MATCH試合情報
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【試合展開】
昨シーズン忘れてきたものを、取り戻しにいく――。
熊本で涙を流した日から3か月。長いようで短い準備期間を終え、東京ヴェルディは装いを変えて味の素スタジアムに帰ってきた。あの悔しさを晴らすために、チームは沖縄キャンプを含めて最善の準備を進めて、2月25日を迎えた。
非公開練習を重ねてきたチームは、この日、初めてその陣容をお披露目した。GKには新加入の上福元直人を起用。最終ラインは新加入の奈良輪雄太を左サイドバックに置き、右サイドバックには田村直也を起用し、センターバックは井林章と畠中槙之輔がコンビを組んだ。アンカーは引き続き内田達也が入り、インサイドハーフも昨シーズン同様に渡辺皓太と梶川諒太が並んだ。前線は真ん中にドウグラスが張り、左サイドにアランが入った。そして、右サイドにはユースから昇格したルーキー藤本寛也が抜擢された。
立ち上がりに前に出たのはヴェルディだった。最終ラインを高めに設定し、コンパクトな陣形を保って相手陣内で試合を進めていく。相手も押し返してラインを押し上げてくると、今度はスペースを使ってチャンスを創出する。7分にはドウグラスがオフサイドトラップをかいくぐって飛び出し、GKと1対1のチャンスを作る。この場面は迅速に間合いを詰めた相手GKに撥ね返されたが、その直後の9分にも大きなチャンスを得る。9分、自陣でボールを持った藤本が素早い判断でスルーパスを相手の背後に通す。これに反応したドウグラスが相手DFよりも早くスペースへ抜け出す。ゴールへと迫るドウグラスが相手選手に後方から倒され、好位置でフリーキックを手に入れ、さらに倒した相手DFは一発退場処分となった。このフリーキックが壁に阻まれた後も、ヴェルディは数的優位を生かしてボールを保持して攻め込む。19分には右サイドでのフリーキックを田村がクイックリスタートで逆サイドのスペースへ。奈良輪が抜け出して深い位置まで侵入し、マイナス方向のクロスを供給すると、抜群のタイミングで飛び込んだ梶川がワンタッチで合わせるがゴールを捉え切れない。すると、流れは数的不利なはずの千葉へと傾いていく。26分にはワイドな展開から右サイドの背後のスペースを使われ、ペナルティエリア内でフリーでシュートを打たせてしまう。これは上福元のファインセーブで凌いだ。その後も割り切った相手がハイプレスをかけてくると、ヴェルディのビルドアップにミスが相次ぐ。攻撃のリズムを作れないままマイボールをロストし、ショートカウンターを繰り出されて背走する場面が見られた。
1人少ない相手を攻略し切れなかった前半を終えて、ロッカーではあくまで冷静に後半への修正を施す作業が進められた。強調したのは「前を向いてスペースがない場合には、無理をしないでまた後ろからボールを動かし直していくこと」だった。
細かく攻守にポイントを整理したチームは、仕切り直しの後半立ち上がりで結果を出す。48分、左サイドで内田のパスを受けたアランが早いクロスボールをゴール前に入れると、これをドウグラスが高い打点で頭で合わせる。シュートは一度はポストに撥ね返されたものの、相手GKに当たってゴールへと吸い込まれた。数的優位を生かせずに押し込まれた前半から一転、幸先良く先制したヴェルディは、その後も千葉ゴールを脅かす。54分にはカウンター気味にゴール前に攻め込み、相手GKを外したシュートを、奈良輪と藤本が立て続けに放つがゴールカバーの選手にブロックされる。こう着した展開が続いた後の75分には一転してスペースを使われてピンチを招く。上福元が引き出され、戻り切る前にシュートを枠に飛ばされるが、渡辺がゴールカバーに入って精一杯のジャンプでクリアした。試合が終盤に入ると、さすがに前半の疲労が出た千葉の出足が鈍り、ヴェルディが立て続けにチャンスを作る。83分、左サイドを抜け出した奈良輪が縦に仕掛けると見せて中央に切れ込み、右足を強振するが、ゴールわずか左へと逸れる。84分には、アランが左のスペースでボールを受けて相手DFをかわしながら左斜めの位置からゴールを狙うが、強烈なシュートはゴールわずか右へと逸れていった。好事魔多し。続けてチャンスを逃すと、千葉に決定機を与えてしまう。86分、ワイドな展開を起点に左サイドからクロスを入れられると、ゴール正面でラリベイに頭で押し込まれて失点。勝ち越しのチャンスが一転、追いつかれてしまった。
ここで一気に畳み掛けられてもおかしくない展開だったが、昨シーズンからチームの武器になっているセットプレーがホームチームを救う。アディショナルタイムを目前に控えた90分、奈良輪のクロスに飛び込んだアランがDFと競り合い、左からのコーナーキックを得る。途中出場した井上潮音がゴール前に早いボールを入れると、相手GKが前に出るか躊躇したボールをゴール正面で畠中が押し込んでゴール左に流し込んで勝ち越しに成功する。リードを奪った後は、李栄直を投入して相手のパワープレーに備えるなど盤石の試合運びでリードを守り切り、2016シーズン以来となるホーム開幕戦での勝利を手に入れた。
