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2023.07.04 トップ

Match Preview & Column #12

Match Preview V・ファーレン長崎

ポイントは先制点。齋藤、山田の得点力に注目!

前節、ロアッソ熊本に勝利し、アウェイ7連勝を飾った東京ヴェルディ。その一方で、ホームでは6試合白星が挙げられていない。今節こそ、是が非でも味の素スタジアムのゴール裏でファン・サポーターとともに歓喜のラインダンスを踊りたい。

試合内容に目を向けると、前々節モンテディオ山形戦、前節ともボールを相手に握られながらも、「持たせてる、ぐらいの感じで、特に焦りを感じることはありませんでした」(谷口栄斗)。最大のストロングである守備面でチーム全体として機能し、2試合連続で無失点で終われたことは非常に大きな収穫だった。

また、攻撃面でも、怪我から復帰した齋藤功佑が2試合連続ゴールと好調ぶりをアピール。特に前節は前半開始2分での先制ゴールが結果として決勝点になったことからも、価値のある一撃であり、さらに先制点の重要性をあらためて感じさせた。特に今節は中2日の連戦であり、蒸し暑い夏場という厳しい条件だけに、先制してメンタル的に優位に立ちながら試合を進めたいところだ。

そこで期待したいのが、まずは齋藤の3戦連発だ。疲労はあるだろうが、いま得点感覚を体が覚えていることは確かだろう。あまり試合間隔が開かないからこそ、その感覚を大いに生かして積極的にゴールを狙って欲しい。

もう一人、山田剛綺も注目したい。前節もゴールこそならなかったが、前半から積極的にシュートを放ち、持ち前の攻撃力をアピールしていた。チームメイトとの連係もだいぶ深まっている印象で、山田自身も「お互いに、それぞれの特徴がわかってきています」と確かな手応えを感じている。非凡なシュート力は随所に見られているだけに、ぜひとも第21節ザスパクサツ群馬戦に続きホームゲーム連弾が見たい。

一方、対戦相手のV・ファーレン長崎にも絶好調男がいる。エースのフアンマ デルガドだ。2試合連続ゴール中であり、直近5試合で5得点と量産体制に入っている。また、第21節からの2トップ布陣が機能しており、コンビを組む都倉賢、クリスティアーノ、エジガル ジュニオなど、強力なストライカーたちも脅威となる。

そんな難敵を前にこそ、「より燃えてきます」と闘争心を掻き立てられるのが山越康平だ。強い相手に競り勝ってこそDFの腕の見せどころ。「しっかりとクリーンシートを継続していきたい」と意気込む。

また、攻撃の起点となり、サイドから質の高いクロスも入れてくる増山朝陽の存在も要注意だ。フアンマにボールを入れさせないこともまた、大きなポイントとなることは間違いない。

現在リーグ3位タイ(37得点)の得点力を誇る長崎の攻撃陣を、リーグ屈指の守備力を誇る東京Vはシャットアウトできるか。非常に楽しみな見どころと言えよう。


79日には国立競技場で首位・町田ゼルビア戦、さらに同12日には天皇杯・FC東京戦と、絶対に負けられない、負けたくない一戦が続いていく。この試合を必ずや全力で勝利し、大一番へ弾みをつけたい。

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・オフィシャル)

Player's Column

『1年目の学びと2年目の挑戦。稲見哲行は成長を止めない』

早くも2023シーズンは後半戦に突入した。チームは主力の長期離脱が相次いだ中、チャンスを得た選手たちが躍動し、前半戦を3位での折り返しに成功した。そんな中、ここにきてメキメキと頭角を現しているのが稲見哲行である。

 

新チーム始動間もない今年116日に左ハムストリング腱膜損傷の怪我を負い、長期離脱となったこともあり、今季初出場は第12節水戸ホーリーホック戦(429日)だった。そして、第16節栃木SC戦に先発出場の加藤弘堅の試合中負傷をうけて前半38分からピッチに立ったことで状況が一変。自身プロ初ゴールでチームを勝利に導くと、次の第17節レノファ山口戦から前節ロアッソ熊本戦まで7試合連続先発起用が続いている。

 

最大の魅力は対人の強さとボール奪取力だ。屈強な体で相手を潰し、泥臭くボールを奪って一気に攻勢へと流れを導くプレースタイルは、まさにファイター。豊富な運動量も大きな武器として併せ持つ。その守備力の高さから、矢板中央高校、明治大学、さらにはプロ1年目の昨季までは守備的MFやセンターバック、サイドバックでの出場が主だったが、今季、城福浩監督が起用しているのは、中盤3枚の中でもフロントボランチ(インサイドハーフ)というのが興味深い。その意図を、稲見自身はしっかりと受け止めている。

 

「受けるのが上手い森田(晃樹)をリベロ(アンカー)に置いてゲームメイクの部分を任せたいのが1つあると思います。あとは、監督やコーチングスタッフから自分が言われるのは、『前で奪って、そのまま攻撃につなげるためにお前を前に置いている』ということ。高い位置での守備のスイッチ役だったり、前への推進力、シュート力という部分でも自分を評価してくれているので、それを前で出してくれというのはよく言われています」。

 

今季、城福監督が徹底的にこだわっている「相手陣内でサッカーする時間を長くする」ためにも、稲見のボール奪取力をより高い位置で発揮させることは非常に大きな意味を持つことになる。自身の守備的な強みを前線で求められることに対し、本人は次のように話す。

