日本瓦斯株式会社
株式会社ミロク情報サービス
株式会社H&K
ATHLETA
ゼビオグループ

NEWSニュース

2023.11.04 トップ

Match Preview & Column #21

Match Preview

『ホーム最終戦、ファン・サポーターと共にJ1昇格への弾みを!』

命運分かつとの予想を呈した前節ジュビロ磐田との同順位決戦は、激闘の末1−1の引き分けという結果に終わった。

自動昇格を目指す東京ヴェルディにとっては、勝点2差(第39節試合前)で自動昇格圏内の2位につける清水エスパルスが黒星を喫していたとあり、順位を入れ替える大チャンスだっただけに非常に悔やまれるドローとなってしまったが、いつまでも悔やんでいても仕方がない。

「勝点1差に詰めた」と前向きに捉え、残り2試合全力で連勝を飾るのみだ。



城福浩監督も、あらためて前節を振り返り、「ほとんどの選手がこれまで味わったことのない緊迫感の中で、いつも通りの自分たちのサッカーをすることがいかに難しいかを経験できたことは、今後に向けても非常に大きかった。その意味では、その状況下で勝点1を得られたことはプラスに捉えたい」と前向きに話した。

2位の清水エスパルスとの勝点差は13位のジュビロ磐田とは勝点では69で並んでおり、残り2試合でJ1自動昇格の可能性は十分残されている。その中で、指揮官が今一度選手たちに求めたというのが、「これまでやってきたやり方を突き詰めていくこと。立ち返るところに戻って見直すこと」だという。

城福監督は力説した。

「最初から出ていた選手が出し切ってバトンを渡したのか。見ている人が『そこまで追うのか?』と思うようなプレッシングをしたのか。全員がここまでハードワークしてリカバリー・パワーを出すのかとかというところは、僕らはもっと臆せずに出した方がいい。やりきって、やりきって、最後までやりきった上でバトンを渡したかというのは、負けたくない試合ではどうしても慎重になる。イコールそれは、我々らしくなくなるというところが、磐田戦では多少見受けられた。

ただ、どんなサッカーでもリスクはある。リスクだけを考えたら、尖ったサッカーにならない。まん丸な、特徴のないサッカー、チームになってしまう。そうではなくて、我々が目指す、何かを研ぎ澄ましてやるためには、当然リスクがある。ただ、とてつもない緊迫下の中でやると、人間はどうしてもそのリスクが思い浮かぶんですよ。でも、自分たちはそれを覚悟でやってきていると思っているので、攻守においてこだわってきたものに立ち戻って、もう一度リスクを背負って自分たちしくやることをみんなで共有して、そのリスクは全員でリスクヘッジすることを徹底させたい」。

リスクを理解した上での、『ハイライン、ハイプレスへのチャレンジ』。

『相手コートでサッカーする時間を多くし、常に主導権を握って、できるだけ多くのチャンスを作って得点を奪いにく』。

『先発出場、交代出場にかかわらず、全員が最初から持てる力の全てを発揮してバトンを繋いでいく、チームとして90分間パワーダウンしない戦い方』。

そうした、開幕時に掲げた戦い方を残り2試合、プレッシャーのかかる大一番で見せられるのか。それこそが、J1昇格への真価が問われるところだろう。

対する栃木SCは、第40節を終え18位と、J2残留争い渦中での戦い強いられてきたが、114日の試合で21位の大宮が敗戦したことで残留が決まった。

とはいえ、一息つくことは決してないだろう。逆に、負のプレッシャーから解放され、ポジティブな気持ちで試合に挑んでくる相手こそ、負けの許されない東京Vとしてはむしろ慎重に挑むべきだろう。

7月に途中加入しながらも、チーム2位の4得点を挙げているイスマイラが累積警告で出場停止というのが栃木としては痛いが、チーム得点王の大島康樹がここにきて得点感覚を上げている印象があり、東京Vにとっては警戒したい存在だ。

また、守備としては、「ロングボールをうまく使ってくる感じはあるので、そこでしっかり厳しくいけるように。そのあとのセカンドボールを拾われないようにすることも大事だと思う」と宮原和也。

GKマテウスも、「まずはいつも通り、失点をしないというのが大事になる。その上で、自動昇格がある中で、勝点も一緒の磐田とは得失点差も争うことになるので、栃木戦は早めに先制点を取れれば試合をコントロールしやすいゲームになると思うので、チャンスがあればどんどん点を取りいかなければいけないと思う」と、積極的な攻撃も重要となることを強調した。

