選手が明かすチームメイトの素顔『PLAYER INTRODUCTION』vol.13 山口竜弥 ▶︎ 井出遥也
緑の戦士たちによるリレー形式の“他己紹介”企画。プレーヤーとしての特長はもちろん、チームメイトだからこそ知っている選手の素顔に迫ります。第13回は山口竜弥選手が井出遥也選手を紹介!
取材=上岡真里江
陸斗に頼りにされるのは素直にうれしい
橋本陸斗から紹介を受けました、山口竜弥です。
陸斗の質問、「なんでそんなに俺のこと好きなんですか?」だって? いやいやいや、そもそも「好き」っていう前提がおかしいし、返事に困るわ(笑)。でも、頼りにされるのはうれしいですね。自分はどちらかと言うと先輩に頼っちゃうことのほうが多くて、頼りにされることがあまりなかったので、いろいろ相談されたり、頼られたりするのは素直にうれしいです。それに、あいつは自分と似ている部分があって、あっちからすごく絡んでくるから、なんか後輩らしくてカワイイなとは思っています。
前回、陸斗が走りに関して、俺が答えを教えたとか、俺が育てたみたいな言い方をしていましたが、全然そんなことはなくて。とにかくあいつがすごく悩んでいたので、話を聞いただけです。特に去年は、ユース時代にできていたことが、プロになってできなくなって、「こういうところで悩んでるんですよー」みたいな話をずっと聞いていました。自分は人にアドバイスできるようなタイプではないですが、陸斗の「本気でどうにかしたい」という気持ちが伝わってきて。俺は仲間や後輩が苦しい時、つらい時にこそ、手助けできるような人でありたいと思っているので、陸斗がそうやって助けを求めてきた時に、こっちも本気でやってあげたいなと。ある意味、陸斗の熱意が俺を動かしたんだと思います。それに、もっと良くなりたいのに、どうしていいか分からずとりあえず周りの人に聞く、みたいな状態を見て、自分の高校時代とかの境遇と重なったことも、「俺が教えられることがあるなら、時間を割いてでも教えたい」と思えた要因でした。
ただ、「こうすれば足が速くなるよ」という正解を教えたわけではなく、「俺はこうやって足が速くなったから、お前もこれが合うならやればいいし、合わなくても一つの方法として知っておいてもいいよね」という提案をしただけ。その中で、あいつがきちんと自分で判断して、自分なりに調べて、他の方法もいろいろ試しただろうし、そうやって自分で抽出した結果が今、陸斗が実感として得ているスピードの向上につながっているのかなと思います。
これは、自分なりの理論になってしまうのですが、陸斗は筋肉の使い方というか、走る時の出力の出し方みたいなものが若干、自分と似ているなと思っていました。だから、「足が速くなりたい」と相談された時に、自分が昔練習していた環境に連れて行って、同じメニューをやらせてみたら、やっぱり前の自分に似ていた。その時は全然ダメだったのですが、逆に言うと、「このまま続けたら絶対に良くなるな」という確信がありました。自分もそのメニューをやってから一気に速くなったので。ただ、俺は陸上のコーチではないし、教えられる資格があるわけでもないので、さっきも言ったとおり、正解ではなく、あくまで提案です。どちらかと言えば、 “感覚”を体に覚え込ませたという感じ。言葉にするのは難しいのですが、「こういうメニューをやったら速くなるよ」ではなく、「速く走るってこういう感覚だよ」というのを養う。こういう接地で、こういうふうに足を運んでというのを、まずは遅い動きから始めて、それをどんどん速くしていって、徐々に “地面を捉えている”という感覚をつかむ。そういう自分がやっていたことを提案しました。あとは、プレーヤーとして「気持ちいい」と感じる場面があるんですが、俺と陸斗はその感覚も似ているのかなと。だから、陸斗がどうしたいのか、何をどういうふうに悩んでいるのかが分かるし、アドバイスがしやすいというのもあると思います。
こんなふうに、後輩に対して「苦しい時やつらい時にこそ手助けしたい」と思えるようになったのは、自分がこれまでいろいろな先輩に救われてきた人生だなと感じているからです。特に最近はそれをしみじみと感じますね。ヴェルディで言ったら、自分が試合に出ていない時期に、カンペイさん(富澤清太郎さん、昨季まで東京Vに在籍)にいろいろ相談に乗ってもらいました。何気なくご飯に誘ってくれて、一緒にいてくれて、サッカーの話だけでなく、サッカー以外の自分の話も聞いてくれる。それが、その時の自分にとってはめちゃめちゃありがたかったです。逆にカンペイさんの話を聞いたり、生き方についての話とかも聞かせてもらったりして、「自分もこういうふうになりたいな」と思いました。ガンバ大阪時代にも、本当に自分がダメなことをしてしまった時、先輩に助けてもらいました。そうやって先輩たちからしてもらったことを、これから同じように後輩へ還元していきたいなと思っています。
