MATCH試合情報
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【試合展開】
ここ3試合で2勝1分と調子を上げつつあるヴェルディは、7月に2回ある過密日程のうち、最初の3連戦の最後として大分トリニータをホームに迎えた。最下位の相手との対戦という点では、勝ち点の積み上げが絶対となるが、前半戦の終盤に下位のロアッソ熊本に完敗した経験もあり、決して油断などできない一戦となるはずだった――。前節からのメンバー変更は、警告累積による出場停止処分が明けた佐藤優也と中後雅喜が戻った2ポジション。大宮アルディージャ戦後に負傷離脱していた田村直也が復帰し、サブに入った。
前半はともにお互いのチームカラーを出し合う展開。大分は奪ったボールを素早く前線に放り込み、ラインを高く設定するヴェルディ守備陣の背後を狙ってきた。対するヴェルディは相手が素早くリトリートすれば、細かいパスワークからワイドに揺さぶって中央のスペースをこじ開けようと試みる。ともに我慢しながら自分たちに流れが傾くのを待つ展開だった。そこでビッグチャンスを掴んだのはヴェルディだった。42分、カウンター気味に縦パスがアランのもとへ。アランが無理な体勢になりながらも頭でくさびを落とす。これを受けた南が再びスペースへと走り出したアランへ縦パス。ゴール右斜め45度で背後から来たボールに合わせてアランが右足を強振したが、鋭く反応した相手GKに弾き出されてゴールをあげることはできなかった。
前半以上のスピードアップと精度のアップを確認し合って迎えた後半だが、序盤に目論見が外れる。50分、カウンターからややアンラッキーな形でペナルティエリア内でシュートを打たれると、複数の選手がエリア内に入っていながらこぼれ球に反応し切れず、詰められて失点を喫した。ここから反撃に出たいヴェルディは直後の56分、左サイドから安在和樹がアーリークロスで相手GKとDFの間を鋭く突く。ファーサイドに走り込んでフリーでこのボールに合わせた南秀仁のシュートは、ゴールわずか左へと逸れた。好機を逃したことで流れも逃したか、59分にはカウンター気味に左サイドから中央を経由して横パスをつながれ、サイドは豪快なミドルシュートをゴール左隅に叩き込まれて突き放される。ここからは一方的な展開へと変わった。最終ラインに選手を固め、徹底してリードを守り抜く構えの相手に対して、ヴェルディはボールを保持する側に回る。ただし、中央を固め切ってサイドにボールを押し出し、サイドに出た瞬間を狙いに行く相手に対して、有効なくさびもクロスも入ることがなく時間ばかりが過ぎていく。痺れを切らした冨樫監督は平本一樹、永井秀樹、澤井直人と次々に攻撃的カードを切った。これが相手の守備に風穴を開けるきっかけとなる。70分、中央で三竿健斗からくさびを受けた平本がヒールで背後のスペースへ流す。これに反応して前向きにボールを持った南が、クロスオーバーしながら永井が右に向かって開いて作ったスペースにボール運び、ミドルシュートをゴール左へ流し込んで1点を返した。少ないタッチと複数人の連動によるヴェルディらしい狭いスペースの打開で、大分の堅牢な守備を崩し切れる期待は持たせた。しかし、その後は中央へのくさびは通るものの、おとしたボールやセカンドボールへの対応に狙いを絞った相手を前に、フィニッシュまで持ち込む形をなかなか作り出せず。相手の必死な守備の前に、テンポやリズムや狙いに変化が乏しく、淡泊な攻撃に終始しタイムアップを迎えた。
1週間のインターバル(正しくは5日間)を経て迎える今月2回目の連戦では、いきなり中3日で敵地での九州遠征となる。移動も含めて疲労を上手くコントロールし、この悔しさを晴らす3連戦にしたい。
【試合後選手コメント:MF 11 南秀仁選手】
――今日の試合を振り返ってください。
「点を奪われる時間が悪かったのと防げる失点だったので、2失点しなければ、勝ち点ゼロで終わる試合ではなかったのかなと思います」
――ゴールシーンを振り返ってください。
「あそこの位置でボールを持った時には練習でもああいうシュートは得意としているので、練習通りにできたという感じです。ただ、チームを勝たせるゴールを決めなければ、意味はないのかなと感じています」
――同点、逆転ゴールを奪うために足りなかった部分を教えてください。
「攻撃では良いところまで行きましたが、最後の部分で崩してシュートで終わったり、クロスで終わったりというようにやり切るプレーがもっと出てきていれば、得点を奪えるのかなと思います」
――今季に関しては得点に絡むプレーが増えている印象ですが。
「自分の仕事は点を獲るか、味方に獲らせるかなので、やっと自分の仕事ができてきているのかなと思います」
――今後の試合に向けてサポーターの方に向けてメッセージをお願いします。
「チームみんなで気持ちを切らさず、後半戦も頑張っていきますので、応援をよろしくお願いします」
【試合後選手コメント:DF 3 井林章選手】
――1失点目の場面の状況を教えてください。
「何とも言えないのですが、全体の予測が足りなかった失点だと感じています。ちょっと、偶然が重なった部分が大きかったですが、それを予測するのがDFなので、そこはもう少し可能性がある限り、予測し続けるという部分で良い勉強になったのかなと思います」
――試合終盤は井林選手と福井選手のどちらかがターゲットマンとして前線に残っていましたが。
「カウンターが何回かあって、自陣のコーナーの深い位置まで持って行かれる場面が多かったです。その理由が横パスを奪われてという形だったので、それが少し気になって前線に蹴ってしまった方が良いのではないかと思っていました。それで前線に上がっていました。ただ、ウチはセカンドボールをうまく拾える選手が少ないので、試合後に話し合った際に、やめた方が良いということになりました」
――最後は1バック気味になる場面も多かったですが。
「しょうがないです。サイドバックにもボランチにも下がるなと指示していました。後ろはセンターバック2枚でどうにかすると伝えていました。あれは覚悟の上だったのでしょうがないです」
――あそこまで引かれると崩すのは容易ではないですか?