序盤に力のあるチームとの試合が続くヴェルディ。次節は、J1から降格してきたヴァンフォーレ甲府と敵地で戦う。昨シーズン同様にスタートダッシュを果たすために、まずは連勝を目指して開幕前同様に最善の準備を進める。
試合を振り返ってください。
とても強力な相手、とても難しい試合に勝つことができました。もちろん、退場のシーンが試合、もしくは試合結果に大きく影響を及ぼしました。前半は一人多かったにもかかわらず、それを表現することができませんでした。ボールを保持することができませんでした。後半にドウグラスのゴールもあり幸先良くスタートすることができ、その後は前半に比べて良いプレーができました。守備面は試合を通してうまくできていたと思います。特に、後半は相手にゴールを決められるまでチャンスを与えていませんでした。とても良いプレーだったと思います。ボールを支配される時間もありましたが、しっかりとブロックを作って守れました。後半に関しては多くのチャンスを作った中で、なかなか2点目を獲ることができませんでした。そして、ラスト5分のところで追いつかれました。その後にハタが幸運にもコーナーキックから決めてくれて、とても強力な相手に対して勝ち点3を獲ることができました。
スタメンで起用した高卒ルーキーの藤本寛也選手の起用の狙いと評価を聞かせてください。
カンヤはトレーニングマッチであそこのポジションで起用し、その際にとても彼のプレーが好きになりました。継続性を与えるプレーが良かったです。味方と連係するプレーもできますし、ラストパスも出せる。チームのボールポゼッションに継続性を与えられる。パスやセンタリングの精度も高く、我々のプレーモデルに合致した選手という評価を下したので、スタメンで起用しました。今日は相手が非常に強い相手だったこともあり、特に守備の面で多くの仕事が求められました。それで疲れが見えたので、あの時間帯に代えました。
前半に関してボール保持の面で苦戦した理由に関して相手が予想外の出方を見せたという印象でしょうか?
特に相手のプレーで驚くことはなかったです。彼らが良いクオリティを持った選手を抱えていることは分かっていました。それよりもこちら側が攻撃の際にダイレクトなプレーをやり過ぎて簡単にボールを失うシーンが増え、より自分たちが走らされる状況を招く悪いプレーでした。彼らのクオリティが高いことは分かっていたのに、自分たちであまりにボールを失い過ぎていました。我々が彼らにボールを持つ機会を与えてしまっていました。
藤本寛也選手に関して18歳という年齢を含めた彼の現在地と海外に出て行く上で必要なポイントを聞かせてください。
もちろん、東京ヴェルディというのは若く才能がある選手を多く抱えるクラブです。彼らのうちの一人がカンヤです。もちろん、彼はより多くの試合でプレーすれば、成長は早くなっていくと思います。しかし、監督としては年齢や身分証明書を見て誰がプレーするかを選ぶのではなく、勝つためのメンバーを選んでいきます。彼がベストだと思う限り、彼が出続けると思います。ただ、基本的に若い選手というのはシーズンを通して調子の良い時、悪い時があるものです。その中で良い選手になるためにはそういった状況を知ること、適応していくことが重要だと思います。
戦相手の千葉に関してチームとしてのクオリティが高いのか、エスナイデル監督の採用するコンセプトが優れているのか、印象を聞かせてください。
両方だと思います。彼らは素晴らしい選手が揃っており、チームとしてのコンセプトもとても良いものを持っています。やっぱり、嘘が付けないので、千葉は本当に強いチームで予算やメンバーを見ても昇格候補であることは間違いないですし、上位に入れなければ失敗と見なされる、強力なチームです。何かひとつを挙げることは難しく、すべてだと思います。予算的にもメンバー的にも監督の仕事も素晴らしいと思っていますし、そういったすべてが合わさってこそ良いチームができると考えています。
DF 4畠中 槙之輔
開幕戦を見事にモノにできましたが。
今日から2018シーズンがスタートするということで、良いスタートを切れるように、みんなで一歩ずつ良い準備をして結果的に勝てたので良かったです。
決勝ゴールを振り返ってください。
正直、あまりボールは見えていませんでしたが、うまくボールに合わせて綺麗に決まったので個人的に嬉しかったです。
試合全体を振り返ってください。
自分たちの時間が少ない時も多くあり、失点もしてしまいましたが、自分たちはしっかりと最後守り切れたので、そこは今後に向けて良いことだと思います。
個人としてはどんな一年にしていきたいですか?
