MATCH試合情報
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【試合展開】
3連勝から2連敗を喫し、上昇気流が少々弱まった感のあるヴェルディ。特に前節は下位のロアッソ熊本を相手に冨樫監督が「今シーズンのワーストゲーム」と言い切るほど、何もできずにホームゲームで連敗を喫した。この嫌な流れを払しょくすべく、首位をひたはしる大宮アルディージャとの敵地での一戦に臨んだ。相手はここ12試合負けなしで、その間に25得点2失点という無類の強さを発揮しているノリにノッったチーム。ヴェルディはそんな相手に対して、決して受けてリアクションで戦うのではなく、あくまで自分たちのスタイルを貫いてハードワークとパスワークで崩していくアクションを貫く姿勢をとった。スタメンは前節から2人が変わった。右サイドバックに田村直也をスライドさせ、センターバックに2節以来の出場となるウェズレイを起用。右サイドMFには南秀仁を配置した。
序盤からラインを押し上げてコンパクトな陣形で戦うが、4分にミスから背後のスペースを突かれ渡部に突破を許す。ゴール前で横パスでDFが剥がされるが、フリーの状態でムルジャが放ったシュートを佐藤優也が完全に読み切ってスーパーセーブ。10分には、右サイドからクロスを入れられると、ペナルティスポット付近でフリーになっていた横谷に合わされ、ゴール上を通過する危険なシュートを打たれる。少しずつラインが下げられて決定機を許したが、井林章とウェズレイのセンターバックコンビが、ムルジャに入るボールを徹底的に撥ね返し、徐々に最終ラインが高い位置に入り、中盤、前線を押し出す形で前からのプレスがはまっていく。最初は余裕を持ってボールを動かしていた大宮だが、コンパクトな局面でコンビネーションがずれ、ヴェルディがミスに乗じてボールを奪う回数が増えていく。迎えた28分、ヴェルディのゴールキックを相手が自陣内で処理するタイミングでヴェルディの選手たちが猛プッシュ。ボールサイドに厳しく寄せた三竿がボール奪取に成功し、バイタルエリアに運ぶ。ショートカウンター発動で次々に縦へのスイッチが入る緑の選手たち。ゴール正面ミドルレンジでパスを受けた杉本竜士は、相手がプレスにこないのを見て思い切りのいいミドルシュートを放つ。一度はゴールキーパーに弾かれたが、このボールに南が走り込んでワンタッチで流し込んでヴェルディが先制に成功する。1点を追う相手がゆっくりと攻撃のテンポを早めてくる中で、ヴェルディも連動した守備のギアを段階的に上げていく。徐々に球際での競り合いも熾烈を極めていくが、ヴェルディの選手たちは局面の争いで一歩も退かずにボールへの強烈なこだわりを発揮する。前半の終盤こそ押し込まれたが、ほとんど危ない場面も作られないままリードを守って折り返した。
ハーフタイムに冨樫監督からは後半も絶え間ないプレスを続けて、相手のスイッチが入る前に試合のペースを掴む意図が伝えられた。攻撃面では相手の反撃を考えて、速攻を意識し過ぎてボールを奪われるよりも中盤で落ち着かせて、状況に合わせてテンポを変えて攻めていくこと。ボランチがその鍵を握った。迎えた後半、ヴェルディの選手たちの勢いは止まらない。52分、ハイプレスで右サイドを崩すと、田村がオーバーラップしてライン際でクロスを供給する。これに飛び込んだ中後は勢いに乗って打点の高いヘディングシュートを放つが、これはわずかにゴール左へと逸れた。その後、巧みなボール奪取からボールを保持するヴェルディは、相手をいなしてサイドを起点にボールを動かし、相手のバランスが崩れた瞬間を逃さずに縦の攻撃スイッチを入れてフィニッシュまで持ち込む。61分には、左サイドバックの安在和樹が大きくクリアしたボールを平本一樹が競り、落としたボールを南が中央で拾ってドリブル。相手が中央に寄ったところで右のスペースへ流すと、長い距離を走ってオーバーラップした田村がワンタッチでクロスを入れる。