日本瓦斯株式会社
株式会社ミロク情報サービス
株式会社H&K
ATHLETA
ゼビオグループ
2022.09.24

選手が明かすチームメイトの素顔『PLAYER INTRODUCTION』vol.19 阪野豊史▶︎稲見哲行

緑の戦士たちによるリレー形式の“他己紹介”企画。プレーヤーとしての特長はもちろん、チームメイトだからこそ知っている選手の素顔に迫ります。第19回は阪野豊史選手が稲見哲行選手を紹介!

取材=上岡真里江

コシは性格的にはちょっと抜けてるところがある

僕を紹介してくれた山越康平選手とは、明治大学つながりで、僕の後輩です。大学時代は「ヤマ」と呼んでいたのですが、ヴェルディでは「コシ」と呼ぶ人が多いので……って、あれ? 僕はどっちで呼んでるかな? 「ヤマ」のほうが多いかもしれないですが、もう自分でもよく分からないです。「ヤマ」か「コシ」か、どっちで呼ばれても気にしないでください(笑)

ヤマの回を読みました。「寮で同部屋だった」と言っていたけど、ゴメン、憶えてない! だって、明大サッカー部の寮って16人で一部屋なんですよ。二人部屋とかならさすがに覚えているけど、16人なんて多すぎて、その年に誰が同じ部屋にいたかなんて一人ひとり憶えてないです。部屋といっても、真ん中に1.5メートル幅の通路があって、両側に二段ベッドがダーっと並んでいるだけ。そこにそれぞれカーテンをつけて、ベットの上だけがプライベートスペースという感じなので、もう部屋というよりはカプセルホテルみたいな感じです。その部屋の奥が4年生で、手前が1年生。僕が4年の時、コシは1年だったので、位置的にもけっこう遠かったんじゃないかな。

大学時代、懐かしいなぁ。僕はJのアカデミー育ち(浦和レッズユース出身)なので、大学に入って体育会系の上下関係にはめちゃめちゃ苦労しました。でも、明治のいいところは、ユース育ちと高体連育ちが半々ぐらいいることです。どちらかに意見が偏ることがなかったのはすごく助かりました。

僕は1年生の時に上下関係でいろいろ言われるのが嫌だったので、自分が4年生になった時は、「自分が嫌だったことはなるべくなくしてあげたいな」と思って後輩に接していました。だから1年生にとっての僕は、「助かる先輩」だったと思いますよ。例えば、後輩が何かミスったりすると罰があったのですが、「今回はよくない?」といって見逃したり。坊主にするみたいなのも、「もういらないでしょ?」という感じでした。だから、たぶんコシは坊主にしてないんじゃないかな。

きっとそういう意味で、コシは僕のことを「優しい」と言ってくれたんだと思います。でも、優しいというよりは、そんなに干渉しないという感じかな。ただ、今考えると、人間関係において厳しく言ってくれる人って大事じゃないですか。僕は今でも厳しく言うのがちょっと苦手なので、大学時代にもっときちんと言えていたらと、実は少し反省しています。厳しく言うのってけっこう難しいですからね。言わないのが一番簡単じゃないですか。それに、上下関係って社会に出るうえで学ばなければいけない大切なことだと強く思います。こうしてプロサッカー選手になれたからいいけど、もしサラリーマンとして働いていたら、大学時代に味わったあの厳しい環境って、実はものすごく良い勉強だったのかなと思います。そう考えると、明治では大事なことを教えてもらいましたね。

生活面や日頃の態度で、コシに何かを言った記憶はないですが、あいつは1年生の頃から公式戦に絡んでいて、一緒に試合に出ることもあったので、サッカーに関してはいろいろ言ったと思います。当時から高さがあって、対人に強かったけど、カバーリングとかアジリティのところは、「もうちょっと伸びるかな」という印象でした。その部分を4年間でしっかり伸ばしてきたからこそプロになれたんだなと、またチームメイトになって改めて感じます。相変わらず対人に強くて、引くだけの守備ではなく、相手にガツガツいける。アジリティの部分でも無理が効くようになっていますし、いろいろな経験を積んで、駆け引きなども大学時代と比べるとかなり上達していると思います。性格的にはちょっと抜けてるところもあって、人の話を聞いてなくてポカンとしていることがけっこうありますね。そこは9年ぶりでも変わってないです(笑)

そうそう。コシが言っていた美味しいステーキ屋さん。僕も行きたいです! たしか、1回だけ一緒に行ったかな。明治の後輩でリハビリも一緒だった稲見(哲行)と加藤蓮とコシの4人で行ったんです。もっといっぱい行きたいのですが、コロナがあるのでなかなか……。でも、シーズンオフになって、制限がオープンになったら、今度は(佐藤)凌我と(長沢)祐弥も誘って、みんなで“明治会”をやりたいなと思っています。

コシから「ケガしてからどういうモチベーションでリハビリに取り組んでいたか? どんな目標を持って毎日を過ごしていたのか?」という質問がありました。「モチベーション」か。僕はあんまり先のことを考えないタイプなので、復帰したらとかはあまり考えず、その時にできることをしっかりやって、その積み重ねで復帰まできました。「今週はこれをやるぞ」というテーマを決めて、あまり先のことは見ない。徐々にできることが増えていくので、そこに喜びを感じて頑張っていましたね。