それと陸斗からのメッセージですが、「オムくんはちょっとケガがちだから私生活を頑張って!」って。なんか俺のほうが後輩みたいじゃん(笑)。まぁでも、実際にケガが多いのは、サッカー以外のところに何かしら原因があるから、というのは事実なわけで。それは自分も素直に受け止めていますし、これからも常に意識しながらやっていきたいなと思います。
自分自身、ケガが多かったことも含め、現状には全く満足していません。チームに全く貢献できてないので、不甲斐なさや、サポーターの方々に申し訳ないという気持ちもあります。ただ、その思いをピッチで示すのがサッカー選手の仕事です。ピッチに立って、必ず活躍してチームに貢献してみせるという強い思いがありますし、覚悟もあります! なかなか試合に出られないのは悔しいですし、もどかしいですが、原因はすべて自分にある。ここを乗り越えて、試合に出て活躍すれば、選手としても人間的にも一段階も二段階も成長できると思うので、とにかく今は成長のために必要な期間だと思って日々必死に取り組んでいます。
遥也くんがクールなのはピッチの中だけ
俺からは、ぜひ井出遥也くんを紹介したいと思います。去年ヴェルディに来てから、しょっちゅうご飯とかに連れて行ってもらっているし、キャンプでは去年、今年と2年連続で同部屋でした。サッカーの話をすることも多いですし、公私ともに本当お世話になっている先輩で、めちゃくちゃ感謝しています。
遥也くんの魅力はたくさんあります。まず、サッカー選手としては、とにかく俺が一番羨ましい能力を持っていますね。一言で片付けちゃうと『センス』ということになるのですが、遥也くんは練習じゃ絶対に上手くならないものを持っている。自分の可能性を否定するわけじゃないけど、これはどれだけ頑張ってもできないなということが、遥也くんはできるんです。そういう選手ってなかなかいないですし、プレーヤーとして心から尊敬しています。
具体的に言うと、これも自分の感覚になってしまいますが、例えば上手い選手ってリズムが違うんですよね。サッカー選手ってすべてのプレーにそれぞれテンポがある。その中で、『天才だな』と思う選手は、テンポやリズムを自由に変えられるんです。G大阪ではヤットさん(遠藤保仁選手、現ジュビロ磐田)がそうでした。試合の流れが分かっていて、テンポを早くすべき場面と遅くするべき場面の切り替えが飛び抜けていたと思います。ちょっと脱線してしまいましたが、俺の中では遥也くんも同じような感覚の持ち主で、試合の中でテンポが変えられる。それは俺には絶対にできないですから。
これね、すごく難しいのですが、テンポやリズムを変えるって単純に“プレースピードを上げる”ではないんですよね。例えば、ディフェンスもリズムで守っているところがあって、「ここで来るだろうな」という予測を繰り返しているんですが、遥也くんはその予測のリズム、DFが動き出すタイミングとタイミングの“溝”でプレーができる選手なんです。相手が考えてもいないようなタイミングで、考えてもないようなプレーができるっていうね。そういう天才的なところが遥也くんの最高の魅力ですし、たぶんそれはサポーターの方々も分かっていると思います。
プライベートでは一緒にいて面白い! 一概に「面白い」という言葉でまとめちゃうのもあれですが(笑)。サッカーの話もけっこうしますけど、サッカー以外の俺の悩みを聞いてもらったり、遥也くんの思っていることを聞いたりできるから、自分の話もしたいし、相手の話も聞きたいなと思えるよう人ですね。そこまで何でも話せるのは、やっぱり人間として魅力があるからだと思います。
俺もですが、遥也くんはあまり人と群れるタイプではないですね。ただ、なんか本人は“クールキャラ”みたいな振る舞いをしていて、そういうイメージ戦略なんだと思いますけど、いやいや「そうはさせねーぞ!」って感じっすね(笑)。全然クールじゃないですよ! クールなのはピッチの中だけですからね。
そんな遥也くんの“クールじゃない”一面が見えたらいいなぁと思いつつ、遥也くんに質問です。ピッチ内、ピッチ外を含めて、俺の好きなところを5つ以上教えてください。最低5つなので、それ以上あればいくらでもお願いします!(笑)
遥也くん、早く二人で一緒に試合に出ようね。俺は一緒にピッチに立ちたいなと思っているし、立たなきゃいけないなとも思っているよ!
■vol.14 井出遥也 ▶︎ 端戸仁 はこちらから