MATCH試合情報
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【試合展開】
今シーズンもいよいよホームゲーム最終戦を迎えた。プレッシャーの係る残留争いから抜け出した日から早くも1年が過ぎた。この1年でヴェルディの立ち位置は180度変わった。昇格を争うプレーオフ圏内を見据え、最終節までその可能性を残し、上だけを向いて戦う状況でこの日を迎えることができた。同勝ち点で3チームが並び、得失点差で8位につけるヴェルディ。そこから抜け出して6位に滑り込むためにも、まずは目の前のこの一戦で必勝を期したいところ。連敗中の流れを変えるべく、チームは2トップを入れ替え、平本一樹とアラン・ピニェイロをスタメン起用した。
セットプレーでの得点率が高い相手に対して、試合のイニシアチブを握ったのはヴェルディだった。序盤こそ、ロングボールを蹴り込んで押し込んでくる相手に対して、やや腰が引けた戦いを強いられたが、ボールを動かしながら相手をいなしてリズムを作る。前半も半ばに入る頃には完全にボールを保持し、相手を自陣に押し込んでじっくりと試合を進めていく。しかし、守備ブロックを敷く相手を前に、崩す糸口をつかめずにボールを動かしているだけの時間が続き、逆にミスからボールを奪われてカウンターを食らう。そのカウンターをことごとくファウルで止め、セットプレーが得意な相手にチャンスを何度も与えてしまった。そして、前半終了間際の44分、きわどい判定でファウルをとられたフリーキックをゴール前で押し込まれ、最後はオウンゴールという形で失点。終始主導権を握りながら、たったワンチャンスで相手に先手を許した。
後半に入るに当たり、冨樫監督は2トップをもっと有効活用し、バイタルエリアで前を向いて積極的にシュートを狙っていくように指示を出した。そして、最後に終盤に入って状況を変えるためのパワープレーを示唆し、その際にセカンドボールを狙って徹底してゴールを目指していく姿勢を強調した。後がないヴェルディは、前に出た。守備が手薄になることも厭わず、試合中にはカウンターから決められても惜しくない場面を作られながら、紙一重でピンチを凌ぎながら攻撃に全精力を傾けた。相手の守備ブロックを崩し切れない時間が続く中で、徐々に相手の守備を。80分、アランがカーブをかけたミドルシュートで枠を捉えると、ポストに当たった撥ね返りに途中から投入されたブルーノが飛び込んで直接押し込むが、ボールはゴールの上に外れた。終盤に入って、チームは最後の選択肢としてパワープレーに踏み切った。81分、高木善朗に代えてウェズレイをFWに起用し、その高さに賭けた。とはいえ、そうそう簡単にターゲットマンが起点になるとも限らない。長いボールを多用するもウェズレイが競ったセカンドボールは相手に渡ることも多く、フィニッシュまで持ち込めない。パワープレーも不発に終わるかと思われた86分、ようやくゴールをこじ開けた。右サイドから安西幸輝が鋭いクロスを入れると、ファーサイドでウェズレイが相手DFに競り勝ちヘディングシュート。これはポストに嫌われたが、リフレクションをアランが詰めて、ようやく喉から手が出るほどほしかったゴールが生まれた。その後もウェズレイを目掛けてロングボール攻勢に出たヴェルディだが、決定的な場面を作り出すことはできず1-1のドローでタイムアップを迎えた。
必勝を期して臨んだ試合ではあったが、敗戦濃厚な流れを強引にひっくり返して勝ち点を挙げたことが、残る最終節に大きなアドバンテージとしてつながるはず。これからの1週間、チームは今シーズンの集大成として持てる限りの力で研鑽を重ね、まずはプレーオフ進出を目指す。
【試合後選手コメント:FW 9 アラン・ピニェイロ選手】
――ゴールという結果が出たことに関してどのように捉えていますか?
「幸いなことに今日は1点獲ることができましたが、結果が引き分けに終わったことが残念です。それでも、最終戦に望みを繋ぐことができたので勝ち点1を獲れたことに最低限満足しています。とにかく、最後の試合で勝ちを持ってくることができるように頑張りたいです」
――ウェズレイ選手の投入である程度ああいう形は予想してプレーしていたのでしょうか?
