には、またもコーナーキックからウェズレイの負傷で投入された田村直也があとわずかというヘディングシュートを放つ。圧倒的な攻撃の機会を得ながらもゴールが遠かったが、“焦れない”精神を持った選手たちは辛抱強く相手の揺さぶりながらゴールに迫り続けた。そして75分、右サイドの深い位置までボールを持ち込んだ大木暁がマイナス方向に落とし、中後雅喜が浮き球をゴール前に放り込む。相手GKが優位なボールと判断してほとんどの選手が競らない中で、杉本竜士が勢いをつけてジャンプすると、競り勝ってボールがファーサイドにこぼれる。これに詰めていた高木大輔が頭で押し込んで、我慢強く攻撃し続けていた粘りが先制点という形で結実した。ここからは、同点を狙って前にできた相手のギャップを突いて、カウンター気味にチャンスを作る。81分には高木大がGKと1対1を迎え、シュートが一度弾き返されて、これにつめた南秀仁のヘディングシュートもDFにブロックされた。88分には、カウンターから3対2の状況で中後の万全のお膳立てを南が受けて、狙いすましたシュートを放つが、相手GKの好セーブに防がれた。なかなか追加点が奪えず、アディショナルタイムに突入したが、執拗に攻め続けた成果が90+2分に表れた。右サイドから高木大がボールを持って駆け上がり、ゴール前には南とカバーに入ったDF1一人の2対1の数的優位の状況。高木大がボールを持ってタメを作ってDFを引き寄せて、GKが出きれないコースにグラウンダーのクロスを供給。これをゴール目前で南が押し込んで、ようやく喉から手が出るほどほしかった追加点を挙げた。これで試合は決した。
セレッソ大阪が敗れたことで、ヴェルディは勝ち点2差でセレッソ大阪を上回り、順位を3位に上げた。4連勝は2012シーズン以来で、真夏の快進撃を続けている。次節以降はアウェイでの連戦となる。真夏の厳しい時期にしっかりと勝ち点を積み上げて、8月23日のホームゲームに帰ってきたい。
【試合後選手コメント:FW 18 高木大輔選手】
――試合を振り返ってください。
「前半は本当に何もなかったので……。シュートも打ちましたが、可能性のないものばかりでミドルシュートも枠に飛ばなかったですね。後半は運動量を上げようということと、選手の中では焦れたら負けということを話していました。焦れて変なパスを出してカウンターを浴びたら終わりなので、そういうことをチュウさん(中後)が話してくれたので、とにかく攻守に運動量を上げることを意識していました。そういう中でお互いに間延びしてきて、最終的にウチが2点を獲ることができたのが、今日の勝ちに繋がったと思います。この4連勝中に失点がゼロというのは、非常に助かっています。イバ君(井林)を中心にユウヤ君(佐藤)が支えてくれていて、ここ数試合はやられると感じる場面がほとんどなく、“まあ、大丈夫だろうな”という気持ちで前線から見ています。それはチームとして良いことだと思いますし、得点を獲れば勝てるという気持ちでプレーできています。前線としては前からの守備と得点を奪うことだけに集中できるので、それが自分の得点に繋がっていると思います」
――兄の善朗選手は大輔選手の走力をもっと生かしていきたいとおっしゃっていましたが?
「善朗が入ると、ボールが持てますし、球際でバチバチと戦ってくれるので、すごく助かっています。良い動きをしてタイミングが合えば、絶対にパスを出してくれるという信頼もしています。自分が走ることで善朗にスペースを作って、シュートを打たせるということなど、兄弟としてではなくチームメートとして得点を獲ってほしいと思いますし、そういう自分も生かされるし、善朗も生かすという関係性をうまく築いていきたいです」
――ゴールシーンはどんなイメージを持っていたのでしょうか?
「イメージというよりも急に自分の頭のところに来たので、とにかく枠に入れるということだけ考えていました。意外に難しかったです。本当にヘディングをした瞬間は、“入ってくれ”と心の中で叫んでいました。リュウジ君(杉本)が競ってくれていたので、相手GKがキャッチできないと思っていましたし、変な回転もかかっていたので、とにかく自分のところに来いと思っていました」
――2点目のアシストの場面を振り返ってください。
「時間が時間だったので、時間稼ぎをしようという気持ちもありましたが、状況を見たら数的同数だったので、今日は南君からのパスを1本外していましたし、前節も練習でも南君は自分の理想とするパスを出してくれる選手なので、普段お世話にもなっているという気持ちでクロスを出しました。1本目は相手に引っかかって、“まずいな”という気持ちでしたが、撥ね返りが足元にこぼれてきたので、それを何とか出したらうまくオフサイドにならずに決めてくれて良かったです」
――今季の4得点全てが決勝点ですが、自分のゴールでチームを勝たせるのはストライカー冥利に尽きるという感じでしょうか?
