MATCH試合情報
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【試合展開】
プレーオフ圏内に入ってから徐々に失速し、ここ6試合で得た勝ち点がわずか「2」と苦しむヴェルディ。前節は下位で苦しむ水戸ホーリーホックを相手に完敗を喫し、24節から維持してきたプレーオフ圏からも外れた。残り5試合、特にラスト4試合で上位直接対決を3試合残すヴェルディにとって、事前に勢いを取り戻すことがプレーオフに進出する鍵となる。そうした重要な位置づけとなった一戦の相手は、昨季の自分たちと似た立場にいる栃木SC。リーグ最下位で残留争いをしており、死にもの狂いで立ち向かってくることが予想される。この緊張感溢れる一戦に向けて、ヴェルディは原点回帰という選択をした。ここ数試合で人選やシステムを変えてきたが、システムを夏場に連勝していた4-4-2に戻し、スタメンの選択も夏場の好調時に倣った。
栃木SCの今季ホームゲーム最多来場者を記録したこの試合、自分たちのベースに立ち返ろうという意識をチーム全体で共有したヴェルディは、序盤に攻勢を仕掛けた。球際で相手に一歩も譲らず、執拗なチェイス、二度追い、三度追いを繰り返す。そして、ボールサイドへの二人目、三人目のプレスを間髪入れずに連動させて、セカンドボールやルーズボールをことごとく拾う。そこから一気に縦方向にスピードアップして栃木陣内で試合を進めた。ボールへの執着心がもっとも如実に表れたのは18分のプレー。右サイドからワンツーを経て中央へ入った安西幸輝が相手陣内に入ってすぐのエリアで一度はボールを失うも、自分のポジションに戻るのではなく、素早く切り替えてボールに対して激しく寄せていく。余裕を持ちながらかわそうとした相手に対して、連動してプレスバックした澤井直人が相手の死角からボールをつついて奪取。パスを受けた杉本竜士が強烈なブレ球ミドルシュートで相手ゴールを急襲した。シュートは相手GKに防がれたものの、高い位置でのプレスとショートカウンターは、夏場の連勝時期の十八番。このままヴェルディペースで試合が進んでいくかに思えた。しかし、ここから栃木SCの反撃にあう。崖っぷちに立つ相手もなりふり構わずに前への圧力を強め、力技でヴェルディ陣内に徐々に侵入していく。バイタルエリアにボールを運ばれ、ペナルティエリア内でシュートまで打たれる場面もあったが、DF陣が身体を張ってシュートブロックし、瀬戸際のところで相手の反撃を食い止めた。
ハーフタイムに冨樫監督が強調したのは、カウンター気味にスピードアップして攻撃を仕掛ける意識が強過ぎるあまり、パスミスや連係ミスで逆襲を食らっていた点。その修正として、冷静に状況を見ながらプレーを判断し、ボールの運び方に改善を施す指示を出して選手を送り出した。後半の立ち上がりは栃木SCの圧力に背走する場面も見受けられたが、徐々に少ないタッチでボールをワイドに動かして攻撃のリズムを作っていく。前半は縦一辺倒だった攻撃が徐々に落ち着きを取り戻し、状況に応じて変化をつけながら栃木ゴールに迫った。サイドで深い位置に入るもののなかなか崩してフィニッシュまで持っていくことはできなかったが、ペナルティエリアに侵入する場面が少しずつ増えていく。77分にはペナルティエリアに飛び込んだ田村直也がライン際で粘ってボールをマイナス方向に戻す。これに反応した杉本が、相手よりもコンマ数秒単位で早くボールに反応。遅れて出てきた相手の足に押される形で倒されてPKを得た。これを高木大輔がコントロールショットでゴール隅に流し込んで、ようやく均衡を破った。オウンゴールを除けば、実に7試合ぶりとなるヴェルディのゴール。ここからは反撃に出たい相手の焦りを利用し、ボールをゆっくりと動かしながら時間を使っていく。アディショナルタイムも終わりかけのタイミングに、途中投入の平本一樹のドリブルから、同じく途中投入のブルーノがフリーでコントロールシュートを放つ場面を作るなど、攻撃の手はタイムアップの笛が鳴るまで緩めなかった。
実に7試合ぶりとなる勝利は、PKの1点を守り抜いた僅差のものではあるが、終盤戦の緊張感が溢れる中で手にしたという意味で非常に大きな意味を持つはずだ。この勝ち点3を未来につなげるためにも、次節のジュビロ磐田との一戦に万全を期したい。残り4試合。いや、プレーオフも睨んで、残り6試合。一度は順位をズルズルと下げたが、なんとか踏みとどまった。ここから、ヴェルディは反撃を開始する。
【試合後選手コメント:FW18 高木大輔】
