MATCH試合情報
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【試合展開】
4月最後のホームゲームでホーム初勝利を期したヴェルディは、井林章と金鐘必のCBコンビでスタート。両SBにはスプリントとアタッキングに定評のある安西幸輝と安西和樹をスタメンで起用した。
J2屈指のメンバー構成の相手を前に、序盤から高い位置でボールを保持される苦しい展開を強いられた。ある程度予想された展開の中、ボールホルダーへの素早いファーストディフェンスと前線の選手をつかまえるマッチングで隙を作らず、フリーな状態でフィニッシュさせることなく守備では粘り強い対応を見せた。ただし、攻撃では縦に急いでシュートに持ち込む前にボールロストする場面を多発。前傾姿勢になった瞬間にカウンターを受けて徐々に全体的に引き気味で対応する時間が長くなった。J2屈指の豪華な攻撃陣で肉弾戦を挑んできたジュビロ磐田に対して、ヴェルディの若い最終ラインも粘り強い対応と高いカバーリングの意識で徹底抗戦。ピンチらしいピンチを招くことなく前半を折り返した。
試合の展開が動き始めたのは後半だった。三浦監督はハーフタイムにワイドな攻撃と精度の高いパスワークを要求。守備では、規律を持って組織的に守った前半の粘り強い対応を再度求めた。これでスイッチが入ったヴェルディは、後半に入ってからも高い集中力を保って、磐田の攻撃を撥ね返し続けた。しかし、一瞬の隙を見せた53分、ペナルティエリア内で井林が相手を倒してPKを献上してしまう。キッカーは前田遼一。このPKは、佐藤優也がバッチリのタイミングで右に飛んでファインセーブ。守護神のスーパーセーブでこのピンチを凌いだ。すると、流れがヴェルディへと傾いてきた。56分には前線のコンビネーションから平本一樹がボックス内に侵入してシュートを放つなど、前半は1本し打てなかったシュートの場面が増えていく。その4分後には、ゴール前左サイドのスペースに抜け出した平本が、グラウンドの横パスを供給。これに飛び込んだ前田直輝がワンタッチで合わせたが、このシュートはポストに嫌われた。一度は掴みかけた流れを逃すと、再び磐田の圧力に押し込まれる時間が続く。耐えるだけでなく、ヴェルディは南秀仁、菅嶋弘希と前線に若い戦力を投入し、反撃の糸口を掴む。80分には菅嶋がスペースへ抜け出して決定機を創出するなど、一進一退の攻防の中でも、決して相手にひけをとらないフットボールを展開した。しかし、エアポケットが終盤に待っていた。87分、左サイドからの磐田のフリーキック。ファーに流れたボールを頭で合わされ、左右に振られた選手たちは緩いシュートに反応できず、ゴールの隅にボールが流れ込んだ。その後も諦めずに縦への意識を強めて磐田ゴールへと迫ったが、最後までゴールネットは揺らせなかった。
【試合後選手コメント:GK 1 佐藤 優也選手】
――残念ながらヒーローになることができなかったですね。
「(決勝点を挙げた)ジュビロの阿部選手がヒーローになり、自分がそうなることができなかったという意味で明暗がくっきり出た試合だと思います。そして、改めてGKというポジションの難しさを思い知らされた試合になりました」
――PKストップなどGKとしては最善を尽くせた試合だったのではないでしょうか?
「よく言うことですが、89分間良くても残り1分で失点してしまえば、そういう結果が残ってしまいます。逆にFWは89分ダメでも最後の1分で決めれば、ヒーローになることができます。そういうことを改めて思い知らされました。ただ、すぐに次の試合があるので、しっかりと切り替えてやっていきたいです」
――久々のセットプレーからの失点でしたが?
「そうですね。やっている感じでは流れでチャンスを作られるよりもセットプレーがいやだなと段々思ってきた時間帯での失点でした。そういう時間にしっかりと撥ね返していかなければダメですね。それができれば、自分たちの勝利を近づけることにもなります」
――中2日で札幌とのアウェイゲームがありますが?
「個人的には古巣との対戦となるので、そういう部分では新たな気持ちを持ってしっかりと切り替えて次の試合の準備をしていきたいです」
【試合後選手コメント:FW 25 平本 一樹選手】
――今日はかなり低い位置まで下りて守備をしていた印象ですが?