ややミスキック気味のボールだが、逆にクロスを想定した相手GKが目測を誤って前に出過ぎたため、頭上を越えてそのままゴールイン。球際で常に先手を取り続けたヴェルディが幸運な形で追加点を挙げた。その後も球際の厳しさ、素早い攻守の切り替え、連動した守備とテンポに変化をつけた攻撃を継続して試合をコントロールするヴェルディ。64分には相手の背後をとった杉本が澤井直人のフィードに抜けてクロスを送り、相手GKが弾いたこぼれ球を南が飛び込んだ勢いのまま捉えたがミートできなかった。その後、ロングボールを多用して打開を図る相手に対して、決して下がりすぎることなく巧みにラインをコントロール。攻撃ではボランチの中後雅喜がパスでメッセージを伝え、平本、南、杉本、澤井が緩急織り交ぜた攻撃で相手を翻弄する。アディショナルタイムも含めて90分間プラス3分に渡ってハードワークし、球際で戦い続けたヴェルディが首位チームを相手に完封勝利を挙げ、連敗を2でストップして敵地で貴重な勝ち点3を手に入れた。
再び上位陣を窺うためには連勝が欠かせない。シーズンの折り返しとなる次節は、ホームにアビスパ福岡を迎える。
【試合後選手コメント:MF 11 南秀仁選手】
――先制点の場面を振り返ってください。
「竜士(杉本)は、あの位置で持ったら打つというのは、練習の時から見ていました。だから、こぼれてきた時に詰めていたらボールが来るかなと思っていたら、こぼれてきたので、うまくいって良かったです」
――前半の厳しい展開の中で少ないチャンスをモノにすることができましたね。
「ただ、相手は首位のチームですし、自分たちが主導権を持ってうまくやれると思っていなかったので、ある程度我慢してそういうチャンスを決められたら、絶対に勝つチャンスがあると思っていました。本当に数少ないチャンスを決めることができて良かったです」
――積極的な守備から流れを引き寄せた印象ですが。
「後半は自分たちが持てる時間も増えてきてサイドを起点にボールを持って、一樹さん(平本)や竜士に預けて攻め切るシーンも何度かできました。後半に関しては良かったと思います」
――その後、追加点を奪って最後までリードを守り切った点も良かったですね。
「そうですね。ここ最近は失点をしていましたが、今日に関してはみんなが高い集中力を保ってあまり点を獲られる雰囲気を感じさせない気迫を見せていましたし、それは良かったですね」
――相手の攻撃がボランチを経由し、サイドで1対1を仕掛けてくるケースが多かった印象ですが。
「相手のボランチからFWにボールを付けさせると、うまいし恐いことは分かっていたので、今日はサイドに行かせることが守備のやり方でした。そこでうまくボールを獲れるシーンもありましたし、クロスを上げられても中には強い選手がいるので、うまく撥ね返せました。とにかく、守備がハマったと思います」
――右サイドバックの田村選手との連係はいかがでしたか?
「タムさん(田村)は守備のことに関しては、全て言ってくれるし、やってくれます。前半はちょっと守備の時間が長かったですが、後半はマークの受け渡しもスムーズにできたので、そこで守備の負担が減ったこともあって攻撃にかける体力を増やすことができました」
――チーム全体のハードワークが勝因だと思いますが。
「そうですね。誰一人守備をサボッていなかったですし、ボールを奪った後も攻撃に繋げる質に関しては、後半は悪くなかったと思います」
――次節の福岡戦に向けた意気込みをお願いします。
「次はホームなので絶対に勝ちたいですし、今日の勝ちを無駄にしないように絶対に勝ちたいです」
【試合後選手コメント:DF 23 田村直也選手】
――試合を振り返ってください。
「今日はセンターバックにウェズレイが入って自分はサイドバックに移りました。彼は久々の試合だったので、彼をサポートすることと、マッチアップが泉澤選手という良い選手だったので、そのへんの対応を含めて自分の役割をしっかりとできたと思います」
――首位の大宮を相手に無失点で試合を終えたことに関してはいかがですか?