「逆に、今年になるまでスタメンに入った試合でチームが勝っていなかったので、初勝利が自分のゴールだったのは、今の自信に繋がっています。また、自分のゴールが決勝点になっているのは、ディフェンスの人たちがゼロで抑えてくれているからこそだと思います。今日に関しても1失点していれば、南君の得点が決勝点になってヒーローも変わっていたと思うので、そういう意味ではディフェンスの人たちに感謝したいです。ただ、ヒーローになれることほど最高なことはないです(笑)」
――高木兄弟のアベック弾を期待する声も多くあると思いますが。
「次の三ツ沢は兄たちが初めてアベック弾を決めたところなので、良い流れは来ていると思います。この流れを崩すことのないようにと思っていますし、勝てるところは全て勝ちたいですし、ここまで来たら絶対にJ1に上がりたいと思っています。サポーターの方々の期待もありますし、今までは上位相手に勝った試合もありましたが、苦手といわれる讃岐相手に今日は勝てましたし、そういうチームに勝てるようになってきていると思います。今日は勝てたのが全てですし、次に向けて2点目を獲れたのも良かったと思います。ここ最近は1-0が続いていたので、サポーターの方々も落ち着いて試合を見られたと思います。試合終盤にヒヤヒヤさせてしまう試合が多かったので、次も無失 を継続しつつ、追加点を奪って良い試合を見せたいです」
――守備陣に対する信頼は絶大ですね。
「そうですね。見ていて失点する雰囲気がありませんし、練習から見ていてもユウヤ君なら止めてくれると思いますし、ウェズレイやイバ君なら撥ね返してくれるだろうとか、タムさん(田村)が途中から入っても、素晴らしい気合いと気迫をみせてくれました。それにシュートブロックもすごいので、そういう練習からやっていることが試合で出ていると思います。練習でも守備が堅いので、ボカスカと点が入ることがほとんどないです。そういうのがあっての今だと思っています。守備の選手が本当に頑張ってくれているので、攻撃の選手は得点を奪えるように頑張っていきたいです」
【試合後選手コメント:MF 11 南秀仁選手】
――ゴールシーンを振り返ってください。
「あそこはクロスが2回目上がってくる時にオフサイドにならないことだけを考えていて、うまく待って合わせることができました。あれでオフサイドになってしまったら、すごくもったいないので、我慢して待っていました。大輔も変なところに出さないという確信もありました。彼はサイドバックをやっていたので、クロスもすごくうまいので、オフサイドにならないことだけ考えていました」
――0-0の時間が長かったですが、どんなことを考えてプレーしていましたか。
「個人として2回ぐらい大きなチャンスがあって、そこでもっと早く決めることができていれば、チームを楽にすることができたのですが、そこは自分の課題だと思っています。ただ、1点でも獲ることができたのは良いことだと思っています。課題も良い部分も出た試合でしたが、勝った時こそ課題が見つかります」
――後半の決定機でフリーの澤井選手にパスを出さず、果敢に得点を狙う場面もありましたが、得点を獲りたいという意識が強かったのでしょうか?
「あそこは練習でああいう形を練習していて、カットインして相手の股を抜けば、相手のGKが反応できないという部分が頭の中にあり過ぎて、臨機応変に対応することができなかったですね。もちろん、練習の成果を出したいという気持ちもありました。見えてはいなかったですが、あそこはパスを出すべきでしたね」
【試合後選手コメント:MF 33 高木善朗選手】
――途中交代から流れを変える活躍でしたね。
「いやいや。そういう役割なので、それがしっかりとハマったのかなと思います。北九州戦では、ちょっとなかなか落ち着かせることができなかったのですが、今日は相手陣内でボールを動かすこともできましたし、中央で受けてシュートやそこから散らしたりできたので、自分の中でのゲームプラン通りに戦えました」
――今日はボランチでの起用でしたが、他のポジションで起用される時と意識を変えた部分はありましたか?
「守備の部分では中央を切るということを意識しましたが、ポジションがかなり入れ替わっていたので、澤井や南をうまく使いつつ、あいつらもよく動いてくれたので、そういう部分でポジションチェンジをしながらよくできたと思います」
――前半は相手の堅い守りに苦戦していましたが、どんなイメージで試合に入りましたか?
