MATCH試合情報
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【試合展開】
国内3冠、アジアタイトルと合わせて年間4冠まであとひとつと迫り、その頂点をかけたシーズンラストマッチを迎えた。対峙するのはリーグ後半戦で敗れている浦和レッドダイヤモンズレディース。リーグ前半戦でもリーグカップ準決勝でも先制を許すなど、苦しい戦いを強いられた相手に対して、シーズンの集大成として女王のプライドを示すための一戦となった。
代表チームに多くの選手を送り出してきた日テレ・ベレーザにとっては、選手が揃ってベストな状況で戦えるのはこれが今年最初で最後のチャンス。準決勝を終え、この1週間はこの一戦にのみ焦点を当てて準備を進めてきた。
その成果は立ち上がりからピッチ上に現れた。今シーズンの過去の対戦は立ち上がりから猛烈にプレスをかけてくる相手に対して受け身になり、立て直すための思考の余裕を作る前に失点していた。ところが今日は、前線からボールに対して厳しく素早くアプローチし、FW、MF、DFが連動してコンパクトな陣形で相手を追い込んでいき、高い位置でボールを奪い、そこからマイボールを保持して、相手を揺さぶりながら手薄なスペースを突いていく。高さのある相手FWに簡単にボールをコントロールさせないように、ロングボールの出どころに厳しく寄せ、またターゲットの菅澤には土光真代が厳しいチェックで自由を奪った。そうしてアグレッシブな姿勢でペースを握ると、迫力のある攻撃から手にしたセットプレーを生かす。7分、右からのコーナーキックのチャンスで籾木結花がゴールニアに落ちるボールを入れる。ゴール前でマーカーとポジショニングを争っていた田中美南がボールの落ち際で先に身体を入れて豪快なワンタッチボレーシュート。これがゴール左上隅へと吸い込まれ、大一番でベレーザが先制に成功する。
得点直後も攻め手を緩めないチームは、11分に清水梨紗のミドルシュートが右ポストを直撃し、さらにこぼれ球を田中が拾ってGKと1対1の場面を迎えるが、強烈なシュートはGKにブロックされた。ビハインドを背負った浦和も前がかりに攻めてきたため、しばらくはオープンなカウンターの応酬のような展開が続いたが、徐々に攻め急がずにマイボールをしっかりと保持するように戦い方をシフトしたベレーザが主導権を持つ。前半の終盤はカウンターへの備えも万全に整え、コンパクトな陣形を相手陣内に入れて攻撃的なサッカーを貫いて試合を折り返した。
後半は立ち上がりの49分にセットプレーから強烈なシュートを放たれるが、これは山下杏也加が鋭い反応で飛びついてはじき出した。一方、ベレーザは61分に投入された植木理子が攻撃を活性化。ゴールに向けて仕掛けていき、反攻に出ようとする浦和を背走させる。63分には左サイドでボールを受けるとドリブルでカットインし、ゴール左斜めの位置から強烈なシュートを放つが、これは左ポストに嫌われた。前半に比べると浦和にもボールを持たれたが、相手にリズムがあるとみるや、一度自陣でブロックを築き直し、焦れずにボールサイドにスライドしながら、ミドルシュート、スルーパス、背後へのループパスすら許さないタイトな守備で攻め手を封じる。特に土光と宮川麻都のセンターバックコンビが巧みにラインをコントロールし、完全に引くことはなく、球際への組織的なプレスを機能させながらも背後のスペースをケア。奪ったボールも無闇にクリアで逃げるのではなく、パスやドリブルで高い位置へ運び、攻撃につながるビルドアップの一手に変えた。81分には山下のロングキックが前線に届くと、植木が相手DFとスイッチしながら巧みにボールをコントロールして抜け出す。ゴール左のエリアから抜けた植木が対角線上に放ったシュートは、惜しくもゴール左へと逸れたが、チャンスと見るや一気に相手を押し込んでいく迫力は反撃への余力を削ぐのに十二分だった。その後も自陣内で過ごす時間が長かったが、アディショナルタイムを含めた93分間を1点のリードで終え、圧巻の女王劇場の幕を閉じた。
昨年の3冠獲得をプレッシャーではなく、自分たちの成長の糧に変え、どん欲にタイトルを狙い続けたベレーザの選手たち。年代別も含めるとほとんどの選手が代表に絡み、メンバーが揃う機会も少ない中でチームを作り、国際大会も含めた超絶過密日程すらも克服してみせた。2シーズン連続の3冠、さらにアジアのタイトルを加えた4冠女王の彼女たちは、日本の女子サッカー史上でも特出するベストチームだ。追うチームの研究はさらに進み、東京五輪もあってチームを作るのは今季以上に困難を極め、タイトルへの道は熾烈を極めるだろう。それでもベレーザは、女王に君臨し続けるために、全力を懸ける。2020年も、強く、魅力的で、華麗で、笑顔にあふれるベレーザの試合に、ぜひ足を運んでほしい。
試合を振り返ってください。
前半の立ち上がりからしっかり相手のスタートのキーパー、センターバックにプレッシャーをかけて、そこからボールの良く先をコントロールしつつ、ボールを奪ってゴールへという狙い通りに前半はできたところがあります。追加点はほしかったですけど、それがとれない理由としては、もうひとつプレッシャーのかけ方が甘かったというところがあります。それはハーフタイムに修正をしつつ、その勢いで行き切れるくらいのフィジカルの準備ができてなかった中で、最後まで粘り強くプレッシャーをかけつつ守るべきところは守って、チャンスがあったら逃さないという試合全体をコントロールして進められて勝利することができました。
今シーズン、リーグ戦、カップ戦で浦和とは勝敗を分け合ってきましたが、前から行こうとしたのは、その戦いを踏まえての選択でしょうか?
