ONE FLAG 〜パートナー企業とともに創る新しい価値〜 第1回 株式会社イーグランドと東京ヴェルディ
東京ヴェルディを様々な面で支えていただいているパートナーの皆さま。それぞれに特別な想いを持ってクラブをスポンサードしていただいています。これまでの一般的なスポンサーという枠を越えて、クラブと企業がともに歩んでいくコミュニティのような未来を描く東京ヴェルディ。
『ONE FLAG〜パートナー企業とともに創る新しい価値〜』と題して、ヴェルディファミリーの仲間同士で、様々な思いや未来について本音で語り合う本企画。
対談を通じて、お互いの想いを共有し、目線を合わせながら目指す未来を描いていきます。
第1回はユニフォームパートナーとして東京ヴェルディ ユニフォーム背中裾部分でお馴染みの株式会社イーグランド様にご登場いただきました。
対談に参加していただいたのは、イーグランドに転職されてから、Jクラブのスポンサーになることを夢見ていたという株式会社イーグランド取締役丹波正行さん。(写真中央)そして丹波さんの出身校である関西学院大学の後輩で、入社前からイーグランドの担当となることが決まっていたという東京ヴェルディパートナー営業部鈴木雄大。(写真右)
ファシリテーターとして、東京ヴェルディの企画戦略パートナーである株式会社リトリガーの八木原泰斗(写真左)様が、パートナーになるキッカケや効果、そして見据える未来について話を伺っていただきました。
(以降敬称略)
中古住宅再生事業とヴェルディの再生
八木原:今日はよろしくお願いします! クラブとパートナーが主従の関係を越えて、互いの価値を最大化できる未来を創っていけると良いなと思っています。そのための打ち手として、 クラブとパートナーの対談企画を行おうと考え、今回はその第1弾となります。
さて、実はサポーターの方も、クラブのパートナーがどういった会社なのか知らなかったりするので、まずはそこをお伺いしていいですか?
丹波:自分たちでは中古住宅再生事業と呼んでいます。簡単に言うと、古くなったり汚くなったりした家を買って、綺麗にして売るイメージです。リノベが流行る前からやっていて、年間約1000戸を販売しています。
八木原:なんとなく東京ヴェルディの再生という文脈と近いかもしれませんね。
鈴木:イーグランドさんがスポンサードしてくれて、今シーズンで6年目。始まった頃は本当に苦しい時期だったので、近い部分はあるかもしれませんね。
丹波:そんなに応援できているか分かりませんけどね(笑)。
八木原:ということは2014シーズンからですよね。どういった経緯でパートナーになられたのでしょうか?
丹波:弊社が2013年12月にJASDAQに上場したんです。そんな時期に、法人税を納めたり人を雇ったり、そういう最低限の社会貢献だけではなく、地域に貢献していきたいと考えていました。
実は私がイーグランドに転職した時から、いつかJリーグに関わりたいという気持ちがあって、上場のタイミングでどうかなと役員会議で提案したという経緯ですね。Jリーグの100年構想の中にスポーツでもっと幸せな国へ、というスローガンがあって、地域に根ざしたクラブを核とした、スポーツ文化への振興活動に我々も寄与しましょうよ、という話をしました。
八木原:なるほど、良いですね。では、数あるクラブの中から、東京ヴェルディを選んでいただいたのはなぜだったのでしょうか?
丹波:イーグランドの所在地が東京ということもありますし、やはり当時一番困っていたクラブというのは理由ですね。実は読売クラブは好きではなかったんですよ(笑)。昔から強いところを応援するのが性に合っていなくて。あの頃はすごく強かったじゃないですか。
今も考え方としては変わっていなくて、潤沢なクラブにスポンサードしても、当社の資金力ではそれほど変化も生まれませんし、困っているところを助けたかったんです。
それで東京ヴェルディの練習を見に行かせていただいた時に、サッカースクールで指導していた都並さん(都並敏史氏/現ブリオベッカ浦安監督)にとても丁寧にお話していただいて、そこで完全に心が決まったという感じでした。
八木原:ちなみにこれからスポンサードを考えていらっしゃる企業の参考になればと思うのですが、稟議の通し方と言いますか、どのようにサッカーを知らない方々を納得させたのでしょうか。
丹波:先ほど言った通り、Jリーグの理念に共感してそこに協力していくという姿勢を見せることがひとつ。あとは予算を小規模からスタートするということですね。具体的に私たちが中古の物件を仕入れる時、おおよそ1000万円なんです。だから「1軒分だと思ってくれ!」という感じで(笑)。
八木原:最初はトライアル的にということですね! 当時、東京ヴェルディに期待していたことはなんでしたか?
丹波:最初は正直自己満足の部分が大きかったですね。自分たちが何かしら回りまわって東京ヴェルディの力になれればという感じでした。
八木原:なるほど。そこから今ではユニフォームパートナーになっていただいていますが、変化の過程にはどんなことがありましたか?