前節、右膝前十字靭帯損傷の大怪我から戦列復帰を果たした梶川諒太は、ピッチに立つことであらためて実感したという。

「(リハビリに費やした)この半年で、サブのメンバーだったり、メンバー外の選手と過ごす時間も長かったので、そういう選手たちの頑張りも見てきました。本当に、そういう選手たちも含めたチーム全員で勝ち取ってきたここまでの結果だと思うので、試合に出る選手はそうした存在も感じながら、戦って欲しいですし、僕も、出られたらそういう選手の気持ちを背負って戦いたい」。

ホーム最終戦となる。

開幕前に掲げた、『アグレッシブで、見ている人、それ以上にやっている自分たちが感動するサッカー』を披露し、ファン・サポーターとともにJ1昇格への弾みをつけたい。

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・近藤 篤)

Player's Column

『J1に上げた男になる。森田晃樹というプロフットボーラーの決意』

J1に上げた男になりたい」

 

2023110日チーム始動日。森田晃樹は、自分の東京ヴェルディでの存在意義を自らに言い聞かせるように、物静かに、だが並々ならぬ覚悟を込めて、今シーズンへの思いを口にした。

 

そして、その言葉を個人だけにとどまらず、さらに深い意味を持たせたのがキャプテン就任だった。

 

高校3年生の時、ヴェルディユースでも主将を託され経験があった。だが、プロチームでの主将となれば、役割も責任も重みが高校生チームとは比にならない。

 

「正直、『困ったな』と思いました。ユースの時とは違って、僕が一番年上なわけではないですし、逆に、チーム内では年齢が下の方なので、自分より年上の人を引っ張っていくことも難しいなと思ったのと、人前で話をしなければいけなかったり、キャプテンとしてスタッフと選手の間をつなぐ、選手と会社の間をつなぐ役目など、責任の大きな仕事もあると思ったので、引き受けるべきかどうか、少し悩みました」。

 

 だが、自分を指名してくれた城福浩監督の想い。そして、「このキャプテンの経験が、今後サッカー選手としてやっていく上でも、もっと言えば、プロサッカー選手を終えた後の自分のためにも、成長につながる」と思い、「やらせてください」と指揮官に伝えた。

 

森田にとって、大きなチャレンジの一年が始まった。

 

チームは、昨季6月に城福監督が就任してから『リカバリー・パワー』というワードを掲げて積み重ねてきた強度の高い守備を武器に、開幕から第7節まで4連勝を含む511敗と好スタートを切った。

 

その後も大崩れすることはなかったが、一時は谷口栄斗、梶川諒太、齋藤功佑、林尚輝、平智広と、チームの主軸を担っていた選手が次々と故障で戦列を離れる緊急事態もあった。

 

夏場には、内容は決して悪くないながらも、なかなか勝ちきれないもどかしい時期も訪れた。何よりも選手たちが心を痛めていたのが、ホームで約5ヶ月間、12試合勝利できずにいたことだった。



そうしたチームの苦境にも、決して下を向かず、常に前向きな発言で懸命に乗り越えようとしてきたのが森田だった。

 

「チームのみんなと共に、その都度、真剣に意見を交換して立て直しながら、気持ちもヴィジョンも途切れずにここまでやれていることは、チームそのものの成長だと思っています。あとは、選手が出ていったり入ってきたりしましたが、その選手がプラスになってやってくれているので、そこはチームとしてもプラスの成長だと思っています」

 

時に浴びる試合後のファン・サポーターからの厳しい叱咤激励も、23歳の主将は矢面に立ち、真摯に、全力で受け止めた。そんな厳しい声の裏には、「信じている」「次こそ!」との深い愛情がこもっていることを、生え抜き選手として誰よりもわかっているからだ。

 

そんな中で、森田はここまでフィールドプレーヤーの中では宮原和也とともに39試合(全40試合中)に出場している。特に後半戦は足の状態も万全とは言えない状況が続いており、激しいフィジカルコンタクトの末、途中交代せざるを得ない試合もある。

 

だが、次の試合には必ず状態を戻し、しっかりと腕にキャプテンマークを巻き、スタメン選手として堂々とピッチに立ち続けてきた。

 

「なるべくキャプテンとして全試合に絡みたいと思っています。怪我も、幸い離脱しなければいけない程でもないですし、残りの試合数が少ないという意味でも、ちょっと痛いからといって、その痛みを恐れる感じる必要もないので、できる限り頑張っています。

 もちろん、100%のプレーができない時は、僕の中で『やらない』とは決めているのですが、今のところ100%のプレーができる状態で出られているので、キャプテンとしてももちろん、一人のプロサッカー選手としても、J1昇格争いや、毎試合ピリついた雰囲気の中で試合をやれることはなかなかないと思うので、最後まで出続けたいと思っています」