個人としてもチームとしてもJ1昇格というのが目標です。それに向けて全員でまとまっていきたいです。
サポーターに向けてメッセージをお願いします。
また、来週から41試合の戦いが続いていきますが、また応援をよろしくお願いします。
DF 3井林 章
後輩畠中選手の決勝点でしたが。
正直、助かったと思います。一瞬、ウッチーが決めたのかなと思いました。僕の後ろにいたので。そしたらハタだったので、驚きました。ただ、正直なところアイツはちゃんとボールが見えていなかったのでたまたまです。だから、僕は褒めません(笑)。あれが狙い通りであれば、褒めますけどね。ただ、ああいうところにいることが大事です。アイツは去年から点を決める時には本当に良いポジションにいますし、しっかりとボールに突っ込んで行けるのがアイツの良さだと思います。
白星発進ですが。
嬉しいですが、次は甲府が相手なので難しい試合になると思います。
今季は序盤戦に昇格争いとの対戦カードが多く組まれていますが。
今年に関してはどのチームとやってもほぼほぼ変わらないぐらいにレベルが拮抗していると思うので、あんまり初めに強い相手と当たるという考えではなく、1試合1試合大事に戦っていくことが重要だと思います。次の甲府戦に向けてやれることをやるだけだと思います。
GK 21上福元 直人
試合を振り返ってください。
早い時間帯に相手が10人になり戦い方が変わるというか、チームとして逆にやり辛い面もありました。相手が10人になったことで全員がサボれない状況になり、運動量も個人個人が目に見えて多くなって、相手のプレッシャーも強まって苦しい時間帯が続きました。ただ、前半の最初は自分たちの狙い通りの形も出せましたし、逆に押し込まれた中で失点はしましたが、粘り強く守るという部分ではできた部分もありました。ただ、クロスへの対応など失点を通じて今回出た課題を今後突き詰めていきたいです。堅い試合になりましたが、今日のように最後の最後まで粘って戦うことは大事なので、これは続けていきたいです。
熾烈な守護神争いの中で開幕戦先発というのはどのタイミングで聞きましたか?
結構、ギリギリまで分からなかったのですが、自分自身では常に準備をしていました。スタメンというのが分かったのも、前日になってハッキリと知らされたので、それ以前までは分からない状況でした。僕自身、ヴェルディに加入してから自分のやるべきことを突き詰めながら準備してきた中、そういうふうに監督が自分を起用してくれたことを嬉しく思います。ヴェルディデビューで勝利という結果を残せたことは素直に嬉しいです。ただ、1試合1試合に全力を注ぐことが大事なので、今日のことはもう忘れて次の甲府戦を含めてしっかりと準備をして全力を出し切れるようにチームとしてやっていきたいです。次に誰が起用されるか分かりませんが、競争を含めて自分のプラスになるように1日1日やっていきたいです。
個人のパフォーマンスに関して得意のビルドアップへの貢献といった部分はいかがでしたか?
グラウンド状況や相手のやり方という部分もありますが、自分の中ではフリーな選手を見つけることを優先し、難しいことはやらずにチームとして相手のゴールに向けて前進していくという部分を重視しました。もしかしたらセーフティに見えるところもあったかもしれませんが、個人的には判断の部分で迷ったことはなかったです。
開幕戦という独特な空気もありましたが、ヴェルディの一員として初めての味の素スタジアムの雰囲気はいかがでしたか?
相手も昇格を争うライバルでサポーターも多く来て、独特な空気感がありました。緊張感のある試合ではありましたが、プレーに集中することで雰囲気に惑わされずに良いプレーをしていくことが大事です。そういう意味で今日は良い経験ができたと思います。このスタジアムでもっと自分たちが勝ち続けてさらに良い雰囲気になっていけば、自分たちも励みになりますし、モチベーションも高くなって後押しされると思うので、今日以上の雰囲気で応援していただければと思います。本当にサポートに感謝しながら、1試合1試合大事に積み上げていきたいです。
MF 35藤本 寛也
開幕スタメンに関しての感想を聞かせてください。
キャンプ中にケガをしてしまい、2週間ほど離脱してしまって合流はキャンプ後になりました。もちろん、目標ではありましたが、開幕スタメンということは考えていなくて、出られるかなという感じでした。練習試合での立ち位置もあって自分が出る可能性もあるかなと気持ちを切り替えて今日この場所で良いプレーができるように準備はしていました。スタメンと言われたのは昨日の練習でしたが、気負わずにやろうと思っていました。
Jリーグデビューの感想はいかがですか?