丹波:本格的に取り組み始めたのは数シーズン後でした。日テレ・ベレーザのユニフォームに名前を出したのが、スポンサードして3シーズン目の2016年。どうせやるんだったらもう少し露出する形にした方が良いねと、社内でも鈴木さんともそういう話になりました。
鈴木:2015年に日テレ・ベレーザの練習着の胸中央部分に大きくロゴを出していただいたのですが、ちょうど2015年に開催されたカナダでの女子W杯で日本が準優勝したことをきっかけに、選手の取材が相次いで、イーグランドさんのロゴが大きく露出することに繋がりました。2016年もブラジルでリオ五輪があったので、日テレ・ベレーザの選手が必ず活躍しますよ!というお話をさせていただいていたのですが、残念ながら五輪への出場権を逃してしまいました。
八木原:メガスポーツイベントの際はやはり影響も大きいですよね。今年の女子W杯も期待ですね。
丹波:背中の裾スポンサーが始まったのがちょうど2016年だったのもあって、新しい試みということで出させていただきました。
鈴木:日テレ・ベレーザは得点数が多いので、背中の裾が映えるんですよね。集まって得点を喜んでいるシーンなどでよく映るので、好イメージを持ってもらえたかなとは思います。
八木原:ロゴが映るシーンのイメージは良いですね! では、今後の東京ヴェルディに期待することを教えてください!
丹波:それはやっぱり、J1に行ってほしいですね(笑)。あとはまだ数字としての効果は出ていないので、そこは施策を打っていつか事業にも好影響が出れば良いなと思っています。
そもそも弊社自体が名前を出して商売をしている会社ではないので、直接的な売上に繋がるなどのことは考えていませんでしたが、イーグランドという会社が東京ヴェルディを応援している、という事実をもっと広げていくことは必要だなと最近感じています。
会社と家庭をヴェルディが繋いでくれた
八木原:ユニフォームで言うと、2019シーズンから金色で統一されたロゴになりました。コーポレートロゴのカラーを変更するにはハードルがあったかと思いますが、どういった経緯で変更できたのですか?
丹波:弊社としてはロゴのカラーが変わっても名前が変わるわけではないし、それでユニフォームに統一感が出るのであれば喜んでという感じでお答えしました。
あと2019元旦の皇后杯で日テレ・ベレーザが三冠を達成したじゃないですか。あの時、鎖骨ロゴの白が光で跳ね返ってしまい見栄えが良くなかったんですよね。どうしたものかとも思っていたのでありがたいご提案でした。(補足:2018シーズンから日テレ・ベレーザのユニフォーム鎖骨部分にもイーグランドロゴを掲出していただいています)
鈴木:昨シーズン途中からクラブ創立50周年にあたって、サポーターもパートナーも喜ぶユニフォームのデザインというのをずっと社内で議論を重ねていました。その中で、東京ヴェルディの原点に戻るという意味も込めて、最近は明るい緑を身にまとって戦うシーズンが続いていましたが、昔に近い濃い緑色に変えて、ロゴをゴールドで統一するというデザインにしました。
初回の受注生産時ですが、前年比の225%の申し込みがありました。Jリーグのパートナー企業さんからの発注も例年よりとても多くオーダーをいただいています。東京ヴェルディのサポーターだけでなく、Jリーグが好きなサポーターからも多くのご支持をいただけて本当に良かったと思っています。
丹波:かっこいいですよね! 今まで社内の人間から欲しいという声は聞かなかったですけど、今年は買いたいという声も多く聞きました。
八木原:いちサポーターとしては、コーポレートロゴはユニフォームに合っているのが嬉しいですね。白地が敷かれていたり、馴染まないカラーだとちょっと惜しいなと思ってしまいます。
パートナーになられてからの反響などはいかがでしたか?
丹波:日テレ・ベレーザのユニフォームにロゴを出してからは、声をかけられるようになりました。あと新卒採用の際など、詳しい子は知ってくれていたりしますね。
鈴木:東京ヴェルディとしても、もっと知られるように頑張っていかないといけないところですね。
八木原:SNSなどでもサポーターの方から「せっかくならクラブのスポンサーをやっている企業の商品を買いたい」という声も上がっていたりしますからね。そういう施策も今後検討していきたいと思っています。ひとまず、家をご検討の際にはぜひイーグランドさんで!
丹波:あとパートナーデーはとても上手くいっています。社員も喜んでいて、インナー向けの施策としてとても良かったなと思います。社員を試合に呼んだり、社員の子どもをエスコートキッズにしてもらったり。
本当は弊社の家を売ってくださっている仲介業者の方も試合にお呼びしたいんですけど、不動産業界自体が土日が稼ぎ時という問題がありまして(笑)。でも今後はそういうこともやっていこうかなと考えています。
鈴木:始めた当初はイーグランドの社員の子どもさんが小さかったこともあって、エスコートキッズの参加者は2、3人でしたけど、今年はすでに15名集まってくれています。
丹波:会社と家庭が分かれている時代ですけど、パートナーデーはとても良い機会になりますね。サッカーの好き嫌いを別にして、子どもが選手と入場するとなったら当日はすごく盛り上がるし、子どものサッカー熱も上がるみたいです。これはやって良かったと思えるポイントですね。6年間やってきた意味があると思いました。
老舗だけど入り込める パートナーという新しい形
八木原:東京ヴェルディとイーグランドさんの関係は6年間続いているわけですが、なにか印象的だった出来事はありますか?