「ちょっとした部分で勝てないことが多かったり、ちょっとした気の緩みとか、自分たちでは思ってなくても、最近は勝っていたからとかというちょっとしたことで歯車がかみ合わなくなっていました。それが今日は原点に戻って自分たちのやりたいことをやろうと話をして、それができたからこその勝利だと思います。勝てなくてもサポーターの皆さんがホームでもアウェーでもこんなに応援してくれたら、僕たちもやるしかないし、それが僕たちの仕事なので、僕たちにとっては価値ある勝利になりました。その大きい勝利だったというのを証明するのは残り4試合で、次のジュビロ戦だったり順位が近いジェフとの試合だったり、そういうところで発揮していくことが、ここ最近勝てなかったという流れを払しょくする機会だし、自分たちがひと回り強くなった証明になると思います。これから夏場みたいに乗っていくには、自分もゴールをもっと決めていく必要があるし、今日もあまりシュートシーンに絡むことが少なかったのでそこはもっとこだわっていかないといけないです。ただ、僕の仕事は他にもあるということは証明できる。そうやって自分にできることを個々がやっていくことが、残りの4試合では必要になってくると思うし、そこはもう一回チーム全体で認識できました。(前線へのプレスは)自分にとっては仕事のひとつなので、今日特に頑張ったわけではないですし、いつも通りできたというところです。僕らもしっかりと追うことで、PKの場面につながると思います。夏場はそこをさぼらなかったから勝てたと思うし、改めて大事だなと認識しました。上手さは全体的にあるチームなので、諦めずに頑張り続けることでこちらもキツイけど相手もキツくなって、後は技術の差で今日のゴールのように勝利を持ってくる場面は増えてくると思うので、そこはもっとやっていかないといけないです。PKは最初は竜士君に確認したら足がつっているということで、南君がボールを持っていたけど、蹴りますと言ったら譲ってくれました。チーム全体としても点を取れていなかったですけど、勢いに乗れればいいと思ったので。これを機にゴールを取れるようになれば、チームも勝てるようになるはずです。次のジュビロが相手ですが、戦力は相手が上ですけど、自分たちはそこぶつかっていかないといけないですし、ここまできたら失うものはないので。もう無理だろうというところまで追ったり、相手が嫌がることをして疲れさせることで、労を惜しまずやり続けることをチーム全体で認識してやりたいです。それを徹底できれば、勝てない試合はないと思うので、相手を食ってやる気持ちで1週間準備して試合に臨みたいと思います」
【試合後監督コメント:冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「残り5試合という中で自分たちは、昇格という明確な目標を掲げて戦える順位にいて、本当に今日のゲームは、戦うという部分、走る、奪う、打つというサッカーの一番大事なもの、一番ベースとなるもので負けないということで臨みました。少し内容的には改善しなければいけないところはあるにしても、今自分たちが残り5試合で勝ち点をとっていくために、選手たちは最後の最後までゴールラインを割るまで、またはサイドラインを割るまで、無理な体勢でも身体を当てにいって少しでもずれたボールを自分たちのものにするために心と身体を粘り強く動かしてくれた。また、ここまでサポーターが自分たちの力になる応援をしてくれた。その全てが今日の勝利につながっていると思います。ただ、自分たちはこれから4試合、自分たちよりも上のチームとの直接対決があるなかで、しっかりとそれに勝つことで自分たちは変わってくると思っていますし、そのための努力を1年間してきているので、ここからの4試合、選手とともに、スタッフも一丸となって、そしてサポーターの力を借りて臨んでいきたいと思います」
――後半に思ったよりギアが上がってこないように感じました。ハーフタイムにボールの運び方を改善しようという指示がありましたが、具体的にはどういうことですか?
「自分たちがスピードを上げてミスを起こしているのであれば、スピードの上げ方をピッチを有効に使って攻めること、また相手のディフェンスラインにイエローカードが多かったことも踏まえて、自分たちが数的優位を作りながら攻撃することを改善の中で求めました。その中でも、ボールを動かしながら背後に動き出す2トップの集中力であったり、最終ラインのコンパクトさでファーストボールを競る、その中にセカンドボールを拾う、予測も入れるということで、自分はギアが上がらなかったというよりも自分たちでしっかりと落としながら上手くピッチの横幅を使って攻撃をしたかった。ゴールにつながったPKも幅をとりながら外から中に入ってくるボールでペナルティエリアに侵入したことがつながったと思うので、選手たちがよく相手を見ながらプレーしたのかなという風に考えています」
――若くて昇格争いの経験がない選手が多い中で、この大事だと位置づけた先週の水戸戦と今日の2試合でどうやって選手のモチベーションを上げたのでしょうか?
「サッカーはベースになるもので勝てなかったりミスがあると自分たちがやりたいことは実現できないし、ゲームにももちろん勝てない。その中で、自分たちが何を一番大事にしてゲームに臨むかといったら、やっぱり気持ちの部分だと。自分たちがここまでやってきて変化することも崩れることもなく、チーム一丸となって戦うために、どうしていくかということ。そして、選手たちが自発的に、ここ5試合がすごく大きなものになると感じていたと思うので、選手が自発的にミーティングをしたりとか、一丸となって戦える土台を作った1週間だったのかなと思います。そこが先週と今週の違いだったかなと思います」