「いつも狙っている形でした。ウェズレイ選手は空中戦が強い選手なので、最終的に自分の足元にこぼれ球が来たので、個人的には狙い通りだったと思います」
――中央を固めてくる相手に対して、どのようなフィニッシュの形を想定していたのでしょうか?
「真ん中を締めてくる強いチームに対しては裏やサイドからの攻撃が有効だと考えて、自分たちは試合前にプランニングしていました」
【試合後選手コメント:FW 25 平本一樹選手】
――後半開始前に南選手を呼んで指示を出していましたが。
「金沢がだいぶ引いていたので、1トップの位置に僕かアラン(・ピニェイロ)が入った時にボランチやサイドバックに“もっと俺とアランを見ろ”ということをハーフタイムに話していました。南と(高木)善朗に僕かアランが最前線に入った時に、最前線の選手に当てたボールをワンタッチで落として、それをセカンドトップが迎えに行くというやり方を僕はずっとやりたいと話していました。ウチは守備を真面目にやる選手が多いので、それは良いことですが、ある程度サボった位置で攻撃に絡んでくることも必要なことで、うまく浮いた位置でボールを受けるには、きちんとした守備のポジショニングをするとできないことなので、そこは後ろに負担をかけても良いと思っていました。ウチは少しサイドハーフの選手に守備をやらせ過ぎてしまっているので、そこは後ろが我慢してもう少し前に出してほしいと要求していました」
――最後は形振り構わない形で追いつきましたね。
「FWとしては少し複雑な気持ちですね。ウェズレイが入ってあんな簡単にゴールが入ったので、自分がイラナイんじゃないかなと一瞬思ってしまいました(笑)。 ただ、全体的な攻撃の部分はまだまだです」
――ご自身にクサビが入った場面で期待感のある仕掛けが何度もありましたが。
「元々、僕は少し下がってボールを受けるのが好きなので。僕が言っているのは、あの位置の僕にボールを付けるのではなく、その一個前の選手に出してそのボールを僕にワンタッチで落としてもらってバイタルエリアで仕掛けたいと思っていました。僕自身も久々の試合だったので、試合の流れの中でみんなが全ての指示をできるわけではないので、これからもそこはみんなにしつこく言っていきたいです。あれは引いた相手が絶対に崩れるプレーなので。もっと欲を言えば、前の関係性ができあがっていれば、パスの出し手の強さで強ければターン、弱ければ敵が後ろにいるとか、そういうことをやりたいです。南とはフィーリングも合って好きな選手ですが、彼にももっとドリブルで仕掛けてほしいと伝 えました。僕が下がって受けて仕掛けても前にはアランしかいませんが、あれを2列目の選手がやってくれれば、前に僕とアランがいるのでチャンスに繋がると思います」
【試合後選手コメント:MF 8 中後雅喜選手】
――ここまでパワープレーを採用していなかった中、パワープレーで追いついたことをどのように捉えていますか?
「結果的に追いつくことができて良かったですし、どんな形でも選手の特長を生かした形でのプレーだったと思います。苦しい中で多少、いつもと違う形のことをしましたが、こういう時期はそういう場面があってもいいと思いますし、プラスに考えていきたいです」
――勝ち点1という結果についてはどのように捉えていますか?
「価値はあると思いますし、なかなか勝ち点が獲れなかった中で本当は勝ち点3がほしかったですが、最後に追いつくことができましたし、今は全てをプラスに捉えていきたいです。残り1試合で勝てばチャンスがあるような状況で、今日もこの後に勝ち点で並んだチームの試合もあると思いますので、まだまだチャンスがあると考えてこの勝ち点1を生かせるようにやっていきたいです」
――試合展開に関しては一番嫌な形で先制点を与えてしまいましたが。
「監督からの話でも金沢の得点の4分の3は、セットプレーだったと聞いていましたし、僕たちがアウェイで戦ったときも3本やられていたので、そういう意味で警戒もしていましたが、ファウルが多かったこともあってあの場面は相手のファウルだったと思いましたが、やられてしまいました。ただ、失点したことに変わりはありませんし、そういう場面を作らない方が良かったと思っています。特に、相手の得意な形だったので、残念でした」
――パワープレーに関して事前から準備をしていたのでしょうか?