前回リーグ戦で負けた時に、前線でのプレッシャーのかけ方が甘くて、向こうの長いボールや深いボールや速い選手や高い選手に勢いを生んでしまったので、そこが前回の反省点としてありました。それを踏まえて、今日は狙いを持ってプレーしました。
前半が終わった段階で4-4-2にして、また途中で4-3-3にしたと思うのですが、その狙いは浦和の中盤でのミスマッチが原因ですか?
単純に小林里歌子が早い選手なので、より深いプレッシャーをかけることで、相手のロングボールがウチの陣地に入らないようにしたかったというのがひとつ。また、清水梨紗のオーバーラップが効果的だったので、籾木結花が右にいたほうが上がってきた選手を使うのが上手いというのがもうひとつの理由です。
代表組が多く過密日程を強いられてきたと思いますが、どのようにマネジメントされてきたのですか?
過密日程という点で言うと、10月以降、その前もワールドカップも含めると、11人のレギュラーメンバーがいるとすると、そのメンバーで週末の試合に向けて火曜日からしっかりと積み上げて、低強度、中強度、高強度のトレーニングをしっかりとやりながら相手の戦術への対応策も自分たちの戦術も高めながらやれた試合はほぼないかな、と思います。その中で、メニーナから上がってくる選手やチーム内のローテーションやコンディションで見極めて、その状況で一番良い選手を使いつつ、先週の準決勝まで続けてきました。それでほぼ1年を過ごしました。ただ、この1週間は久しぶりに相手に向けてトレーニングを積み上げられました。他の選手が出ても、その選手の特徴で素晴らしいプレーを見せてくれますし、そこで問題が起きるということよりも新たな面白さが芽生えることが多かったです。
優勝して、これだけタイトルをとって、ベレーザというチームをどこまで伸ばそうと考えていらっしゃいますか?
恐らく試合を振り返ると、「あそこのプレーはこうできたね」などと課題が山ほどあると思います。それを抽出して、さらに良い方向に持っていくという作業だけです。今はこうしたことをやっていて、この試合ではこれが目標で、それができたかできなかったかというのを分けて、新たなことを足していく作業をしています。理想に向かってというより、日々あるものを磨いていく作業をしているだけです。優勝しよう、という大きな目標を表立って話したりすることもありません。理想のプレーというのはたくさんありますが、それを突き詰めてトレーニングをしていくことを怠らないということは心がけています。サッカーは90分で1試合なので、良い時間帯もあれば悪い時間帯もあって、一方的に強さを出すのは難しいので、そうした時にどうやってマイナーチェンジするか、その状況をどう把握するかで良い状況に持っていくということが大事になります。それと同時に良いシーンを作ることをもっと続けられたらいいよね、ということは両立したいと思っています。
毎年のように代表選手を輩出している中で、代表にまだ入っていない若手選手たちの成長を総括するといかがでしょうか?
今年入ってきた選手は、遠藤純、松田紫野、菅野奏音がいます。その下のカテゴリーのメニーナにも素晴らしい選手がたくさんいて、彼女たちはカップ戦を通じて試合にたくさん出る機会があって、システムやプレーの質を求めることは変わらず、残っているベレーザの選手たちから学びながら、底上げすることができたと思います。13歳の時にメニーナという組織に入って、積み上げてきたものの延長にベレーザがある。そこをつなげる、プレーを体験するという連続の中で、今後もベレーザの主力になっていくであろう若い選手たちがチームのベースをアップしてくれたと思います。
FW9田中 美南
本日の試合を振り返ってください。
早い段階で点を取れたので、勢いに乗れた部分はあったんですけど、前半でもう1点取れたら後半の戦い方がもう少し楽なものに変えられたかなと思います。
本日の得点シーンを振り返ってください。
ニアのスペースが空いていると思っていて、そこにボールが来たので足を振り抜くだけで良いコースに行ってくれたので良かったです。
2019シーズンはどんな1年になりましたか。
本当にみんなしんどくて、きつかったと思いますけど、それを知っているのは自分たち本人だけですし、見に来てくださるお客さんは何も関係ありません。だからこそ、こう言う舞台で勝つことで優勝すること、結果が大事だと思ってみんなやっていました。しんどい中でもこうして最後まで力を振り絞って勝てたのは、本当に自分たちの力ですし、誇れるところだと思います。
ファン・サポーターに一言お願いします。
今シーズン応援ありがとうございました。本当にベレーザのサポーターの方々が温かくて、自分たちの後押しにすごくなっています。一旦みなさんもお休みしてもらって、4冠に浸ってもらえたら嬉しいです。ありがとうございました。
MF14長谷川 唯
本日の試合を振り返ってください。
連戦の中で疲れも溜まっている中で、みんなが“最後は勝とう”という気持での戦いでした。 前からプレッシャーに行くFWの強度だったり、後ろの選手の頑張りだったり、本当に色々な人の頑張りがこの勝利に繋がったかなと思います。
4冠を達成した感想をお願いします。
今までは3冠が1番多くて、今年はACLでも優勝することができました。取れるタイトルは全部取りたいという気持で今年は臨んだので、全て取れて最高の気分です。
2019シーズンはどんな1年になりましたか。
自分の中では怪我が多かったり、最後も疲労が溜まっていましたし、きつい1年でした。それ以上に、サッカーとして永田監督と2年やってすごく充実した1年になったかなと思います。
ファン・サポーターに一言お願いします。
本当に苦しい中でしたけど、最後はみなさんの応援のお陰で優勝することができました。これからも応援よろしくお願いします。