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2020.04.02

特別コラム『女王前夜』

女王前夜

 

文=馬見新 拓郎(フリーライター)

 

1981年に『読売サッカークラブ女子ベレーザ(現在の日テレ・東京ヴェルディベレーザ)』が発足してから、2020年シーズンで39年目を迎えた。

 

昨シーズン、史上初めてのプレナスなでしこリーグ5連覇を達成したベレーザは、今まさに黄金期を築いていると言っていい。過去の成績を振り返ると、1990~1993年、2000~2002年、2005~2008年にもそれぞれリーグを連覇しているため、現在のベレーザは第4次黄金期と位置付けることができるだろう。

 

 

2年連続で国内の全タイトルを制覇し、充実のシーズンを過ごしているベレーザだが、その直前には長い苦悩の期間があった。

 

2010年シーズンはリーグ優勝を達成したが、同年の全日本女子サッカー選手権大会(現在の皇后杯)で3回戦敗退を喫すると、翌2011年から2014年までリーグ優勝を逃し続けた。それまで主力を担っていた選手が多く退団したため、現在のベレーザで中核をなすことになるメニーナ出身の選手たちが若手として起用され始めたが、残念ながらすぐに結果には結びつかなかった。

 

その当時は試合中に上手くいかないことがあると、試合後、複数の選手がピッチ上に座って互いに意見を出し合う『青空会議』が自然発生していた。その『青空会議』はなかなか終わらないため、スタッフに促されながら、重い足取りでロッカールームに下がるベレーザ選手たちの姿を思い出すファン・サポーターの方々も多いはずだ。

 

 

なでしこジャパンで活躍したベレーザOGの加藤(旧姓・酒井)與恵さんは、その当時、ある選手が相談に来たことを覚えている。

 

「ベレーザが勝てない時期、キャプテンのイワシ(岩清水梓)が泣きながら相談に来ました。私と同じで、イワシはうまい選手ではなく、気持ちで頑張る選手。その姿を見せ続ければ、周囲にも響くから大丈夫と言いました」。

 

2005~2008年のリーグ4連覇に主力として貢献し、「ベレーザは負けてはいけないチーム」と常々口にする岩清水は、ベレーザで勝者のメンタリティを培ってきた選手だ。当時はそれを若手選手に伝えられない、もどかしさを抱えながらプレーしているように見えた。

 

その時期は、FIFA女子ワールドカップドイツ2011でなでしこジャパンが優勝し、世間の女子サッカーへの注目度が非常に高まっていた。これまで日本女子サッカーをリードしてきたベレーザが、重要な時期にリーグの主役となれなかったことを悔しく感じていたのは、岩清水だけではなかっただろう。

 

 

2011~2014年シーズンまでリーグ優勝を逃し続けた4年間の苦難を経て、ベレーザは森栄次氏(現・浦和レッズレディース監督)が監督に復帰した2015年シーズンから、再び輝きを取り戻す。現在でも主力を担うメニーナ出身の若手選手たちが結果を残し始め、GK山下杏也加やDF有吉佐織、MF阪口夢穂といったメニーナ出身ではない選手も存分に力を発揮し、現在のリーグ5連覇に続く第4次黄金期が始まった。

 

2018年シーズンからは永田雅人監督が指揮を執り、すべてのタイトルを手中に収めつつ、選手個々の個性を伸ばすことにより一層フォーカスした指導が続いている。なでしこリーグ登録10年目を迎えるMF籾木結花は、ベレーザに貢献することができなかった時期の経験を思い返しながら、今シーズンも戦う覚悟だ。

 

「今の自分たちがこんな連覇の時代を過ごしているのは、何度も負けてきた苦い経験があったから。若い選手たちが、さらに素晴らしい歴史を作ってくれるように、そういうこともしっかり周囲に伝えていきたい」と、籾木は次代を担う選手たちに、勝者の遺伝子を伝えていくことの重要性を認識している。

 

 

ただし、ベレーザは勝つことだけに重きを置かない。結果オーライを許さず、内容面でも相手を上回ることができたか、ベレーザは常にその自己評価が厳しい。永田監督が「タイトルをいくら獲得しても、僕らが目指すサッカーを追求、探求していくことに終わりはない」と言うように、どんな1試合からも次の課題を見つけ出す。

 

勝てない原因を話し合う『青空会議』や、勝利からも次の課題を見つけてさらに磨きをかけていく作業の積み重ねが、現在の第4次黄金期につながっているのだろう。

 

 

ベレーザの練習場であるヴェルディグラウンドに足を運ぶと、全体練習終了後には自然と自主トレの時間に切り替わるところをよく見かける。黙々とランニングする選手もいれば、ボールをいくつもかき集めてシュート練習する選手、何十分も延々とボール回しで戯れ合う選手もいる。この風景は、ベレーザが勝っている時期でもそうでない時期でも不変だ。

 

ベレーザ発足39年目のシーズンは、新型コロナウイルスの影響により、先が見えない状況が続いている。しかし、なでしこリーグが開幕すれば、これまで通りのスタイルで、ベレーザは結果と内容を突き詰めていくはずだ。脈々と引き継がれてきたベレーザのメンタリティと飽くなき探求心が続く限り、ベレーザの歴史はこれからも紡がれていくはずだ。