「前半はディフェンスから裏へのボールが多かったので、そこをなるべく中盤からとか、一回中にボールを入れて、そこからサイドというようなイメージでした。中に引きつけたり、ちょっとタイミングを変えてみたりとか、そういうプレーができて良かったです」
――高木選手の投入以降、ラストプレーでの意思疎通の部分で劇的な改善が見られた印象でしたが。
「選手と選手がラストパスだけ合わせるのは難しいので、簡単なパスでも1つ2つと入れていくだけで、意思の疎通はできるので、そういう意味では簡単なパスを繋いでから、難しいボールや最後のボールを入れていこうと考えていました。いきなり、難しいボールを蹴ってもなかなか合わせづらいですし、相手のボールになると嫌なので、ボールを大事にしながらみんなでボールを触って崩そうと思っていました」
――持ち味のプレースキックという部分で何度か決定機を演出していましたね。
「そうですね。プレースキックを任されているので、そこで得点を獲れれば楽になるので、チームの武器となれるようにと思ってやっています。そういう意味では良かったと思いますが、できればプレースキックで得点を獲りたかったです。ただ、そういう惜しいプレーで流れが変わった面もあったので、今日の試合に関してはうまく噛み合ったと思います」
【試合後選手コメント:MF 8 中後雅喜選手】
――相手の堅い戦い方に苦戦しましたね。
「福岡戦もそうでしたが、相手が長いボールを入れて攻めてくる。ウチは背が低いですし、相手は高い選手を揃えているので、そういう部分で少し嫌な印象はありました。ただ、途中からは問題なくやれたと思います」
――2試合連続でコンビを組んだ安田選手との役割分担に関して意識している部分はありますか?
「三竿と組む時とは逆の役割ですが、自分が少し後ろに残って晃大を前に出すというイメージでやっています。前半は時間が掛かってしまいましたが、僕が後ろに残ることをハッキリさせてからは、晃大が前の方でボールに関わることができていました。お互いに相手を見ながら前と後ろでプレーできれば一番良いですが、今日に関してはあの形がベストだと思います。晃大と代わって入った善朗に関しては、僕がワンボランチに入る形でやっていました」
――久々の4連勝の感想はいかがですか?
「久々なのでうれしいというのもありますが、まだまだ勝てるうちに勝っていかないとダメですし、4連勝を意識せずにやっていきたいです。ただ、ここまで自分たちが連勝できていない中で、3できなかったものを3できて、4できなかったのが、今日4できたというのは、チームとしての成長を実感できる目に見える結果だと思います。今後も驕らずにやっていきたいです」
――昨シーズンと今シーズンで大きく変わった部分を教えてください。
「試合運びもそうですが、今までは今シーズンの始めの良い時期はゼロで抑えて、後半に1点を獲って勝つという戦い方が多かったですが、内容的にちょっと勝っていくと温くなっていくというか、そういう部分で先に2点、3点獲られた試合もありましたが、それで勝ったり、勝てなかったりということもありました。ただ、現状に関してはそういうことがなく、そんなに危ない場面も作られていませんし、そういう意味では成長をしていますし、今日は相手が守りを固めてきましたが、後ろも焦れずにやってくれました。チームとして前と後ろで役割は違っていますが、そういうのがみんな整理されていますし、メンタルの部分も安定しています」
【試合後監督コメント: 冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「今日のゲームは本当に難しいゲームをしていかなければならない。また、こっちが焦れてしまったら相手の思うつぼだと思っていました。自分たちがボールを動かしながら、いかにない背後を取れるか、そのアイデアを出し手と受け手が共有できるか、あるいはチームで共有できるか、というところで粘り強く戦いました。少し前半のところで自分たちが売りとしているコンパクトになり得ていなかったこと、またボールを動かすのか前に進むのかという部分で、少しバランスを失う時間もあったと思いますけど、そこで失点をしないで0-0で終えられたことで、逆に自分たちがハーフタイムに修正して、しっかりとゲームを変えられたことに繋がりました。さらに、負傷でウェズレイを欠いてしまいまし たが、代わった選手がしっかりと役割をこなすことができた点も、チームの力だと感じています。また、本当に2点目が獲れたのは、サポーターの期待感のようなモノが、あそこのカウンターから2点目が獲れた要因だと思います。いま、チームで戦えているという感触が自分の中であります。ただ、まだまだ先のことなので、自分たちが一歩一歩積み重ねて来たからこそ、この位置に立っていると思いますし、これからも二歩、三歩と行くわけではないので、次のゲームをまた大事に思い切ってヴェルディらしく戦っていきたいです」
――2012年以来の4連勝に加え、4試合連続無失点という部分に関してどのように考えていますか?
「自分たちが試合をまず負けないという部分では、失点をしないことはやっぱり大事だと思います。そして、ゲームに勝つという部分では得点を獲らないと勝てないという部分では、自分たちが今置かれている状況はどんなチームに対しても一生懸命ボールを奪う作業をしていかなければ、ゲームを成り立たせることができないですし、逆にそれがテンポ良くやれると勝つチャンスが格段に増えてきていると思います。そこはすごくチームとして上を目指す手応えであり、よりここからもっと難しいゲームが続いていく中で、チーム全体での守備の意識は非常に強く、また90分のゲームをコントロールしていく部分で、選手たちがすごく頭の中、気持ちの部分で続いているという手応えを感じています」