MATCH試合情報
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【試合展開】
過密日程3連戦の締めくくりとなる敵地でのコンサドーレ札幌戦。ヴェルディは前節のギラヴァンツ北九州戦でサブスタートとなった平本一樹をスタメンに戻した。強烈なFWを擁する相手との一戦は、選手たちが事前に話し合っていたように我慢比べとなった。
序盤はともに様子を窺いながら、前線に早めにボールを送り込んで相手陣内で試合を進めようと動いた。そこから徐々に違いを生んだのはヴェルディだった。球際での寄せの早さと奪った後の連係で相手を押し込み、相手陣内でボールをコントロールする時間が増えていく。しかし、連戦の疲れからか持ち味のパスワークを発揮するための選手間の距離がやや長く、サポートの遅れや連係ミスからボールロストしてカウンターを食らう場面があった。最終ラインが集中力を高く保ち、ナザリトと都倉から自由を奪ってバイタルエリアで仕事をさせなかったが、前半の終盤にはサイドを割られてあわやというシーンを作られた。一方の攻撃は、ボールを持つものの効果的なボールが前線に入らず、またくさびも収まらない。サイドで起点を作ろうにも、高い位置からサイドに狙いを定めて厳しく寄せてくる相手に対して両サイドバックの仕掛けが鳴りを潜めた。
後半、システムのミスマッチを優位に持ってくるため、冨樫監督は中盤の高い位置を厚めにするためにシステムを変更。ブルーノをサイドに、南を中央に入れて2列目が4枚になる配置を選択した。すると選手間の距離が改善され、潰されていたサイドでも数的優位を作ってボールが回り始める。特に右サイドで安西幸輝、中後雅喜、南秀仁、ブルーノが絡んで相手を引き出し、狭いスペースを縫ってバイタルエリアに侵入していった。そうして攻撃の糸口を見出すと、虎視眈々とボールを狙う男の嗅覚がゴールを呼ぶ。60分、相手がゆっくりと最終ラインからボールを動かし、ボランチがボールを持ち出そうとした瞬間、相手の隙を窺っていた平本が背後からボールをつつき、拾ったブルーノがワンタッチで中央へ。ヴェルディの攻撃陣は一気にスピードアップ。中後がボールを持ち出してバイタルエリアに入る間に平本がペナルティエリアの右スペースへと抜け出す。右足で上げたクロスは、フリーでゴール前に飛び込んでいた南の元へ。身体を投げ出しながら頭で合わせたボールは、相手ゴールキーパーが一歩も動けぬほど最高のコースへと吸い込まれた。その後、ホームでの連敗を避けたい札幌が前掛かりに攻めはじめ、ヴェルディも陣形が後退する。それでも最後の部分では相手のターゲットマンに仕事をさせていなかったが、一瞬のエアポケット。70分、左サイドでくさびでつけたボールを背後に流され、このボールを井林章が処理しきれずにゴール前で待ち構えていたナザリトまで流れる。マーカーをもろともせずにダイレクトボレーで合わされ、ゴールネットを揺らされた。内容的に上回っていたヴェルディは、攻撃にテコ入れする交代策を講じて徐々に主導権を握り返すと、アランが前線で身体を張ってボールを収めてチャンスを作り出す。87分には杉本竜士が右サイドを抜け出してクロス。付いてこれない相手をしり目にフリーのアランがボレーで合わせたが、これは相手ゴールキーパーのファインセーブに阻まれた。その後もゴールを目指して仕掛ける姿勢を失わず、相手陣内で試合を進めていったが守備ブロックを攻略し切れなかった。
同点に追いつかれた後に守備が崩れずに締め直し、あらためて攻撃に出て主導権を握り返したという点で、昨シーズンと比べてチームとしても選手個々としても成長を見せることができた試合となった。ホームではしっかりと勝利を挙げ、アウェーでは最低限“負けない”で帰ってくる――。この連戦で掴んだ勝ち点5は大きい。これから先は、アウェーでも勝ち切れるためにステップアップしていくことが目標となる。
【試合後選手コメント:MF 11 南秀仁】
