ベレーザ対INAC、激闘の歴史
文=馬見新拓郎
シーズン終盤に差し掛かったWEリーグで、注目の首位攻防戦が行われる。2位ベレーザが、首位I神戸を味の素フィールド西が丘に迎える一戦。3月31日に発表されたなでしこジャパン候補のトレーニングキャンプメンバーにベレーザから4人、I神戸から5人が選出されたように、実力者ぞろいの両チームの対戦はまさに大一番と言えるだろう。
2018年になでしこリーグが30周年、2021年にJFAが100周年を迎えたこともあって、最近の筆者は歴史に触れる機会が多かったが、近年の日本女子サッカーをけん引してきたのは間違いなくこの2チームだ。
ベレーザは日本女子サッカーリーグ創設時から現在に至るまで、日本女子サッカーのトップランナーであり続け、選手の育成にベースを置きながら常に各年代の代表チームに選手を送り出してきた。一方のI神戸は、選手のプレー環境をいち早く整備し、毎年のように大型補強を行うことで急速に力をつけ、なでしこジャパンが世界一になった2011年にはなでしこリーグの主役となっていた。両者の『強くなるための方法論』は少し違うが、その違いがまた第三者にとっては興味深い。
両チームの激闘の歴史を振り返るうえで、忘れられないのが2008年4月26日のなでしこリーグ ディビジョン1 第4節(駒沢オリンピック公園陸上競技場)だ。ベレーザは荒川恵理子、永里亜紗乃、永里優季のゴールで3点を奪ったものの、I神戸も田渕径二監督が育て上げた選手たちが躍動し、2度のビハインドを追いついて3-3のドロー。当時のI神戸にとってベレーザはまだ遠い存在だったが、その後の躍進を予感させる一戦だった。
記憶に新しいところでは、2019年10月20日のなでしこリーグ1部 第16節(味フィ西)の対戦も印象深い。ベレーザはキックオフ直後に守屋都弥に決められてリードを許すが、後半途中に長谷川唯が登場すると会場の空気が一変。その3分後に籾木結花が同点弾、後半アディショナルタイムに植木理子の華麗なヘディングシュートで2-1の逆転勝利を収め、5連覇に大きく前進した。
2019年10月の対戦では植木の劇的な逆転弾でベレーザが勝利
近年の日本女子サッカーをけん引してきた2チームが、満を持して迎えたWEリーグ。シーズン序盤から首位を快走するI神戸に対し、ベレーザは7位からのスタートとなったが、徐々に順位を上げて2位で伝統の一戦を迎える。WEリーグ初代女王に最も近い2チームによる“競演”から一瞬も目が離せない。