「自分としてはああいう形からリズムを作りたいと思っていましたし、相手もあそこまで戻られると嫌だろうと考えてプレーしていました。ただ、あれをやり過ぎると攻撃の際に前に行けないというのはダメですが――。それでも、先に失点しないという意味ではチームのために前に残るよりも、ああやってプレスバックすることが重要だと考えていました。ただ、FWが下がってボールを奪った時にもっと誰でもいいんですが、裏に飛び出すプレーを出していきたかったですね。それができれば、カウンターの際にもっと変わってくると思います」
――前節の水戸戦もそうですが、前半は慎重な戦いが目立ちますね。
「まずは前半きっちりゼロで行こうというのが共通意識としてありますし、先に失点したくないという部分もここ最近勝てていないことであると思います。それでも、今日の前半に関しては悪くなかったです」
【試合後選手コメント:DF 34 安西 幸輝選手】
――試合を振り返ってください。
「前半はずっと押し込まれました。今日は試合前からずっとワクワクしていて、マッチアップも山田選手だったので自分がどこまでできるかなど色々考えていましたが、前半はずっと押し込まれてしまいました。後半はちょっとずつチャンスも出てきて、イケるかなという思いもありましたが、課題のセットプレーからやられてしまって、すごくもったいない試合だと思いました」
――今日はこれまでに対戦していないテクニックに優れたチームとの対戦でしたが?
「自分の今の立ち位置はまだまだですし、あのジュビロと互角に戦えるように練習していくしかないです」
――今日も何度か良い持ち上がりで攻撃に絡んでいましたが手応えはいかがですか?
「攻撃の部分ではやれるなという気持ちです。ただ、前半に一度良い形でドリブルで持ち上がることができましたが、一樹さん(平本選手)がフリーでいたことを見逃してしまったので、ああいう部分でももっと落ち着いてプレーしたいです」
――守備面の対応で気を付けた部分はありますか?
「試合前の分析で山田選手がクロスを入れる際に股を狙ってくるということを言われていたのですが、最初の場面でやられてしまって、その後はずっとそのことが頭にすり込まれてしまいました。ただ、対応の部分では相手も同サイドの裏にしか抜け出してこなかったので対応し易かった部分もあります。ただ、最後の最後にセットプレーでやられたことが心残りです」
――次節の札幌戦に向けてどの部分を修正していきたいですか?
「今日の試合で自分自身は自信も付きましたし、攻撃は十分通用するのかなという再確認ができました。あとは守備の細かい部分を突き詰めて札幌戦は必ず勝ちたいです」
【試合後選手コメント:DF 15 井林 章選手】
――試合を振り返ってください。
「どっちかと言うと、押し込まれて守備に回る状況が多かったのですが、そこでずっと耐えることができたのは、今までにない成果だと感じています。今までは後半途中に失点したり、先に点を奪われて勝ち切れない試合が多かった中で、チャンスを作られながらも90分近く無失点で凌ぐことができていたことは大きな成果だと思います。ただ、セットプレーからの失点というのは、今シーズン始まってからよくあったことなので、今日その形でやられてしまったことは、これまで積み上げてきたものができていないということにもなるので、今一度反省すべき課題だと思います」
――J2屈指の攻撃陣に対して非常にうまく守れていた印象ですが?
「監督がずっと言っていたことなんですが、マッチングをしっかりしてチャレンジ&カバーを徹底することは相手を自由にさせないプレーにつながるので、常に横と縦との関係で声をかけ続けることで、うまくマークの受け渡しができました。だから、相手がどうこうというよりそれはずっと意識していることなので、今日はそれがうまくいきました」
――テクニックに優れる相手との対戦でしたが、戦った印象はいかがですか?
「相手の出所がうまくてなかなか前からプレスがかからず、引いて対応する形が多かったです。それでも大事な部分はゴール前なので中央はしっかりと締めることができたと思います。ボールを回されても慌てずに対応できましたし、相手のメンバーを見てある程度予測できた部分もありました」
――中2日で札幌戦ですが?
「札幌も一人ひとりの能力が高いですし、前線で言えば都倉選手など、個性を持った選手が多い印象です。その中で相手の長所を防いでいかないと、今日のように相手に流れを持って行かれてしまうので、ディフェンスでプレーしている以上は相手に自由にプレーさせないため、チームが前から守備をやっていけるように指示していきたいです」
【試合後選手コメント:MF 14 鈴木 惇選手】
――試合を振り返ってください。
「圧倒的に相手の方がボールを持つ時間は長かったですが、前半から真面目に守備ブロックを作って、奪ってからは少々大味な形でしたがカウンターからチャンスも作れていました。それだけに最後の場面でセットプレーから失点してしまって、もったいなかったです。でも、中2日で次の試合があるので切り替えていきたいです」
――押し込まれることは試合前から想定していましたか?