「そうですね。相手は後ろの4バックがセンターバックタイプを4人並べたような構成で大きいですし、最後の最後で崩し切れなかったのは、ある意味しょうがない部分もありました。そこに関しては自分たちの課題でもあるので、切り替えてやっていくしかないです」
――上位に食い込む上で重要な試合でなかなか結果を残すことができていませんが。
「それが今のウチの力なので、上を見過ぎてもいけないですし、かといって舐めてかかってもダメなので、自分たちはまだ若いのでチャレンジャーの気持ちを持ってやっていきたいです。前半のように堅い守備から戦っていくべきだったと思います。せっかく、ここ最近は前半をゼロで終えられれば、結果的に勝ち点を獲れる試合が多かった中、今日は落としてしまったので、少し考えてしまう結果でした」
【試合後選手コメント:MF 45 永井秀樹選手】
――今日の試合結果についての感想を聞かせてください。
「アウェイの岐阜戦できっちり勝ち点を獲ることができて、今日みたいな試合で本当は勝ち点3を獲らなければならなかったですが、残念ながら結果を残すことができませんでした。ただ、気持ちを切り替えて次の試合に向けて準備をしていきたいです」
――今日の敗因についてはどのように考えていますか?
「相手が最後は引いて守っている中で、きちんとそこを崩し切るという部分での最後の精度の追求が必要だと思います」
――2失点後に攻撃のスイッチが入って1点を返すことはできましたが。
「失点は色々な原因があるので、チーム全体の責任でもありますし、それは仕方ない部分もあります。ただ、2点を獲られたら3点を奪えるようなチームになっていきたいと思いますし、最後の崩しの部分にこだわっていくのが、ヴェルディだと思うので、そこは引き続きこだわってやっていきたいです」
――前半半ばからのボールの動かし方に関しては悪くなかったように見えましたが、ベンチから見ていて印象はいかがでしたか?
「そうですね。ボールの動かし方に関しては悪くなかったと思います。ただ、サッカーではよくある話ですが、決めるべきところで決める。崩し切るところで崩し切るという部分での質が足りなかったという気がします」
――相手の陣形が整う前の段階で少しボールの流れが詰まってしまう場面が気になったのですが。
「そうですね。そういう部分で相手が陣形を整えても、さらにその上を行って崩し切るとうのが、サッカーの面白さでもあり、重要な部分でもあるので、質の追求は自分を含めてチーム全体でやっていきたいと思います。それができれば、今日も十分に逆転する可能性があった試合だったと思います。そういう意味では少し悔しさの残る試合になりました」
――上位争いに絡んでいくうえでは勝たなければならない試合だったと思いますが?
「そうですね。本当に優勝というものを目指していくうえでは、今日のような試合で勝ち点3を獲ることがチャンピオンチームになっていくうえで必要なポイントだと思います」
――終盤の引かれた中でどういうふうに相手のブロックを崩していくイメージを持っていたのでしょうか?
「色んな意見はあると思いますが、僕の中ではボールふたつ分のスペースがあれば、十分に崩すことは可能だと思っていました。もちろん、中を固められていたら一度外に開いて、再び中というのはセオリーですが、そこは外を使いながら中も崩して行きながら、というように両方での崩しをイメージしていました。いずれにしても崩し切るところは、プレーの質が大事ですね」
――終盤のパワープレーに関してはどのように考えていますか?
「試合を終わった後にチームみんなで話し合ったのですが、みんなのサッカーでパワープレーというものが必要かという点に関して議論になっていました。そのへんはもう一度みんなで話し合って、パワープレーでやるのか、あえて下で崩して行くべきかは詰めていきたい部分です」
――負傷明け以降、2試合連続途中出場ですが、コンディション面はいかがですか?