「そんなにヘディング自体は得意じゃないし、あまり練習もしていなかったのでクロスが上がってきた時は自信がなかったですけど、気持ちで流し込みました。チュウさん(中後)が相手の前に入ってボールを運んで、一樹さんが開いて呼び込んで、あのクロスが上がってきたらもう決めるだけです。ほとんどチュウさんと一樹さんのゴールです。(システムチェンジ後は狙い通りにできた?)中央でパスが上手く回るようになって、自分も中央でプレーできて、最後までやり切れる形が増えていた中で先制点をとれたので非常に良かったと思います。(先制後に追加点がとれなかったことと失点をしたこと、どちらに課題があるのか?)もちろんそれは追加点をなるべく早い時間にとれなかったことです。相手のホームですし、追いつかれることにもなってしまうし、早いうちに追加点をとりたかったです。バイタルエリアまでボールは運べていたんですが、崩しにこだわっている部分もあるし、そこはもっとチームとして『思い切りよくシュートを打っていいぞ』という意識づけをしていきたいです。3連戦の3試合目ということもあって、皆身体がきついというのもありますし、気持ちでは行きたくても身体がついてこないこともあったと思います。でも、その中でやろうとしていたことは良かったと思います。ポジティブに捉えて次の試合につなげたいです」
【試合後選手コメント:DF 3 井林章】
「皆でも言っていたんですが、試合を通して札幌はブロックを作って引いてくるサッカーで、焦れたほうが負けるという試合でした。自分たちは声を掛け合っていたので、そういう意味では先制点をとれたのは大きいんですが、あそこで勝ちに持っていけなかったのはディフェンスラインに特に責任があると思うし、ほぼほぼチャンスを作られていなかったのに1回のチャンスで追いつかれてしまったのはもったいなかったと思います。(先制後に受けてしまう時間帯があるが?)向こうも点をとろうと前掛かりにくる姿勢はあるので、しょうがない部分はあるのでそこを撥ね返せる力を持たないといけないと思います。(アウェーで先手をとれているのは大きいのでは?)ウチは先制点が大事なチームだと思いますし、前半を無失点で終えられるかどうかは試合展開に大きく関わってくる。先手をとれたという意味では、ここ最近の負けない試合ができている証拠かなと思っています。(相手のエースのナザリト選手にほとんど仕事をさせなかった中で、失点のワンシーンだけが悔やまれる?)相手はキーマンが限られていたので、チャレンジ&カバーをハッキリさせて身体を張って止めるのを意識していたんですが……。僕たちディフェンダーの仕事は、そのワンシーンでさえ防ぎ切らないと意味がないので、今回の失点は非常に悔いが残ります。次の岐阜戦はホームゲームですし、これまでの流れのとおり先制点をとって、勝ち切れるように内容も結果もこだわりたいと思います」
【試合後監督コメント:冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「連戦の中、本当に選手たちは最後までゴールを目指して走り、必死に身体を張って90分間戦い抜いてくれました。また、サポーターも遠いところまで駆けつけてくれて、後押ししてもらえて、本当に最後の最後まで勝ち点3をとるチャンスはあったと思いますし、特に後半自分たちがシステムを変えて攻撃的に出るというところでいえば、チャンスも構築できたのかなと。ただやはりサッカーなので、1回のプレーで追いつかれたのは残念ではありますが、自分たちが成長している実感はありますし、また前を向いて上を目指して来週しっかりとトレーニングして戦いたいと思います」
――後半からブルーノをサイドに出してシステムを変えましたが、その狙いはなんでしょうか?
「最初からシステムのミスマッチが起こる状態の中、自分たちがミスマッチと感じるところは相手にとってもミスマッチだと感じていたので、自分たちがボランチの脇ないしはマーカーの誰に捕まるのか。3枚のセンターバックの誰なのか、あるいは中盤の外に捕まるのかでスペースの空いてくるところが変わってくるし、自分たちがボールを持つ選手がたくさんいる中で、どこに起点に作るのかでブルーノを外に置いたり南を外に出したり、杉本竜士を逆に持ってきたりとか試行錯誤しながら進めたつもりです。もっと有効にサイドで数的優位を作り出せると思っていたんですが、連戦でサイドバックの安西幸輝も福井諒司もかなり疲労している中、いつもなら追い越せるところで追い越せなかったというのもあり、その中でも長い距離を走ってその場面を作り出してくれたことには感謝しています」