「準備は全然してなかったです。ただ、そういうのもあることだと思いますし、今までどんなチームもやっていたことですし、正直なところウチの前線に高い選手やヘディングに強い選手が全体的にいなかったので、イーブンなボールを拾うよりも自分たちでボールを保持しながら繋いでいく選手も多かったので、なかなかチャレンジする機会もありませんでした。今日監督が決めて結果も出たので、何の問題もなかったと思います」
【試合後選手コメント:MF 33 高木善朗選手】
――勝ち点1という結果についてはどのように捉えていますか?
「勝ちたかったですし、勝たなければいけなかったです。自分のプレーも良くなかったので反省点が残る試合でした」
――警戒していたセットプレーからの失点でしたが。
「判定もよくわからなかったですが、そこに左右されてしまった印象が個人的にもチーム的にもありました。失点は少ししょうがない部分もありましたが、チームとしての課題です」
――引いた相手に対して中と外を丁寧に使って揺さぶった中でなかなかシュートが打てませんでしたね。
「もう少し中から崩した方が良かったというのが正直な感想で、やっぱりサイドでボールを持った時に仕掛けたり、サイドバックや僕たちが仕掛けられたら良かったと思っています。また、真ん中からワンツーとかで入っていかないと、サイドも空いてこないと思いました」
――今日イエローカードをもらったことで、累積警告で最終節に出場できなかったことに関してどのように感じていますか?
「(プレーオフ進出の)可能性がなくなったわけではないので、みんなを信じてプレーオフに向けて準備するしかないと思っています」
――ファーストディフェンスのやり方を変更した部分に関してはいかがでしたか?
「ファーストディフェンスをいつもより低い位置からするという話になっていましたが、結果的にチームに勢いが出てこなかったというのが正直な感想です。ファーストディフェンスが決まらないうちに蹴られてしまって、セカンドボールを拾われることも多く、自分たちはどうしても繋ごうとしているところでロングボールを蹴ってしまうと、相手にセカンドボールを拾われてしまっていたので、蹴る時にしっかりとセカンドボールを拾うポジションに入らなければいけなかったと思いますし、それでも繋ぐのが理想かなと思います」
――今シーズン試していなかった中でのパワープレーに関してはいかがでしたか?
「チャレンジしたことで結果が出たことはポジティブなことですし、点が獲れないという部分では僕たちが真ん中でちょこちょこと崩して点を獲っても1点ですし、ああいう形で獲っても1点は1点なので、チャレンジして結果が出たことをチームとしてプラスに捉えていきたいです」
【試合後選手コメント:DF 2 安西幸輝選手】
――ご自身が上げたクロスが結果に繋がりましたね。
「良かったですけど、その前にもっと得点を獲れる場面があったので、とにかくウェズレイに感謝したいです」
――前半から相手の背後を取ってクロスを上げる場面があった中で相手にブロックされる場面が多かった印象ですが。
「裏を取るまでは良かったのですが、最後の精度に問題がありました。低いボールを意識していましたが、もっと練習したいです」
――強引にでもクロスを上げるという意識が感じられましたが。
「そうですね。ジェフ戦を見直した時にすごく悔しさを感じていたので、自分が何かを起こそうという時は上手くいかないことが多いので、周りの選手を生かすフリーランなどを今日は意識していました。そのお返しに良いボールが何度も来たのかなと思っています」
――勝ち点1という結果についてはどのように捉えていますか?
「前向きに捉えるしかないですし、今シーズンこのチームでやれる最後の試合なので、しっかりとプレーオフを見据えて勝てば可能性があるので、勝って帰ってきたいです」
――シーズン終盤戦で先制されると追いつけない試合が続きましたが、今日追いついたことはプラスの要素ではないでしょうか?
「そこに関してはここまでなかったので、追いつけたことは良かったです。ただ、少し前を振り返れば、仕留められるチャンスもあったので、そこは反省材料です。次はセレッソが相手ですし、相手も攻撃がうまいですし、僕たちも攻撃が特長なので真っ向勝負ができればいいと思います」
――3チームが並んでプレーオフ争いをしている現状はメンタル的に以前とは異なるのではないでしょうか?