「前節、前々節は負けて2連敗していましたし、もう一度全員攻撃、全員守備というところに立ち戻って、FWの選手もしっかり守備をしてくれました。一番良かったのは、前半の決定機をGKの佐藤優也選手が素晴らしいセーブで止めてくれたところです。あれでチームは救われました。そういうところで全員の意識が高かったと思いますし、クロスへの対応も良かったと思います」
――2点目の場面を振り返ってください。
「ラッキーなゴールだと思います(笑)。そういう所にどんどん出て行くことができて良かったと思います。クロスもそうですが、点に絡みたいと思っていたので、良かったです」
――2点目の場面でダイレクトのクロスを狙った意図について聞かせてください。
「いつも平本選手とかが、鼻先で触ってくれればいいかなというイメージで蹴っています。結果的にはラッキーでした。インステップのキックは自信があるので、それが風に乗って伸びたのはあったのかなと思います。加藤選手は僕と同い年の素晴らしいGKで、彼から点を取ることができて良かったです」
――試合展開の中で重要な追加点でしたね。
「1-0とか2-1とかのゲームが多かったので。2点差を付けることができたのは良かったと思います。本当は一樹君(平本)や竜士(杉本)とかFWの選手が前から追ってくれて後ろの選手は助かっているので、そういう選手の頑張りが結果に出て良かったです」
――守備の局面で最後まで粘れましたね。
「連敗の前まではなかなか良い形ができていたので、うまくそういう戦いができたと思います。ただ、次節は福岡という強い相手なので、まだまだこれで終わらないように頑張っていきたいです」
――泉澤選手など相手の強力な左サイドとのマッチアップに関して印象を聞かせてください。
「前半に一度縦に抜かれる場面がありましたが、それ以外の対応は良かったです。ただ、彼(泉澤選手)以外に2、3人が絡む形の攻撃が恐いので、そのへんはボランチとのコミュニケーションなどで対応しました。とにかく、彼が中に切れ込んで打つシュートに対しては警戒していました。僕の中では、いま、浦和にいる武藤選手に似ているなというイメージでした。仙台にいた時に一緒にやっていて、彼と練習した時のイメージを持ちながらやっていました。持たせて良い低い位置では持たせて、(左サイドバックの)和田拓也とも仙台で一緒にやっていたのですが、彼が持った時に泉澤に左足でパスを付ける時は、なるべく近くに寄せておく。逆に、カルリーニョス選手が持って振ってくるという時は 、自分がポジションを埋めていることを明確にアピールしていました。なんとなく自分のやり方を思い出した感じです。だから、相手を研究したというよりも自分の経験とか、一緒にやっていたイメージを活かしてできました」
【試合後選手コメント: DF 15 ウェズレイ選手】
――第2節の金沢戦以来の出場でしたが、いかがでしたか。
「まずはみなさんに感謝したいです。また今週、1週間トレーニングをしてきた中で自分を信じてくれたスタッフにも感謝したいです。今日は久々の試合ということで、自分にとってすごく重要な試合になると思っていました。その試合を無失点で終わり、良いディフェンスをして勝つことができたのはとても良いことだと思っています」
――相手が首位の大宮でしたが、試合前にどんな対策を立てていましたか?
「相手がどうとか、首位であるかということに限らず、自分たちがやることは変わらず、それぞれが与えられた役目をこなして、勝利のために全力を出すということでした」
――無失点で試合を終えることができたことに関してどんな印象でしょうか?
「自分だけでなくチーム全体がこの1週間に本当に良い練習をしてきた成果だと思っています」
――今後に向けた意気込みを聞かせてください。
「まだ、リーグ戦は半分を終えていませんが、最後の試合まで自分たちを応援し続けて頂けるとうれしいです。また、サポーターは僕たちにモチベーションを与えてくれる存在なので、これからも応援をよろしくお願いします。そして、ケガで厳しい時期を過ごしてきた自分を支えてくれたサポーターに関して、ありがとうとお礼を言いたいです。これからも感謝の気持ちを持ってプレーしていきたいです」
【試合後選手コメント:DF 3 井林章選手】
――首位大宮を相手に連敗をストップさせる非常に良いゲームでしたね。
「スコアは2-0でしたが、危ない場面が何回かあったので、そこはまだまだ隙があるというか、もっと突き詰めていかなければならない点が多いと思います。また、今日は相手にボールを持たれる時間が長かったので、それをもう少し自分たちのペースにできるようなサッカーにしていければ、もっと良いチームになると思います」
――前線からの連動したプレスというチームの特長が良く出ていた試合でしたね。
「そうですね。相手は前線にうまい選手が多くいるので、彼らに自由にやらせてしまうと良いパスも出されてしまいますし、良いクロスや良いドリブルを持っている選手もいるので、その出し手のところから制限していくということは、ある程度チームとして90分間やり切れたからこそのゼロという結果に繋がったと思います。そこは次に繋げていきたいです」
――後半のペース配分という部分では中後選手や平本選手を中心に要所で試合を落ち着けることができていたのではないでしょうか?