「自分自身、タイプ的にもアンカーで、バランスをとって相手の攻撃に対して守るというのが特長であり、実際にそういうプレーが多かったのですが、今、その特長を前の位置で求められることによって、自分の武器をより攻撃的に出せるので、これまで以上に攻撃につながる守備ということを意識しています。それに、ボールを奪ってからの、前につけて自分も出ていくという部分が自分に足りないところだったのですが、今のポジションをやることで補えていることは、僕にとってもすごくプラスになっているなと思います」。

 

また、もともと自信を持つ攻撃力やシュート力を発揮できていることも、チームにとっては大きい。

「シュートには自信はあったのですが、これまでは(シュートまで)持っていく形だったり、実際に打てる場面で打たないでパスをしてしまったりというのが正直ありました。それが、少し前のポジションになったことで、僕自身の意識ももちろんですし、周りからも『積極的なプレーをしろ』と声をかけてもらったりするので、自信をもって足を振れています」。

ここまで挙げた2ゴールとも、ミドルからの思い切って足を振り抜いた強烈なシュートだった。機を見て迷いなくゴールを狙う姿勢に、今後も大いに期待したい。

 

巡ってきたチャンスで『得点』という最高の結果を残せたことが大きかったことは間違いないが、今、こうしてスタメン出場が続いている一番の要因は、『準備』だと稲見は受け止めている。「練習から常に準備していたことが、監督が自分を使うきっかけになったと思いますし、栃木戦で点を取れたのも、やはり、いつ出番がきても100%の力が出せるだけの準備を常にしていたからこそ繋がったと思っています。やること自体は去年とそんなには変わっていませんが、怪我の予防という点に関しては、意識が大きく変わりました。去年怪我をして、出られない時期があったからこそ学んだ部分が多いので、トレーナーと積極的にコミュニケーションをとるようになりましたし、自分で自分の体や足の調子をわかるようになったかなと思います。「今日動くな」だったり、「どこが痛いから気をつけよう」というのは、より意識できるようになりました。

 

さらに、成長という面では、「ファウルの回数は減った」ことを挙げる。

 

「去年は、自分の特長を出そうとして勢い余ってPKを与えてしまったシーンもありました。あのPKでだいぶ反省して、もちろん特長を出すのも大事ですが、自陣だったらステイして飛び込まない守備というのが求められるので、その使い分けだったり、自分がいる場所やポジションによって、やるべきプレーというものが明確にできているのかなと思います」。

 

2年目の選手として、昨季12試合の出場で得た学びをしっかりと生かせているのである。

 

稲見といえば、チーム内でも「筋肉がすごい」と有名だ。雑誌『Tarzan(ターザン)2023511日号』でもその見事な肉体美を披露している。そこには、当然しっかりとした目的やこだわりがある。

「もともとは、大学の時に自分がどういうタイプの選手として勝負していくかを考えて、球際でボールを奪うタイプでいくなら、もっと体を強くしなければいけないなと思ったことが体作りを始めたきっかけでした。大学で体重を7〜8kgぐらい増やして、つけ過ぎても動けなくなってしまうので、今はそれを維持していくことを目標にしています」。

 

やはり、一番気をつけるのは食事だ。体重が落ちやすい体質のため。特に夏場はタンパク質と水分を中心に量をたくさん摂ることに重点を置いているという。筋肉疲労や肉離れの予防のためにも、水分は非常に大事だとトレーナーから指導を受け、特に試合の前日は大量の水を摂取している。

 

こうした日常からの意識は、出場機会が増えれば増えるほど、ますます高まっている。

 

「去年は試合に出ることだけで精一杯な部分がありましたし、一年目でわからないこともたくさんありました。でも、二年目になり、さらに試合に出させてもらっている立場として、チームを勝たせるプレーというのをやらなければいけないですし、監督がやろうとしていることを積極的に表現していく立場にならなければいけないと思っています。そのためには、怪我とかは絶対に避けなければいけない。そうした危機感や責任感は増したことはたしかです」。

 

65日、プロA契約締結が発表された。

「プロサッカー選手としてほっとした気持ちももちろんあるのですが、同期の中では自分が一番遅いんです。ずっと『追いついてやろう』と思っていたので、やっと追いついたなというのが一番の思いです。同期からは、いつもいい刺激をもらっているので、ここからみんなに負けないように頑張ろうと、あらめて感じています」。

 

18節いわきFC戦、自分が相手選手からボールを奪ったシーンでスタンドが大きく沸いた興奮が、今も強く胸に残っている。

「ああいうファン・サポーターの歓声がが自信にもつながりますし、自分のプレーで見ている人の心を動かしたり、何かを与えられるようになりたいというのが目標でプロになったので、心からのやりがいを感じました。これからも、僕の熱いプレーで見ている人の心を動かしていきたいです」。

 

現在、チームは自動昇格圏の2位という好順位につけている。そんな緊張感のある素晴らしい環境で試合ができているのは、「今、リハビリを余儀なくされている選手も含めて、全員で作り上げてきているおかげ」だと、感謝してやまない。だからこそ、「今、チャンスをもらっている自分が出ることで順位は下げられない」と大いなる責任感を胸に闘っている。ましてや、怪我人もどんどん復帰しており、レギュラー争いもますます激化してくる。「良い選手がたくさんいる分、少しも気が抜けません」。闘争心は燃え上がる一方だ。

 

激しく体をぶつけ、ボールを奪う攻撃的な守備と、精力的にペナルティエリア内に顔を出し、機を見て放つパワフルなシュート。暑さをも凌駕する稲見の熱いプレーが、夏の夜を盛り上げる!

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・近藤篤)