自分としてもJリーグの試合は初めてでしたが、緊張はあまりしなかったのですが、感覚としてはいつもと違いました。そこでもっと良いプレーができれば良かったと思います。
持ち味はある程度出せたと思いますが。
個人的には90分間良いプレーをできるようにしてグラウンド上で一番自分が目立てるようなプレーを心がけています。そういう意味では今日の出来では自分として納得いきません。随所ではなく試合を通して良いプレーを見せたいです。退場を誘ったスルーパスは良いプレーだったと思いますが、それ以外の場面は足りなかったです。
サポーターに対してどんなプレーを見せていきたいですか?
直接ゴールに繋がるようなプレーをどんどんしていきたいです。
プロデビューを果たしましたが、今後の目標を聞かせてください。
とりあえず、今年の目標は年代別の代表でワールドカップの最終予選があるので、アジアチャンピオンを目指したいです。また、東京オリンピックという近い将来の大きな目標がありますし、それを飛び越えてA代表に入っていくことも目標です。
今シーズンの目標に関しても聞かせてください。
J1昇格を第一の目標にして、それに向けて1試合1試合勝利を得るために日々の練習から努力していきたいです。
MF 24奈良輪 雄太
試合を振り返ってください。
相手が10人になって普通に考えれば、自分たちが優位に試合を運べる中でちょっと硬くなった部分も含め最後まで難しい試合でした。
今日は1列前のアラン・ピニェイロ選手をオトリに上手く裏へ抜け出す場面が目立ちましたが。
相手のサイドバックが中に入るアランに釣られる場面が目立ったので、そこを狙いました。
カットインから良い形のシュートも何度かありましたが。
ポジションはサイドバックですが、運動量を生かして高い位置でボールに絡むとか、ああいうところに顔を出せるのは自分の強みだと思います。ただ、決め切るとかしっかりとアシストするとか数字の部分にもこだわってやっていきたいです。
守備面の対応はいかがでしたか?
自分の最大のストロングポイントは対人で負けないとか、サイドで主導権を渡さないというところだと思っています。今日は自分のところで穴を作ることなく90分間やれていたと思います。
攻守のバランスに気を配っていた印象ですが。
アランが攻撃面で強力な能力を持っているので、自分は彼に守備面でストレスを与えないように守備のバランスを取っていました。
昨季からの課題として用意したやり方が機能しなかった際の修正に時間がかかるという部分で今日の試合はいかがでしたか?
シーズンを通して開幕に向けても攻撃も守備も最低限のルールを決めてそれをやってきています。それがハマらない時は難しいですが、最低限の立ち返るところは自分たちにあるので今日は大きく崩れず、やれたと思います。
MF 20井上 潮音
決勝点のアシストは狙い通りですか?
あの辺に上げようと思っていましたが、それが点に、そして勝利に繋がって良かったと思います。こっちには高い選手が何人もいたので入ったのかなと思います。
白星スタートを切れたことに関してはいかがですか?
開幕戦でみんな硬さもあって難しい試合でしたが、勝てたことは何よりも良いことだと思います。
ベンチからどのように戦況を窺っていました。
相手が一人少ない中でも相手の方がボールを長く持つという時間もあり、自分たちがボールを持った時も相手のプレスがよくハマっていた印象でした。なかなか圧倒というか、一人多い状況を生かせていなかったです。そこは相手の状況を上手く利用できればと思っていました。
交代の際にはどんな指示を受けましたか?
守備時のポジショニングをしっかりとやることを言われました。攻撃というよりも、交代する時には1-0で勝っていたので、守備やセカンドボールへの反応などが求められていたと思います。
後輩の藤本寛也選手がデビューしましたが。
僕の方が年齢は上なので、彼が先発で出たことに関して悔しさもあります。僕も先発で出たい気持ちはありますが、そこは謙虚に周りを見ながら練習からアピールしていきたいです。
アシストという目に見える結果を残しましたが。
アシスト以外に今日は何もやっていませんが、ああやって数字が付く仕事ができたことはひとつ良かったところだと思います。