鈴木:丹波さんが関西学院大学サッカー部のOBでいらして、僕はサッカー部ではないんですけど、そんな縁もあって入社前からイーグランドさんを担当することが決まっていたんです。ヴェルディには関学出身の選手も多くて、去年までだと井林章や森俊介。今年は梶川諒太もいて、何かと関学と縁があるんです。
2018年天皇杯の3回戦が、東京ヴェルディと関西学院大学のカードだったんです。あの試合を見る丹波さんの横顔は一生忘れられませんね。
丹波:あれは本当に至福のひとときでしたね。最初はプロ対学生だから、関学を応援してたんですけど、なかなか良い試合になって「ヴェルディ大丈夫か!」という感じで(笑)。楽しませていただきました。
八木原:それは感慨深い経験でしたね。
鈴木:あとは2015年からイーグランドさんとクオカードのキャンペーンをやらせていただいています。その時はシーチケを持っている人に、オリジナルのクオカードを配布するという施策だったのですが、配布しただけで終わりになってしまったんです。
試合の日のクリアファイルなどもイーグランドさんには作っていただいたのですが、やはり配布して終わりではちゃんと価値を提供できていないなと痛感しました。
八木原:配って終わりではなく、きちんと価値を提供できる施策が良いですよね。ちなみに他のパートナーさんとの交流ってあったりしますか?
丹波:挨拶とかはもちろんしますけど、何か取り組みをしているということはまだないですね。パートナーを検討している企業から「ヴェルディってどうなの?」と聞かれたことはありますね。
八木原:ほう! その時はなんと説明されたんですか?
丹波:聞いてきた方が「歴史ある老舗クラブだから外から入り込むのは難しいのかな」とおっしゃっていたので、「いやいや、全然そんなことないよ」と(笑)。
鈴木:55クラブの中で一番なんでもできるぞ!と言いたいくらい、いろいろできますね。ちょっと応援してみたいというレベルでも、我々から積極的にプランを提案させていただきますし、クラブとしてもいろいろなことをやっていきたい、というスタンスなので。
八木原:ですよね。弊社も立ち上げてまだ1年経っていないですが、こういう新しい取り組みをご一緒させていただいてますし。また、企業とお話される際もいわゆる媒体資料を持ってユニフォームや看板にロゴを掲出するのはどうですか?みたいなことではなく、お互いの価値をどう高め合えるかをディスカッションしながら決めていくという感じですよね。
鈴木:まさにそうですね。営業部全体で様々なアクティベーションもやっていきますし、スポンサードという枠組みにとらわれることなく、一緒になにかやっていけたらというご相談でも、お気軽にいただきたいです!
八木原:これを見ていただいた企業の方はぜひ!! では、今後東京ヴェルディとイーグランドさんでやっていきたいことなどありますでしょうか?
鈴木:まだまだ雑談レベルですが、お話していたのは、アカデミーの子ども達のために家を借りるケースがあって、それをイーグランドさんと一緒に作る、という話は出ましたね。
丹波:それこそヴェルディさんの多摩エリアなどの家を綺麗にして、そこに住んでもらえたら良いなとは思いました。そうすることで、人が少なくなっている地域に人が戻ってきたり、お店ができたりする展開もあると思いますし、それこそ地域貢献の文脈に繋がりますよね。
八木原:ユース出身の選手が代表に呼ばれたら、日本代表が住んだ家として価値が上がるなんてこともあるかもしれませんね!
丹波:そうですね、そういうことをやっていけたらいいなと思ってます。本音を言うと一番やりたいことは、スタジアムを作ることなんですけどね。しっかりとしたVIPルームを作るなど、内側から良いスタジアムを作ってみたいです。
鈴木:スタジアムのハードの部分を一緒に作れたらな、というお話もさせていただきました。
八木原:サッカー専用のホームスタジアム欲しいですよね!! その時はイーグランドスタジアムとして命名権も(笑)。
丹波:まだまだ弊社ではできないですけど、いつかやりたい!という夢として持っています。
八木原:その夢、ぜひ実現させましょう! 今日はありがとうございました!
鈴木:ありがとうございました!
丹波:ありがとうございました!
八木原:お二方、あらためまして、ありがとうございました!丹波さんからはヴェルディだけでなくスポーツ界への熱い思いと、いろんなお話を聞かせていただきました。
こうして、ファミリーが一体となって、期待していることや失敗談、未来の話をお互い本音で言い合える環境がとても重要だとあらためて感じました。
このような施策を通じて、サッカー業界全体が良くなっていく新しい文化をつくっていけると良いなと考えています。
ライター:渡邊志門 / 写真:石橋雅人