「あそこまで引くことは最初から考えていませんでした。ただ、相手の後方からのボール回しが非常に安定していて、前から取りに行ってかわされるよりも、自分たちが構えた方がやられないと思ってやっていました。実際、セットプレー以外で崩された場面はほとんどなかったと思います。流れの中でチャンスを与えなかったことはチームとして収穫だと思います」
――佐藤選手のPKストップを機に流れが変わりましたね。
「そうですね。PKを与えたことは個人的に反省しなければいけない部分です。ただ、優也君(佐藤選手)が止めてくれたことで、自分たちがまだやれるという気持ちになりました」
――後半のチャンスで決め切れなかったことが痛かったですか?
「そうですね。チャンスがなかったわけではないので、それを決めないとダメです。その結果、最終的にセットプレーからやられてしまったので、それを良い教訓として次につなげていきたいです」
――次節の札幌戦に向けてどのようなプランを考えていますか?
「今日の反省を生かすという意味ではちょっと引き過ぎた部分もありました。また、守備で粘り強く対応できていた中でカウンターの場面で大雑把に大きい展開を入れて簡単に奪い返されて守備に戻るということが多すぎました。だから、ボールを奪ってからのつなぎという部分は修正していきたいです」
【試合後監督コメント:三浦泰年監督】
――試合を振り返ってください。
「我々のプラン通り、ゲームは進んでいったのかなと思います。もちろん、個の力の部分などがしっかりとした選手がジュビロにはいるわけですから、守備のところをしっかりとやらなければいけないという我々のプラン通りのペースで進めていくことができて、最終的にはチャンスを作ることができました。ゲームの展開として、自分たちに勝利を持ってこられるギリギリのところまではいっていたのかなとは思います。当然、結果は分かっているとおり、87分のFKからの失点で結果というものは出せなかったものの、内容的には価値のあるものになったと思っています。選手たちがまとまって、準備してきた戦術またはコンセプトを積み重ねてきたサッカーを、集中して笛が鳴るまで最後まで発揮したと思っております。中2日で札幌戦がありますので、メンタルの部分を早くクリアにして、当然中2日では肉体的にも疲労が残らないわけではないと思いますので、そこは明日からまたケアしながら、また札幌戦では今日の試合で得たものに一段また積み重ねられるようにしたいと思っております。何よりも、サポーターがいつも言う“勝ち点3”を目指して、次もまたしっかりとしたサッカーをやりたいと思います」
――今日は吉野選手を外し、金鐘必選手、井林選手で挑んだ理由を教えてください。
「安西幸輝と安在和樹の両サイドバックは、攻撃でスイッチが入ったら攻撃的にアグレッシブに相手の裏にスプリントできる。逆に相手にボールを奪われた時は、チームに対して忠実に切り替えて、センターバックの横ないしはサイドハーフとコミュニケーションをとってしっかりとした位置をとるということを優先することができます。彼らと中央の選手をどういう組み合わせるべきかを考えた結果です。吉野が一番目指しているポジションはボランチであって、今週の練習ではそのボランチで何度かプレーさせたのですが、彼のやりたいポジションだけではなく、センターバックをやることで彼が本来やりたいポジションでプレーする時に必ずプラスになる経験ができると思っていました。そういうことを考えながら、どういうコンビでいくかをギリギリまで考えて、最終的に決断したのが今日の布陣でした」
――9試合を終えてPKを与えることが多いと思いますが、監督としてはどう思われますか?
「ジャッジというものについては、いろいろな角度から見た時に、それが本当に正しいジャッジであるかどうか、私の判断では決め難い部分があります。ただいつも思うことは、PKを取られるエリアに侵入されるまでの過程でミスが起きているということ。つまり、PKをジャッジのせいにするのではなく、なぜそこでそういうシーンが訪れたかということをしっかり考えなければいけないということです。ただ、準備する段階で、ジュビロは非常にPKが多いと分かっていました。それを考えると、経験や実績のある選手が、そういうずる賢いプレーができるという風にも考えられます。とはいえ、今季うちがPKが多いという…については、守備を一つひとつ修正していくだけだと感じています。今日の守備というのは、最後に点は取られているのですが、流れの中で崩されてはいないですし、相手のキープレーヤー、今日で言えば松井選手や山田選手というなかなか抑え辛い選手を、若い選手が忠実にしっかりと抑えていたなと。そういうところが今後につながっていくと思っていますし、続けていくべきだと思っております」