移籍した直後のケガで、「ショックだったのでは?」と言われるのですが、ショックというよりも、チームに迷惑かけるな、当時の監督だった堀(孝史)さんに申し訳ないなという気持ちのほうが強かったですね。特に堀さんとは浦和ユースの時に一緒にやっていたので、久しぶりにまた一緒にやれることをすごく楽しみにしていました。

でも、自分のキャリアがどうとか、試合に出られないことに、それほど落ち込みはなかったです。逆に、今までケガなくきていたので、「いつか自分も大きなケガをするんじゃないか」という、心の準備みたいなものはある程度ありました。これまでのキャリアで、いろいろな選手が大ケガで長期離脱を強いられるのを見てきました。プロサッカー選手にとってケガは付きものですし、実は僕自身もアキレス腱が痛い年がけっこうあったので、今思えば心のどこかで覚悟はできていた気がします。もちろん、そうならないために普段からやれることはしっかりと積み重ねてきましたが、そのうえでのケガだったので「しょうがないな」と割り切れました。

稲見は意外と後先考えずに攻めるタイプ

さて、僕が紹介するのは、同じく明治の後輩の稲見選手にします。9歳も年が離れているので、ヴェルディに来て初めて知り合ったんですけど、第一印象は「体がムキムキ!」でした。たぶん、チームの中でも3本の指に入るくらいじゃないですかね。ボニ(ンドカ ボニフェイス)もすごいし、この2人はマジでムキムキです! ちなみに、僕は下から数えたほうが早いと思います(笑)

稲見とはリハビリで一緒にいる時間が長かったのですが、すごく筋トレを頑張っていたなぁという印象があります。リハビリの中に、一人が仰向けでバランスボールを手と足で抱えて、もう一人がそのバランスボールを奪うという対戦形式のメニューがあったんですけど、、あいつ、全然手加減しないんですよ! 体ごと持ち上げて叩き落としたりするので、そのメニューがあった次の日はめっちゃアザができていたり。マジでアザだらけ。さすがに、「もうちょい手加減しろよ」と思っていました(笑)

これは完全に僕の印象ですが、性格的にはあまり先のことを考えていないタイプです(笑)。見た目は真面目な好青年で、すごくしっかりしてそうじゃないですか。でも、私生活の話を聞いてると、意外と後先考えずに攻めるタイプなんだなと思いました。どこにお金を使うかとか、そういう面に関しての話です。車とか、住むところとか、食とか、お金の使い方っていろいろあるけど、稲見の場合は「これに使うか⁉︎」、「俺だったらそれはしないな〜」と思うところがけっこうありました。まぁ、好きなものや価値観は人それぞれ違うので、全然間違っているとは思わないけど、「堅実そうに見えてそうじゃないんだな」というのは思いました。

サッカー選手としての一番の長所は、やっぱり相手のボールを奪う能力、もぎ取る能力ですね。そこはチームトップクラスだと思います。ボールを回収してくれるので、チームメイトとしてはすごく頼もしいですね。今は中盤もやっているので、攻撃面でももっと上手くなるところがあるなと思いながら見ています。この年になると、技術面はそんなに伸びないと思うので、それよりも今持っている長所をどんどん出していく。たぶん、そのほうがこの世界では上にいけると思います。稲見の場合は、得意な守備を前面に押し出して、逆に攻撃のところは簡単に周りを使うとか。そういうプレーを覚えていったら、もっともっと上にいけると思います。

大事な後輩の一人として、僕からアドバイスをするとしたら、「一番大事なのは試合に出ること」ということですかね。やっぱり試合に出ないと上には上がっていけないと思うので、まず試合に出ることが大切です。じゃあ、どうしたら試合に出られるかと言えば、監督が何を求めているかを知ること。それをいかに吸収して、試合で出せるかが重要だと思う。今年であれば、監督が堀さんから城福(浩)さんに代わったけれど、同じところもあれば違うところもあるので、それをいかに早く吸収して、ゲームで出せるかを考えてプレーする。それが、プロの世界で生き残っていくために大事なことだと思います。なんやかんやいっても、試合に出られる選手が一番良い選手。何年もやっていれば、いろいろな監督と出会います。その中で、「この監督の下では活躍できるけど、この監督だとダメ」では「使いづらい選手」になってしまうので、そこはめちゃくちゃ大事なことかなと思います。

では、最後に稲見への質問です。「プロになって、アマチュア時代と一番変わったことはなんですか?」

ちなみに、僕はサッカーが『仕事』になったこと。アマチュアの頃はいつでも辞められる状況で、嫌になったら投げ出せたけど、プロはそういうわけにはいかない。嫌な時でもサッカーをしなければいけない。サッカーが『楽しいこと』から『仕事』になったこと。それが僕の中での変化でしたね。稲見はまだ1年目だから、そこまで深く考えてはいないかもしれないけど、どんな答えが返ってくるか楽しみにしています! まぁ、おそらく「お金が稼げるようになった」とか、そんな感じかなと思うけど。僕も1年目はそれが一番うれしかったですからね(笑)

稲見、シーズンが終わったら、明治OBのみんなで“明治会”をやろうね!

■vol.20 稲見哲行▶︎加藤弘堅  はこちらから