「相手があまり切り替えの部分でスピードアップすることがなかったので、カウンターにしても相手がすぐに引こうとするので、ボールを持てる時間があった気がします。また、自分たちのように前から積極的にボールを追ってくることもなかったので、落ち着きどころがはっきりしていた部分があったと思います」
【試合後選手コメント:MF 20 三竿健斗選手】
――今日は素晴らしいパフォーマンスでしたが、ご自身の評価はいかがですか?
「雰囲気もすごく良くて相手もレベルが高い中で、自分がどれだけやれるかという部分ですごく楽しみでした。その中で何度もボールを奪うことができたことは、今後の自信に繋がっていくと思います」
――試合序盤に家長選手に対して、ガツンと当たってボールを奪う場面がありましたが、あれで今日はやれるという手応えを感じたのではないでしょうか?
「そうですね。最初のプレーでその日の出来が、ある程度決まることが多いので、そこでガツンと行けたことは良かったと思います」
――中盤に下りてくる家長選手に対してタイトなチェックを行うことはチームとしての狙いだったのでしょうか?
「そうですね。家長選手が起点になるのは分かっていたので、最初からできるだけ厳しく行こうと思っていました。自分の良さを出そうと思っていたので、そこは当たり前のような感じでやっていました」
――上位陣やフィジカルの強いチームとの対戦で生き生きしたプレーを見せている印象がありますが。
「そうですね。今日は前の選手が運動量を持って相手を追ってくれたので、そのおかげでコースを限定できたこともあり、今日は良いボールの奪い方ができました。そういう試合では、大体前の選手が頑張ってくれているので、全て前の選手のおかげだと思います」
【試合後監督コメント: 冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「素晴らしいサッカー専用競技場、そして、たくさんのサポーター。自分たちが戦う雰囲気というのは、試合前から作られていました。今週の1週間、熊本に負けてから良いトレーニングができてきましたし、自分たちが大宮さん相手に堂々と戦えるものを持っていた。実際にハードワークという言葉が陳腐に聞こえるほど、選手たちは戦ってくれました。ハーフタイムに戻ってきて、もしかしたら大宮さんの方は、“このペースじゃ、残り45分続かない”と思っていたかもしれません。自分たちはこれをもう45分続ければ、試合が終わってしまうと考えて、もう一回選手たちに戦うことを伝えました。最後まで途中から出てきた選手も含めて、自分たちが結果を残せたのは、今日来ていない選手も含めてチームの力だと思いますし、これが次のゲームにまた表れていかなければならないと思うので、シーズンを終えた時に今日の試合が自分たちの力になったという評価になるように、来週もしっかりとトレーニングしたいと思います。本当に選手、サポーター、クラブを支えてくれている人たちと、この勝利を分け合いたいと思いますし、自分たちにはあと半分の試合が残されているので、またしっかりとやっていきたいです」
――試合序盤から家長選手のところでボールを奪い切る形が多かったですが、最初から狙っていた形だったのでしょうか?
「家長選手を特別意識した話をしたわけではありません。ただ、チームとしてどういう良い奪い方ができるかと考えた時に、それはファーストディフェンスであったり、最終ラインからコンパクトに陣形を保つことであったり、チャレンジ&カバーの徹底というところであったりしますが、その中で今日は相手のボールが入ってくるところが、たまたま家長選手であることが多かったと思います。自分たちがどうやってボールを奪って前に運んで行くというところで、良い奪い方ができたかなと思います。先週は特にファーストボールで勝てなかったこと、セカンドボールを拾えなかったことを改善していく中で、今日は良い奪い方に繋がったと思います」
――監督ご自身は今季が1シーズンをフルで率いる最初の経験ですが、チームに良い刺激を与える方法やマネジメントに関して、ここまでのシーズンで学んだ部分を教えてください。
「自分は今いる28名の選手を信じていますし、良いトレーニングができていることは感じているので、選手たちがトレーニングでも試合でも思い切りのよいプレーができることを注視しています。今は自分の力不足な面があるので、選手たちがプレーをすることで色んな変化を起こせる。それを自分の采配で変に邪魔をしたくないですし、より力を出させることを意識して、毎日毎日、彼らの様子を見ている。あるいは気持ちを、なかなか言葉に出てこないので見え辛いですが、用心深く選手たちを見ようとしています。もちろん、自分の二つの目だけでは足りないので、コーチングスタッフや他のスタッフを含めて見ているところが、今チームが良い雰囲気でプレーできている一番の要因なのかなと考えています」