「ジェフに負けた時に吹っ切れた感じがしました。あと2試合しかないので、みんながやれることをやろうというふうに話し合っていました。ジュビロに負けた時はショックが大きくて立ち直るのに時間がかかりましたが、今日に関しては吹っ切れてやれていました。残り1試合をチームみんなで勝てるように頑張りたいと思います」
【試合後監督コメント: 冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「今日のゲームは、残り2試合、自分たちにとっては勝ち点をしっかり獲っていかなければならない。できれば勝ち点3を獲らなければならない戦いの中で、金沢がああいうふうに戦ってくるのは想定内で、自分たちがいくつかのプランを用意して、選手たちはそれに対して自分たちの判断と変化を加えながらそれに深みを持ってサッカーを進めていけたと思っています。ただ、自分たちの失い方の悪さであったり、警戒していた周囲でのリスタートから失点をしてしまったことは残念ですし、もったいなかったと思っています。後半改めて自分たちがしっかりと45分を戦っていくことをもう一度明確にして、そして試合終盤へのプランを含めて選手たちにゲームを90分間やり抜くこと、そのうえの結果を求めて選手交代もしました。本当に自分たちにとってパワープレーに近い形で1点を獲れて、またそこからもう1点というところで行きましたが、同点に終わってしまいました。ただ、この後のゲームに対してヴェルディがゼロで終わるのと勝ち点1で終わるのとでは大きく違うと思いますし、自分たちにはあと勝ち点3を獲る戦いが待っているので、しっかりと準備したいと思います。また、サポーター一人ひとりと握手をしてパワーを頂き、改めて本当にこのチームに対してのサポーターの想いや支えてくれている人たちの想いを感じたので、是が非でも1つ上の戦いができるように次のゲームでもちろん勝ち点3を狙って、しっかりと戦っていきたいです」
――前節から2トップをそっくり入れ替えた狙いを教えてください。
「やはり自分たちにとっては、ボールを奪った後のスピード感を持って攻撃をするというプランの中でファーストディフェンスの仕方から今週は今までの戦い方と違う中で用意をしたこと。また、なかなか点が獲れていない中で相手が選手を個別に見て、個別にプレーを選んでいる感覚があったので、違う選手が出てきた方が相手は混乱するのではないかということ。また、現在はどの選手も好調を継続しており、どの選手が出ても準備ができていると感じていましたし、このゲームに勝つプランを立てた中で今日の2トップを選びました」
――今日はウェズレイ選手の投入で明確にパワープレーを採用しましたが、その意図と結果に繋がったことに関してどのように考えていますか?
「パワープレーに関して言えば、試合の途中から中後とは話をしていましたし、ハーフタイムにも時間によってそういう形もあるぞと言っていました。ただ、パワープレーをしたから得点が獲れたわけではなく、その中で選手たちが競り勝ってこぼれ球にもアラートな状態で詰められたことがすごく大事だと思っていますし、もちろん点を獲った選手、その前にいた選手を含め、多くの選手たちがアラートな状態でよく追いついてくれたなと思っています」
――まだ、リーグ戦は終了していませんが、今シーズンにできたこと、できなかったことを総括して頂けますか?
「もちろん、それはシーズンが終わってからしっかりと分析をして、どこに原因があるのか、上手くいったものがあるのかは、もちろん後で総括していきたいです。現時点では毎試合、毎試合、自分たちが分析している中では、例えば数字の上で攻撃の数値であったり、守備の数値であったり、またゴールの方向に向かって進入している回数であったり、ポゼッションのパーセンテージであったりというのは、この年のJ2の中でもしっかりと数値的には残していると感じています。ただ、サッカーは数値的なところ以外、数字に表れない部分のところで、例えば今日であれば、たった一回のリスタートで失点してしまえば、自分たちにとって苦しいと思いますし、そういう意味での強みと弱さという部分はまだ まだ混在していると思います」
――今日は雨の影響でピッチが重くボールが走らなかったが、プレーに影響はありましたか?
「雨が降るということは今週の天気予報でずっと分かっていました。ただ、自分たちの奪い方、ファーストディフェンスのやり方で相手の背後のスペースを上手く作ること。また、カウンターの起点の選手がどこに立ち位置を取って、どうやってスピードを上げていくのかという部分では、本当に前半なんかはそういうシーンでゴールに迫れたのかなと思っています。そういう意味ではピッチの濡れた部分が、よりラン・ウィズ・ザ・ボールでアランや一樹が活きていたのではないかと思っています。少しボールが止まることによって、また進むことができるという意味ではカウンターの場面で相手の背後のスペースを突くという狙いがうまくできたと今のところ思っています」