「これから夏場になっていくので、コンディション面は重要なことですし、自分もチーム全体も気を付けていきたいです。自分自身は夏場が嫌ではないので、今は調子も上がってきていますし、引き続きしっかりと調整していきたいです」
――今後の戦いに向けたポイントを教えてください。
「最終目標は優勝というところなので、そのためにはみんなの力が必要ですし、それぞれみんなが意識を高く持ってやっていかなければならないと思っています」
【試合後監督コメント: 冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「本当に自分たちにとっては、たくさんのサポーターが集まって頂き、自分たちがやってきたことに対して、期待をしてくれている。応援をしてくれているという雰囲気を肌に感じながら戦いました。結果的には、また3歩進んで3歩下がるゲームになってしまいました。自分たちが主体となってサッカーをやっていく中で、失点の引き金を自分たちで引いてしまったこと。それが非常に残念だったと思います。ただ、2失点してから人とシステムを変えて、少し3人目の動きでゴールを獲るというところで、実際に1点が来ました。その後、まだまだ時間がある中で、よりダイアゴナルなスプリントであったり、攻撃を仕掛けていきたかったですが、少しゴールまでの直線的なモノを選び過ぎた印象です。相手が中央に人数をかけてくる中で、外の深い位置や同一視野を崩す形であったり、あるいはペナルティエリアにボールを入れた後の2人目、3人目のアイデアだったり、そこにパワーを持って臨むことでミドルシュートを打つゾーンを広げることができたのではないかと思っています。その点には少し悔いが残っています。ただ、自分たちがここまでやってきたことが、これで無くなるわけではないですし、自分たちがこのゲームを反省して、パワーを持って次のゲームから、また連戦が3戦あるので、自分たちがここから強い気持ちを 持って、また上を目指して戦っていきたいと思っています。それには選手だけでなく僕たちも含めてチームとして一致団結する。また、サポーターの気持ちも感じているので、ヴェルディとして、再び強いヴェルディを見せていけるように1週間トレーニングしたいと思います」
――南選手がここ最近、3ゴールと得点に絡んでいますが、南選手に求めるタスクを変えたのか、あるいは南選手の意識が変わったのか、監督はどのように感じてらっしゃいますか?
「基本的にタスクは全く変えていなくて、元々ゴールというものは彼の特性であると思っています。ただ、彼には攻守の役割を与えていますし、そこからゴール前に顔を出す。正確なシュートを持っているので、シュートを打つということは、ずっと求めています。彼にはもっと高いハードルを与えているので、これには満足してほしくないですし、自分たちにとっては、ゴールという部分に関してゼロで終わらない試合が増えてきているので、彼にはより貪欲にそこを狙ってほしいと思っていますし、彼はミドルシュートも持っているので、そこに対して、良い形で前を向いて打ってほしいと思っています」
――後半頭から中野選手とアラン・ピニェイロ選手のポジションを入れ替えた意図と評価を教えてください。
「前半は自分たちがボールを持っていましたが、なかなかアクションが起きなかった。特に、サイドのスペースが空いているにも関わらず、少し自分たちがまっすぐな受け方ばかりをしていたので、よりとことん相手の右サイドのところを突いて行くこと。また、中野と杉本の2人のコンビネーションでスペースを作って使うという作業。それによって、逆サイドのアランがフリーな状況で前に進んで行けるのではないかと思って、スタートから変えました」
――後半序盤に続けて失点してしまったが、先程監督が「自分たちが失点の引き金を引いてしまった」という言葉は単純なミスか、何らかの変更で招いたもののいずれか教えてください。
「自分としては良い立ち位置から、例えばヘディングでクリアするのが中に入ってしまったり、そういうところでしっかりと軸足を持ってボールを蹴ればミスが起きない場面で、少し慌てて蹴っていたところがあったと感じています。自分たちがもっとそういう場面で自信を持って、90分間ある、または後半のスタートから45分あるという中で、もっと余裕を持ってゲームを進めたかったという思いはあります。それが引き金となって失点してしまったことによって、自分たちでプランを変更して、よりパワーを使わなければならないという状況にしてしまったのかなと考えています。もう一度、自分たちで映像を確認したら、また違う印象を持つ可能性もありますが、現時点ではそう感じています」
――マークやプレッシャーをかわすのがうまい選手が揃っている中で、なかなか前線に放り込むシーンがなかったように感じましたが。
「自分もそういうふうに思う部分もあったので、ピッチサイドから南にアイデアを与えたり、中後にも少しアドバイスしました。やっぱり、僕たちがテクニカルエリアやスタンドから見ていると、テレビで見ているのと同じ感覚なので、もっとこういうふうにした方が良いという気持ちになりますが、ピッチにいる選手たちはどうしても人と視線が重なってしまうと、もう少し先が見えなくなるということがあります。そこは自分のトレーニングで改善していくか、もっと自分たちが攻撃をする時の幅やアイデアという部分はトレーニングの中からやっていきたいと思っています。1本のパスで局面を変えるような形やパスで3人目に通すという部分は今日の試合でもイメージしていましたが、なかなかそれを出せなかったのは少し残念です」