 

それこそが、まさに森田のキャプテン像の象徴といえよう。

 

森田のキャプテンシーを、チームメイトはどう見ているのか。GKマテウスは次のように話す。

 

「僕は、キャプテン像には2つのタイプがあると思っている。グラウンドの中でも外でも声を出して引っ張っていくタイプと、テクニックや技術面でチームを引っ張っていくタイプの2つで、モリタさんは後者。それは、彼のプレーを見ていれば、彼が一番上手い選手だと誰もがわかると思いますし、チームメイトたちも全員、彼にボールを預ければどうにかしてくれると思っている。それほどまでに信頼されるという意味でも、彼は素晴らしいキャプテンだと思う」

 

また、昨季横浜FCでキャプテンを務めた齋藤功佑も、同じ経験をした身として3歳年下の若きチームリーダーの奮闘を暖かく見守ってきた。

 

「もちろん理想のキャプテン像というのはあるとは思うのですが、僕個人としては、キャプテンがそんなに全部を担う必要がないかなと。それよりもサッカーチームのキャプテンとして一番大事なのは、プレーで見せることだと思っていて。そこを晃樹はしっかりと試合に出続けて、結果を出すということでしっかりと体現しているので、すごくいいキャプテンだと思っています。その上で人間性が備わっていたら最高ですが、それはいきなりやれと言われてできるわけでもないし、年齢などもあると思う。でも、そこも晃樹は放棄するのではなくて、きちんと考えて、成長しようとしているのは素晴らしいと思います」

 

決して、何か特別な言葉でチームを鼓舞するタイプではない。だが、折に触れ、「ピッチに立ったらキャンプマークを巻いて、誰よりも上手いプレーをして、チームのために、誰かのために誰よりも熱く闘う(深澤大輝)」森田の姿に、チームメイト全員が口を揃えるのである。

 

「そんな晃樹を支えたい」と。

 

これほどまでに、先輩後輩に関係なく、誰らも支持されるのも、すべて森田の人間性あってのことだろう。

 

「自分にもやりたいこと、得意なプレーがあると思うけど、それよりもまずはチームとしてやらなければいけないプレーを最優先していると感じるし、特に守備面、前線への指示の声かけなどを、本来は淡々とやる選手だろうにもかかわらず、積極的にやってくれている(齋藤)」「よりクールになった(笑)(谷口栄斗)」「ヴェルディという伝統のあるクラブのキャプテンとして、23歳という年齢で気負いすぎることなくやれているのが本当にすごい!今はみんなが晃樹がキャプテンでよかったと思っていると思います。(深澤)」。

 

こうした仲間たちのサポートも受けながら、チームは残り2試合を迎えて2位清水と勝点1差、同勝点の磐田と並ぶ4位(得失点差による)と、すでにプレーオフ進出を決めており、さらには最大の目標とも言える自動昇格の可能性も十分残している。

 

J1にあげた男になりたい」

 

その念願は、いま、まさに目の前にある。達成できるかは自分たち次第なのである。

 

2009年、小学校3年生で門を叩いた東京ヴェルディに身を置き14年、気がつけばトップチームのキャプテンを任される存在になった。1歳上で、ジュニア時代から共にヴェルディアカデミーで育ってきた副キャプテン谷口栄斗は断言した。

 

「晃樹がキャプテンのチームでJ1に上がることに意味があると思う。それを、僕も副キャプテンの身としても必ず達成したい」。

 

森田も、主将就任時からその使命の重要性を理解し、常に背負って闘ってきた。

 

「ヴェルディという歴史のあるクラブがJ1に上がること自体にすごく大きな意味があると思いますし、さらに僕や栄斗のようにアカデミー出身選手が中心になってチームを引っ張っていって、上げるというのが、育成を評価されているクラブとしても最高の理想型だと思う。それを実現させることができれば、このクラブの未来にとっても、大きな意味を持たせることができるんじゃないかと思っています」

 

奇しくも、森田が小学生で初めて緑のユニフォームに袖を通した2009年以来、クラブは15年間J2に身を置き続けてきた。その間、何人もの生え抜き選手たちが主将を務め、J1昇格へ導くことを託されてきたが、叶えられた者は誰もいなかった。

 

さあ、いよいよ歴史を変えるべき時が訪れた。

 

「キャプテンをやらせてもらえてよかった」

 

頼られる喜びと、責任を背負いながら結果を出すことの価値の大きさを心の底から痛感している森田晃樹。東京ヴェルディを15年間ぶりの悲願達成へ導くのは、この男しかいない!!

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・近藤 篤)